皇帝の見えない折れた杖
全力で走った。走っているはずなのに、どれだけスパートを掛けても前との差が縮まらない。それどころかどんどん離されていき遂には後続に抜かれてしまう。ゴール板を駆け抜け息も戻らぬ内に見た掲示板には私の番号は一番下に書かれていた。
無敗の三冠バシンボリルドルフ。彼女と同じ時代を駆け抜けてきた。流石に皇帝世代なんて言われることは渋々認めたがそれでも私は皇帝のライバルの一人であるつもりだった。同期のみんなは怪我や衰えを理由に徐々に引退していき気がつけば残ったのは私と皇帝の二人だけだった。別段仲がいいわけでもないがそれでも同期の桜であり超えるべき壁であった彼女を意識しないことはなかった。今日トレーナーに無理を言ってG3レースに出たのも最近皇帝がG1レースを勝ったことが関係ないとは言えない。すでに重賞どころかオープン戦ですら勝ちの遠のいてた脚に無理を言ってなんとか現状で満足できるだけの調整はしてきた。それでも結果はギリギリの入着。目をそらしていた事実を強烈に叩きつけられた結果だ。
私の数少ない自慢は昔皇帝に土をつけたことがあることだ。と言っても向こうはG1前の調整のためのレース。こっちはそれだけに注力してなんとかハナ差で勝ったにすぎない。それでも当時はそれなりに話題にもなったし、彼女からレース後に次は負けない。と言われたときは私の絶頂期だったと思う。まあ、宣言通りに次に相対したときはボロ負けしたんだけど。
そんなことを思い出しながら私の横で勝者インタビューを受けている娘を見れば私よりもいくつも年下の子達だ。その目は輝き、次の重賞への意気込みを語っている。嗚呼、私にとっては一世一代の大勝負だったのにこの後輩たちにとっては本命のためのステップでしかないのだろう。それがわかった時ストンと私の中でなにか落ちた音がした。
「さて、久しぶりの出走で見事入着、次に向けての意気込みをお願いします」
いつの間にかインタビューは私の番になっていた。興味はないが一応入着、それに皇帝世代の生き残りということで時間が用意されたんだろう。
「潮時かもしれないですね」
ほぼ無意識で私はそう口にしていた。
いつもは生徒会室で昼食を取っている私達だが今日は会長の
「たまにはカフェテリアでメニューと環境の確認といかないか?」
との一言で会長とブライアン、私の三人でカフェテリアに来ている。気分転換の意味も多分にあったのだろう、周りを見回せば皆笑い合ったり真剣に食事をしていたり、問題といえばそれこそ肉料理が少ないとブライアンが嘆いている程度だった。注文の関係で会長が先に席に向かっているため急ぎたい気持ちで一杯だが目の前の行列はすぐにはなくなりそうもない。以前スズカに聞いたおすすめを頼んだのは失敗だったか? 皆の模範で有るべき私がここで押しのけるわけにもいかず焦りを紛らわすために壁にかけられているテレビに視線を向ける。どうやらG3の勝者インタビューのようだ。名前まではすぐには出てこないが一着は若い娘のようだ。これからに向けて意気込みを語っている。彼女たちが全員とはいかないができる限り多くが夢を掴めるように一層粉骨砕身で頑張らねばならんな。
そんな風に気持ちを改めているとインタビューは最後のウマ娘に移ったようだ。彼女は……、他のメンバーと比べて明確に年上なのがわかる。確か会長の同期であったような……
「潮時かもしれないですね」
その言葉を聞いて自分のことでもないのに胸が苦しくなる。我々ウマ娘が現役でいられる時間はそう長くはない。アスリートとして次のステップに行けるのは一握りであり多くは一勝すらできずにターフを去っていく。それでも映し出されている彼女の顔に後悔や心残りなんてものはなく満足の行くものだったのであろう。そのことが少しは救いであると感じてしまう。気がつけば並んでいた列も大分と進んでいてテレビから意識を離そうとした時、向こうの席の方からガシャンとガラスの割れる音がした。トラブルでも起きたのかと気持ちを切り替え現場に向かえばそこに日替わりランチを床にぶちまけその中で呆然自失としか言いようのない会長が佇んでいた。
