Common life 日常的非日常   作:Dangelo

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No,1.9

 中間テストの結果発表の日。クラスは緊張に包まれていた。

 

「先生。本日採点結果が発表されたと伺っていますが、それはいつですか?」

「お前がそこまで気負う必要もないだろう平田。あれくらいのテストは余裕のはずだ」

「……いつなんですか」

「喜べ、今からだ。放課後じゃ、色々手続きが間に合わないこともあるからな」

「それはどういう意味でしょう?」

「慌てるな。今から発表する」

 

 生徒の名前と点数の一覧が載せられた大きな白い紙が黒板に張り出される。

 

「正直言って感心している。お前たちがこんなに高得点を取れるとは思わなかったぞ。各教科何人も満点がでた」

 

 そして肝心の須藤の英語の得点は39点。これなら赤点はゼロだ。そう思ったが予想は裏切られた。

 

「だが、お前は赤点だ須藤」

 

 須藤は聞いてないだの、感情的に茶柱先生に文句を言う。それに対して茶柱先生は容赦無く現実を突きつけてくる。

 

「赤点基準はクラスごとに決定している。そしてその求め方は平均点割る2。その答え以上の点数をとること。これでお前が赤点だということが証明されたな。短い間だったがご苦労だった。放課後退学届を出してもらうことになるが、その際には保護者も同伴する必要があるからな。このあと私から連絡しておこう」

「せ、先生須藤くんは本当に退学になるんですか? 救済措置はないんですか?」

「事実だ赤点を取ればそれまで、須藤は退学にする」

 

 堀北が赤点の計算方法に言及したがそれも失敗に終わった。茶柱先生が教室を出ていく。綾小路が廊下に出ていくのを見て杏樹も少し離れてついて行った。

 

「ーー確かに……そうかも知れないですね。けど今回は手を貸すって決めたんで。まだ諦めるには早いというか。試せることも残ってますし」

「なんのつもりだ?」

「須藤の英語、そのテストの点数を1点売ってください」

「ははは、面白いことをいうな。ただ私は今まで点数を売ったことは一度もないからな。そうだな、今回は特別にこの場で10万ポイントを支払うなら、売ってやってもいい」

 

 杏樹はその話に割り込む

 

「じゃあ先生わたしの英語のテストの点50点分買い取ってもらえませんか?」

「なんだと?」

「さすがに500万も請求しないですが、どうでしょう?」

「確かに烏間は今回のテストは全て満点だったな、平均点を一点下げるには十分ということか。揃いも揃ってよく思いつくな。でもいいのか烏間? 学年一位には特別にポイントを支給してやることができるぞ?」

「友達の友達を助けるのは普通のことらしいので、問題ないです」

「はぁ、では一点一ポイントで買い取ってやろう、須藤には退学取り消しの件お前たちから伝えておけ」

「ありがとうございます」

「堀北、お前にも少しは綾小路や烏間の有能性がわかったんじゃないか?」

 

 杏樹たちと同じように追いかけてきた堀北に茶柱先生は意味深にそう尋ねる。

 

「……どうでしょう綾小路くんは嫌味な生徒にしか見えないし、杏樹のことはイマイチよくわかりません。二人ともまともに話し合いすらできないですし」

「なんだよ嫌味な奴って」

「話し合いくらいできるって!」

 

「綾小路くんに関しては、ある程度テストで点数を取れるのに取らなかったり、過去問を入手することを思いついておきながら櫛田さんの手柄にしたり、点数を買うなんて暴挙を思いついたり。常軌を逸しているとしか思えない、嫌味な生徒よ」

「言われてるよ清隆くん」

「点数以外のことはブーメランだぞ杏樹」

 

「お前たちがいれば、あるいは。本当に上のクラスに上がれるかも知れないな」

「二人はともかく、私は上のクラスに上がります」

「過去、一度もDクラスが上に上がったことはない。なぜならお前たちは学校側から突き放された不良品だからだ。そのお前たちが、どうやって上を目指す?」

「Dクラスの多くは不良品かもしれませんがクズとは違います。不良品かどうかは紙一重です。ほんの少しの修理や変化で変わると思っています。問題ありません」

「なるほど、堀北からそう聞かされると妙に説得力があるから不思議なものだ。なら楽しみにしようじゃないか。担任として行末を温かく見守らせてもらおう」

 

 そう言って職員室に茶柱先生は去っていった。

 

「さて、戻るか。もうすぐ授業だ」

 

 

 テスト結果がわかった日の夜。

 

「杏樹お疲れ」

「清隆くんもお疲れ様」

「まさかオレの部屋が祝賀会に使われるとは思ってなかったから散らかってるが適当に座ってくれ、麦茶か紅茶どっちがいい?」

「紅茶をもらおうかな〜」

「杏樹は祝賀会に参加しなくてよかったのか? 池や須藤はもちろん、櫛田とか堀北も訪ねてきたぞ」

「さっきまで恵ちゃんと遊んでたから」

「本当に軽井沢と仲良いんだな」

「うん、話しやすいし。いろいろ教えてくれるから」

「杏樹が軽井沢から教わることってなんだ?」

「写真のかわいい撮り方とか、流行りのファッションとか」

「確かにそれはオレや堀北では確実に守備範囲外だな」

「その代わりにわたしはキャッサバとかの植生と農業形態について教えてあげてた」

「……それ、軽井沢喜ぶのか?」

「雑学とかは意外と好きらしいよ」

 

