前に書いた短編(1話)がゴールでその後勢いで書き始めたからもう話がめちゃくちゃに。
感想もらえるとすごい嬉しいし、この話がどう思われているか知りたいのでよければお願いします
後どう考えても短編じゃなくなり始めたので一旦連載にしておきます
「やることないなあー」
昨日が皐月賞でその明日の今日、朝一番で私に言い渡された処分としては3日間の謹慎だけだった。あんな大舞台でしでかした割にはほとんどないも同然な処分だった。私としてはもっと長い謹慎とか最悪一定期間の出走停止もあり得ると思ってた。だってレース場で暴力しちゃったんだよ? なんてことを忙しいのにわざわざ部屋まで伝えに来てくれたたづなさんに聞いてみたところ
「ルドルフさんのトレーナーの方から処分を求めない嘆願があったんです。査問会でも意見は割れましたが被害者側からの意見もあり基本的には今回は注意程度にと決まったんです。ただ何もなしというわけにも行かないので少しだけ頭を冷やすように、ということで今回の決定になりました」
もうあんなことしちゃダメですよ! なんて可愛く言われてしまってはもうどうしようもない。念の為に聞いたところトレーナーも注意程度の軽い処分で済んだようだ。ただ指導している担当をちゃんと面倒見ろということで少しの減給も貰ってしまったらしい。処分の内容を伝えるために連絡したら笑いながら言われてしまった。その後3日間の過ごし方を相談したけど、一応は謹慎であるため部屋から出ずに大人しく過ごすように言われてしまった。部屋と言ってもいつもの自室ではなく今の私のようなわんぱくのための反省室なんて名前の個室に連行された。反省室と言っても自室との違いは私物がないのと机がないだけで逆にベッドと簡易的な棚、トイレもシャワーもあるのである意味初めての一人部屋でワクワクしてしまう。授業もトレーニングもできないし、トレーナーと話すのも迷惑をかけそうだし大人しく自習でもして反省している格好でもしておこう。この部屋から出れない以上食事も部屋まで持ってきて貰えるらしくその時寝転がってたりしたら流石に印象が悪すぎる。
教室の中で何処か居心地の悪さを感じながら私は一人朝の時間を過ごしている。昨日夢への第一歩である皐月賞を勝てたというのに今までにない重い気持ちを引きずっている。レースそのものはいい走りができたと思う。無論他の皆も素晴らしい走りだった。特に2着だった彼女の完成度は時期を考えれば頭一つ抜けていたと言えるだろう。最初から最後までフォームを崩すことなく走りきったのは、地道な反復練習をしっかりと行ってきた故だろう。きっと彼女は私のライバルになるだろう。
……そう、思っていたんだ。あの時までは。
「おめでとう」
ゴール後に彼女は私に声をかけてくれた。全力でしのぎを削り破れた直後であるというに私に賞賛の言葉をかけに来てくれた。私は自分が恵まれていると改めて実感した。そんな彼女に対して私も心からの称賛を送る。彼女にも私と同じ様に満ち足りた気持ちになってほしい。そう思っていたのだが、返ってきたのは一瞬にして表情を変えた、信じられないようなモノを見る目だった。
「……なにいってんの? 見事だ? 素晴らしいだ? 嫌味で言ってるの?」
彼女は何を言っているのか今度は私が理解できない。私はただ思ったことを、素晴らしい彼女の走りに対して思ったままのことを言っただけだ。そう伝えようとしたが私が全てを言い切る前に突然の痛みが飛んできた。
「ふざけんじゃない!! 何が見事だ! 素晴らしいだ! 着差をみたのか!? 私はお前の後輩でも教え子でもないんだぞ!」
激しい怒りを持ったまま彼女はそう叫んでいた。そのまま私は何も言うことができずに立ち尽くし彼女がURAの職員に連れて行かれるのをただ眺めていることしかできなかった。
「それでは、シンボリルドルフさん。何があったのか貴女からもお願いします」
控室に戻りトレーナー君と待機していた私に話を聞きに来たのはここの職員ではなくたづなさんであった。私もなぜこんなことになったのか知りたいとありのままを全て話した。全てを聞き終わった後難しい顔をして考え込んでしまったたづなさんに彼女のことを聞いてみれば
「そうですね、今の段階でこの後のウイニングライブに参加できないことは決定しています。今後の処分に関しては貴女の話を聞いてからとなっていたんですが……」
そこまで言ってまた困ったような悲しそうな表情で私を見る。たづなさんは原因がわかっているのだろうか。であればと私は教えてもらおうとするがそれより早く
