┏┗ 三
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前回のアンケートと感想で色々あって参考になりました。主人公が勝てるかどうかは私にもわかりません
「理事長、ルドルフさん、来たみたいです」
たづなさんに言われて思考に沈んでいた意識を呼び起こす。私は今部屋の主である理事長、たづなさん、付添という形で同席してくれたトレーナー君と合わせて四人で彼女を待っている。
事の起こりは彼女の暴挙がテレビに流されたことだ。もちろん私個人としては彼女の怒りは正しいものだと思っている。だがその発露の仕方が良くなかった。学園内ではおおよそは彼女を擁護する意見にまとまっている。しかし、自称識者たちが歴史あるトレセン学園の一員として品性が足りないのではないか、あのような下卑な行いをするものがレースに出るべきではないのではないか。なんて賢しらに口にしている。そんなもの言うべき相手が違うとしか言いようがない。しかしその意見に同調するものがURAの中にも存在し、それらが発言力を持っているのだから情けなくなる。やつらは私達ウマ娘のことなど商売道具のようにしか見ておらず、商品のブランドに傷がつくことだけを恐れている。そのような下衆など早急に叩き出したいが、皮肉なことにその下衆さ故の金銭的な恩恵をURAもそして私達も受けているという面もあり、簡単に動くことが出来ない。
ともかく、トレセン学園としてもURAより調査、処罰を行うように言われた以上表立って無視することも出来ず、まずは彼女との面談を行うことになった。本来私は出席できる立場では無かったが、肩書も影響力も使い、理事長に頼み込んでこの場に座っている。私の出席が決まった時トレーナー君は考えるまもなく同席すると言ってくれた。彼も私と同じ視座を持ってくれる、いつだってウマ娘ファーストでいてくれるありがたい存在だ。
「失礼します」
ノックの音と共に彼女とそのトレーナーが入室してきた。二人共今後の処遇を思ってか難しい顔をしている。彼女に至っては私と話す時よりも眉間のシワが深くなっている。
「安堵! よくぞ来てくれた! 安心して欲しいがこの場には私達しかいないし、URAに提出するのもこちらで作成した報告書のみだ。まずは肩の力を抜いて欲しい」
理事長が不安を取り除く様に話し始める。理事長には今日までも様々な面で矢面に立って頂きなんとかいい方向に話が進むように尽力してもらっている。本当にこの人が理事長でいてくれて助けてもらうことばかりだ。
「えー、では面談を始めます。まずは事実関係の確認から行います」
たづなさんが進行役となり面談が始まった。まずはことのあらましから確認していく。
評判の悪い雑誌の記者たちが学園の生徒達に無理やり取材を行い、そこを通りかかった彼女にも同様に行おうとする。その際発言内容に激怒した彼女が記者たちの機器を一部破壊、その後恫喝と、まあ、なんだ……、あまりよろしくないジェスチャーを行った。その姿が生放送で全国に流れてしまい批判が集まり処罰が検討されている。
そもそも本当に批判は殺到しているのか? 私が目にした限りでは彼女を擁護する意見が多かったはずだ。確かに褒められた行動ではなかったがそれでもそもそもの原因は記者たちが私達を侮辱するような発言をしたことであり、それに対して彼女は正当に反論しただけだ。挑発行為も含めてそこまでいっても仕方ないというのが私が見た意見だ。
「何も間違いありません。訂正も反論もありませんので言い渡された処分を厳粛に受け止めさせて頂きます」
私の知る彼女ではない彼女がいた。落ち着いたのか眉間のシワは無くなっているがそれ以上になんというか静かで何処か怖さがある。レースの時とも教室での時とも違う初めてみる彼女がそこに座っていた。
「疑問! 君はシンボリルドルフとこの学園全てのために正しい意見を言ってくれた! それであるのにも関わらずなんの反論も無くおそらく君に取って不条理な処罰であっても受け入れると?」
「前半は違いますが、処罰に関してはおっしゃるとおりです。実際私の軽率な行動で理事長を初め学園の各所のご迷惑をおかけしました。必要であれば個別で謝罪も行いたいと思います」
「君はそれほどのまでの覚悟で……。ちなみに前半が違うというのはどういう意味だ?」
「私はそこに座っている生徒会長のことを擁護したつもりはありません。あくまで私に対しての批判に対応しただけです」
彼女と彼女のトレーナー以外が驚きを持って彼女を見つめる。確かにこの意見だけを聞けば
「理事長も言っていたがここには君の味方しかいない。ルドルフをかばってくれなくても大丈夫だ」
トレーナー君が言うように私に責任が行かないように、自分を犠牲にしようとしているのだろう。だが私の知っている彼女はそんな性格か?
