本編で書けなかった話や出せなかったウマ娘の話をちまちま書いていきたいと思います。どこかで終わります。
うまよんよりは少しビターで原作の原作よりは甘いはずです。
ファンディスクのような、繰り返す四日間のように気軽に読んで頂ければと
「ねえ、相談あんだけど」
どうして、学園生活のことでも生徒会の方に行けって言われるのかしらね? いくらなんでも責任押し付けすぎじゃない? 来たくない生徒会室に顔を出せば居るのはいつものバカと副会長の二人。他の子たちあんまり見ないけど良いのかしら? まあ、生徒会を頑張りすぎてレース勝てませんでしたなんて絶対イヤでしょうしね。あのバカが例外なんだ。
「いらっしゃい。相談に乗らせてもらおうじゃないか」
「ねえエアグルーヴ、寮を出て一人暮らししたいんだけど、申請方法とか知らない?」
「急な話ですね。まずは説明をお願いします」
いきなり言われても困るわよね。言われるがままにソファに座って話し始める。
「おーい、聞こえているだろう。エアグルーヴもそれはあんまりじゃないか?」
「簡単な話なんだけどね、この前マルゼンさんと話しててあの人一人暮らししてるじゃない? それで私もしてみたいってだけの話」
「なるほど。しかし、学園の生徒は寮住まいが基本になりますので、一応条件をクリアすれば可能かとは思いますが、なかなか難しいと思います」
うーん、そう簡単には行かないかどうしよっかな。よく考えなくてもこの学園の人数で寮にいないのってほとんどいないし。私が知っているのもそれこそ話を聞いたマルゼンさんぐらいだ。そりゃ、簡単には進まないとは思ってたけど、それほどなのかしらね。
「な、なあ? そろそろ認識してくれても良いんじゃないか?」
「で。条件ってどんなのがあるの?」
「……すいませんが、そろそろ会長に返事をしてもらってもいいですか? 長引きそうなので」
長引くのは話のほうか、面倒くさいバカのほうか。取り敢えずいつの間にかこっちに来ていたバカの頭を叩いてエアグルーヴの隣に座らせる。
「条件云々は一旦置いといて、なんでかってのをちゃんと話すわね。なんか最近私が癖ウマ娘のカウンセリングをしてるなんて噂が流れてるみたいで、部屋に来る子が多いのよ。しかも、わざわざ来るぐらいだから結構ややこしい話ばっかりで。流石に結構疲れてきてね、それでどうしようかって思ってた時にマルゼンさんから話を聞いて、いいなって思った感じ」
「なるほど、会長はどう思われますか」
「そうだな。まず、君が悩んでいるウマ娘を支えてくれていることに感謝したい。ありがとう。しかし、それが君の負担になっているのであれば話は別だ。いくら生徒会の一員とは言え、個人に学園として取り組むべき問題で負担が集まるのはよろしくない。私としては君は動くのではなく、相談を受け付ける場を設けて時間と数を制限するという提案をしたい。……どうした、そんな顔して」
いや、あんた真面目な話もできんのね。もうイメージがバカで固定されてるからちょっと驚いたわ。ほら、見てみなさいエアグルーヴも口開けてぽかんとしてるわよ。
「い、いえ。失礼しました。会長が優秀で素晴らしい方というのはもちろん知っていますが、先輩といると……その、少しやんちゃになるというか」
「なるほど、確かにいつもの私を見ていればそう思うかもしれない。だが、私とて真面目にすべき時はちゃんとするさ」
エアグルーヴが謝り倒してるけど、ホントかしらね? 感謝祭のステージイベントでいきなり頭から水かけてきたり、人の出走計画勝手にテレビで言いふらしたり。怪しいもんだわ。
「それ結局私が被害被ってるじゃない。なんでそんなことしないといけないのよ」
「今までの君の実績だよ。君に救われたウマ娘も多くいる。無論私もその一人だ。願わくば悩めるウマ娘を導いて欲しい」
「嫌よ面倒くさい。それにそんな堅苦しくしたら来たいウマ娘も来れなくなっちゃうじゃない。少しは頭働かせなさいよ」
「そうだな、君の言う通り相談しやすい環境を残すことが大事だろう。であれば、君の寮の部屋も残すということで問題ないな?」
こん……バカは! 人の揚げ足ばっかり取りやがって。あー、いけないいけない。冷静にならないと……。私の目標は一人暮らしをゲットすること。となると、このバカは放置で問題ない。ブライアンは言うまでもない。今現在生徒会の実権を握っているのはエアグルーヴだ。この子さえなんとかしてしまえば後はどうとでもなる。ちょうど規則が書かれている資料を探すために棚を探して背中を向けているし、今がチャンスだ。
「ねえエアグルーヴ? 私のお願い聞いてくれないかしら?」
「私の一存では……、近いです」
棚に手をついてエアグルーヴを追い詰める。なんだっけ? 壁ドンだっけ? フジがこれをすればエアグルーヴもイチコロなんて言っていたし、試してみたけど思った以上に反応が淡白だ。どうやら効果がないみたいね。エアグルーヴも押しのけたいけど押しのけられないみたいで困ってるみたいだし、さっさとやめよう。そう思ったんだけど、
「カイチョー遊びにきたよー! ……ああー! コバンとエアグルーヴがふじゅんいせーこーゆーしてるー!」
チビバカがやかましく入ってきたと思ったら騒ぎ出した。しかも異性はないでしょ異性は。文字列だけで覚えてるのほんとバカって感じね。いきなりの乱入者に固まっているとあのチビ、写真撮っていきやがった。
「みんなに見せなきゃー!」
あっという間に出ていってしまった。何しに来たの? ポカンとしていると咳払いが聞こえてくる。ああ、ごめんねエアグルーヴ。それとあれ追いかけなくていいの?