 話は移り変わり、学校についての話となる。

 

「ーー杏樹はこの学校をなんで選んだんだ?」

「高校生をやってみたかったから。この学校は外部と隔離されてるから丁度よくって」

「どういうことだ?」

「色眼鏡なしで高校生活をしてみたかったのが理由の一つ。知らない人に『あの子ってカラスマアンジュでしょ?テレビで見た!』なんて言われたらたまったもんじゃないって思わない?」

「あーオレはテレビをあまり見ないからあれなんだが、有名人なのか?」

「一部界隈では? 名前で検索してみたら誰でも知れる」

 

 『烏間杏樹』で調べると、そこには『最年少でアメリカ最高峰の大学に合格』『2Eとの付き合い方』『天才の育て方』『アンジュの見えている世界』

 

 なんだか大そうな記事や本がヒットする。もちろんW○kiのページもきちんとあった。

 

「確かにこれは目立つな、逆に今までよく気づかれてないな」

「同世代には気づかれにくいの」

「なるほど、確かに昔の記事が多いな」

 

「そういう清隆くんは? どうしてこの学校を選んだの?」

「オレも普通の高校生活を送るためだな」

「ん? 清隆くんも?」

「オレも杏樹と同じように小中に通ってないんだ。と言っても杏樹みたいに大学にいたわけでもないがな。一種のホームスクーリングみたいなもんだ。たぶん」

「つまり、わたしたちは『普通の高校生活』っていう同じ目標に向かってるってことかな?」

「そういうことだな」

 

「じゃぁ今から普通会を結成します」

「普通会? なんだそれ」

「普通を目指す会、つまり普通会」

「安直だな、杏樹ってネーミングセンスはないんだな」

「じゃぁ清隆くんはいい名前思いつくの?」

「事なかれの会」

「却下、わたしとそんなに変わんないじゃん!」

「まぁ名前は結成後いつでも変えれるから問題ない、内容は?」

「なんで会員登録後ユーザーネームは変更できますみたいな感じなの?! 重要だよ名前」

「オレたちじゃいい名前が思い浮かぶ目処が立たないからな」

「それは確かに。この会の目的は、高校生活を楽しむこと」

「ざっくりだな」

「そう言われると思って巷のアンケート結果を持ってきたの」

 

 杏樹が見せたサイトには『高校生活で大切だと思うことは?』と書かれていた。

 

「友達付き合い、勉強、進路、行事、部活、バイト、ボランティア、恋愛ってとこか」

「とりあえず、部活はやってないから却下、バイトもボランティアもないし。進路は?わたしはここを出ても行くとこは決まってるから問題ないけど清隆くんは?」

「オレは無事にここを卒業することが一番だからな」

「じゃぁ進路もバツか」

 

 杏樹はどんどん項目にバツをつけていく。

 

「残ったのは……友達、勉強、行事、恋愛、ね?」

「意外と少ないな」

「とりあえず、今後の指針としては…友達を増やすのに協力すること。勉強は……清隆くんどう?」

「テスト前になったら問題だしあうとかか?と言ってもあの勉強会は続きそうだからそれに参加って感じだろうな実際」

「確かに、勉強会って学生っぽいもんね…でもあの男子メンバーと仲良くできるかな?あれ以来あんまって感じなんだよね」

「そこはオレがなんとかしよう」

「頼もしいね」

「で、行事か。行事ってなんだ? 体育祭とかか?」

「そうだね、なんか行事は普段仲良くない人と仲良くできたり、いつメンとの絆が深まったり、クラスの団結感とかを味わうものらしいよ」

「なるほど、なら恋愛は?」

「わかってて聞いてるでしょ。顔が緩んでますよー清隆くん」

 

そう言って杏樹は綾小路のほっぺを優しく摘む。

 

「わふかっはって! そうだな、恋愛はまず気になる人を見つけないとだな」

「でも恋愛に関しては、意識的に自分からしに行くものなのか微妙だよね」

「そうだな、で結局まとめると何をやるんだ?」

「んーなんだっけ?」

「企画者しっかりしてくれ」

「たぶんこれからも仲良くしようねってことだね」

「そういうことか」

 

 今までの会話はなんだったのだろうかと二人とも思ったが、どちらも突っ込まなかった。

 

「とりあえずご飯作ろっか」

 

 そう、今回の目的はこれ。無料の食材を多くゲットするために二人は自炊する時はお互いに声をかけるようにしているのだ。今日は二人でキムチ鍋をつつく予定だ。

 二人からしたら友人宅でご飯をつくることと、放課後カフェに寄るのは変わらない難易度だからこそこの関係が成り立っている。

 生憎ひとつ屋根で男女がなんてことが浮かぶ気配は一切なかった。二人もこの状況を客観的に見れば理解できるのだが、お互い考えてるのは食費が浮くし友達と食べるのは楽しいな。くらいだから仕方がない。

 

「かっら! 待って清隆くん何入れた?」

「特に、キムチしか入ってないぞ?」

「うそ、なんでこんなに辛いの?」

「キムチだからじゃないか?」

「そっかキムチだからか」

 

あほな会話をしながらその日の夕飯を終えた二人だった。(ちなみに辛かった原因は杏樹が辛いからやめとこと思って放っておいたキムチをつけていた調味液を綾小路がその意図を汲み取れず一滴残らず鍋にぶち込んだからです)




これにて一巻が結です。お付き合いいただきありがとうございます。
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