後、名前有りのオリウマ娘でます。多分今回だけだと思うけど
生徒会室で昼食を食べていたら思ったより時間が長くなってしまったな。最近では相談以外にも気軽に話に来てくれるウマ娘も増え、嬉しい忙しさだ。私にレースで走る心得を聞きに来る者、エアグルーヴにトレーニングでのアドバイスを貰いに来る者、ブライアンに野菜を食べさせに来る者……は二人だが、それでも昔に比べれば比較にならないほどにぎやかになっている。以前は相談のため待っていると言っても扉が開くことはなかった。それが今では開きっぱなしになった扉は何人ものウマ娘を迎えている。少しずつではあるが私が夢見たものが実現してきている。しかし、これに満足せずさらに精進していかなければ。そんなことを考えながら教室に戻ってくると例の彼女のよく響く、だがあまり聞かないような大声が聞こえてきた。
「ふざけんじゃないわよ! こんなの認められるか!」
なにか事件かと急ぎ教室で入ってみれば中央で机を合わせた所に頭を抱えたコバンが叫んでいる。近くにいたクラスメイトに聞けば
「ポーカーしててね、コバンが連戦連敗してるところ。惜しかったね。もう少し早かったら情けないコバン見れたのに」
どうやらトラブルではないようだ。一安心とコバンの方を覗き込んでみれば
「あんたねえ! ストレート、ストレート・フラッシュ、ロイヤル・ストレート・フラッシュはおかしいでしょ! サマしてんじゃないわよ!」
「イカサマするのはコバンでしょうが。それにラッキーに運で勝負挑んだあんたが悪い」
……私でもそんな役を出されたら疑ってしまいそうだ。うめきながら頭を抱えるコバンは確かに手先が器用でイカサマも得意だ。だが、真剣勝負だと宣言すればイカサマをすることはないので、大方その流れで負けたのだろう。
「ラッキーに運で勝てたことがないのに君も負けず嫌いだな。なあ、コテンパンにされてどんな気持ちだ?」
「ああ? うっさいわよ! バカ!」
ふむふむ、たまには煽っておかないとな。いつも私が言いくるめられると思ったら大間違いだ。その理由がクラスメイトが勝ったから、というのはいささか情けない気もするが、それはそれ、これはこれ、だ。
「はーい、じゃあ、そろそろ罰ゲームの内容決めよっか。みんなー、集まれー」
ラッキーが皆を集めて内緒話を始めたようだ。私は以前に案を出したら面白くないと一蹴されてしまったのでコバンをいじることに専念しておこう。
「しかし、君も負けず嫌いだな。ラッキーには今まで全敗だろうに」
「うっさいわね。ラッキーはなんか相手したくなるのよ」
確かに、コバンはラッキー、ラッキーコンカラーによく絡んでいっている。それも私へのものとは違ってどこか親しみというか、なにか違うものを感じる。以前に理由を聞いたことがあるが、
「なんとなく、縁を感じるのよ」
なんてはぐらかされてしまった。私がテイオーに親近感を感じるようなものだろうか。
「はーい、じゃあ、罰ゲームを発表しまーす!」
どうやら決まったようだ。全員がニヤニヤしながらこっちを見ている。我がクラスメイトながら本当にいい性格をしてるよ。しかし、視線の何割かがこっちにも向いているのは気のせいか?
