Re:呪は月を擁いて 作:鉄屋
とんでも妄想人の鉄屋です。
相も変わらず妄想を繰り広げておりますので、警告タグを余裕で踏み越えられる方のみ先にお進み下さい。
気が付くと白い部屋だった。いや、白い『場所』という表現が似合っている。
見渡す限りの白一色。白しか存在が許されない、そんなように思える。なんでこんな所にいるのか、どうやって来たのか、疑問は尽きない。だが、どれだけ考えてもわからない、という事しかわからない。
試しに頬を抓ってみる。だが残念な事に、痛いと感じる。
「どうしろってんだよ……」
頭を掻きながらもう一度見渡すと、人の形をしたぼやけた『影』が、直ぐ傍に居た。何時の間に居たのかは判らないが、擁いた疑問は解いておきたい。此処は何処か、何で此処に居るのか等を。
だが、疑問を口にする前に、『影』が声を出した。
「――お前の体は死んだ」
それも、予想など一切しない事を。
あまりの返答に、思考が止まる。そんな俺を置いて『影』は言葉を重ねていく。ただ、その中で、ある確信が有った。どうやら、俺の質問には答えてもらえない、と。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
話を纏めると、『生きてくれ』という『声』と『ねがい』によって肉体は死んでも魂は生きている。らしい。万物全てに神が宿る。『声』に宿った神が何かした、らしい。
……て事は、目の前にいるのが……神?……手、合わせて拝んだ方が良いのか?
アホな事考える俺を置いて、『影』は俺の後方に指を指す。振り返ると、大きな門があった。そして、『影』が手を広げると門が開いた。その大口の中は、まっ黒。それを見て俺は漠然と――
「――喰われる」
そう口にし、身を固くした。そして、狙ったかの様に、『影』が喋り始める。初めて、口らしきものを開けて。
「――
開いたまっ赤な口の動きに、違和感を感じた。『ねがい』と言った口の動きに。
「だが、対価を貰う……」
あの口の動きは『のろい』と言わなかったか?
「対価はお前の
また……、と思ったが、心体が引かれ始めている事に、大口を開けた門に吸われている事に気付いた。
どんどん吸う力が強く成る。抵抗しようにも踏ん張るが、全く効果は無く、何かに掴まろうにも、抓む物も一切無い。
「それを……」
あっさりと門の中に飲み込まれ、その口が閉じるとき、『影』が引いた顔を、一番知っている筈の顔を見た。だが――
「喰らう!!」
認識する事が出来ず、意識を落とした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「……? ……眩しい?」
目を開けると白い天井が目に入った。
「……白? また白おおぉお!?」
驚き、飛び起きようとしたところで、悶絶した。体が痛い、そして、少し熱い。だが、涙目になりながら、痛みに負けつつも、現状把握を開始する。
……病院?
自身に巻かれる包帯と、冷え冷えする程の殺風景からそう判断し、次の疑問に取り掛かる。
夢、だった……のか?
先程に起こったと、そう思える程に感じたものは何なのだろうか。これが夢だとしたら、確かに感じた痛みは、何だったのだろうか。そう考え始めたが、続ける事が出来なかった。何故ならば――
……俺の手、小さくないか?
――自分の体が小さく感じるからだ。俺はもっと……と、思ったところで何か割れた音がした。
音元の方を向いてみると、花瓶を落としたまま固まっている、髪を後ろで一つに纏めた女の人がいた。
「……意識が、戻ったのか?」
「え? ……ええ、まぁ」
咄嗟に返事をしたが、知り合いにこんな人は居ない。
取り敢えず、今迄擁いた疑問を訊こうとするが……叶わぬ望みだった。
「あ~……訊きた「良かった!」――っ!?」
「良かった!! 本当に……本当に良かった!!」
全力での抱擁に因り激痛が走り、意識が遠い彼方へと旅立ってしまった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
もう一度目覚めてから、十分程が経った。だが――
「すまない」
「大丈夫ですよ」
「だが、私の所為で……」
「大丈夫ですって」
「怪我人の傷口を開くような事は、してはならんだろう?」
「まぁ、そうなんですけど、それより質問に……」
「……すまない」
「や、ですから……」
――こんな遣り取りを続けていた。此の人は心配性なのか、過剰に謝ってくる。
だが、謝られる訳が解らないままでは、意味が無い。
「すまない」
「ですから……」
「本当に、すまない」
「もう、いいです」
「しかし、わた「質問に答えてくれませんか!?」……わかった」
強制的に遮り、此方の我を通す。向こうも頷き、拷問にも似た謝罪地獄が終わった。
やっと質問に答えてもらえる、そう思い脱力しながら大きな溜め息を吐くと……激痛を感じた。まるで、身体の芯から咎められた様に。
「グゥ……っ!?」
「大丈夫か!?」
「う、はい……」
「すまない、私のせいで……」
「だ、大丈夫です」
「……すまない」
「や、ですから……」
ただ、その所為で、また謝罪地獄が始まってしまった。
どうやら、擁いた疑問は、まだ置けないらしい……。
リ・スタートしますので、また宜しくお願いします。