皇帝の見えない折れた杖   作:冬眠復帰

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感想で主人公ってよく見るなって思ったらそもそも名前も見た目も何も出ていない件について

誤字修正が来るわ来るわで笑ってしまうw、いや笑っちゃいけないやつ
更新頻度落ちるけど時間おいて推敲したほうが良いかも?


乙女の嗜み、そう! バレンタイン! あと日経賞に至るまで

 冬の寒さが一層厳しくなってきて朝練が辛すぎる今日このごろ。朝布団から抜け出すだけでも一世一代の覚悟が必要になってくる。今まではルームメイトに起こしてもらったりだったけどもう自分一人で起きないといけなくなって最近目覚ましを追加で買ったりしていた。

 レースではちょっと先だけど日経賞を目標にすることになった。G2レースということも有って正直除外されそうな気もするけどトレーナー曰く多分行けるだろうとのこと。今の私のレベルの確認も含めて勝てば実力を実感出来るし、負けても今の自分との差を認識出来るので気楽に走ろうってことになっている。しかし2500の距離に関しては結構厳しいと思うんだけど。

 

「今年、遅くても来年にはジャパンカップや有記念を走って貰う予定だからな。今のうちから慣れておいたほうがいい」

 

 なんて言われてしまった。自分でもいうのもあれだけど流石に高望みしすぎじゃない? 口に出してしまえば情けなくなるので絶対言わないけど。日経賞でいい結果が出ればその後は調子が良すぎれば宝塚、想定の範囲内なら予定通りに夏の札幌記念を目標に仕上げていく予定だ。そこまで先の話になるとぼやけるけど、まずは日経賞。私にとって初めてのシニア級での重賞だ。

 

 でも、今はそんなことより

 

「おはー。おら、者共甘味を恵んでやろうじゃないか」

 

 今日は花も恥じらう乙女としては見逃せないバレンタインだ。私としても何もしないなんてことはなく、まずは朝っぱらの教室で友チョコをばらまいていく。私もそうだが皆既製品ばかりだ。クラスメイトなんだしこれぐらいが丁度いい。お世話になってるトレーナー用にちょっといいのも準備したけどそれでも学生のお小遣いレベル。それでも私がいつも食べているものに比べれば高級でミーティングがてら私も食べようと自分の分も準備してある。

 

「ありがとー、これお返しね」

 

「これ、私のやつと比べると安くない? ホワイトデー3倍返しな」

 

 なんてクラスメイトから感謝だったり罵倒だったりをもらいながら皆で交換会を行っている。我がクラスは人数こそ少ないものの仲は良い自信がある。それにほぼ全員がイベント好きだし、こんな機会になれば自然とこうもなる。レースが近くて食事制限をしている子の前で全員並んで美味しそうに食べて涙目で睨まれたり、器用なやつが放り投げて食べたりと相変わらずひどい有様だ。

 

「甘いもの食ってこれからのレース荒らしていくわよー!」

 

 私の掛け声に元気よくオー! なんて返ってくる。そうだ、あんなバカみたいな強さを見せつけられても折れずに、路線は別々であっても未だレースにしがみついているような連中だ。やる気が溢れてるなんて当たり前の話だ。

 ルンルン気分でそれぞれが持ってきたチョコやお菓子の品評会なんてやってたらドタバタと足音が聞こえてきた。今日は皆で交換会をやるから早めに出てきてるのに誰かいなかっただろうかとクラスを見回せば、……ああ、あいつがいないのか珍しい。

 

「お、おはよう! 遅くなってすまないがまだ大丈夫だろうか!?」

 

 想像通りのバカが珍しく走り込んできた。それよりも目を引くのは両手いっぱいに持ったでかい紙袋なんだけど。

 ……くっ! 周りが視線で私が聞けなんて強要してくる……

 

「あー、おはよう。で、聞きたくないけど何をそんなに大荷物持ってんの?」

 

「おはよう! 君が言ってたじゃないか。今日は皆でバレンタインのチョコを交換、友チョコというものをするんだろう? 私も持ってきたんだ!」

 