「コバンには今日から一日、ルドルフの恋人になってもらいます!」
は? どういうことだ? どうしてコバンの罰ゲームに私が出てくるんだ。
「ちょ、ちょっと! いくらなんでもそれはダメでしょ! あんたたち人の心とか無いの!?」
「人じゃありませーん、ウマ娘ですー。罰ゲームなんだし一番イヤなことするに決まってるじゃん。誰にも迷惑かからないしよくない?」
一番イヤなことって、私をなんだと思ってるんだ……。
「ね、ね? スイパラでもおごるからさ、そっちにしてくんない?」
「だめでーす。コバン羽振りいいし面白くないじゃん。あんまり文句言うと一日じゃなくて一週間にするよ?」
ゴン! と結構重い音を立てながらコバンが机に沈んだ。相変わらずラッキーには死ぬほど弱いんだな。しかしそろそろ私も発言しなければな。
「待って欲しい。私の意見を聞かないのか。それに私と一緒にいることが罰になるとでも?」
「だって面白そうだし。ルドルフもコバンの情けない姿みたいでしょ?」
「それはもちろん。トレセンの生徒からの真摯な依頼では仕方ないな。生徒会長として全力を尽くそう」
「あんたねえ……」
ふふ、ここまで弱ったコバンも珍しいな。私としても心苦しいが、頼まれた以上仕方あるまい。それからクラスの皆とどのような条件にするかを詰めていく。時間は今から丸一日。少しおまけして明日の昼休みが終わるまで、武士の情けで後ろから罰ゲーム中と書いた看板を持って、皆がついてくるらしい。確かにそうでもしないとトラブルの飛び火がすごいことになりそうだ。
「なんでそんなもん用意してんのよ……。後バカ、あんた今日生徒会にこもったりしないの?」
「だって、私がコバンにこの手のゲームで負けるわけないじゃない。昨日から準備してたんだ」
確かに、コバンはラッキーに勝てたことなどないが、それでも用意周到すぎないか? おおそうだ、私もエアグルーヴに連絡しないとな。
「……もしもし、エアグルーヴかい、私だ。今日の放課後なのだが、予定変更で私が学内の見回りを担当したいのだがいいだろうか。……ふむ、ありがとう助かるよ。では。……すまない、今日の予定は学内の見回りでね。付き合わせてしまうな」
「あんたねえ……。はあ、もうどうにでもしなさい……」
良し! では放課後を楽しむために残りの授業を全力で受けようじゃないか! 私の号令に元気よくコバン以外の声が返ってくる。さあ楽しもうじゃないか。
「で、放課後になったんだけどどうするの?」
心底嫌そうな顔をしながらもちゃんと罰ゲームを受けるつもりなのは彼女の美徳なのだろう。しかし、申し訳ないのだが、今の私にはそれよりも楽しみな気持ちが勝ってしまっている。
「そーだね、ルドルフが学内を見回るって言ってたし、手を繋ぎながら一緒に歩いてもらおっか。あ、腕くんでもいいよ」
「……死ねって言うならはっきりそう言ってくれない?」
「そんなに嫌なのか……。少し傷つくぞ」
「私の心はズタボロよ」
いくらコバンがごまかして逃げようとしても、クラスメイトには通用しない。いやはや、やり込められるコバンも中々面白いものだ。
結局クラスメイトの数の暴力に勝てるわけもなく、私達の手は繋がれた状態だ。ラッキーの命令により恋人つなぎ? というものになった。先程からコバンが本気で嫌そうな顔をしているのだが誰一人気にもしていないのはさすがというかなんというか。トレーニングもあり、全員がついてくるわけにもいかず人数は減ったがその代わり動画を撮られることになったのだから踏んだり蹴ったりだろう。コバンが本気で泣きそうになり、動画は他には見せないということで決着となったが、大丈夫か? 後輩たちに撮影されたらアウトだぞ?
