皇帝の見えない折れた杖   作:冬眠復帰

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真面目っぽい話ばかっかり書いてたのでしょーもない話でバランスを取る

破も終わったのでイケメンタイムも終了です


シン.・皇帝の見えない折れた杖が許されるなら何個エンディングがあってもいいし、THE END OF UMAMUSUME があってもいいってことやな(


初夏のひととき

「相変わらずシチーの勝負服露出すごいわね。上着脱いだらこれやばいでしょ」

 

 宝塚記念のもろもろも終わり、休養期間ということで最近はまったり進行だ。今日もミーティングなんて題目だけど結局はトレーナー室で雑誌なんかを読みながらの雑談になっている。最近暑くなってきたからね、冷房の温度を自由に決めれるトレーナー室は憩いの場だ。

 

「確かに、君の勝負服ほとんど肌が見えないもんな。しかし、あの柄はなんなんだ? 大判小判の柄なんてちょっと見ないぞ」

 

「良いでしょ別に。私の名前から取ってんだから。それに突っ込むなら着物にズボンなんて組み合わせの方でしょ」

 

「金色の上に下半身が黒なんて、かっこよくて俺は好きだけどなあ」

 

「担当をそんな目で見るなんて……」

 

 くだらない話をしながら笑い合う。たまにはこんな平和な日もいいわよね。そんなことを考えているけどちょっとは真面目な話もしないといけない。

 

「予定なら札幌記念だけどどうする?」

 

「走れってんなら預かってる辞表を然るべき所に持っていくだけね」

 

「そうだよなあ、宝塚記念なんて想定外だったし。そのおかげでいい結果を残すことが出来たけど。でだ。代わりと言ってはなんだが函館記念どうだ?」

 

「なんでそんな北海道にこだわんのよ」

 

「そりゃ、北海道は美味いもんが多いから……冗談だ。帰ろうとしないでくれ」

 

 仕方なく浮かした腰を下ろし直す。ったく、暇じゃないのよ。

 

「出来れば今の段階で洋芝にどれぐらい対応出来るかを見ておきたい」

 

「なに? あのバカにあてられたの?」

 

 冗談だと思ったけど、返ってきたのはマジな視線だ。これ前にも見たことがある。ジャパンカップや有マを走れって言ってきた時のやつだ。

 

「……俺は充分に行けると思ってる」

 

「ここで何言っても無駄なんでしょうね。はいはい、まずは函館で走ってからね」

 

 これでも一応は日本のウマ娘だ。海外挑戦に興味がないわけではない。それからトレーニング計画やらなにやらを話していれば結構な時間になってそろそろお開きかと思えば。

 

「そうそう、シンボリルドルフがそろそろ退院だそうだ。まだお見舞い行ってないだろ? 明日は休みにしておくから行って来い」

 

「は? なんで?」

 

 流石にトレーナーとはいえプライベートに干渉されるいわれはない。しかもあいつのお見舞いだなんて。

 

「あそこまで迷惑かけたんだ。筋は通してこい。関係者で会ってないのは彼女だけだろ」

 

「くっ、大人はそうやってすぐ正論でいじめてくる……!」

 

「そう言うってことは君も正論だと思ってるんだろ。諦めろ」

 

 はいはい、諦めるわよ。これ以上話すこともないと帰るために立ち上がるけど、あれ?

 

「どうした?」

 

「いや、なんか足に違和感があって。ま、気のせいでしょ」

 

「見舞いついでに診察してもらうか」

 

「大丈夫よ、前にも同じようなことあったし。成長痛でしょ。じゃあね」

 

 それだけ行ってトレーナー室を後にする。これぐらいの違和感はよくあることだしいちいち病院なんてやってられないわよ。

 

 

 

 

 

 

 退院を明日に控えて、私の使用している個室は随分と静かになった。長くいるわけでもないのに皆いろいろなものを持ってきてくれた。生徒会の皆だけでなく、マルゼンやシービー、その他にもクラス一同からなんて贈り物を貰うこともあった。こんなことになって言うことではないだろうが、私は随分と恵まれているようだ。自分で言うのも気恥ずかしいがジュニア期やクラシックの初めとはまるで違う。あの頃ならここまで見舞いに来てくれる者も居なかっただろう。だが、そんな日々も今日までだ。明日からまた今まで通り、いや遅れを取り戻すために一層努力しないとな。