 自信満々に目をキラキラさせながら掲げるのはどう考えても人数に合わない量が入ってそうな紙袋。正直めんどくさい予感しかしないからこのまま放置でも良い気もするんだけど相変わらず後ろからの圧がすごい。仕方がないから教室の真ん中で机何個かつなげてそこに並べさせたんだけど

 

「あ、あんた……、それ何処で買ってきたのよ?」

 

「ふふん、何を隠そうこれは私の手作りだ! 昨日近くのレンタルキッチンで皆の分を作ってきたんだ!」

 

 尻尾の様子からすっごく興奮してるんでしょうね、並べられたやつを見ても市販のものと比較してもわからないぐらいに凝った包装だ。周りに助けを求めても誰も助け舟を出す気はないようで、あれ? なんか私こいつ担当みたいにされてない? なんで?

 毒を食らわば皿まで、の精神で嫌々一つを開けてみれば私の手のひらよりも大きいシンプルだけど高級そうなチョコが鎮座している。そして私はそれを丁寧に戻して、包装紙も出来る限りもとに戻して

 

「あんたこれ……」

 

「どうだ? 自画自賛だがそれなりの出来だと自負しているんだが」

 

「クラスメイト同士の友チョコでこんなの、重い、怖い、めんどい、きつい、しんどい、きもち……、いや流石にこれはひどいわね、ともかく軽くドン引きだわ」

 

「え……」

 

 あんまりにも楽しそうにしてるから言い過ぎないようにオブラートに包んで指摘したつもりだけどそれでもこいつには致命傷だったようでどんどん耳がしおれていく。

 

「そうか……、クラスの皆と楽しめると思ったんだが……。迷惑だったか……。こんなことをするのは初めてでね、加減がわからなかったんだ。済まない、これは持って帰るよ……」

 

「うっ……」

 

 流石にこれは良心が痛む。いやなんでこいつこんな時ばっかり素直に受けとんのよ。

 

「あーあ、泣かしたー!」

 

「いーけないんだいけないんだ、先生とたづなさんに言ってやろー!」

 

 クソ! 私だけを矢面に立たせておいて自分たちはそっちに回るなんて!

 

「ルドルフありがとねー、一個貰うよ。あ、コンビニのやつで申し訳ないけど私のやつもいる?」

 

「良いのか……?」

 

「当たり前じゃない、友チョコだもん」

 

 そう言いながら一人が机の上から箱を取って代わりに自分の持ってきたチョコを置いていく。置きながら、

 

「足りない分は次のレースで返してあげるから」

 

 チョコ交換のついでに宣戦布告をしていきやがった。こうなるともう流れは止まらない。

 

「シニア級ではボッコボコにするからね」

 

「負けた時のコメント考えておきなさいよ。あ、私を称えるとかおすすめよ」

 

 他にも他にも、気がつけばチョコの交換というより皆で宣戦布告をする会みたいになっている。それも皆明るく笑顔でするもんだから後味の悪さもない。流石は我がクラスメイト達根性が座ってる。

 そうしていく中であいつの機嫌も治ったみたいで終わる頃にはいつもどおりのあいつに戻っていた。こいつ変に落ち込むと引きずって面倒くさそうだし良かったとしましょう。クラスの全員と交換を終えたあいつはなぜか私の元へとやってきた。

 

「良ければ君も貰ってくれないか?」

 

「この流れで断れるわけ無いでしょバカ。まあいいわ、あんたが作ったってだけでチョコには罪はないからね、貰ってあげるわ」

 

 実際さっき見た感じは正統派って感じで美味しそうな感じだ。全部食べるとカロリー的にヤバそうだけど冷蔵しながらちびちび食べれば大丈夫でしょう。

 このサイズかばんに入るかなー、なんて考えていたらあいつが手を出した状態でまだ立っていた。まだなんかあんの?