「はーい、じゃあ、レッツゴー!」
ラッキーの楽しそうな掛け声で予想外に楽しくなりそうな巡回が始まった。
「こんにちは。ああこれかい? あれを見てくれ」
校舎を歩いていると至るところから声をかけられる。そしてその殆どから私とコバンが繋いだ手を指摘される。少し悪ノリしてみたくもあるが、しおれた海藻のようなコバンを見るといささか可哀想にもなり、後ろにいるどこでそんなもの用意したんだと言う大きさの罰ゲーム執行中と書かれた看板を持っているクラスメイトを指差す。皆苦笑いしながら頑張ってくださいなんて言いながらすれ違っていく。
しかし、思えばコバンと手をつなぐというのも中々どうして、なんとも言えない気恥ずかしさがあるな。最初は腕を組む、なんて話も有ったが身長が合わず結局は手を、それも恋人繋ぎとやらをすることになった。これを決めている間コバンはもはや死体のようになんの反応も示さなかったな。
そんなことを考えながら高等部の校舎を歩いていると目立つ三人組が、あれは
「あれ? コバンおばさん何してるの? そんな趣味だったっけ?」
「……ライス、その呼び方いい加減にしなさいって言わなかったかしら?」
「コバンさんが悪いんだよ! お姉さまに姪っ子みたいに可愛いなんていうから、それでライスすっごくからかわれたんだから!」
ライスシャワーか。彼女も菊花賞や天皇賞春の時は大変だったが、コバンと微力ながら私とでURAの改善のきっかけになってくれた。今ではあの頃の落ち込みもなく、儚くとも明るくなってくれた。しかし
「コバンおばさんか。中々楽しそうな関係じゃないか。私もコバンおばさまと呼んだほうがいいかな?」
「あんたもう……、ほんと勘弁して……」
いつぞやコバンがライスシャワーのことを縁を感じると言って猫可愛がりをしていたのは知っているが、どうやらやられっぱなしではないようだ。
「……プロフィール更新を完了。スズカコバンさん、いつもお嬢様にはお世話になっています」
「ちょわ! お二人がそんな関係だったとは、しかしご安心ください! このサクラバクシンオーお二人がどのような関係でも変わらず委員長として接します!」
ミホノブルボンとサクラバクシンオーも一緒のようだな。この三人は凸凹のように見えて仲もよく、よく一緒にいるのを見る。それぞれ各距離のスペシャリストで、日夜しのぎを削っているが、学園生活では仲睦まじいものだ。まるで私と君のようだな! そうライバルであり友人である彼女に言えば無言で額を叩かれてしまった。解せぬ。
「あんたたちねえ。後ろのあれが見えないの? 私達が好きでこんなことするわけないじゃない」
いや、私としては歓迎するぞ?
「ライスちゃんと見えてるよ? 見えた上で言ってるに決まって……いふぁい!」
「生意気言うのはこの口かしら? ちょっときつめのしつけが必要なようね」
あーあ、またちょっかいをかけて反撃されているな。しかし、今回は向こうは三人組だ。サクラバクシンオーとミホノブルボンの援護射撃にどんどんとコバンがやり込められていく。あの二人は悪意なく言っているのだろうからコバンにとってはやりにくいのだろう。サクラ家には恩があり、ミホノブルボンは一時期トレーニングを一緒にしていた仲だ。で、その八つ当たりがライスシャワーに飛んでいくんだが、彼女は彼女で肝が据わっている。結局コバンの判定負けで三人とは別れることになった。
「ねえ、もう帰らない? ちょっともう限界なんだけど」
「何を言っているんだ。まだ始まったばかりだ。さあ、どんどん行こうじゃないか!」
なに、嘘とわかっていても私とコバンの仲の良さを見せるのもたまにはいいだろう。
「あー!! カイチョーとコバンがいちゃついてる!」
「へえ……面白そうなことしてるじゃないか」
次に声をかけてきたのはテイオーとシリウスの二人組だ。この二人はたまに何かを話しているのを見かけるが、一体何を話しているのだろうか。テイオーが私の方に飛び込んできて、つい手を離してしまう。それをいいことにコバンがシリウスの方に駆け寄っていく。
「助けなさい……! あのバカどうにかしなさい!」
「いいぜ、ただし、次のご主人さまは私になるがな」
……あの二人をそのままにしておくのは少しテイオーの情操教育に良くないのでは? 私の気のせいかもしれないが、あの二人いつもすこし距離が近い気がする。今だってコバンはシリウスに正面から抱きついているようなポーズだ。シリウスが勝ち誇ったような顔で私を見てくるが、多分、コバンは君の思い通りに動くようなウマ娘じゃないぞ?
「カイチョーてばさー、コバンなんかよりボクと遊ぼうよ。あ、そうだ! はちみー買いに行こうよ!」
「すまないテイオー。今は生徒会の見回りの途中でね。お誘いはまた今度にしよう」
「え、あんなイチャついてたのに生徒会の活動なの?」
イチャついてない! なんて怒声が聞こえてくるが同感だ。たとえ罰ゲームの最中でも私達は生徒会としての仕事をしている最中なのだから。なあ、コバン?