「処罰と言ってもURAからも今回は情状酌量すべき面もあると、と学園として謝罪会見を行い正式に謝罪すれば不問にすると言っています」
「会見でしたら問題ありません。自分の言葉で話させて頂きます」
「なにも君を一人悪者にする気などない。我々が説明もすべて行うから辛いだろうが座っていてくれるだけでいい」
「いえ、そこまでご迷惑をかけるわけにはいきません。会見を行うのであれば私が話します」
……ああ、やはり彼女は彼女で間違いないようだな。彼女の考えていることに至った私は場にふさわしくない事は重々承知しているがおもむろに足を組む。そしていつか彼女に言われたように不遜な顔で言い放つ。
「腹を割って話そうじゃないか。君はそんな殊勝な性格もしていなければ、私のことなんて何も考えていないのだろう?」
かばわれた本人である私からのあんまりな発言に大人たちは唖然として私に顔を向ける。確かにあまりイメージされる私がしないような発言だな。
だけど反対に苦虫を噛み潰したような顔をしているということは彼女は図星をつかれたということだろう。そうだろう? 君はそうじゃないだろ。
「え、えーと。説明していただけますか?」
場を代表してかたづなさんから説明を求められる。理事長もトレーナー君も分かっていないようで無言で促してくる。逆に彼女のトレーナーは口元から笑みが溢れている。やはり私の考えで合っているのだろう。
「わかりました。まず彼女はここまで一切向こうに謝罪をすると言っていません。あくまで迷惑をかけた学園関係者への謝罪だけを口にしています」
「だが、謝罪会見で自分の言葉で話すと言っているが?」
「彼女、一度も謝罪会見とは言ってないんですよ。話の流れがおかしくないので気づきにくいですが会見に出るとしか言っていない。大凡その場で二回目の噴火をするつもりでしょう」
大人たちは驚きを、彼女のトレーナーはついには声に出して笑い始め当の本人は済ました表情を崩し、私がいつも見る表情になる。そう、君はそうでなければ。
「驚愕! そこまでを考えていたのか! だが、ここでは本音で話して欲しい。私達が聞きたいのは君の本当の考えであり、それがどのようなものであっても君の味方であると約束しよう!」
理事長からの後押しもあり、嫌そうにため息を一つつき、彼女も私と同じ様に足を組み話しだした。
「そこまで言われたらもう諦めますけど後でなんか言わないでくださいよ? 私は今でもあいつらに謝ることはちり一つないと思ってます。別にそこのバカが何言われようがどうでもいいけどあいつらはレースを汚した。私達の誇りを踏みにじった。そんな奴らのために下げる頭は持ってないし、あるとしたら殴りぬく拳だけ」
あいも変わらず暴力的だ。何度も殴られた私が言うのだから間違いない。
「バカの言う通り会見なんて絶好の場を準備してくれるなら今度は両手で中指立ててあげますよ」
「トレーナーさんの意見はどうですか? もし彼女が言うようなことをすれば貴方にも批判が飛ぶことになります」
「そもそも、子供をそんな場に出すつもりはありません。もし謝罪会見を行うのであれば私が出ます」
「ではトレーナーさんが代わりに謝罪すると?」
そこまで聞いて彼女のトレーナーはニタリと笑う。
「いえいえ、こいつが謝る気がないのに勝手にそんなこと出来るわけないじゃないですか。代わりに中指立てに行くだけですよ」
……似た者同士と言うかなんというか。しかし私のトレーナー君と同じく担当のことを一番に考えているのだろう。ああ、そう言えば二人はもう何人かの同期と合わせて花の15期生なんて呼ばれていたらしいな。そんな彼の話している内容は大人として間違っているものであるはずなのに、佇まいは何処までも立派なものだ。
「学生である彼女はともかく、大人である貴方がそんなことが出来るとでも?」
「そのために準備もしてきました」
そう言ってスーツの中から白封筒を机に差し出す。そこには綺麗な字で辞表と書いてある。そこにいる誰もが、担当であるはずの彼女ですら驚いた顔をしている。