「私としては彼女に対しての処罰を行わないことを願います。一般的に見れば加害者、被害者になりますが、きっとこれは加害者と加害者の話なんだと思います。ですので両者無罪かなにかあれば両者に平等におねがいしたいと思います」
加害者と加害者? どういうことだ。私はなにか彼女を傷つけることをしてしまったのだろうか。たづなさんも反論しないということは同意見なのだろう。しかし二人に聞いてみても何も教えてもらえず、
「今君に伝えることは簡単だ。しかしそれを伝えていいのは僕でもたづなさんでもない。君がわからないのであればいつかはちゃんと伝えよう。でもそれは今ではないんだ」
そんなことを言われてしまいそれ以上の問いただすこともできなくなった。その後本来であるなら私の隣にいるはずのウマ娘がいないままウィニングライブは盛況のまま幕を閉じていった。
「ルドルフちゃんおっはよ。昨日は大変だったみたいだね」
「……ああ、おはよう。元気が戻ったようでなによりだ」
そう声をかけてきてくれたのは先日悩みを相談してくれたクラスメイトだ。ティアラ路線に進むも桜花賞に出ることができなかった。そんな不安や悔しさを打ち明けてくれた彼女とは二日前遅くまで色々話し込んだ仲だ。
「あ、そういえばこの前はゴメンね、大事なレースの前日にあんな時間まで突き合わせちゃって」
「なに、問題はないよ。調整はその前までに終わらせていたしあの日は元々一日オフだったんだ。だから君が何も気にすることはないさ」
「あー……、なるほどね? すれ違いかー。そのことあの子にも話してあげてくんない? 多分きっとそれでなんとかなると思うよ?」
彼女の言うあの娘とは私が今一番会って話をしたくて、そして心の何処かでは会いたくないと思ってしまっている彼女のルームメイトだった。心のなかでさえ二の足を踏んでしまっている私になにか思いついたのかこう続けた。
「あ、じゃあいいこと思いついた。私の代わりにやってほしいことがあるんだけど……」
遠くの方で鐘の音が聞こえる。時計を見れば昼休みの時間だ。もちろん謹慎中の私に休み時間も何もないが昼休みということであればお昼ごはんということだ。確か同じ部屋のあの子が持ってきてくれるらしい。また迷惑かけちゃった。戻ったらなにかお礼をしないと。なんて思っていたら小さくノックの音が聞こえてきた。彼女らしくもない控えめなノック音。まあこんな部屋にいるんだ、私以外に誰かいるかもなんて考えたらそうなるのも仕方ないか。
「はいはーい、わざわざありがと……」
何も考えずに同室のノリで扉を開けたことをいま死ぬ程後悔している。なぜならそこにいたのは
「や、やあ。彼女は用事があるらしく代わりに持ってきたんだ」
この部屋に入る原因とは言わないけど遠因ぐらいはあると思ってるあんちくしょうが何処か不安げに一人分の定食がのったおぼんを持って立っていた。
「なんであんたなの?」
「君のルームメイトに頼まれてね。少し用事があるようで持っていけないからと」
なーにをいけしゃあしゃあと言ってるんだか。でもまあ、差し向けたのは多分あの娘だろうし、頼まれたとはいえわざわざ昼休みに持ってきてくれたんだし最低限の礼儀は必要だろう。
「あっそ。じゃあ、貰うわありがとね」
これっぽっちも心を込めずにできる限りの早口で食事を受け取り回れ右だ。
「あ、ああ……。食事が終わったら部屋の前に出しておいておけばいいそうだ」
困惑しながらも役割だけは果たそうとするあいつにそれ以上なにも言わずに背中で促せば静かに扉が閉まる音がする。だけどなに? ちらっと横目で見たあいつの顔。これじゃあ私が悪者みたいじゃん。
……、いやよく考えなくても悪者か……
ようやく謹慎という名の冷却期間が終わった私は自分史上最大級の難しい顔をしながら廊下を進んでいく。昨日トレーナーから釘を刺された以上学園内であいつと揉め事を起こす気はない。……ないけど納得できていないのもまた事実だ。どうしようかと考えているうちに教室が見えてきてしまった。何も考えはまとまっていないけどこうなったら出たとこ勝負と行きますか。
ガラッといつもより大きいと錯覚するような音を立てながら教室に入れば外からでも聞こえていた騒がしさはシュンとしぼんでしまった。そしてクラスのみんなの視線は私ともうひとりとを往復している。そのもうひとりといえば
「あっ……」
なんてくっそ情けない声を出しながらどうしようかと立ち上がろうとしたままの体勢で動かないでいる。ああ、もうなんかめんどくさいし見てらんない。私はそのままあいつのとこまで無言で歩いていく、できる限りの怖い顔を作っているがどう見えているのだろうか。
「ねえ、あんたのせいで3日も閉じ込められてんだけど」