「いや、流石にそれは通らないだろ。誰がどう見ても遊んでるようにしか見えないぞ。それより、これいらないならもらっていくぞ」
シリウスもコバンもいつまで抱き合っているんだ。そろそろ周りの視線がすごいことになっているぞ。いつもならコバンもこんなことはさせないのに、相当参っているのだろうな。その原因が私というのは少し納得はいかないが。
「こらー! コバン! いつまでさぼってんだー!」
後ろのラッキー達からも声が飛ぶ。渋々、本当に嫌そうにコバンも私の横に帰ってくる。
「……罰ゲームか、なら私がアンタに勝てば私のものにできるってわけだ。こりゃいいことを聞いたな」
「はっ、今まで何戦何敗よ。少しは学習しなさいっての」
「シリウス、彼女は真剣勝負だと言えばイカサマはしないそうだぞ」
「ほう、それはいい事を聞いたな。これまでの勝負の内容も含めて一度じっくりと話し合う必要があるようだな」
「えー、コバンズルしてるの。だっさーい」
どうやら今日は本格的にコバンにとっての厄日のようだ。いつもなら軽くあしらっている二人にいいようにされている。しかし、残念ながらまだまだ巡回は続くのでな。そろそろここを離れさせてもらおう。テイオーと今度の週末遊びに出かける約束をして、コバンとまた歩き始める。無論手をしっかりと繋いでだ。
「……ねえ、アンタもわざわざ付き合う必要ないんじゃないの?」
「なに、私は君とこうして歩くのも嫌いではないし、何より珍しい弱った君が見れるからな。いくらでも付き合わせてもらうさ」
ふふ、この世の終わりのような顔をしてもまだまだ終わらないぞ?
それからも
「あ、コバンさん、会長さんこんにちは! 仲の良さなら私とダイヤちゃんも負けてませんよ!」
なんて元気よくサトノダイヤモンドと手をつなぎ始めたキタサンブラックや
「なあ、タマ。あの二人は仲が悪いんじゃなかったのか?」
「んあ? ああ、あれはああやって見せつけてんねん。ええか、オグリはあんなん参考にしたらあかんで。ちゃんと慎みを持たなあかんで」
不思議そうにこちらを見るオグリキャップや呆れたような顔のタマモクロス。
「ああ! 私というものがありながら、浮気したんですね先輩!」
「いや、シチー、あんたそんな笑いながら言っても説得力なさすぎでしょ」
写真を取りながらゴールドシチーやトーセンジョーダンにからかわれたり、いやはや中々得難い経験ばかりだな!
中等部の方に行けば、私達を見て鼻血をだしたウオッカをダイワスカーレットが介抱したり、こちらを見て顔を赤くするニシノフラワーをセイウンスカイが
「はいはい、あんなバカップル見ちゃダメだからね?」
と目隠ししていた。何やら扱いがおかしい気がするのは私だけだろうか。中等部ではどうもリアクションが高等部となにか違うようだな。
そんなことをしていたらエアグルーヴから至急コバンを連れて生徒会室に来るように連絡が来た。後ろにいるクラスメイトに事情を説明すれば、寮の談話室で待ってるからと言われ了承した。
「マダオワラナイノ……?」
コバンの片言な泣き言だけが静かに響いていた。
至急と言われコバンの手を離すことなく走って生徒会室に来たのだが……
「二人共、正座です」
開口早々に床に正座させられてしまった。
「先程から校舎内でふしだらな二人組を見かけたと、しかもそれが生徒会のメンバー、一人は生徒会長だと。これはどういうことか説明してもらいますか?」
エ。エアグルーヴ? 顔が怖いぞ? それより至急の用事と聞いたのだが……
「ええ、ええ! ですから噂の二人組に関しての取り調べをしているのではないですか。さあ、早く話してください」
おい、コバン! 君、こういうの得意だろ、なんとか……。ダメだ目が死んでる……。仕方なく私が昼休みのことから説明したのだが話を進めていく内にどんどんエアグルーヴの顔が険しくなっていく。
「い、以上だ。……以上です」
つい、敬語を使ってしまったが、私の話を聞いてくれたのなら誤解は解けたと思うのだが……。
「こ、こ……。このたわけが!!!」
今までに聞いたことのないようなエアグルーヴの声が部屋に響く。錯覚だと思うが声で体が震えた気がしたのだが……
「神聖な学び舎で賭け事など言語道断! あなた達が取り締まる立場ではないですか!」
「おい、落ち着け。ほら水だ」
「……すまない。助かる」
ブライアンがエアグルーヴに水を渡している……。そうだ! ブライアンからもエアグルーヴに落ち着くように言ってくれ!