 落ちていく夕日を見ながら決意を新たにしていると、備え付けの電話がなる。なんだろうか、もう検査の予定もないはずだが。なにか変更でもあったのかな。取ってみれば受付からの電話だった。

 

『シンボリルドルフさん、すみません。今受付にお見舞いに来た方がいるんですが、ウマ娘の方なんですけど……』

 

 色々トラブルもあったのでお見舞いに関しては関係者以外は学園の生徒だけに限定している。個人の確認のため名前を聞き、問題なければ通されるという流れだ。私のせいで手間を増やしてしまい申し訳ないが、招かれざる客も考えられるということだ。ここが学園と提携している病院で助かっている。

 しかし、こんな連絡が来るというのは初めてだ。何かあったのかと尋ねれば

 

『トレセン学園の制服は着ているんですがお名前を貰えなくて、なんでも記録が残るのが嫌だそうで……』

 

 何だそれは。いかにも怪しいものですと言っているようなものじゃないか。今までも不審があれば受付で門前払いになっていたはずだ。しかしなぜ今回に限ってだ?

 

『本人はそれなら帰ると言っているのですが、その、個人的な意見で申し訳ないんですが、シンボリルドルフさんのご親友の方だと思うのですが。どうしましょうか?』

 

 ああ、なるほど。念の為にと外見を聞けば予想通りの人物で通してもらうようにお願いと、迷惑をかけたことを謝罪する。それから少し待っていると、小さくドアがノックされる。どうぞと答えればいつもどおり嫌そうな顔をして入ってくる。

 

「ちゃんとノックして入ってくるぐらいなら受付で駄々をこねないで欲しいな」

 

「名前を言わないと通せないって言われたから帰れると思ったのに。後ドアはノックして手で開けるもんよ。どこぞの蹴破ってばっかりのバカにはわからないでしょうけどね」

 

「そんな不届き者が学園にいるとは初耳だ。それよりも君が来てくれて嬉しいよ」

 

「都合の良い耳してんのね。トレーナーに言われたから仕方なくよ、仕方なく」

 

 そう言いながらも椅子を取り出す姿をみて嬉しくなる。きっかけは言われたからであっても、君はすぐに帰るという選択をしなかったのだから。

 

「はいこれ、お見舞いの品よ。入院で暇でしょうから時間潰せるものもってきてあげたわよ。感謝しなさい」

 

「私は明日退院なんだが?」

 

「ええ、知ってるわよ」

 

 相変わらずいい性格をしている。ふむ、残念ながら私と彼女では読み物の趣味は合わないようだな。

 

「ああ、そう言えば生徒会の皆も見舞いに来てくれてね。君も品物にアドバイスをしてくれたそうじゃないか。嬉しかったよ」

 

「はあ? あんた、いい趣味してるわね」

 

「お前のいるところはそこじゃない。早くレースに戻ってこい。君らしい優しいメッセージだったよ」

 

 さてはて目の前で吐くようなジャスチャーをしている彼女の真意はどうなんだろうね。

 それから珍しく話に乗ってくれた彼女と他愛もない話が続いていく。こんなに話したのはいつ以来だろうか、もしかしたら初めてかもしれない。

 

「そういえばあんた、メガネしてんのね。伊達?」

 

「プライベートではもっぱらこんな感じさ。似合うかい?」

 

「あんた童顔だから丁度いいんじゃない? 少しはマシに見えるかもね」

 

 童顔なんて言われたのは初めてだな。確かに、いつもは少し肩に力が入りすぎていたのかもしれない。対して彼女は切れ長の吊り目だ。いつの間にか見上げないといけないほど伸びた身長もあって年上に見えることもある。実際は中身はやんちゃばかりで私がしっかりと面倒を見てやらないといけないがな。

 

「あんた、またバカみたいなこと考えてるでしょ」

 

「なに、学園を離れてこうして話すのも初めてだなと思ってね。そうだ、記念に連絡先の交換なんてどうだい?」

 

「悪いわね。今日携帯忘れたの」

 

「……さっきから君がずっと触っているそれはなんだい?」

 

「見てわからない? 携帯に決まってるじゃない。そんなにもうろくしたの?」

 

 どうやら彼女の連絡先を教えてもらえるのは当分先になるようだ。

 それからも色々な話をして気がつけばもう帰らないといけない時間になっていた。

 

「長く引き止めてしまったな。すまない」

 

「ほんとよ。この借りはでかいわよ」

 

「なに、勝手に人の首を賭けた貸しに比べたら微々たるものだろう」

 

 それからため息をつきながら椅子を直して帰り支度をする。気のせいか私の前でため息多くないか?

