どうしてあの投稿間隔で4月まで持つと思ったのか。これがわからない。
何故かプロローグが出来ていたので新しいウマ娘の小説書き始めました。こっちとは色々違うけどよければどうぞ
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皇帝に杖なんてなかった
「ねえルドルフ、私達もお酒を飲める年齢になったし、残ってる同級生も私達二人だけになったわね」
「どうしたんだ急に」
忙しい春も終わり、当面は大きなイベントもなく、生徒会としても二人で仕事が終わるような緩やかな季節。珍しく生徒会室に顔をだしていた彼女がいきなりそんなことを言い出した。
「あの子達からね。久しぶりに集まらないかって連絡きてんの。同窓会ってやつね」
ほう、それはいいな。時の流れは残酷で学園から皆飛び立っていった。しかし、それでも私達の関係が終わったわけではない。もっと深いところで繋がっているんだ。それが私だけの考えでないと証明されて感無量だ。しかし、どうしていつも私に直接連絡が来ないんだ?
「もう忘れたの? この前クリパやった時あんた誘ったら聞いてもないやりたいことだの食べたいものだのひたすら話し出してメッセージ全部流れちゃったじゃない。皆うんざりなのよ」
な、そうなのか!? 確かに当日は白い目で見られたりもしたがそんなこともあったなんて……。いや、悪い部分は直していけばいい。まずはこの同窓会で汚名返上といこう。了承を伝えると、嫌そうな顔してしまった。なにか有ったのか?
「そう言うと思ったわよ。で、あのバカども昔を思い出したいって、学園の制服で来て欲しいそうよ。ったく年考えろっての」
それは……中々に厳しいな。学園内ではもちろん制服で過ごしているが、流石にこれで学園の外に、それもお酒も入るであろう食事に行くのは少々、いやかなりはばかられる。
「でどうすんの?」
「気乗りはしないが……。しかし、昔を思い出すのもまた大事なこと。それが出来るのが私達二人ならばやぶさかでもない。コバンはどうするんだ?」
「はいはい、分かったわよ。相変わらずな大層な考えね。私も恥ずかしい思いしてあげるわよ」
嫌そうに言うが、君も皆との関係を大事に思っているのは聞かなくてもわかる。そうでなければこんな簡単に了承しないだろう。
「お互い腹をくくるとしよう。さあ、仕事に戻るぞ。話してばかりで手が動いてなければまたエアグルーヴに怒られてしまう」
「はいはい、ちょっとは後輩に威厳でも見せないとね」
さあ、気持ちよく同窓会に行くために目の前の山を片付けるとしよう!
約束の日もあっという間に今日だ。学園のことも任せてきたし、明日の予定もない。なにも心配することはない。ないんだが……
「この時間にこの格好は流石に恥ずかしいな……」
いくら私でも羞恥心はある。シンボリルドルフが制服を着て夜の街を歩くなどスキャンダルにもなりかねない。念の為私とわからないように変装をしているが、それでも周りの視線が気になってしまう……。早く会場に着かなければ、合流してしまえば私だけではなくなるからな。
いつもより早足気味に、それでも気持ち的にはやっとたどり着いた見えの前にはウマ娘の集団がいる。どうやら私が最後のようだ。申し訳ないことをしてしまったな。
「やあ、ひさしぶりだな……」
私の声に振り向いたウマ娘はコバンだった。彼女は私よりも早くに学園を出ていたし、ここに居るのはなにも問題はない、問題なのは……
「なあコバン? 君の着ているそれはなんだ?」
「見てわからない? もういい年だしね、ジャケットとそれに合うようにコーディネートしたの。ブランドが安っぽいとか言ったら殴るから」
「……どうして! 君は! 制服を着ていないんだ!」
彼女の服装は言う通り、街の雰囲気にも彼女の雰囲気にも似合っているものだ。だが、どうしてだ! これでは私だけがバカみたいではないか!
「それより、こんな時間に繁華街を制服で出歩いてる方がやばいと思うわよ? あんたが学園のこと大好きなのは知ってるけどそこまでとはねえ……」
「君が言ったんだろ! 私達は制服を着ていくと!」
「誰が着るかなんて言ってないわよ。あんたが勝手に着て来ただけでしょ」
「恥ずかしいのは一緒だと言ったのは!?」
「そりゃ、TPOを考えないバカがそんな格好でくるんだもの。恥ずかしいに決まってるじゃない」
ああああああ! やられた! 彼女の言葉遊びなんていつものことじゃないか! 同窓会の嬉しさに目が曇ってしまっていたか……
「はいはい、バカもやっと来たし店に入るわよ」
「なんで幹事じゃないのに仕切ってるのよ」
皆でワチャワチャと学園にいた時となにも変わらない空気で移動を始める。ああ、罠にはめられたが、私が皆を待たせてしまったのには変わらない。私を待って店にも入らずいてくれたことに謝罪と感謝を述べれば、
「いや、バカを全員で笑おうって話になっただけだから気にしなくてもいいわよ」
どこまで私で遊ぶ気なんだ……
幹事ではないらしいがその性格故コバンが皆の注文を取ったりしている。本来の幹事も店を予約したところで仕事はおわってるからなんて既に投げ出している。
「全員取り敢えず生でいい? ……よろしい」
流れるような要領の良さで店員に注文をしている。まるで何度も経験しているような……まさか私を仲間外れに、何度もしていたのか? そんなどうでもいいことが頭の中を回っていると、店員の人が困ったような顔で私の方を見ている。なにかあったのか?
