2021年最後の投稿になります。来年は、面白い作品を投稿出来る様に努めて参ります。
それでは本編どうぞ!
第弐話 忠勝IS学園に入学する
忠勝は学友と塾を後にし、俯いていて落ち込んでいる子に話しかけることにした。
「……」
「もし、そこの者よ。いかがなされた?」
「…誰ですか。貴方は?」
「これは、失敬した。拙者は本多平八郎忠勝と申す。して其方の名は?」
「私は…私は、篠ノ之箒と言います」
「ほう、篠ノ之とな…随分と珍しい名だな」
「えっと…驚かないんですか?」
「何故だ?何処に驚く必要がある?」
忠勝は篠ノ之と聞いて平然としていた。彼女はそのことについて説明するのであった。
「だって、篠ノ之箒と言ったら篠ノ之束の関係者だって気が付くでしょう?」
「篠ノ之束…すまぬがその者はそれ程有名なのか?」
「えっと…ISの生みの親とかで結構有名だと思ったんだけど…」
「IS?どうも横文字には弱くてな…で、その者がISとやらを生み出したのであるのか?」
「はい…そのおかげで私達家族はバラバラになってしまって幼馴染とも…」
「そうか…それは、さぞかし辛かろう」
「姉さんがIS何て開発しなければこんな事にならなかったのに…」
「…確かに其方の姉上がISとやらを開発しなければこんな事にならなかったはずだが、本当にそう思っているのか?」
「…どういうことですか?」
今度は忠勝は説明する必要があると思い箒の隣に座った。そして、何故そう思ったのかを説明し始めるのであった。
「これは拙者の戯言だがな、遅かれ早かれ誰かの手によってそのISとやらが生まれたのかもしれん。故に今や世界中でISとやらの開発・製造・研究が行なわれていると友人から聞いた」
「それで…」
「拙者が言いたいのは、其方の姉上である束殿は、ある種の起爆剤になったに過ぎない。故に誰が良くて、誰が悪いかは世間が決める事。だから、篠ノ之殿が気負う必要はないと言うことだ」
確かに遅かれ早かれ誰かの思い付きで、ISの技術は発展する可能性がある。それこそ束になるかもしれないし他の人かもしれない。
だから、箒が気負う必要はないと忠勝は言いたいのであった。
「あ…」
「それでも、悩みがあるのであればいつでも相談に来ればいい。拙者は逃げも隠れもせん」
そんな事を言われた箒はあっけに取られてしまい、笑い出すのであった。
「フフフ、本多さんって古風な喋り方なんですね」
「ムムム…どうも、この喋り方は抜けんらしくてな。生まれつきの性と言うものなのだ」
「そうなんですか。…それじゃあまた、相談に乗ってもらいますね♪」
「うむ!待っておるぞ!」
そう言って、箒は笑いながら帰って行くのであった。それを見届けた忠勝も帰ろうとした時、殺気を感じ取ってすぐさま愛槍『蜻蛉切』を取り出し殺気を放った方向に向けた。
「何奴!」
「ちょっと待った!待って!そんな物騒な物をしまってよ!」
「…うぬは何奴だ」
そこら出て来たのは、不思議の国のアリスの衣装に身を包み頭には大きなカチューシャをつけいた女が立っていた。
「あれ?束さんを知らないの?ISの生みの親で大天災の束さんを?」
「束…それでは、篠ノ之殿の姉上か?」
「まぁそんな感じかな?」
「それで、拙者に何用であるか?」
「その…箒ちゃんの事気に掛けてくれてありがとう…」
「礼には及ばぬ。拙者は出来る事をしたまでだ。それにしても色々と問題がある様に捉えてしまったが…」
「うっ!それは…その…」
「何か悩み事があるなら力になるぞ」
「それじゃあ…」
束はこれまでの生い立ちを話し始めた。幼い頃から頭が良く周りの人から嫌われていた事。ISを使って宇宙へ行きたいと言う夢がある事。ISを生み出し学会で発表したが、学者達に見向きもされなかった事。