我ながらひどい言いがかりだ。間違っても私がこいつにかけていい言葉ではない。だけどもこいつは真面目に受け取ったようで死にそうな顔をしている。クラスを見回せば付き合いが長い何人かは私が何をしようとしているのかわかったようで安心したように一息吐いているし、同室のあの娘に至っては笑いを堪えるようにそっぽを向いている。
「あんたにはお咎めはなかったらしいけど私は納得できない。だから今から、覚悟しなさい」
「……承知した。私でできることであれば何であろうと償おう……」
どうしてこいつはこんな真面目な返ししかできないのか、まあいい、かばんを床に置いてそのまま近づき……
「あんたをブクブクに太らせてやる!!」
痛くならない程度にヘッドロックをかけてやる。こいつが座ったままで良かった、私の身長でこいつに立たれると多分かなりかっこ悪い。クラスのみんなもおおよその空気がわかってきたのかさっきまで緊張していたみんなもホッとしながら笑い出す。
「私の皐月2位おめでとう会であんたに甘味の恐怖を教えてやるわ! このクラスは皆参加!」
「他の子も呼んでいい?」
付き合いが長いだけあってルームメイトはずれなく私の考えをわかってくれたらしい。
「ええ! 特に皐月で走った娘はできる限り呼びなさい!」
これじゃあまるでレースの打ち上げだ。まあ、実際そのつもりだけど。やりたいことやって満足した私はヘッドロックを外して自分の席へと向かう。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
やっとあいつが話しかけてきた。何も言わないと思ったら口ふさがってたのね。でも私はまってやんない。
「あんたに罰を与えるまで話してやんない」
「あんたに罰を与えるまで話してやんない」
今日から復帰した彼女が教室に入った時の張り詰めた空気もいつの間にか何処かに行ってしまい、私に残ったのはボサボサになった髪の毛と安堵の気持ちだった。なぜなら罰を受けるまで話して貰えないということは罰を受ければまた話してくれるということだと思えたからだ。
結局流石にその当日という訳にはいかずその週末私達は学園近くのスイーツバイキングに来ていた。段取りが上手な娘がいたようで1時間貸し切りで使えるようだ。先程主催の謝罪と開始の挨拶があったばかりだと言うのにもうみんな思い思いの甘味を更に盛り付け食べ始めている。私はといえばあまりこういう場に慣れておらず作法もわからないので周りの皆を観察しながら小さく盛り付け目の前に一人分の席が空いた机に座っている。誰も座ってこないのは私が避けられているということではないと信じたい。
同席するであろう彼女は先程から共に皐月賞を走った面々に謝罪して回っている。謝罪を受けた方の反応は様々だが悪い空気にはなっていないようだ。そうして彼女を目で追いながら待ってると最後に嫌そうな顔をしながら私の前の席についた。
「なんで持ってくるだけで食べてないのよ」
「君を待っていたんだ。せっかくの機会だ一緒に味わおうじゃないか」
自然に話しかけられて、私も自然に返すことができた。目の前に座る彼女は嫌そうな顔を作ってはいるが纏う空気はどこか気安い。これなら大丈夫かと先日の件の理由を聞いてみれば返ってきたのは
「あの時のあんたは反吐が出るほど大っ嫌いだけどトレーナーにも言われたしレース場以外ではクラスメイトぐらいにはなってあげる」
私の望んだ回答ではないが、それでも彼女は私の半分を許すと言ってくれた。であればいつになればもう半分の私を許してくれるかと聞いてみれば、不敵に笑いながら
「ダービーよ。ダービーであんたをメッタメタのギッタギタにして大笑いした後なら考えて上げるわ」
そんなことを言われれば私も昂らざるをえない。彼女の走りに対しての称賛は本当だし、きっとダービーまでに更に仕上げてくるであろう。であれば私も最大限の敬意を持って返そう。
「承知した。ダービーでもう一度勝った後聞かせてもらう」
私達は二人不敵に笑いながらバチバチと視線を飛ばし合う。けれどもそこに不快感はなく、きっと彼女も同じだろうと。皐月賞の後ずっとつきまとっていたモヤが取れたようにスッキリした気分だ。
そうして迎えた日本ダービー当日。彼女の番号は掲示板に載ることすら無かった。
ルドルフなど他者視点は
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いる
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いらない