たまにカフェテリアで昼食もいいだろうとエアグルーヴとブライアンを誘ってみればエアグルーヴは快諾を、ブライアンは渋々といった感じではあるが了承してくれたので二人とともにカフェテリアへと足を運んだ。どうやら二人が頼んだメニューは時間がかかるようで私だけ先にお盆を渡されたので空いている席を探して歩いている。辺りを見回せば三人で座れる空席はなかなか見つからないが、それで皆が楽しそうに食事をしているのを見れば私の夢への道が間違っていないように思えて気持ちが軽くなる。少し浮ついた気持ちで席を探していると備え付けのテレビからどこかのレースのインタビューが聞こえてくる。皆これからの意気込みを鼻息荒く語っている、レースというものは残酷であると私は知っている。それでも、あそこにいるできる限り多くのウマ娘が夢を叶えられることを願わずにはいられない。インタビューは進み最後に出てきたのは私の同期だった。友人というほどの関係ではないがそれでも私と彼女それぞれががお互いに唯一残った同期だ、それなり以上に意識はしてしまう。しかし最近レースには出ていなかったようだが久しぶりの出走で入着とは流石。表情を見れば晴れ晴れとして掴むものもあったのだろう。記者から今後の展望を問われ、私も気になる彼女の回答は
「潮時かもしれないですね」
想像と正反対のものであった。
なぜ? どうして君はそんなにも清々しい顔でそんなことを言っているんだ?
「会長!? どうされたんですか!?」
慌てた声のエアグルーヴに肩を叩かれ初めて自分が持っていたお盆ごと昼食を床にばら撒いていることに気がついた。そこからの記憶はあまりはっきりしない。おそらく周りの娘達に迷惑を詫び掃除をしてそのまま食べるものも食べずにカフェテリアを後にしたのだと思う。気がつけば屋上で一人立ち呆けていた。空を見ればすでに茜色が広がっている。どうやら私は授業も生徒会もサボってしまったようだ。スマホを見ればすでにトレーニングの時間すら過ぎている。エアグルーヴからのメッセージという通知を叩いてみれば学園に体調不良で連絡済みであると、トレーナー君にも連絡を回したと書いてある。もう一件の通知を見れば連絡を受けたのだろうトレーナー君から今日のトレーニングは中止であると、それに心配のメッセージが来ていた。本来であればすぐにでも二人に謝罪の返信をするのが失態を犯した私の責務なのだが今日この時だけはなぜかそれをしようという気にすらならなかった。スマホの電源を切りなんとなくフェンスに越しに校門を見渡す。だがきっとその時私の目には何も映っていなかっただろう。そうして少しの時間が過ぎた頃一台のマイクロバスが入ってきた。レースに出ていたウマ娘たちを連れて帰ってきたのだろう。ぼんやりとそちらを眺めていればある顔を見つけ気がつけば私は走り出していた。
「潮時かもしれないですね」
トレーナーになんの相談もなくそんなことを言い放ってしまった私は控室でこっぴどくお説教を受けてしまった。それでも最後には泣きそうな顔でお疲れ様。と言われた時には不覚にも涙ぐんでしまった。我らがトレセン学園の姿が見えてきた頃この型落ちのマイクロバスに送迎されるのも最後かと思うと感慨深いものがある。いつもは椅子が硬いだの空調の効きが悪いだの文句ばっかり言っていたがそれでもいつだって私をターフに連れて行ってくれた相棒なのかもしれない。バスから降り車庫へと帰っていくバスを見送りながら私は小さく頭を下げる。これからのことを考えないとな、なんて思いながら頭をあげるとそこには息を切らせた皇帝が立っていた。周りには誰もいない。もしかしたら私の引退を知って声をかけに来てくれたのかな? そこまで親しい間柄ではないがそれでもすべてのウマ娘に幸せをなんて大望を持つ生徒会長だ、一応は対戦経験もある同期に声をかけるために時間を取ってくれたのかもしれない。勢いでの引退宣言から穏やかな気持が続いている私は、まずは挨拶でもと声をかけようとした。したがそれを遮るように大声が飛んでくる。
