真理の扉にチ〇コ持って行かれた!   作:マゲルヌ

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3話 エロ話で仲良くなれるのが男

 ――カッポ、カッポ、カッポ。

 

 長閑な田園風景の中を、これまた長閑に荷馬車が行く。その荷台では、端整な顔立ちの青年が手元の資料を確認していた。彼の名はロイ・マスタング。二十代の若さで国軍中佐の地位に就く、新進気鋭の若手将校である。

 

「エルリック家に何のご用で? マスタング中佐」

「リゼンブールに錬金術に長ける兄弟がいると聞いて勧誘に来た」

「ああ国家錬金術師に! そりゃすごい」

 

 国家錬金術師。読んで字のごとく国のお抱えとなった錬金術師のことである。潤沢な研究費の支給、特殊文献の閲覧、国の研究機関その他施設の利用など、数々の特権を得られる国家資格だ。

 反面、軍の命令には絶対服従というリスクはあるが、錬金術師が研究に打ち込むにはこれ以上ない恵まれた環境と言えるだろう。

 ……それゆえに、書類の精査は確実にやってもらいたいところではあるが。

 

「ほっほ。軍のお偉いさんが勧誘に来るなんて、エルリックのチビどももおったまげるでしょうよ」

 

 

 ――カッポ、カッポ、カッポ。

 

 

 ………………。

 

「……チビども?」

「へぇ」

 

 マスタングは手元の資料をパラリとめくる。

 

「……リゼンブール村、エドワード・エルリック、31歳」

「いえ、そいつ11歳。弟は一つ下」

「…………どういうことだね、ホークアイ少尉?」

「結論から申し上げるならば、書類不備ですね」

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

「ほっほ。まあ、会うだけ会ってみたらええじゃないですか」

「………………」

 

 のんびり笑う男の言葉に毒気を抜かれ、マスタングも嘆息しつつ頷いた。

 

「……まあわざわざここまで来たのだし、顔見せくらいはしておこうか。もしかすると案外拾い物かもしれんしな」

「ええ、良い子たちなので気に入ると思いますよ? ……まあちょくちょく頭の悪いときもありますが、基本的には善良なので大丈夫です」

 

 

 ――カッポ、カッポ、カッポ。

 

 

「………………なんだって?」

 

 聞き捨てならない単語が聞こえ、今度こそマスタングは振り返っていた。

 ――ちょくちょく頭の悪いときがある? それは錬金術師として、割と致命的なのではなかろうか? 国家錬金術師って基本、頭を超使う研究職なのだが……。

 

「あぁ、腕が悪いとか怠け癖があるとか、そういうことではないんで安心してください。……ただ」

「……ただ?」

「ただ、……そう、アレです。ちょいとスケベに人生を捧げているってだけなんで、人格の方は問題ありません」

「………………」

 

 

 ――11歳にして、スケベに人生捧げている兄弟?

 

 それは果たして、いろいろ大丈夫なのだろうか?

 なんというか……そう、人として。

 ロイは訝しんだ。

 

 

 ――ヒヒーン!

 

 

 なんて悩んでいる内に馬車はエルリック家へ到着してしまい、一行はそのまま家の中へ。

 そして――

 

 

「なッ!?」

「こ……これは!?」

 

 マスタングは先ほどの自身の予感が間違っていなかったことを確信した。薄暗い地下室の床、一目で超技術だと分かる高度な錬成陣の上には、名状しがたい謎物体がセクシーポーズで安置されていたのだ。

 状況のあまりの不可解さにマスタングは混乱した。

 当然だが副官の女性はドン引きしていた。

 

「ど、どこだ……。エルリック兄弟とやらはどこにいる!?」

 

 

 

 

 

 ――そして10分後。

 

「君たちの家に行ったぞ! 一体何を作った!? …………いやホントに何を作ったんだ、君らは!?」

 

 彼はロックベル家に乗り込み、件の兄弟を問い詰めていた。

 

「ごめんなさい、ごめんなさいッ。つい出来心だったんですぅ!」

 

 鎧の弟は両手で顔を覆い隠し、恥じ入るように懺悔した。

 

「俺たちはただッ……エロいことが、したかったんだッ!」

 

 ベッドに横たわる兄は、絞り出すように己が願望を吐露した。

 

「くっ! それならば……仕方がない!」

 

 青年将校はやるせない顔で天を仰ぎ、世の無常を嘆くのだった。

 

 

 

 

「「「…………」」」

 

 心で通じ合う三人の男たち(馬鹿ども)を、女性陣のゴミを見るような視線が貫いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なるほど、そういう経緯で」

「うん、まあ、そんな感じ……」

 

 30分後、自己紹介を済ませた彼らはとりあえず互いの事情を話し合っていた。どうにもまだ女性陣の目線が寒々しい気はするが、そこは甘んじて受け入れるしかない。場の雰囲気に流されて男の友情を形成してしまった報いである。

 

「ま、まあ外見はともかくとして、だ。

 ――人体と変わらない質感の再現。

 ――接触により温度上昇する体表面構造。

 ――音声を認識し、パターンごとに返事をする声帯機能。

 ――体内で電位差を生じさせ、自在に収縮する筋肉の機構。

 ――最後にそれら全てを統制する、疑似的な脳機能の構築」

 

 少年たちが成した偉業を指折り数え、マスタングは無意識に唾を飲み込む。

 

