Common life 日常的非日常   作:Dangelo

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第二巻(完)
No,2.1


烏間杏樹

1年D組

所属なし

誕生日1月30日

学力A

知性A -

判断力B+

身体能力B -

協調性B -

筆記試験面接ともに他者の見本となる生徒だと言える。学力、身体能力は平均よりも高く特に筆記試験は満点を記録しています。身体能力は体幹や瞬発力は卓越している一方単純な筋力は平均をやや下回る。

本来ならばAクラス所属だが、別途資料によりDクラスへ配属。

合理的配慮を必要とする生徒。授業の板書はコピーを渡すこと。

 

コメント

クラスメイトとも仲良く過ごしている。特に綾小路と軽井沢と仲が良い。筆記の件はクラス内で報告済み。クラスメイトも一定の理解を示している。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 7月1日、つまり月初め。

 

「おはよう諸君。今日はいつもに増して落ち着かない様子だな」

「佐枝ちゃん先生! 俺たち今月もゼロポイントだったんですか? 朝チェックしたら一円も振り込まれてなかったんだけど!」

「それで落ち着かなかったわけか、まず話をきけ。お前たちが実感を持っているように学校側も当然それを理解している。では早速クラスポイントを発表する」

 

 紙を黒板に貼り、Aクラスから公開していく。Aクラスは1004ポイントと入学より点数を伸ばしている。一方Dクラスは

 

「87ポイント! 俺たちプラスになったってこと?!」

「喜ぶのは早いぞ。他のクラスの連中は同等かそれ以上に点数を増やしているだろう。差は縮まってない。これは中間テストを乗り越えた1年へのご褒美だ。各クラスに最低100ポイント支給されることになっただけだ。」

 

 クラスポイントに負債制度がなかったことがわかったこと、他クラスからまた一歩離されたこと。それぞれ思うことはあるようだ。

 

「あれ、でもじゃあ、どうしてポイントが振り込まれてないんだ?」

「今回少しトラブルがあってな。1年生のポイント支給が遅れている。お前たちには悪いがもう少し待ってくれ」

 

 その言葉に一堂が文句を言う。だが先生は一切取り合わず一言言って去っていった。

 

「そう責めるな。学校側の判断だ。私にはどうすることもできん。トラブルが解消され次第ポイントは支給されるはずだ。ポイントが残っていれば、だがな」

 

 

 昼休み。

 

 ポイントが振り込まれていないと言ってもご飯を食べるお金はまだ残している。今日はカレーライスの気分だ。

 

「杏樹ごはん一緒にいこ!」

 

 すっかり昼ではいつメンとなった軽井沢達に今日も今日とて誘われて、杏樹も喜んでついていく。

 

「で、綾小路くんとはどうなの杏樹」

「なんの話?」

「進展したかなって!」

「なんで? どう言うこと?」

「だって〜綾小路くんとは結構二人で行動してるじゃん。いつ付き合うのかなって」

「清隆くんとは一緒にいて楽しいけど、そういうのじゃないよ!」

 

 皆は杏樹が綾小路を好きだと勘違いしているようだ。

 

「へぇ〜でも、杏樹ってほぼ男子と話さないのに綾小路が唯一に選ばれたのはなんで?」

「恵ちゃんが意地悪してくる!!」

 

 綾小路とは単純に話が合うのと普通会と言う同じ目標に向かって走る仲間だからである。でもそんなこと言えるはずもなく、適当にジャブをかわしていくしかなかった。その日の昼休みは誰がかっこいいとか誰と誰が付き合いそう、とかそんな恋話をして時間を潰した。ちなみに平田と軽井沢は付き合うことに決めたらしい。二人ともクラスの中心と言うことで華があるカップルだ。

 

 

 その日の夜、綾小路から電話がかかってきた。杏樹はパソコンを見るのをやめ携帯を手に取る。

 