「どうして! どうしてあんなことを言ったんだ!?」
……突然のカミナリに耳も尻尾もビシン!と逆立つ。どうして? どうして私は怒られているのだろうか。ああ、もしかしたらあんなところで聞かれてもいない引退の話を急にしたのはまずかったかな? 私自身はそうでもないが最後に残った皇帝の同期という肩書は多少はあるようで、あの後主役であるはずの娘達の注目を奪ってしまった。確かにそう考えればあまり良くなかったかもしれない。そんな考えに至り謝罪しようと改めて前を向けばそこには涙を流しながら私を睨んでいる皇帝の姿があった。
「なぜだ!? 君は今日だって結果を残せたじゃないか! 一着ではないがそれでも……!」
まるで駄々をこねるように言いたいことを私にぶつけてくる。話せないほどに混乱しているのか嗚咽が追いついていないのかもはやちゃんとした文章ではなくなっていくがそれでも何か感情をダイレクトにぶつけられる。あまりのことに逆に冷静になった私の耳には周りのざわめきが聞こえ始める。よく考えなくてもいつだって冷静沈着な生徒会長様が突然有名でもないウマ娘を相手にこんな事になっているのだ、私だって他人事であれば野次ウマのひとつやふたつするだろう。流石にこれ以上ここにいるのはまずいと皇帝の手を引いて逃げるようにその場を後にする。思ったより素直についてきてくれたのは意外だ。
静かになれる場所と言っても特に思いつかず仕方なく私のトレーナー室に逃げ込む。扉を開ければ今後のことを話すために待っていたトレーナーが机で難しい顔をしていた。私を見つけて何か口を開こうとして後ろの顔を伏せた皇帝の姿を見て黙ってしまう。謝りながら部屋を貸してほしいと頼むと神妙な顔で今後の話は明日にしようと言ってくれた。私は部屋の鍵を預かって皇帝をソファに座らせる。落ち着かせるためにコーヒーを入れたところで好みすら知らない私達の関係に、何故か小さく笑いが出てしまった。真面目な性格だし出されたものを突っぱねはしないだろうとカップを2つ机の上に置き対面に座る。私が一口二口と口にした辺りでポツリポツリと話し始めた。
「どうしてあんなことを言ったんだ……? さっきも言ったが君はまだ走れるだろう」
「いやいや私はもう終わったウマ娘だよ。今まで目を背けてレースから遠ざかってたけど今日わかった。というより確認したんだ。私の時代はとっくに終わっていた。君がいるのに時代なんて言うのは恥ずかしいけどたしかに私が主役の一人だった時代は有ったんだ。でもね? もうそれは昔の話さ、今の私じゃせいぜい盛り上げ役が限界だ。こんな私でも少しはプライドが有ってね、そんな状態でしがみつくぐらいなら潔く引退させてもらうだけさ」
紛れもない本心だ。こんな私でもターフを駆ける誇りとともに生きてきた。やんちゃな頃は皇帝に挑む気持ちは? と聞かれたけど挑むんじゃない! 勝負するだけだ! 勝手に格付けをするな! なんて吠えたことも有ったっけ。いやいや今思えば若気の至りとしか思えない。昔を懐かしむ私に皇帝は泣きそうな目で口を開く。
「なら……、ならどうしてレースに出たんだ……!? でなければずっと現役でいられたんじゃないのか!?」
「どうしたんだ? 今日の君は少し変だよ。まあいいか。レースに出た理由か、それは君だよシンボリルドルフ」
「私……?」
「ああ、君がこの前G1で勝っているのを見てね、一応これでも皇帝の同期でライバルを自称しているんだ。そんな私が指を銜えて見ているだけなんてできないだろ? G1でなくてもレースに勝って未だ健在! なんて世間に見せようとしたんだけどねえ、結果はご覧の通りさ」
肩をすくめておどけてみせるが目の前の皇帝の表情は暗いままだ。それどころか最初より落ち込んでないかこれ?