 

「無駄な時間すごしちゃった。じゃあね、またあんたの顔を見ないといけないなんて憂鬱だわ」

 

「ああ、また会おう」

 

 返事はなく、後ろ手に手を振りながら彼女は出ていった。いつもどおり、私も彼女も色々あったというのにいつもどおりのやり取りだった。そして少しそれに安心を感じる自分がいた。しかし、

 

「少し歩き方が変ではなかったか?」

 

 多分、座る時間が長かったせいだろう。もしまた見かけたら直接聞けばいい。それよりまた始まる学園での生活に思いをはせながら今日は早く眠るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 やりたくもないことも終わってやっと寮に帰ってきたと思ったら談話室にタマがいたから声をかけてみたら、

 

「やっと帰ってきよったな! 待ちくたびれたで!」

 

 言うだけ言ってどっかに走って行ってしまった。意味分かんないけどあれも大概変な子だし、考えるだけ無駄か。取り敢えず部屋に帰って疲れた体をベッドに放り投げる。なんか精神的な疲れの方がひどい気がする。で、ノックなんてされて、こんな時間になんだろうと思ってドアを開ければタマ、シチー、シリウスなんていつものメンツだけど三人揃っては珍しい、そんな後輩たちが立っていた。それはまあいいとしても。

 

「あんたらそれ、何持ってんの」

 

「鍋ね」

 

「食材以外に見えるのか?」

 

「ちゃんと食器もバッチシや!」

 

 頭痛くなってドア閉めようとしたけどシリウスに足を挟まれてしまった。勢いよく締めてないとはいえ、もう少し大事に扱いなさいよ。そのままなだれ込まれてあっという間に鍋のセットが準備されてしまった。

 

「何考えてんの?」

 

「三人で話しててな、夏場にクーラーガンガンにして食べる鍋もええな、て話になってん」

 

「で、ここなら鍋し放題じゃないですか。」

 

「……なんでよりにもよってキムチ鍋なの? 匂いつくとか考えなかった?」

 

「どうせなら一番汗をかける鍋にしようって話になってな。それにここは私達の部屋じゃないから、匂いも気にならないしな」

 

 取り敢えず三人ともに強めに拳骨を落としておく。てか、いつの間に仲良くなったのよ。ダービーの時は険悪だったじゃない。なんて聞けば無言で私の方を指さされてしまった。意味がわからない。

 もうどうでも良くなって、こうなったら精々美味しく食べさせてもらおうじゃない。

 

「はあ、もう勝手にしなさい。ああ狭いからそっちの空いてるベッドに座っていいわよ」

 

「前は絶対に座らせてくれなかったのに。何かあったんですか?」

 

「踏ん切りがついた。それだけよ」

 

 始める前に制服とか匂いがつくと困るものをタンスやクローゼットにしまい込む。気休めだけど、どうにかなると信じたい

 それから悔しいなりに食べ進めれば熱くもなってくる。部屋の中だし、いるのコイツラだけだし上一枚脱いじゃいましょう。クーラーかけて汗かきながら鍋食べて、薄着になって。なんて意味わからないことになった。なんて考えていたら三人が箸も止めてこっちを見てくる。

 

「何見てんのよ変態ども」

 

「いや、流石にうちらしかおらんとは言えそのカッコはどないなん?」

 

「先輩、やっぱスタイル良いですよね。こんど一緒にモデルやりません?」

 

「何言ってんのよ。ジロジロ見るなら見物料取るわよ。で、シリウスは何をニヤニヤしてんの、完全に不審者よ」

 

「なに、スタイルでは私の勝ちだと思ってな。その小ささなら走るのにも向いてそうだな」

 

「そんな事言われてもいちいち突っかかるほどガキじゃないわよ。後、それ気にする子もいるからあんまり言わないようにしなさいよ。ね、タマ?」

 

「なんの当てこすりや! でかいやつばっかりで! うちに喧嘩売っとのか!」

 

 タマをあやしながら、シリウスの鼻を思っきりつねっておく。いつもスカした態度取ってるやつが慌てるのはちょっとおもしろいわね。そんな風に騒ぎながら食べ続けていた。それから暑いものは暑いみたいで他の子も涼しい格好になりながら食べ続ける。そこまでして食べたいか? 

