マスタングとの邂逅から1年。エドワードは彼の推薦を受け、国家錬金術師となるためセントラルシティを訪れていた。
――12歳の少年による国家資格の受験。
物笑いの類かと思われる噂を聞き付け、実技試験場には多くの軍人が見物に訪れていた。さらに今日に限っては、軍事最高責任者キング・ブラッドレイ大総統までが観覧しているという異例の事態。大の大人であっても思わず震えてしまうような状況だろう。
「緊張しなくていいぞ。錬成陣を描く道具は持ってるか?」
「要らないよ、そんなもん」
しかしエドはほとんど気にすることもなく錬成の準備を行っていた。
――合格できるか不安でそれどころではない?
否!
古今東西のあらゆる錬金術に触れて来たエドにとって、今さらこの程度の試験で気後れする理由などない。今彼が気にしているのは、いかに圧倒的な成績で合格してみせるか、という一点のみだ。
同じ合格するのでも、『子どもにしてはできる方』、『ギリギリ基準を満たす温情合格』などと取られては話にならない。最大効率で
――となれば、この場で見せつける技術はアレしかない!!
「いくぜッ!」
――パンッ!
エドは両手を強く叩き付け、練兵場の硬い床に触れた。
「「「ッ!?」」」
直後、錬成光の青い輝きが一帯を照らし、石畳から一本の槍が生み出されていく。道具も使わずに手合わせのみで行われる超速錬成。滅多に見られない高等技術に周囲はどよめくが、驚きはそれだけに終わらない。徐々に姿を現す石造りの槍の、あまりの存在感に聴衆は目を見開く。
――雄々しく反り返った鉛色の剛直。
――表面全体に浮き出た微細な凹凸。
――全てを抉り抜くような先端部の怒張。
――そして何より、あまりにも長大すぎるその威容ッ!
思わず自らと比べてしまった男たちは、彼我の戦力差に例外なく臍を噛んだに違いない。
もうお分かりであろう? これこそが、この一か月寝る間も惜しんで作り上げた、エドワード・エルリックが誇る最高傑作錬成物!
その名も――
「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だああ「何をやっとるかあああ!!」ぐええッ!?」
錬成終了と同時に叫ぼうとした瞬間、エドの脳天に拳骨が振り下ろされていた。
「な、何すんだこの野郎!!」
「こっちのセリフだ馬鹿野郎!!」
怒髪天をついた試験官は、エドワード以上の怒りを浮かべ沙汰を言い渡した。
「不合格だ、不合格! つーか失格だ、この変態小僧が!!」
「んな!? この実直な求道者に対して変態だと!? さらに言うに事欠いてこの素晴らしい芸術品が不合格だ!? 眼は確かかよアンタ!」
「これ以上なくまともだよ! 軍の試験でなにを猥褻物作っとるんだお前は!? この場で逮捕されても文句は言えんぞ!?」
「何を言う! 全ての男が持って生まれる
「チ○コが象徴の軍隊なんぞあってたまるかッ! 頭沸いてるのか、貴様!」
「なにをお! まだ文句があるなら――――これを見ろッ!」
「な!?」
――ザワリ!!
受験者の少年がいきなりズボンをずり下ろした!
『え、あの子錯乱したの!?』と一瞬空気が固まるも、その中心にあるモノを見て今度こそ全員が驚愕し総立ちとなる。
――な!? は、鋼のイチモツ!?
――まさか……機械鎧で義チ○コをッ!
――なんでそんなトコ怪我してんだよ!?
――あ、あの歳で余程激しいプレイを……。
「ちなみに射撃機能だってあるんだぞ! どうだ!(ギュイーン!)」
スイッチを入れるとイチモツが激しく蒸気を吹き上げ、天に向かって屹立した。その威容、まさにアームストロング!
前代未聞の事態に、男は試験中だということも忘れて叫んだ。
「やっぱり頭おかしいじゃないか、こいつッ!!」
「んだと、この野郎ッ!!」
――ギャイッ、ギャイッ、ギャイッ!!