「構いません。今さら学園内であのような戯言を信じるものはいないでしょう」
あっそ。それなら良いんだけど。ただでさえ何かとバカと一緒にされているんだ。これ以上厄介事が増えないならそれでいい。
だけど、それは甘い考えだったようで
「エアグルーヴ、残念だがテイオーはウマッターに載せたようだ。先程から私のアカウントに何故か通知が飛んできている。取られているだの、取り返してくださいだの、いやいや面白いな」
「……! 失礼します!」
すごい勢いでエアグルーヴが飛んでいった。ありゃすぐ捕まるでしょうね。私はそもそもウマッターも何もやってないからわからないけどそんなにすぐ反応来るもんなの? バカの携帯を借りてみれば確かにすごい勢いでさっきの写真にコメントを付けたものがどんどん来ている。しっかし、なんで私が浮気しているなんてコメントが結構来ているのかしら? あんたらの目は節穴なの? ムカついたからバカのアカウントで
『うっさい、バーカ』
ってつぶやいたら、反応の速度が上がったんだけど? なんで? 面倒くさくなってバカに投げ返した辺りでチビを抱えたエアグルーヴが帰ってきた。早い早い。流石ね。
「さあ! 早く投稿を削除して、訂正を入れろ!」
「ぶえー、なんでだよー。何も間違ったこと言ってないじゃんかー」
仲良く親子喧嘩が始まってしまった。どうでも良くなって部屋に帰ろうかと思ったら今度は私の携帯がなり始めた。誰かしら……げっ、このタイミングでシリウスから連絡来るとかどう考えても厄介事だ。放置が一番と、無視しておけば数分なり続いてやっと止まった。一安心と思っていたら、
『部屋で待ってるぞ。シチーも居るからな』
ああもう! 少しは私の都合も考えなさいよ。最近シリウスとシチーが何かと面倒くさい。少しはタマを見習って欲しい。いちいち絡んできて、もう少し自分の同級生とでも遊んでなさいよ。
「どうして僕が怒られなきゃいけないのさー。悪いのはコバンとエアグルーヴでしょー」
諸悪の根源は悪びれもせずぶーたれている。ったく、ほんとこのガキはふてぶてしさだけは一人前ね。エアグルーヴが投稿消させようとカミナリ落としてるけど、もう広まってるみたいだし、しかもガキを追いかけるエアグルーヴも見られてるわけで、そんな状態で削除しても余計に真実味が出るんじゃないの? そう言えばエアグルーヴも頭を抱えてしまった。可哀想に……。
「他人事みたいに言ってるけど、コバンが悪いんだからね?」
「うっさい、そもそもあんたがバカみたいなことしなきゃよかった話でしょ。後、私先輩。しゃしゃってるんじゃないわよ」
生意気なガキの鼻を思っきり引っ張る。おーおー、よく伸びる。ぴゃあだのぴゅああ! だのうるさいからこれぐらいにしておいてあげましょうかね。
「あー! もう怒ったもんね! 今度ボッコボコにしてやるんだから!」
「あっそ。今からでも良いわよ。ほらかかってきなさいよ」
「ぴぇ……。こ、怖くなんかないもんね! レース! レースでボッコボコにしてやるんだから! 覚えてろよー!」
最後までやかましいガキは叫びながら飛び出していった。ったく
「やるならさっさと来なさいよ? 早くしないと私上がっちゃうわよ?」
来るかもしれない、でも多分、あの子が望んだものにはならない時間を思い、少しセンチメンタルな気分になる。
「いやー、私がいない間にそんな面白そうなことがあったなんて、呼んでくれればよかったのに」
「たわけ。そもそもお前が先輩に余計なことを吹き込んだのが原因だろうが」
うーん、エアグルーヴはご機嫌斜めだね。でも、あの先輩に壁ドンされて追い詰められてる姿なんてレアな光景是非見たかったな!