 タマのインナーが子供っぽいと思ったけど言うとややこしいことになりそうだから黙ってたのにまたシリウスがやりやがった。誰がなだめると思ってんのよ。まあ、私もシリウスもシチーも大人びたもの選んでるから仕方ないかもね。

 それからしばらくしてまたノックが飛んでくる。ああ、このパターンはあれだ。面倒くさいやつだ。取り敢えずドアは開けずに誰かを尋ねれば。

 

「私、フジキセキだよ。ポニーちゃんたちからこの部屋から異臭と騒ぎ声がするって連絡を受けてね。確認したいから開けて貰えるかい?」

 

「嫌よ。後先輩に対する言葉遣い覚えなさい」

 

「ハハハッ、悪いね。つい癖でね。開けてくれないなら仕方ない」

 

 珍しく素直に帰ったかと思えば、ガチャリと音がしてドアが開かれた。

 

「悪いね、こうなるだろうと思ってマスターキーを持ってきたんだ。ところですごい格好してるんだね」

 

 ああ、開ける気がなかったから上着も着ずに来てたわね。

 

「なに、夜這いならお断りよ。そうね、せめて五枚目にでもなってから出直してきなさい」

 

「ふふ、その時はお手柔らかにお願いするよ。先輩はお相手をお願いしたいぐらいだけど、キムチの匂いと後ろに汗だらけのウマ娘が三人もいるとね」

 

「ならさっさと帰りさない。ああ、混ざりたいなら消臭剤と人数分のアイスで良いわよ」

 

「私がそんなことすると思うかい? これでも規則を遵守する寮長なんでね」

 

「安心なさい。生徒会公認よ」

 

「流石にそれは厳しいんじゃないかな? 先輩自分で幽霊って言ってたじゃないか」

 

「残念、ここで鍋をOKにしたの生徒会長よ」

 

「ええ!? ……そう言えば年末に鍋を持った会長がこの部屋に入っていたなんて噂を聞いたことがあるけど、本当だったのか……?」

 

 これはもうひと押しでいけるかな?

 

「フジ、いいでしょたまには。あんたも羽目を外したってバチは当たらないわよ」

 

「いや、しかし……」

 

「あの子達が持ってきた食材も良いものばかりでね。どう? まずは一口」

 

 後ろから早くしないとなくなるでー、なんて援護射撃も飛んできて決心が揺らいでいるようだ。このままいけば寮長公認てことでお説教も反省文もいらないだろう。

 

「いや……でも……」

 

「仕方ないわね、手ぶらでも入れてあげる特別よ?」

 

 迷ってるけど、もういけそうね。

 

 

「何をしている! このたわけどもが!!」

 

 あー、エアグルーヴもこっちの寮だったわね。

 

「フジも先輩も何をしている! 中の三人もなんて格好をしてるんだ!」

 

「ふーん、私にそんな口を聞くなんてえらくなったわね」

 

「誤魔化そうとしないでください。先輩も会長もビシッと言わないと面倒事ばかり起こすと学習しましたので」

 

 それから寮長一人を含めたウマ娘五人で廊下に正座させられてお説教されてしまった。あいつが許可したと言っても戯言と言われてしまった。そもそも勝手に寮の自室て料理の許可を出すなんて通るはずもない、会長も帰ってきたら話をさせてもらいます。だそうだ。たくましくなって。

 やっとお説教が終わったと思ったら後日また草むしりだそうで、ったく鍋まで禁止されて割にあわないじゃない。……違う! そもそも部屋で鍋なんてさせる気はない!

 

 

 




なんで急に外見の描写し始めたかって? 今まで書いてなかったなと思って



嘘です。読んでる小説が支援絵貰ってて、羨ましくて欲しくなったからです(

歌詞引用などは

  • あり
  • なし
  • どちらでも
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