「……控えめに言って、恐ろしいほどの天才だな、君らは」

「え、えへへ……」

「フフン」

「その天才的発想を、なぜ全て()()に注ぎ込んでしまったのか……」

「し、仕方ないだろッ。溢れ出すリビドーを押さえられなかったんだから」

「それで勢いのままどんどん機能を乗せていったら、さすがにキャパオーバーだったみたいで」

「そりゃ、これだけ複雑な機能をまとめて突っ込んだらリバウンドもするだろうな……」

 

 あの珍妙な物体の外見を思い出し、マスタングはげんなりと指摘した。

 ……ホント、見た目さえ良ければ証拠物件として押収したのに。

 

「まさか魂もないのに人体錬成判定されるとは思わなかった! 真理の判定基準ガバガバかよッ。緩いのは貞操観念だけで良いんだよ!」

「(真理?) ……ま、まあともかく、あれだけの錬成理論を構築したことに加え、最後に弟の魂を呼び戻したところを見ても、君がすでに国家錬金術師級の腕であることは間違いない。……どうだろう? 君たちが元に戻る方法を見つけるための、あるいはこれが早道になるかもしれないぞ」

「う、う~ん……」

「ちょ、ちょっと待って……!」

 

 真面目な顔で仕切り直すマスタングをとりあえずその場に留め、エドとアルは部屋の隅で身を寄せ合った。

 

「(ね、ねぇ、どうするの、兄さん? 本当に国家錬金術師になるの?)」

「(う~ん、正直なとこ迷ってる。確かにメリットは大きいんだけど、従軍のデメリットがなぁ……)」

 

 ぶっちゃけた話、エド自身の肉体を治すだけなら、現状の技術でも十分可能と思われた。元々()()()()()()()()から医療系錬金術や広範な医学知識を身に付けていたエドワードだ。扉の向こうから取り戻すならまだしも、新しいモノを一から創り出すのであればやってやれないことはないだろう。

 ――と、ここでエドは弟の鎧姿(全身)を見る。

 

「??」

(でも、身体全てだと創るってわけには行かないよなぁ。となるとやっぱり、向こう側から取り返さないといけないし、そのためには真理関連のことももっと調べなきゃだし)

 

 加えて、鎧に定着させた魂がいつまでも万全であるとは限らない。有機物を無機物に無理矢理定着させたのが今の状態だ。自身の血液で繋ぎ止めているとはいえ、いつ不測の事態が起きてもおかしくはない。

 ――となれば、解決は早い方が良いに決まっている。

 

「っし。決めたぜ、アル!」

 

 エドは高々と宣言する。

 

「俺は、国家錬金術師になる!」

「……良いのかい、兄さん?」

「ああ、どうせ蛇の道なんだ、尻込みしてても仕方ない。それに、一日でも早くお前を元に戻してやりたいしな。それには国家機関を利用するのが一番手っ取り早い」

「え……僕のため?」

 

 鎧の顔でも分かるくらいポカンとする弟に、エドは力強く頷いた。

 

「当たり前だろ。元々俺の発案でこんなことになっちまったわけだしな。大事なお前を治すためなら、人間兵器としての扱いにも耐えてみせるさ!」

「に、兄さん……ッ」

 

 アルは感動した。普段は怒りっぽかったりワガママだったりするエドだが、やはり根っこのところは頼れるお兄ちゃんなのだ。弟は優しい兄に対して心からの尊敬を抱いた。

 

「兄さん! 兄さんは世界一の兄だy「何より、昔馴染みのチ○コ(戦友)が違うモノになるのも悲しいしな! できれば見慣れたモノに還ってきてもらって、また楽しくハッピージョブにいそしみたい!」

「台無しだよ、兄さんんッ!」

 

 アルは失望した。やはりこの兄にとって一番の優先はエロスであったのだ。弟はいやらしい兄に対し、心からのガッカリ感を抱いた。

 

 

 

 

 

「……まあ、気持ちは分かるけど」

 

 やはり弟もエロスだった。

 もうエロリック兄弟に改名すれば良いのに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(おまけ)

 

「マスタング中佐」

「はい」

 

 言うべきことも全て終わった帰り際、終始黙ったまま話を聞いていたピナコ婆が、マスタングに重苦しく問いかけた。

 

「私は錬金術には詳しくないんだけどね。……一つだけ、聞かせてもらっても良いかい?」

「ッ……はい、遠慮なくどうぞ」

 

 それは言うならば、大事な子どもの行く末を憂う母の顔であった。少年たちのあっさりした態度で勘違いしそうになるが、自分たちは彼らを軍属に――血の道に引きずり込もうとしているのだ。あの子たちを孫同然に想っているこの女性からすれば、いくら罵倒してもし足りない相手だろう。

 せめて何を言われても受け入れようと、マスタングは身を正し、真摯な態度で彼女を見つめ返したのである。

 

 

 

 

 

「その……錬金術ってのは、あんなイヤラシイものを作るための技術なのかい? もしかして国家錬金術師ってのは国主導でエログッズを作って「それだけは違うと言わせていただきたいッ!!」

 

 今日一番の勢いで彼は叫んだ。自分の錬金術があんな代物といっしょにされるなど、断じて受け入れられない話だった。

 つーかあんなシリアスな顔してなんだその質問!?

 

「はぁ……、じゃあやっぱりあの子たちが特殊なだけか。一体どこで育ち方を間違えちまったんだかねえ」

「ええ、まったく! 心中お察ししますよ」

「意気投合したヤツが言ってんじゃないよ、このエロイ・マスタング」

「おっふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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