「バカが。どう考えてもお前たちが悪い。一度しっかりと説教されるがいい」
クソ! いつもの仕返しなのか? いつも怒られるのは君だから意趣返しのつもりか?
「よそ見をするな! いいですか。……」
それから時計の長針が三周するまで私達の正座が解けることはなかった。今回は私も被害者寄りだと思うのだが……。
それから物言わぬ死体になったコバンを連れて栗東寮に送って、自分の寮に帰ろうとしたらクラスメイトに捕まり談話室に連れ込まれてしまった。それから根掘り葉掘り聞き出されなにか言うたびに大爆笑されてしまった。私も十分に辛いのだがもはや一言も発していないコバンは本当に大丈夫か?
そろそろ門限の時間ということで解散の流れになったのだが
「じゃあ、二人はルドルフとコバン、どっちの部屋に泊まるの?」
ラッキーの一言で時が止まった音がした。え、そこまでするのか? いや、私としてはむしろ歓迎したいぐらいだが、流石に先程エアグルーヴに雷を落とされたばかりだ。今日はもう大人しくしていたいのだが……
「だから罰ゲームになるんじゃない」
ダメだ! ここにいるのは悪魔だ! あっけにとられていた他のクラスメイトもすでに乗り気だ。コ、コバンまずいぞ! そう思って振り返ればすでに彼女の姿はなかった。先程まで陸に上がった魚のようにピクリとも動かなかったのに、……逃げたか!
「あ、コバンがいない。よーし、皆で家探しだー!」
おー! と元気な声が返っていく。ああもう……。
「えーと、それは勘弁してほしいかな?」
「フジ、もっとはっきり言わなければ聞かんぞ。さあ、先輩方。反省文と草むしりは覚悟してもらいましょうか」
ああ、エアグルーヴ! 今は君が救いの女神に見える! それからコバンを除いた全員が反省文と草むしりを言い渡され解散となった。クラスメイトの皆も文句を言いつつも素直に聞くのだからいい性格をしていると思う。しかし、コバンはどこに行ったのだろうか?
次の日ボサボサの髪の毛で教室に入ってきたコバンに聞けば物置部屋で一晩過ごしたらしい。いち早くあの場を脱出した結果私達がエアグルーヴに止められたことを知らず眠れぬ一晩を過ごしたらしい。良かったのか悪かったのか。どちらにせよコバンに取っては最悪な一日だったようだ。
放課後、昨日の中断分の延長戦なんて話が出たが、今日はコバンが取材が入ってるらしく、取りやめに。流石にこれ以上引っ張るもめんどくさいとこの話はここで終了となった。私も軽い気持ちで乗っただけなのに貧乏くじを引いた気分だ。
それから数週間が経ったある日。教室に入ると皆が雑誌を回し読みして騒いでいる。挨拶をしながら私も借りて読んでみればいつぞやのコバンのインタビューが載っている月間トゥインクルじゃないか。ああ乙名史さんの記事か。ざっと流し読みしてみたが至って普通の記事だと思うのだが? 周りに聞いてみれば
「後ろのページのおまけ。読めばわかる」
ふむ、なになに?