 

「何この手?」

 

「今日は友チョコの交換会だろうであれば、私にもあるだろう?」

 

「え、ないわよ?」

 

「え?」

 

 何言ってんだこいつは。友チョコだぞ友チョコ。私があんた用なんて準備するわけ無いじゃん。ああ、交換じゃないなら返したほうがいいかな、なんて貰った箱を出しっぱなしにされた手の上に置いてみると、これまたすごい勢いで耳がしおれていく。

 

「そうか、君はそういう奴だったんだな……」

 

「あー、またルドルフのこといじめてる!」

 

「かわいそー」

 

「いいぞ、もっとやれ!」

 

 やっと落ち着き始めたクラスメイト共がまた活気づいてしまう。くそう、なんだか今日はダメな日だ。

 

「あー、もう! ちょっと待ちなさい!」

 

 仕方がないからポケットやらかばんの中を探す。実際私はこいつのことを数に入れていなかったから余っているチョコなんてない。残っているのはトレーナーに渡す用と自分へのご褒美用。これを渡すわけにはいかないとかばんを探っていると板ガムが一枚出てきた。

 

「はい、これでいいでしょ」

 

 渡して見れば素直に受け取りやがった。ああこれでなんとか解決……

 

「ひっどーい、いくらなんでもひどすぎるよ!」

 

 していないようだ。面白がった連中から野次が飛ぶ。あんた達、そんな事言うならその笑い顔を少しは隠そうとしろ!

 

「いや、良いんだ。元々こちらから押し付けたようなものだ。こんなものであったとしてもありがたく頂戴するよ……」

 

 あんたはあんたで泣きそうな顔のままそんな事言うな! しかもこんなものって、本音が漏れてる!

 

「あー! もうめんどくさい!」

 

 ヤケになって自分用のチョコを投げつける。さらば私の三千円……

 

「いい!? 来月には十倍返しよ! 十倍!」

 

「来月も交換してくれるのか、それは楽しみだな!」

 

 ほっっんとこいついい性格してるわ……!

 

「こほん、青春もいいですが、そろそろ現実に戻りましょうか」

 

 咳払いに振り返れば始業時間を過ぎている時計と教材を持った教師がいた。

 

「それでは皆さん今日の放課後、草むしりでもしてもらいましょうか」

 

 鬼! 悪魔! でもまあ、こんだけ騒いでチョコを没収しなかったのは優しさなんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「日経賞にシンボリルドルフが出る」

 

 情けなくトレーナーにちょっと分けてもらった念願のチョコをかじりながらのミーティングも中頃、爆弾は落とされた。

 

「それマジ?」

 

「マジもマジ、大マジだ」

 

 差し出されたタブレットを見ればあいつのSNSのアカウントで次のレース予定だと告知されていた。お互い示し合わせたわけではない全くの偶然だがリベンジの機会が早速来たようだ。

 

「良い点はおそらく回避する所も出るだろうから君が除外されることはほぼないだろう。悪い点はほぼ間違いなく勝てないということだ」

 

「相変わらずはっきり言ってくれるわね。まあ後者に関しては私でもわかるわ」

 

 予定通り順調に進んでもあいつと戦えるレベルまで行けるのは夏頃になる。それが今の時期でなんて考えるまでもない。

 

「一応確認するが、回避する気はあるか?」

 

「一応答えてあげる。あるわけないじゃない」

 

 勝てないと分かっていてもレースに絶対はないのだ。もしかしたらこれがあいつと戦える最後のチャンスかも知れない。いつだって格下は死ぬ気で立ち向かうしかないのだ。

 それから、急ごしらえにはなるけど当日までのトレーニングの修正を詰めながら時間を過ごしていく。結構な時間が流れていて少し休憩となり適当にネットサーフィンをしていると目につく見出しがあった。

 

「なになに、“シンボリルドルフ格下狩りか!? 皇帝がG2を走る意味とは!?” えらく喧嘩を売ったタイトルね」

 