そして、有意性を証明する為に日本に向けてミサイルを発射させた。その全てをIS1機で対処してしまった事により有意性は証明された。だが、それは兵器として証明されてしまった。それ以降名目上ではスポーツとなっているが、いつ兵器転換されてもおかしくない状態になっていた。
「…これが現状なんだよ」
「成程。しかし、なぜ束殿は反論しないのだ?」
「私一人が言っても世論が味方してくれないんだよね…」
「ふむ、なら拙者が味方になろう」
「え?」
「例え世界が束殿の敵になったとしても拙者だけは味方だ」
「えっと…それって、私を守ってくれると思ってもいいの?」
「無論、この蜻蛉切に誓って其方の夢を守ろうと誓おう」
「そっか…アンタ名前は?」
「本多平八郎忠勝。我が武において束殿の夢を守ろうと誓う者である」
「本多忠勝…忠勝…じゃあたーちゃんだ!」
「たーちゃん?拙者はその様な名前ではない。平八郎と呼んでくれ」
「たーちゃんって言ったらたーちゃんなの!」
「うむむ…わかった」
「それじゃあまたねたーちゃん!」ボン!
「っぐ!目が!」
一瞬目を瞑ってしまった忠勝。目を開けると既に束の姿はなく気配までもが消えていた。忠勝は束の事を(只者ではないな…)と関心するのであった。
学校から下校途中で商店街に立ち寄った忠勝。各店からは「おかえりなさい!」や「今日も買っていくか?何ならサービスするぜ」と多くの声がかかってくる。
忠勝の家は少々複雑な家庭環境にある。
忠勝には2人の妹がいる。
栄子は忠勝が生まれて直ぐに、父本多忠高と母小夜との間に生まれた子である。利発だった忠勝は手にかからなかったが、栄子はそうでもなかった。いつも兄の忠勝と比べてしまう。
そんな中忠勝は『拙者は拙者。栄子は栄子だ。気にする事無く堂々としてればよい』と言い、いつも栄子を宥めていた。
その後流行り病で父が他界し後夫と母との間に生まれたのが
昔は父親が違うことで壁を作っていたが、忠勝と栄子の必死の努力により、仲良くなった。
今は両親とも交通事故で他界し兄妹3人仲良く住んでいる。忠勝は学業とアルバイト。栄子と翔子は近所の子供たちの子守で生計を立てている。
そんな事を知っている商店街の人達は、少しでも3人の足しになろうと色々世話をしているのだ。少なからず感謝している忠勝はいつかこの商店街の人達に恩返しをしたいと思っているのであった。
そんな事を思って家に帰ると、既に夕餉の準備が済んでいた。忠勝は楽しみながらも玄関の戸を開けるのであった。
「只今帰った」
「お帰りなさいませ、兄上」
「お帰りなさいませ~!お兄様~!」
三つ折りついて、割烹着姿で出迎えたのは忠勝の妹で栄子と異父妹の翔子だ。
「すまんな、いつも用意してもらって」
「いえ、栄子お姉様と一緒にお料理するのは楽しいですから大丈夫です!」
「ええ、翔子には教えがありますからね」
「そっか…なら、早速飯にするとしよう」
『はい!』
そう言って、3人でご飯を食べ忠勝は、栄子と翔子が寝静まった後に勉強を行う。その生活を16年も続けている。
しかし、来年からは栄子と翔子は中学生になる。自分も高校生になり金銭的にも余裕が無くなる。
どうするべきなのかと忠勝は悩んでいた。
(父上、母上。そして、大殿。拙者はどうすれば良いのだろか…)
次の日の朝。忠勝はいつも通り勉強道具と栄子が作ってくれた弁当を持って、玄関の戸を開けるのであった。
「では、行ってくる。今日は早めに帰って来る予定だ」
「はい、わかりました兄上」
「いってらっしゃいませ!お兄様!」
「うむ。ではな」