『以上で、インタビューを終了します。本日はありがとうございました』
『こちらこそありがとうございました。乙名史さんのインタビューはちゃんとしてて助かります』
『いえいえ、ところでなんですが、記事とは別でお聞きしたいことがあるんですが』
『乙名史さんの頼みであれば』
『ありがとうございます。スズカコバンさんといえば周りのウマ娘との関係もよく話題になっていますが。今までスズカコバンさんが彼女たちのことをどう思っているかが答えられたことがないんですよね。よろしければ教えていただきたいと』
『……嫌です。嫌ですけど乙名史さんにはライスの時とかURAと喧嘩した時とか返せないほどの恩があるので仕方ないですね。ただ絶対に記事にしないでくださいね!』
『ありがとうございます! 勿論許可なく記事にすることはありません。ではまずスズカコバンさんの同世代の方々に関してどう思われていますか?』
『そうですね……バカばっかりで、いつもバカ騒ぎしてこっちにまで被害が飛び火して困ってますね。でもまあ、今まで別路線だったり、同じ路線だったり色々ありますが、ここまで一緒に走ってきたかけがいのない戦友ですよ。本当に縁に恵まれていますね』
『なるほど!! 共に走る彼女たちがいるから頑張れると! 走る道は違えど気持ちは同じであると!! ……失礼しました。ではスズカコバンさんといえば後輩の方々と一緒にいることも多いと聞きますが、そちらはいかがでしょうか』
『それ、首大丈夫ですか……? あの子達ですか。生意気でこっちのことをなんだと思ってるのかって問い詰めたくなることも多いですが、まあかわいい後輩ですよ。こんなポンコツを先輩と呼んでくれるのだから情けない姿は見せられません。それどころか彼女たちに助けられるこも多いぐらいですけど、それでも先輩として背中を見せていきたいですね』
『素晴らしい!!!! 期待されるということは重荷でもありますがそれを原動力にもできると!! ……ごほん。では最後にスズカコバンさんにとってシンボリルドルフとは』
『いや、ほんと大丈夫ですかそれ……? あのバカですか……。一回しか言いませんよ? 大嫌いでうっとおしくて……大事な、とても大切なライバルで友人ですよ。もしかしたらルドルフが隣にいたことが私一番の幸運だったのかもしれませんね』
『…………っ!!!!!!!!!』
『も、もう終わりですよね? 恥ずかしいんでお先に失礼しますね?』
そういって顔を赤くしたスズカコバンさんは退出していった。本来であればこれでインタビューも終わり、この内容は世に出ることもなかった。しかし
『すみません、先程の話記事にできないでしょうか。責任は私が取りますので』
スズカコバンさんのトレーナーがそう話しかけてきた。誤解されやすい彼女の優しさを知ってほしいとのことだった。私も同意見だったが本人の許可もなしに記事にするのは難しいとそう伝えると。
『許可する! 彼女の人となりを多くに知ってほしいのは私も同じだ! 内容も問題はないし、責任は私が全て取ろう!』
トレセン学園理事長秋川氏の決定により本記事の執筆が決定した。
……ほう? すぐにでもコバンに話を聞きたかったが今日は休みだという連絡が来た。しかし、クラス一同誰一人信じるものはいなかった。
「フジキセキ、済まないのだがコバンの部屋の鍵を貸してくれないか?」
昼休みクラス全員で寮長であるフジキセキの所に向かう。
「いや、流石に会長でもそれは……。先輩は病院で数日間留守にすると聞いてるよ」
まあ待て。まずはこの記事を読んで欲しい。数分後記事を呼んだフジキセキの回答は
「いやー、私としたことがうっかり。正しくは病院に行くから数日部屋を空けると言うように言われたんだ。それともうあの部屋だけでドアの交換10回を超えてるからね。寮長としてもそれは見逃せないよ」
そう言いながらひとつ鍵を渡してくる。ありがとう、悪いようにはしないさ。さあ行こうじゃないか!
それから数分後、コバンの叫び声が寮どころかその外にまで響いたのは言うまでもない。
怖かったり、厳しかったりする先輩がクラスメイトといると明るくなったりするのって良いと思いません?
CB先輩貯金の石2.3万個が無くなったのでそのうちサトノダイヤモンド、ヒシアケボノ、メジロドーベルがでてくるかもしれません