「申し訳ありません、未成年の方にアルコールの提供は……」
「あ、大丈夫です。あれ、ただのコスプレ趣味なんで。ほらこっち向かせて」
逃げる間もなく店員の方に顔を向けさせられる。変装一式を剥ぎ取られるおまけ付きだ。
「え……、シンボリルドルフさん……」
「ちょっと変わった趣味だから言いふらさないであげてね」
「おい!」
「失礼しました!」
コバンに向けた威嚇で店員が逃げるように行ってしまった。ああ……これが広がれば私は制服で飲み屋に入る生徒会長なんて者になってしまう……。
「安心して、コバンのせいだって分かってるから」
ああ、分かってくれるか……。そうだな、ルームメイトだった君ならコバンの性格を分かってくれるよな。
「それはそれとして写真撮って良い? 乙名史先輩に送るだけだから。あ、言ってなかったっけ? 今私見習い記者やってるんだ」
ああ……君もなのか……。そうだった。ここには悪ノリするウマ娘しかいないんだった……
はずかしめられ、暗い気持ちで始まった飲み会だったが、始まってしまえばお酒の力もあり、明るくにぎやかなものになる。酔いも回ってきたのか、話題もどんどん変な方向に向かっていく。
「そう言えばさ! ルドルフちゃん、まだトレーナーさんのこと狙ってるの?」
「なな!? どうしてそれを!」
「見てたら分かるよ、でどうなの?」
私はそんなにわかりやすいのか? 確かに未だに契約を続けてくれているトレーナー君には信頼以上の気持ちを持っていることは事実だ。そうだな、ここで相談するのも良いかもしれない。
「その、笑わないでくれよ? 夏合宿で思いを告げようと思っているんだ」
私の答えにキャー! なんていかにも声が飛ぶ。恥ずかしさでいっぱいだが応援してくれるという声に胸が熱くなる。だけどそんな暖かさもコバンの言葉で崩れ去った。
「え、あんたのトレーナー結婚してるでしょ? 略奪愛でもすんの?」
……え?
「どうして……、どうしてなんだ……」
聞けば以前に街で奥様と歩いているトレーナー君と会って紹介されたらしい。私は聞いていないぞ! といえば、仕事とプライベートはきっちり分けているらしい。ただでさえ残業も多く、休日もレースの付添があるような職業だ。そこをちゃんと区別するのは大切なことだ。大切だが……。
「ううううう……、トレーナー君……」
「ああもう鬱陶しい! あんた泣き上戸だったの!?」
もうダメだ……、何も考えられない……
「あーあ、コバンまたいじめてるよ。責任とって貰ってあげなさいよ」
「今回は私悪くないでしょ。こいつがヘタれてるのが悪いのよ。それにこんな不良物件お断りよ。……はあ、ほら胸ぐらいなら貸してあげるから」
うううううう……、薄い胸だあ……
「ふん!」
重い拳骨を貰ってしまった……。つらい……
「あ、タバコ吸っていい?」
「む、個人の趣味嗜好ではあるが、あまり感心しないぞ」
会も進めば多少は立ち直れる。先程までの情けない姿は忘れたことにしよう。今回ばかりはコバンでさえ意地悪しなかったぐらいだ。
そんな中、一人が喫煙の許可を求めてきた。確かに成人しているし、店も問題ない。しかしやはり、健康というものが気にはなる。無論私に止める権利などはないのだが。
「会社勤めも辛いのよ……。ストレスのせいで、あれなら坂路を一日十本走るほうがマシよ」
「無理。今日は禁煙よ。私とバカはまだアスリートなの。だから我慢して」
「はいはい。あっそうだ、今年は何走るの?」
「私は宝塚と有馬。ルドルフは?」
ふむ、まだ公表していないがこのメンバーならなんの問題もないだろう。
「国内は有馬一本に絞っている。夏から冬までの間海外で走る予定だ」
「お、いいじゃん。有馬で、年増の対決が見られるんだ!」
年増はやめてくれないか……。それ君にも返っていくぞ。
「じゃあさ、じゃあさ! 私達の分チケット用意してよ! 次は中山で忘年会しよう!」
はは、それもいいな。勝っても負けても有馬記念は特別だ。特別扱いは良くないが、たまには良いだろう。
「考えておこう」
「よろしくね! では、愛すべき二人のレースでの活躍を祈って、乾杯だー!」
勢いに押し切られて皆グラスだったりジョッキだったりを準備する。ああ楽しい。何度でもこんな笑顔でいられるように頑張らなければ。
「かんぱーい!!」
ガシャンという音が私の覚えている最後だった。
「……夢か。ふ、あんなあり得るはずもない光景を夢見るなんて我ながら女々しいものだ」