そう言って、忠勝が出ようとした時に、栄子がいつもやっている切り火を受けて学校に向かうのであった。
学校に着くと、みなある話題で持ち切りだった。忠勝は隣の席にいる、副委員長の
「おはよう」
「あ、忠勝君おはよう!ねぇねぇあのニュース見た?」
「にゅーす?ああ、テレビの事か?すまんな。最近は勉学意欲を向上させるために、テレビ等は見ないのだ。その代わり新聞なら見たことはあるぞ」
「そうなんだ。忠勝君って変わっているね」
「まぁハイカラな横文字よりも新聞が見やすいからの。それで、そのニュースとやらで何があったのだ?」
「そうそう!重大なニュースなんだよ!なんと初めて男の人でISを操縦した人が出たんだって」
確かにISは女性しか動かせない。これは世界の常識だった。だが、その常識が覆されたのだ。ある男のせいで…
「なに?ISは女子にしか扱えないと聞いていたが…」
「それがね、その人が言うには「自分が受けるはずだった高校の入試試験会場を間違えて、IS学園の入試会場に入っちゃったんだって。そして、そこにあったISに手を触れたら、起動した」って」
「ふむ、それだけ聞いているとその者はとんでもない馬鹿か阿保なのだな…」
「ねぇ~ルックスだけはいいんだけどね…けど、私は忠勝君一筋だから!安心して!」
「あ、ああ…感謝する」
葵の圧に若干押され気味の忠勝。それもそのはず、この葵は先週まで女尊男卑に染まっていた子なのだ。
しかし、忠勝の必死の説得により心を改心。以来忠勝にぞっこんなのである。ただ、当の本人は『自分が
そこで付いたあだ名が『難攻不落、本多城』である。とはいえ、女子達が諦めた訳ではない。あの手この手で忠勝とお近づきになりたいと、画策している。
そんな話しをしているうちに、担任の先生から話しがあった。
「え~既に知っている人も多いと思うが、昨日、世界で初めてISの男子操縦者が誕生した。名前は織斑一夏。かのブリュンヒルデ織斑千冬の弟だそうだ。この結果を受けて日本政府は第二、第三の男性操縦者を探すために、ISの適性検査を行うそうだ」
その話しを聞いて周りの男子生徒達は歓喜の声を出した。それもそのはずである。
もし、適正があればIS学園に入学出来るのである。IS学園は99%が女子。そこに入学出来るから天国に行く様なものである。
ただ、忠勝は違う目的として行く事を頭に入れていた。
(IS学園…あそこ行けば大殿と阿弥陀如来の約束も果たされるであろう。問題はどうやってIS学園に入るかだ…)
そんな事を考えている間に担任の話しは終わっていた。忠勝は葵の声で我に返った。
「…君、…勝君…忠勝君!」
「う、うん?どうしたのだ佐藤殿?」
「もう!次移動教室だから早く行こう!」
「おっと、そうだったか。分かった。では、参るとしよう」
そう言って、移動教室へと行くのであった。これから起こることも知らずに…
時間は進み放課後。体育館には検査用IS第二世代【打鉄】が鎮座していた。忠勝はそれを考え深く見ていた。そして、多くの男子生徒達の阿鼻叫喚を受けている中遂に忠勝の順番になった。
「次、本多平八郎忠勝。随分と硬い名前ね」
「うむ。それで、どうすればいいのだ?」
「ISに触ってみなさいよ。まぁアンタが触っても反応しないと思うけどね」
「こうすれば良いのだな」
「ええ、そうよ。どうせ動かない「キュイーン」え?」
検査員が動かないと思っていた予想を上回る結果となっていた。忠勝が打鉄を纏って空中に浮いていたのである。
これには、全校生徒達はもちろんのこと、教師陣、国際IS委員会から派遣された検査員も驚いた。
『ウォォォォォォォォォォォ!』
