赤髪の勇者と異界の魔王 作:ルテチウム
「──改めて、御礼申し上げます。リーリァ・アスプレイ様」
あの1戦の後、リーリァは逃げる間も与えられず引き摺られ、部屋にぶち込まれ。
そして今は流されるままに『聖王国』とやらの『聖王女』──カルカ・ベサーレス、とやらに頭を下げられていた。
隣にいた金髪の人が、まさかここまでとんでもない人だったとは──いやまあ、なんとなく予想は出来ていたのだが。
「いやいや、そんなかしこまられても困るって言うか……」
「そう言うわけにもいきません。あの恐るべき敵、魔皇ヤルダバオトを倒すことが出来たのも、全て貴女様のお力があってのこと。
それに……どうやら、レメディオスが散々ご迷惑をお掛けしたようですし」
はぁ、と淫靡とすら呼べる動作でため息をつく聖王女。リーリァはそれに苦笑いで返した。
この部屋に連れてこられるまでから、後にかけてのレメディオスの言動。それは貴族などが跋扈するこの城では好ましく無いものだろうな、となんとなく理解出来たからだ。
(まぁ、個人的に『一番大切な物のため』って言う、愚直な感じは嫌いじゃないんだけどね)
どっかのバカを思い出すから。
レメディオスを見ていて、このカルカ様とやらが大切なのは理解出来た。ぼんやりと、慣れない動作で頭を下げたレメディオスを思い出す。
『カルカ様が傷付かなかったことがなによりだ。その点について、私は心より貴殿に感謝しよう、えぇと……そう、リーリヤ・アスプライ殿』
……やはり貴族としては失格だろうな、と結論付け、苦笑。そしてリーリァはゆっくりと意識を戻すと、カルカに視線をしっかりと向けた。
「……んー。それよりさ、一つ訂正」
「あら、何かご無礼をしてしまったでしょうか?」
眉を潜めながらカルカはリーリァを見詰める。
「いやいや、まさか。で、訂正したいってのは……──倒せてないと思うよ。ヤルダバオトとやら」
「……ご冗談を。しかと、私はこの目で見たのです。王国のアダマンタイト級冒険者《漆黒》ですら撃退がやっとだったとされる、あのヤルダバオトが真っ二つにされる様を」
それを聞き、リーリァは難しそうな顔をする。それもそうなのだ。実際、手応えが返ってくるまではリーリァもそう思っていた。
あの瞬間、ヤルダバオトの肉体を打ち上げた時。リーリァは確かにそこにヤルダバオトがいたのを捉えていたのだから。
「多分、と言うか確実に、アレは替え玉……使われたのは、いわゆる『瞬間移動』ってやつだね」
「……第五位階魔法、ですか……いえ、それすら過小評価かも知れませんね」
それを耳にし、リーリァは訝しげに眉を潜める。そして、軽く唇を舐めると意を決したように口を開いた。
「そのさ、さっきから疑問なことがあるんだけど聞いても大丈夫?」
「え、あぁ、勿論構いませんよ。なんでしょうか?」
少し考え事をしていたカルカは一拍の間の後、すぐに笑顔を形作る。しかしそれは、すぐに壊れることとなった。
「──位階魔法、ってなにか教えてくれる?」