「ちょっと、何考えてんのよ!」
「君が根性見せたんだ、俺も根性出さなきゃ嘘だろ。安心しろ、一応君が走り終わってから辞める予定だし、最悪そこのやつに頼むさ。あいつなら安心して任せられるからな」
「そういうことじゃない!」
いつの間にか二人で口喧嘩が始まる。口喧嘩と言っても一方的に彼女がまくし立てていて、トレーナーは軽く受け流している。
「ゴホン! 二人の意見はよく分かった! 最終確認を行う。初めて聞くだろうが君が公の場で謝罪をしなければ一ヶ月出走停止、謝罪するのであれば不問にするというのがURAからの通達だ。意見を変える気はないか?」
理事長が見た目に似合わぬ、しかしその肩書にふさわしい毅然とした態度で問いかける。
「ええ、目の前に人参ぶら下げられた程度で曲がるほどいい性格をしていないので」
「学園の内外から君への処分をしないように多くの嘆願が来ている。そうであっても意見は変わらないか」
「それに関しては心苦しいですが、
己が血で
どこぞのお家みたいな名家でないけれど歴史だけはあるのが我が家でして、戦国時代から続くこの家訓を裏切ることはしないと決めているので。吐いた唾を呑むほど恥知らずに生きられません」
なるほど、癖ウマ娘の根源は歴史にありか。
「納得! 君たちの意見はあいわかった! 初めにも言ったが私達は何が有っても君たちの味方である。この後は任せてもらおう!」
今日はじめて扇子を開き上機嫌でそう判決を下した。きっとこれから先理事長は辛い交渉が待っているのだろう。しかしそんな素振りを一切見せずに断言できるその心意気は私も憧れるものだ。
それから二人は改めて私達に謝罪し部屋を後にする。後でトレーナー経由で聞いた話だが、出走予定だった日経賞に出られないことが確定した瞬間だったらしい。にもかかわらず二人共なんの気負いも無く堂々と退出していった。
「一応は不祥事の呼び出しだったはずなのに、胸を張って出ていきましたね……」
たづなさんが苦笑いするのも仕方ない。あまりにも話の内容に相応しくなく、同時に彼女たちらしい振る舞いだった。
「あいつは何をどう考えてるかわからないけど、なぜか担当が勝つから天才なんて呼ばれてた時期もあるぐらいだ。まともに考えるだけ無駄ですよ」
トレーナー君の言葉に皆して笑ってしまい、和やかな空気になる。しかし
「理事長、たづなさん。先程は彼女の本音を聞くためとは言えあのような失礼な振る舞い、申し訳ありませんでした」
起立して、腰を90度に。いくら目的のためであったとは言え、決して許されないことをしたのだ。誠心誠意謝らなければいけない。
「不問! むしろあのおかげで彼女の本音を聞くことが出来た。こちらとしても感謝しかない!」
本当に頭が上がらない。私も理事長のようになれるよう精進しなければ。
「さて、本題が落ち着いたところで嫌な話でもしましょうか」
トレーナー君の一言で場の空気が一気に下がったような錯覚を起こす。
「それは……、あの、シンボリルドルフさんも同席するのでしょうか……」
「ええ、私が問題になっている以上同席をお願いします」
そうだ、彼女が何も悪くないのにこんな仕打ちを受けているのだ。私だけ耳を塞ぐわけにはいかない。
「うむ、ではたづな、頼む」
「承知しました。今回の原因になった記事ですが、それ自体は読む価値もないものですが、同調する意見が多くないとは言え存在するのが現実です。URAの一部でも、条件を設けてG2以下のレースへの出走制限をかけようかという意見も出ています」
「いやー、うちのルドルフが強すぎてすみませんね」
場を和ませようと冗談を言うが、目が全く笑っていないぞ? トレーナー君。
「私個人としてもトレセン学園の理事長としてもいかなるウマ娘であっても個人を理由に制限をつけるなどあってはならないと考える。無論ここにいる全員が同じ意見だと認識している」