談話室でお茶でもしながらエアグルーヴと雑談をしている。今日は寮長の仕事もなく、エアグルーヴも珍しく忙しくなかったらしい。それで、どうやら私が原因らしい騒動の文句を言うために私を捕まえてここまで連れてこられちゃった。それでもエアグルーヴと話すのも楽しいから良いんだけどね。
でも、コバン先輩には前にやり込められそうになったからね、弱点の一つや二つ知っておきたいな。そういう意味では目の間に居るエアグルーヴが一番適任かもしれない。いつの間にか生徒会で一番強くなっちゃってるからね。どうすればそうなれるんだい?
「そんなもの私が知りたい。いつの間にか会長はあんな風になるし、コバン先輩はそもそも最初から暴れっぱなしだ。気がつけば静かだった生徒会はいつもうるさくなってしまった」
「でも、そんな今の方が好きなんだろ?」
「……否定はしない」
だろうね。昔はいつも会長が頼ってくれないと悩んでいたのにいつの間にか怒るどころか説教まで始めるなんてのもよく見る光景だ。だけど、それが居心地がいいのは私も同じ。あの二人を見ていると自分も楽しまなきゃ損するような気分になっちゃう。
「でも、威厳ある生徒会長がいつの間にか愉快な生徒会長になっちゃったね」
「言うな。無論今でも真面目な時は尊敬に値する方だ。だが、表ではこう……活発なことが多いからな。問題があるとは言わないが、学園全体が緩くならないかは心配だ」
問題ないと思うけどね。確かにやんちゃなポニーちゃんも増えてきた気はするけど、それでも目に余るレベルじゃないし、悪戯好きなんてもんだ。それよりも明るい今の学園の方が好きだけどエアグルーヴの考え方は違うのかな?
そんなことを考えながら話し込んでいたら、息を切らせたポニーちゃんが談話室に飛び込んできた。
「……いた! 寮長! 副会長! し、食堂で揉めてて、今にも喧嘩になりそうで!」
「教えてくれてありがとう。君はここで息を整えると良い。エアグルーヴ、手伝ってくれるかい?」
「無論だ。やはり風紀が緩んでいるのかもしれんな」
エアグルーヴと共に食堂に向かう。同じ建物の中だ、すぐに着く。でもそう考えるとさっきの呼びに来てくれた子は随分と息を切らせていたね。まるですごく怯えてたみたいだ。問題のウマ娘が怖い見た目でもしてたのかな、そう結論づけて食堂に入る。騒動の場所はすぐに分かった。真ん中の辺りの野次ウマの集団がいる。あまりに多くて向こうが見えないけど、そんなに派手にやってるのかい?
「やあやあ、ここで戯れているポニーちゃんが居ると聞いて来たんだけど……」
いつものフジキセキとして自信満々にかき分け中央部分に到達した。到達したは良いんだけど……
「あ? 舐めてるの? 今あんたの相手してる暇はないからどっかいって」
「おやおや、随分と余裕がない態度だ。しかし同感だ。フジキセキ、今君にかまっている時間はないのでな。外していてくれ」
真ん中のテーブルに座っている二人は会長とコバン先輩だ……。しかも、いつもとあまりにも雰囲気が違う。私の方を見ようともしない。なのにすごく怖い。いつも生徒会室や寮に居る二人とは思えない。二人共限界まで耳を絞って、足も止まることなく床を掻いている。
「フジ、どうし……」
かき分けるのに苦労したのかエアグルーヴもやってきた。そして目の前の二人を見て固まってしまった。わかるよ、今の二人の相手はちょっと勘弁して欲しい。
「エアグルーヴ、私じゃダメだった! 二人を止めてくれ!」
「い、いや、だが……。よし」
小声でエアグルーヴに救援を叫ぶ。エアグルーヴも躊躇したみたいだけど、最後は引き受けてくれた。これで大丈夫だろう。なんたってエアグルーヴには頭の上がらない二人だ。
「お二人共! なにをしているんですか! 周りを見てください、迷惑になっています!」
いつもと同じ、エアグルーヴにカミナリを落としてもらってこれでおしまい……にはならないみたい。
「あんたまで何言ってんの? あんま調子のんじゃないわよ」
「そうだな、今君に話はない、戻っていたまえ」
うっそ……、エアグルーヴが威嚇されて帰ってきちゃった。珍しい……、というよりあの二人がいつもと違いすぎる!