誰もいない生徒会室で目覚めた私は未だに情けなくも儚い夢を捨てられていない自分に笑ってしまう。あんな幸せな、笑顔で溢れている光景など私に訪れるわけがない。
「いつの間にか眠ってしまっていたか」
もはや私一人だけになった生徒会室を見渡して、あるべき寒さを思い出す。いつの間にかエアグルーヴもブライアンもいなくなってしまった。一人減り、二人減り。気がつけば私の周りには誰もいなくなっていた。全てのウマ娘の幸福のために。それだけのために進んできた私にはもはやなにもない。いや、それだけの大きな目標を目指すのであれば余計なものなど持っているわけにはいかない。
「しかし、私にあんな友人など、今までもいなかったのにな」
夢の中で、もう名前は思い出せないウマ娘はあまりにも私に気安かった。まるで長年の親友の様に、まるで永遠のライバルのように。私のレースでそのようなものはいなかった。走れば勝つ。それだけだった。三年も走れば国内のG1に勝っていないものは残っていなかった。それでも私は走り続けなければいけない。切り捨ててきたものために、踏みにじってきたもののために。
こんな事を今さら思うなど、まだ脳が動いていないようだ。そんなことを考えていれば携帯が小さく鳴った。確認すれば
『今日は有馬記念だ。忘れるなよ』
「あの男か」
今の私のトレーナーは練習にもレースにも顔すら出さない屑だ。しかし、それぐらい丁度いいハンデだ。結局私と同じ視座を持つ者は現れなかった。ならばもうどれでもいい。何であろうと私が勝つのだから。
『有馬記念! かつては年の瀬の大一番であったこのレースももはや十人走ることすら珍しくなくなったのはいつからだったでしょうか。頂点に一人立ち続けるこのウマ娘シンボリルドルフ! 彼女の連覇記録はどこまで伸びるのか。もはやそれだけのレースになっていました。
しかし! 今年は違います! 皇帝の圧政を打ち崩すために立ち向かうウマ娘がいます!
一昨年シンボリルドルフ以来の無敗の三冠で私達に深い衝撃を与えてくれた英雄、しかしその年の有マでその牙が届くことはありませんでした。だが! 彼女は帰ってきた! 無敗という冠を脱ぎ、それでも走り続けた彼女はまさに日本近代ウマ娘の結晶と言ってもいいでしょう!
そしてもう一人! そんな彼女の一番弟子を自称し、空を走る一本の飛行機雲のようにどこまでも伸びる末脚で証明してみせました!
さあ! 三人の無敗の三冠ウマ娘という今までも、これからも起こり得ないこの勝負! 目が離せない!』
二人の無敗の三冠か、彼女たちの名前は……思い出せないな。まあいい、いずれにせよ私が勝つだけの話だ。
「さあ、勇往邁進、道は私が打ち砕こう」
汝、皇帝の覇道をみるがいい。
「と、いう夢を見たんだが、どう思う?」
「え、なんで私達はバカの妄想聞かされてんの?」
いきなりバカが呼んできて、大事な話があるというか渋々きたら意味のわからない夢の話とか聞かされてどうしろってのよ。見なさい、エアグルーヴもブライアンもすごい顔してるわよ。
「それに最初の方の話、あんたの願望が見えすぎて鳥肌たったわ。どうしてくれんの? 後あんたの妄想のわたしが気持ち悪い」
「そこまで言わなくてもいいじゃないか? 前にクラスで夢占いというものをしてな? それから面白い夢を見たら記録しているんだ」
ほんとバッカじゃないの?
「会長、どうやら会長の中で私は簡単にいなくなるような薄情者だと認識されているようですね?」
「え、エアグルーヴ? 顔が怖いぞ? ブライアンから言ってくれないか?」
「そうだな。私も会長が強くなったぐらいで尻尾を巻いて逃げると思われているのは心外だ」
「み、皆どうしたんだ? それになに徐々に近づいてきてないか?」
まあ、あんな話をしたらこうもなるわよ。ほんと、バカってのは周りがよく見えないんだから。
「良かったじゃない? 二人が夢の話に付き合ってくれるらしいわよ? じゃあ、私は行くから」
バカのしつけも保護者がいれば大丈夫だろう。あーあ、こんなことのせいで放課後の時間無駄にするなんて。この後何して過ごしましょうかね?
ドアを開けさっさとこんなところからはおさらばだ。ああそうだ。
「泣かされても、薄い胸は貸さないから。精々一人で泣いてなさい」
バカの海外遠征の壮行会の事をクラスメイトと話してたせいで眠気が酷い。もうふて寝してしまおうか、だけど悪夢を見そうで少し怖いわね。
みんながジャジャウマ娘放っておくなって言うから……