 走る意味も何も春天へのステップアップだろう。あいつが除外されるなんてことはないだろうけど、それでも仕上がりの確認やレース勘など走る意味なんていくらでもある。そもそもがあいつだからってG1しか走ってちゃいけないわけがない。

 

「けど、世の中はそうじゃないみたいだよ」

 

 トレーナーに言われて見てみれば多くはないが一定数この記事を支持する奴らがいるそうだ。皇帝がG2なんて走る必要はない、勝負服のレースだけを走ればいい、弱い者いじめをするなんて信じられないなどなど。

 

「落ち着け、落ち着くんだ」

 

 トレーナーに言われて飲んでいた缶コーヒーがひしゃげているのに気づく。どうやらまた頭に血が登っていたらしい。

 

「君の気持ちもわかる。俺だってこんな記事破り捨てたくなる。だけどこんな奴らのせいで君が不利益を被る必要などない、いいね?」

 

 すでに結構な期間二人三脚でやってきたんだ。私の怒りっぽさと手が出る速さを知っているからか、たしなめるように言われる。そうだ、あいつなんかのために私が厄介事を背負い込む必要はないんだ。

 

 そう思っていたんだけど世間は許してくれないし、私が思ってる以上に私は喧嘩っ早いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 ミーティングの後はトレーニング無しで解散の予定だったので日が落ちる前にさっさと帰ろうと正門をくぐると人だかりが出来ていた。なんかあったのかなって横目に見ながら通り過ぎようとしていたらその中の一人が

 

「あ! 皐月賞でやらかしたやつだ、あっち行くぞ!」

 

 と、私のやらかしを知っていたようであっという間に囲まれてしまう。けど今更あんな昔のことで取材なんてくる? とか思っていたら不躾にマイクを向けられながらこんなことを聞かれた。

 

「皇帝シンボリルドルフがG2レースに出ることをどう思う? やっぱり嫌だよね?」

 

「弱い者いじめをするシンボリルドルフに対してなにか一言!」

 

 ……どうやらこのクソ共はあの記事を書いた奴らの仲間らしい。そうでないかもしれないけど聞いてる内容なんて同じようなもんだ。私が唖然としている間にも聞きたくもない質問は続く。

 最弱の世代なんて呼ばれてることについてだの、クラシックではあいつに勝てなかったのは実力以外にもなにか有ったんじゃないかだの。

 

「すー、はー」

 

 深呼吸を一つ。さっきトレーナーに言われた所じゃない。そう、冷静な私がこんなことで問題を起こすわけないじゃない。

 心を落ち着けた私は、取り敢えず一番近くに居て一番イヤな顔をしている奴らのマイクとカメラをすっ、っと奪い去る。

 

「えっ?」

 

 クソどもが間抜けな顔するがそんなこと気にもせず地面に叩きつける。

 

「ふざけてんじゃんないわよ!! どんな脳みそしたらそんなことが聞けるの? クソでも詰まってんじゃないの!

 あいつだって一人のウマ娘よ! あいつがどんなレースに出ようが他人が口出しするようなもんじゃない! それにあいつが勝ったのはあいつが強いからだ! 私達を無礼(なめ)るな!」

 

 叫びながら思っきり中指立ててやった。そのままこれ以上なにかほざくようなら蹴り飛ばすとジェスチャーで威嚇する。切れたウマ娘に失礼を働くほどの度胸もないようで一目散に逃げていく。

 

「二度と来んじゃないわよ!」

 

 叫びながらもう一つおまけで中指を立てておく。スッキリしたし、周りにいた子たちも困っていたようで何処にも言わないと言ってくれて。これで解決……のハズだったんだけどどうやらあの中に生放送のワイドショーのカメラもいたようで私の勇姿は止める間もなくお茶の間に流されてしまっていたらしい。その結果

 

 

 

「理事長から呼び出しだ……。お互い覚悟を決めよう……」

 

 トレーナー共々お呼び出しを食らってしまった。

 




後でアンケート入れるでお願いします。結果で内容を変えたりはしないので純粋にどう思われているかを見たいやつです

主人公はルドルフに

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