「私の……、私のせいなのだな……」
「なんでそうなったかは知らないけど言いたいことがあるならはっきりいいなよ。残念ながら君と私は以心伝心な関係ではないんだから」
そう促すとぽつりぽつりと話し始めた。
「私と鎬を削ったウマ娘たちは君を除いてみんな引退してしまった。怪我であったり満円の終わりだったり様々だったが誰もいなくなってしまった。君以外では私は皇帝であり生徒会長で尊敬するべき相手、目指すべき目標でしかない。私と対等に戦おうするウマ娘はみんないなくなってしまった」
「それよく自分で言えるね。生徒会のえーとナリタブライアンだっけ? あの娘とかマルゼンスキーとかライバルはいるんじゃない?」
「マルゼンももう一線は退いてアドバイザーみたいな役割がほとんどだ。ブライアンに関しても彼女は私に挑むと言っていた。対等ではないんだよ」
どうやらこの皇帝様は随分と贅沢な悩みをお持ちのようだ。私からすれば嫌味にしか聞こえないけどきっと本人にとっては重要なことなのかね?
「シービー先輩もビゼンニシキもカツラギエースも皆私の前から去っていった。気がつけば私を追いかけてくるウマ娘はいても並び競うウマ娘は誰もいなくなっていた」
「それは流石に言い過ぎなんじゃない?」
「かもしれないな。それでも私はそう感じてしまったんだ」
いつもの熟語もくっそ寒いダジャレもなく話す皇帝は、どこか怒られる小さい子供みたいに見えて笑いそうになる。けどこの空気の中で流石にそれはまずいとなんとか持ちこたえる。
「生徒会長として皆の模範であるために背筋を伸ばしてここまで来た。それでもやはりこうもなると私自身引退の時期が来たのではと何度も頭をよぎった。そんな時君がレースに何度も出て、負けたとしても不断の努力で次は勝つと言うのを見ていた。今となっては君と私、二人だけの同期だけど君から確かに勇気をもらっていたんだ。君が頑張っているなら私もやらねばと、自分で言うのも何だが私達は皇帝世代なんて呼ばれていた。であればその私が不甲斐ない姿を見せれば君にも、これまで私と戦ってくれた皆に申し訳が立たない。それは私を奮い起こし背中を押すには十分な熱量だったんだ」
驚いた。さっき親しくないなんて言ったけどなんてこった。どうやら私達はお互いをどこまでも意識してたみたいだ。そう考えが至った時胸が熱くなるのを感じた。レースで勝った時とも勝利を渇望し打ち込んでいた時とも違うなにか優しい暖かさが胸に広がる。
「しかし、そんな君も引退となってしまった。はは、私もそろそろそんな時期なのかもしれないな……」
そうだ、今まで私の背中を押して先行し、横に並び、後ろから追い込んできたシンボリルドルフ。彼女に今託すことができるのは私だけなんじゃないか?
