赤髪の勇者と異界の魔王 作:ルテチウム
「──つまり……貴女様は、この世界とは違う、いわゆる『異世界』から来た人間でである、と?」
「うん、そう。まあ可能性としてだけどね。例えばここが、私の知ってる星から見て遠い空の果てにある可能性もあるわけだし……ただ感知範囲をむりくり伸ばしてみても知ってる生命には当たらないから、同じ大陸とか同じ星ではないかなー」
そこで、完全に困惑した表情で停止していた聖王女様が突然勢い良くこっちを見た。少し怖い。
「……感知魔法ということですか?」
「そっちの言い方に合わせればそうだけど、実際は多分違うと思う」
「……大陸の端から端まで可能だと?」
「ちょっと分かりづらいところがいくつかあるけど、そうだね」
目を見開いた女の顔に笑いそうになる。
そういえばそうだ。本来ならどんな無茶をしても、『まあ、正規勇者なら……』で済まされてきたが、ここにはそんな概念ない。単なる超人にしか見えないのだろう。
「一応確認しておきたいのですが、貴女にはなにがどこまで出来るのですか?」
「勇者っぽいこと全部。具体的には竜を倒せる、不死の吸血鬼を殺せる、伝承の存在を殺せる、それが例え──神でも魔王でも、多分」
聖王女がゆっくとと手で頭を抑えた。そして、嘆息する。
「……少し、待って下さい。話が突拍子なさ過ぎます。
…………では、話を変えましょう。魔皇ヤルダバオト……アレはどの程度の強敵でした?」
頭を抑え始めた聖王女をぼんやりと見つめながら、手持ち無沙汰に足を振っていると質問が飛んできた。ここは正直に答えた方が良いだろう。
「概算になるけど、数体なら余裕で5、6体集まれば面倒かな。数十集まって連携取られたら結構キツいと思う」
「──いえいえ待って下さい! あればアダマンタイト級がどうにか『退けた』敵なのですよ?! そして私から見てもその逸話に嘘偽りなし、と言えるほどの力を持っていました!」
ちょっとミスをした感じがする。この世界の基準を恐る恐る探っているから、外すのも当然ではあるのだが。
まっすぐ王女様を見つめる。
「あくまで概算だから、もしかしたら数体でもキツいもしれない。けど、まあそのくらいだと思って貰って問題ないよ」
一瞬驚愕と羨望の視線がこちらを貫く。そして、目を瞑る。数秒経った辺りで聖王女様は結論を出したようだった。
息を吸い、吐く。そしてゆっくと目を開けた。次いで、なんとなく予想出来た言葉が彼女の口から放たれた。
「リーリァ・アスプレイ様。誠に申し訳ないのですが、もし……それが本当なら──至急速やかにこの国から出て行っていただきます。御礼はもちろん致します。援助も出しうる限りの物を誓いましょう。
……さもなければ、貴女様を無理矢理この国にしばりつけるという無理をすることになりかねません」