理事長の言葉に全員がうなずく。当然だ。いまのファン数によるグレード制はともかく、それ以外の制限などよほどのことでない限り許されるはずもない。もしここで私が前例を作ってしまえば今後どのような悪夢が起こるか考えたくもない。
「しかし、事実としてそのような風潮が一部であることが問題だ。無論私の方で絶対にそんなことはさせないが、どのように話を進めるかが問題だ」
確かに、少しとは言え私のG2出走への不満がある者がいるのも事実。中途半端に抑え込んでしまえばいつかまた、今度は取り返しのつかない規模で爆発する危険性もある。理事長もそれを懸念しているのだろう。一度生まれた芽というものは中々完全に取り除くことは出来ないのだから。
私以外の三人は考え込んで口を閉ざしてしまうが、私とすれば簡単な解決方法がある。
「少しいいでしょうか、私に一つ解決案があるのですが」
許可を貰い話し始める。
「私の全てに正当性を持たせればいいと考えます。誰も文句をつけられないような結果を出せばG2出走も必要なことであったと。多少の不満が残るかもしれませんがその時は私が前に出ればいい。簡単で労力もかからない良い作戦だと思いますが?」
どうやら私の案は大人たちの予想外のものであったようだ。
「どんな思考回路をすればそんな答えが出るんだ?」
むう、トレーナー君にも分かってもらえなかったか、いやちゃんと話せば分かってくれるだろう。
「前に彼女に言われたんですよ。私は世代の顔として偉そうにふんぞり返っていなければいけないと。私がそうなることで他のウマ娘達への悪意を取り除けるのならそうなりましょう」
「あーあ、悪い影響受けちゃって。で、その誰も文句をつけられないような結果って何か考えているの?」
「シンザンの五冠を超える……では足りないかもしれない。八大競走で私が走れるものをすべて取り、取れるG1を全て取ってしまう、なんてどうだろうか」
私としては真面目に話したつもりだが、理事長とたづなさんは唖然として何も話さないし、トレーナー君は笑うだけだ。むう、もっとこうコミュニケーションスキルを磨くためになにか考えないといけないな。
「……いいよ、やろうルドルフ。君なら、君と俺ならやり遂げられるさ。気楽に行こう」
「ああ、共に成し遂げてみせよう」
ここに私の夢のために、明確な道筋ができた瞬間だった。
結局あのまま私は何もしなかったけど特に連絡もなく、結局一ヶ月の出走停止となった。正直絶対に出ないといけないレースでも無かったので、間隔あいちゃうなーぐらいにしか思っていない。またトレーニング計画を組み直さないといけなくなったトレーナーは数日の間地獄だったみたいだけど。
「あー、あのバカ結局日経賞勝ってんじゃん。面白くないわね」
トレーナー室に呼ばれたから来たのに留守でいないからソファーに寝転がりながらネットサーフィンだ。面白くもない記事も出てきたし辞め時かもね。
「すまん、遅れた」
「別にいいわよ、で連絡って?」
小走りで来たんだろう、軽く息を切らせながらトレーナーが戻ってきた。で事前に連絡があるって聞いてたから促してみても難しい顔をして中々言い出さない。
「なに? 追加のお仕置きでも決まった? 別に今更気にしないわよ」
「いや、悪い話ではないんだ……少なくとも俺にとっては」
一度言葉を切って深呼吸一つ、爆弾を落としてくる。
「今度のファン感謝祭で君とシンボリルドルフのトークショーが決まった」
「え、嫌だけど」
「諦めろ、お願いじゃなくて決定事項らしい」
……殴る、次あったらあのバカ絶対殴る!
主人公の家訓は好きな漫画からの引用です。
分かった貴方とは友達になれそう
主人公はルドルフに
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勝てる
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勝てない
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どちらでもいい「