「う、うそでしょ…男でISを扱えるなんて…」
「して、この後はどうすればいいのだ?」
「ちょ!ちょっと、待ちなさい!」
慌てて検査員は何処に電話をしていた。忠勝はISを解除し考えていた。これからの事そして、IS学園に向かうと言う事について。
「
「その通りだ」
そこにいたのは、鷹の様な目に黒のスーツを着こなし同性から羨望の眼差しを受けている人物がいた。
「貴女は?」
「私は織斑千冬。このIS適性検査の責任者だ」
「貴女が…拙者本多平八郎忠勝と申す」
「本多か…一応聞いておくが、これまでISに関わった事はあるか?」
「ISに関わったことはござらぬが昨日奇妙なご婦人に会ったことはあるでござる」
「ほぉ誰だった?」
「確か…」
忠勝はその時の状況を説明し始めた。すると、千冬の顔がみるみるうちに苦虫を嚙み潰したような顔になっていった。
「…そうか。あの馬鹿ウサギめ…」
「織斑殿?いかがなされた?」
「大丈夫だ。その…私の友人が迷惑をかけたな」
「大丈夫でござる。我にもやるべきことがあるためこのISが必要だったのだ」
「…やるべきこととは何だ?」
「あるお方からの密命ゆえ、お教える事は出来ぬ。しかし、織斑殿が考えている様な危険な事ではない。故に安心されよ」
それを言われてしまった千冬は、素直に頷くしかなった。
そして、IS適性「A」を叩きだした忠勝はすぐさまIS学園に入学することになった。
但し、入学にする際に、いくつかの残務処理や引継ぎ作業を行う為に、皆とは1週間遅れて入学することになった。
その日の夜。忠勝は栄子と翔子を居間に呼び出し今日起こった事を説明した。
「では、兄上はIS学園と言う場所に入学する事になったのですか?」
「ああ、そこでISの基礎を学び、亡き大殿の夢であった「天下泰平」を叶えるため、我が武を磨こうと思っている」
「凄いですねお兄様!翔子感激致しました!」
「私もです兄上。して出立はいつごろに?」
「来週末には出立する。それまで各自準備するように」
「どうしてですかお兄様?まるで翔子達も行く様な口ぶりですけど…」
「ええ、そうです。合格したのは兄上だけで、栄子と翔子は…」
「安心せぇ。織斑殿に掛け合って兄妹皆でIS学園に入学することが決まった。これから少しだけ、楽な生活が出来るかもしれんぞ」
その言葉を聞いた栄子と翔子は嬉しさの余り忠勝に抱きついてしまった。
『兄上(お兄様)~!』
「おっと!ハハハハ!」
そんなこんなで、本多家は家族全員がIS学園に入学することになった。
同時刻。篠ノ之神社では、禊を終えた箒が袴姿で道場で素振りをしていた。頭の中では幼馴染の一夏に会えるのと、別の事を考えていた。
「ふぅ、ここまでにしておくか。それにしても…まさか、本多さんまでISを起動させてしまうとはな」
箒にはある新聞記事があった。そこには『世界で2人目の男性操縦者現る!!その名は本多平八郎忠勝!』との見出しがあった。
それを見た箒は思わず口がにやけてしまった。
「ち、違う!私は本多さんにお礼を言いたいだけで、決してその様な気持ちは…気持ちは…」
無いとは言い切れなかった。実際に忠勝と会ってからあの日以降忠勝を思わなかった日はなかった。
それ程箒の中で忠勝の存在が大きくなっていたのであった。箒も忠勝に想いを寄せる人になりつつあるのであった。
そして、皆より遅れること1週間。本多家は住んでいたアパートを売り払い、お世話になった商店街の人達へ挨拶を済ませた。
笑顔で送り出す者や泣きながら行かないで懇願する子供たち。だが、長期休みには必ず帰ってくると言い残して、本多家はIS学園へと入学するのであった。
それでは皆様よいお年を~