「自分の進退に人を使うなんて甘ったれてんじゃないよ」
「ち、違う! そんなつもりじゃ……」
顔を上げたルドルフが私の顔を見て言葉を止める。自分ではわからないが今私はどんな顔をしてるんだろう。
腰を上げルドルフの隣に座り直す。ポカンとした表情で見つめてくるルドルフは私が今まで見てきたどの顔とも違うもので写真に撮って収めておきたくなる。そんな邪な誘いを振り切って私はゆっくりルドルフの肩を抱く。ビクッと一度肩が跳ねたが特に抵抗らしいものないまま私の方を訳がわからないと言った表情をしている。
「ありがとう。私のライバルでいてくれてありがとう。私に勝ってくれてありがとう。私に負けてくれてありがとう。私と走ってくれてありがとう」
抱きしめる腕に力を込めて私は続ける。
「ありがとう。貴女のおかげで私は今まで走ることができた。私を貴女の走る理由にしてくれてありがとう。きっと私と貴女は友人ではなかった。でも、でもね? きっともっと違うもっと強い何かで結ばれていたんだ。今までありがとう。これからもありがとう」
思考の壁を通ることなくピュアな感謝の気持ちが口から流れ出る。きっと後で思い返せば顔から火が出るほど恥ずかしくてベッドの上でのたうち回るかもしれないけど今はそんなの関係ない。ルドルフの方を見れば今にも泣きそうな、でもさっきの涙とは違う涙が今にも流れ出しそうになっていた。私が小さくうなずくと涙も留まることをやめ私を抱き返してくる。そんなルドルフをみて私も声こそ出さないが泣き出してしまい、ウマ娘二人、日の沈んだ学園の一室で抱き合いながら泣いていた。
どれぐらい時間が経っただろう、どちらからということもなく私達は離れまた向かい合っている。さっきまでの自分たちを思い出しお互い顔を真っ赤にしながら黙り込んでいる。いつまでもそうしているわけにもいかず冷え切ったコーヒーを一気に飲み干したルドルフは憑き物の落ちたような顔で立ち上がる。
「ありがとう。私が走る理由が少し見えた気がするよ。ふふ、また君に助けられてしまったな。うん? ……! 今後は走る理由を端に置かないようにしよう」
大分元気になったみたいでいつもどおりのしょうもない駄洒落を言いながらドヤ顔しているルドルフに苦笑いしか出ない。しかし、これでお別れというのも少しあれだな。もしかしたらもう会うこともないかもしないんだしなにか……
「……ああ! ルドルフ少し待ってくれないか」
そう引き止めて目的のものを探す。今日は着たわけではないからこの部屋にあるはずなんだけど……、ああ、有った。私は見つけたそれを少し乱暴に引きちぎる。
「はい、これ私からの餞別」
「これは、というよりいいのかい? そんな乱暴にして、大事なものだろう」
「いいのいいの。これは私がルドルフに勝った時に増やしたもの。どこぞの皇帝様みたいに7つとはいかなかったけど私と貴女を結ぶものだから、持っていってあげて」
「光栄至極だな……。ああ、確かに受け取った」
大事そうに主観だけどトロフィーよりも大事そうなんじゃないかって思うぐらいに大切に受け取ってくれたルドルフと最後に握手して二人で部屋を後にした。
落ちとしては次の日トレーナーに勝手に勝負服のボタンをとったことでゲンコツをもらったが必要経費ということにしておこう。
それから月日は過ぎ私はトレセン学園を離れ次の目標に向かって机に齧りついている。今までとは全く違うことを始めるというのは中々に大変だけどもそれでもみすぼらしい姿は見せられないと奮起する。ふと背伸びがてら時計を見れば予定の時間ギリギリだと慌ててテレビを付ける。そこには年末の祭典、有馬記念の本バ場入場が始まっていた。
『さあ、久しぶりの有馬記念です。1枠1番シンボリルドルフ。久しぶりの有馬記念ですが流石の一番人気』
威風堂々、まさにそんな言葉が似合う私の元……いや元じゃないな。ライバルのルドルフが腕を組んで集中している。
『シンボリルドルフといえば、最近勝負服を新しくしたようですが、ほぼ違いはなく一つ飾りボタンを増やしただけのようです。理由を尋ねると背負うものが増えたのですとの事です』
解説の話に沿うようにカメラがズームし見覚えしかないボタンが大きく映る。
『さあ、年末の有馬記念、いよいよ出走です!』
終ぞ私には縁のなかったファンファーレを聞きながら今度あった時にレースの感想でも言ってやろうと私はテレビに齧りつく。