「ダメだ……私ではどうしようもない……」
項垂れるエアグルーヴを励まそうにも言葉が思いつかない。周りにいた子たちに聞けば、何やらレースのことで話し合っていたが徐々に険悪になって、気がつけばあの一触即発の状態らしい。
「何やってんだお前ら」
割り込んできたのはシリウス先輩……、そうだシリウス先輩なら二人を止めてくれるかもしれない。嫌がられるかもしれないけど頭を下げて頼み込む。だけども
「……私はパスだ。諦めな。あそこまで行ったあの二人に手を出すと火傷では済まないぞ」
断られてしまった……。それもいつもの感じではなく心の底から近づきたくないという感じだ。どうしよう……このままだとほんとにけが人が出てしまう……!
何か打つ手はないかと探していたら、シービー先輩だ! あの人なら二人を止めてくれ……、ああ……椅子を持ってきて観戦し始めた。あ! 会長達のクラスメイトの人たちが……、どこから用意したのかポップコーンを持ってシービー先輩と一緒にヤジを飛ばし始めた……。ああ……もう……。
隣に居るエアグルーヴも諦めかけてるし、このままだと色々と本気でマズイ! 藁にもすがる思いで助けを求めれば
「何してるの! 二人とも少しは落ち着きなさい!」
マルゼン先輩が二人の頭に拳骨を落としながら割り込んだ! マズイマズイ! いくらマルゼン先輩でも……
「……マルゼン、今は君と遊んでいる暇は……」
「そうよ、マルゼンさん、いくらあなたでも……」
「デモもストもありません。ほら! 向こうでお説教よ! さっさと歩く! あ、みんな驚かせてごめんねー。二人にはちゃんと言い聞かせておくから!」
さっそうと二人を連れて行ってしまった……。急におとなしくなった二人もそうだけど、マルゼン先輩の勢いも凄かった……。
「なんや、もう終わったんかいな」
未だに人混みがなくならない食堂に通る声はタマ先輩だ。あ、いつの間にかシリウス先輩もいなくなっている。
「なんや、自分らもえらい暗い顔して。なにがあったん?」
エアグルーヴと私を見て、心配してくれるタマ先輩の言葉に甘えてさっきまでの光景を説明する。すると、納得したように苦笑いをされてしまった。
「そりゃ災難やったな。あの二人いつもはじゃれ合ってるだけやけど、たまにレース関係とかでバチバチにやり合うことがあんねん。で、そんなん後輩に見せられへんていつもは見えへんとこでやってるけど、今回は色々と運が悪かってんな」
そうなのか。確かに、いつも見る二人とは違いすぎた。
「……質問なのですが、いつもは私の言葉で止まってくれるのですが、今回は相手にもされませんでした。これは……?」
エアグルーヴの疑問もわかる。いつもならエアグルーヴに怒られた段階で大人しくなってくれるのに、今回は相手にすらされていなかった。答えてくれるであろうタマ先輩は、しかし、すごく気まずそうな顔をしている。もしかして私達に聞かれたくないことなのか。それでもエアグルーヴの根気に負けて話し始めてくれた。
「えーとな、なんて言えばええんやろな。多分、怒られるまでを一個の流れにしてるんかもしれへん。エアグルーヴが怒る時って大概はしょーもないことでやりあってる時やろ? 逆に譲られへん喧嘩してる時は早々簡単にはとまらへん。うちもやばい時は逃げたなるもん」
そう言えばシリウス先輩もいつの間にかいなくなっていたのはそういうことか。
「落ち込んだらあかんで? 特に会長さんからしたら言われんのも嬉しいんやろ。それになさっきはマルゼン先輩が止めたらしいけど、もうあの二人に正面から意見できる世代ってほとんどおらんやろ。上の世代はもう二人しかおらんし、同世代も残ってるとは言えもうだいぶ少なくなってきた。しかも生徒会長と、それに関連して先輩も有名になってしもうてるし怒ってくれるのなんてほとんどおらん。うちらも、文句は言えてもそこまでや。だからな、エアグルーヴ。あんたは最後まで面倒見たってな。きっとあの二人もそれを望んでると思うねん」
そっか、あの二人が走り始めてもう結構な時間が経っている。二人共元気でそうは見えないけど、どんどんと周りがいなくなって寂しいのかもしれない。まだ私にはわからないけど、孤独が近づいてきているのに走り続ける活力はどこから来ているのだろう。
「……私は、遊ばれていたと言うことですか……」
「そう見えるかも知れへんな。でもそれは必要な遊びやったと思うで」
エアグルーヴの表情は暗い。そうだろう。やっと対等になれたと思ったらそうではなかったと、こんなにも突きつけられればどれほど辛いだろうか……
ああ、願わくば、またみんなが笑っている時間が戻ってきますように……
やっぱり、こっちは書きやすい……!
こっちはマジで不定期更新です