もはや試験とは関係ない言い争いが始まり、収拾が付かなくなろうとしたそのとき、威厳溢れる声がそれを断ち切った。
「――やめよ」
「はっ!? だ、大総統閣下!?」
いつの間にか近付いてきていたのは、試験の行方を興味深げに眺めていたキング・ブラッドレイ大総統その人である。破天荒過ぎる受験生に怒り心頭と思いきや、壮年の武人は愉快そうに口元を吊り上げていた。
「も、申し訳ありません、閣下! 今すぐこの慮外者を摘み出しますので!」
「コラコラ、勝手に決めるな。筆記試験、精神鑑定ともに問題無しなのだろう?」
「は……? い、いえ、確かに筆記はそうですがッ、精神鑑定の方にはただ今疑惑が生じております!」
「フフ、それはまあ否定できんが、しかし錬金術師という連中は大なり小なり変わっているものだろう?」
「そ、それはッ、そうとも……言えますが」
「知識に関しては問題なく、実技にいたっては見ての通り。そして何より――」
ブラッドレイは己を決然と見上げる少年と目を合わせると、フッと微笑んだ。
「肝が据わっておる」
(((……そりゃ国家試験でチ○コ作るくらいだし)))
「ただ、世界の広さを知らぬ」
「??」
言葉の意図が分からずエドが首を傾げたとき、異変は起こった。
――ピシリッ。
「え?」
すぐ近くから硬いものがヒビ割れる音が響き、エドが発生源に目を向けた。次の瞬間、
――パリーーン!!
「なっ!?」
それは誰の声だったのか……。目の前に現れたソレを見たとき、一同は残らず驚愕し息を呑んでいた。
「う、嘘……だろ」
そこにあったのは――チンコだった。
先ほどのエドの錬成は確かに素晴らしい技術であった。表面のディテールに徹底的に拘り抜き、皺や段差すらも完璧に表現し、不規則な曲がりや反りといった生物的要素も充分に兼ね備えていた。
しかしながら――これはモノが違った。
このチンコは生きていた。
今にも脈動を開始しそうな、熱き生命の息吹を感じさせた。
これと比べれば先のエドワードの最高傑作でさえ、小学生男子の落書きにも劣る不完全品でしかなかった。
それをあの瞬きの間に、サーベル一本のみで削り出したという驚愕の事実!
「結果報告を楽しみにしていたまえ、若すぎる錬金術師よ!」
笑い声とともに去っていく大総統を唖然と見送りながら、少年は世の広さを思い知ったのだった。
「あれが……大総統の
「……いや何に感心しとるんだ、君は」
これは自分の監督責任になるのかなあと、マスタングは額に手を当て嘆息した。
「結果発表は一週間後でーす。お疲れ様でしたー」
そして試験官は考えるのをやめた。
………………。
……………………。
「若すぎではないですか?」
「問題ない。技術に関しては他の者より頭三つ飛び出ているくらいだ」
「でも、馬鹿すぎではないですか? 何なんですか、鋼のチ○コって……」
「構造は凄かったぞ? 手動で自由に膨張できる上、連射機能も付いているらしい。フッ、まったく人間とは面白いことを考える」
「面白いというか……愚かでしょう、コレは」
「フフ、
「ッ……今の反逆とも取れる発言は、聞かなかったことにしてあげましょう」
「…………」
「…………」
…………。
………………。
……………………。
「……父上も自分の身体を作るとき、アソコの大きさを盛ったりしたn「やめなさい、この不敬者がッ!!」
◇◇◇
「ん、合格おめでとう」
「はえーな、オイ」
「グダグダ引っ張っても仕方ないのでね」
一週間後、特に番狂わせもなくエドは合格し、東方司令部にて国家錬金術師資格を拝命していた。
「これが証である銀時計。拝命証と細かい規約はこっちだ。いちいち読み上げるのは面倒なので自分で確認してくれ」
「仕事しろよ、給料ドロボウ」
「それから…………と、まあ二つ名は当然こうなるだろうな」
「あん?」
「ほら、見てみたまえ」
投げ渡された紙をエドワードはペラリと開く。
「なになに? ――『キング・ブラッドレイ大総統の名において、汝エドワード・エルリックに銘“鋼”を授ける』――鋼?」
「そう、私ならば“焔”、アームストロング少佐なら“豪腕”という風に、国家錬金術師にはそれぞれ能力や境遇に則した二つ名が与えられる」
ならば、大総統の前であれほどの資質を示した彼に与えられる名は、これを置いて他にあるまい。
「そう! 君が背負うその名は!
――“鋼の錬金術師”!!
厳かに告げられた自らの名に、少年は不適な笑みとともに手を打った。
「ハッ! 良いね、その重っ苦しい感じ! 背負ってやろうじゃねーの!!」
ここに、史上最年少の国家錬金術師が誕生した。
また同時に、史上初めて“チ○コで受かった錬金術師”が誕生した瞬間でもあった。
「フッ」
幼い少年の前途が明るいものであることを祈り、最後にマスタングは先輩としてこの金言を贈ったのだ。
「……性犯罪は起こさないでね?」
「起こすかッ!!!」
疑われても仕方ない!