「もしもし、杏樹今大丈夫か?」

「うん、電話くらいなら」

「忙しそうだな、何に追われてるんだ?」

「なんか科学部の先輩に原稿のチェックお願いされちゃって……手直し中」

「それはご愁傷様だな。その先輩は杏樹のこと知ってたと言うことか?」

「なんかそうらしい。絶対ばらさないしポイントあげるから協力して、っていわれて断れなかった」

「なるほど。そんな中悪いんだがこっちも危機なんだ聞いてくれ」

「危機?」

「今須藤がC組に訴えられて、停学になりかけてるんだ。猶予は一週間。それまでにCクラスの生徒に一方的な暴行をしていないという証拠を集めなくちゃいけない」

「防犯カメラは?まさか唯一の死角と思われる特別棟でやったとか言わないよね?」

「そのまさかだ。というか防犯カメラの位置を把握してるんだな……とりあえず今のところ証拠はゼロだ」

「なるほど、今それを知ってるのは清隆くんだけ?もし鈴音ちゃんとか桔梗ちゃんとか洋介くんが知らないならそことも共有したほうがいいよね。証拠を探すなら人海戦術が効果的だろうし」

「そうだな、明日もう一度情報を整理してからどうするか決めるか。杏樹にしかまだ連絡できてないからな」

「それがいいかも」

 

 杏樹は端末を充電器に繋ぎ、横になる。

 一難さってまた一難。大学では考えられない事件ばかり発生している。『高校生活』って違うベクトルで忙しいんだなって今まで起こったことを思い出し、これから起こることを考えながら目を瞑った。

 

 退学がかかったテストや、クラス単位での対決なんて一般人からしたら不思議な状況だが、杏樹の知識はこの学校と渚や両親から語られたあの3年E組。そして適当なボブとハンナからの盛大に誇張された青春ストーリーのみなのだ。

 

 正常な判断なんて不可能である。

 

 

 綾小路から連絡があった次の日のHR

 

「今日はお前達に報告がある。先日学校でちょっとしたトラブルが起きた。そこに座っている須藤とCクラスの生徒との間でトラブルがあったようだ。端的に言えば喧嘩だな。」

「その、結論が出ていないのはどうしてですか?」

 

 平田の質問に先生が答える。

 

「訴えはCクラスからだ。一方的に殴られたらしい。ところが真相を確認したところ、須藤はそれが事実ではないと言った。彼がいうには自分から仕掛けたのではなく、Cクラスの生徒達から呼び出され、喧嘩を売られたとな」

「俺は何も悪くねぇ、正当防衛だ正当防衛」

「だが証拠がない」

「証拠ってなんだよ。そんなもんあるわけないだろ」

「つまり今のところ真実がわからない。だから結論が保留になっている。どちらが悪かったのかで処遇も大きく変わるからな。どうだこのクラスに目撃者いるか?」

 

 誰も手をあげない。まぁ特別棟と言うくらいだ。特別なことがない限りたちよらない。

 

「残念だが須藤このクラスには目撃者はいないようだな。ともかく話は以上だ。目撃者のいるいない、証拠があるない最終的な判断は来週の火曜日には下されるだろう。それではホームルームを終了する」

 

 クラスは一瞬荒れたものの、平田、櫛田、軽井沢とクラスのビッグ3が須藤を信じる側を主張したので目撃者を探す方向でクラスは表面上一致した。

 

「あなたは次々と問題を持ってきてくれるわね」

 

 今は昼休み、堀北、綾小路、櫛田、池、山内、須藤そして杏樹でご飯を食べていた。

 

「ま、仕方ないから友達として助けてやるよ須藤」

 

 最初はポイントがもらえないからと須藤を悪者扱いしていた池だが、今はころっと態度を変えている。

 

「また迷惑かけちまって悪い。でもよ、今回は俺は無実だからよ。なんとかしてCクラスの連中に一泡吹かせてやろうぜ」

 

 須藤はまるで人ごとだ。

 もう少し弱々しくしていないと裁判官からは同情を誘えないぞと心の中で呟く。もちろんそんなこと言えば須藤からの拳か怒鳴り声が飛んでくる待ったなしなので黙っているが。

 

「申し訳ないけれど、私は今回の件、協力する気になれないわね。Dクラスが浮上していくために最も必要なのは失ったクラスポイントを1日でも早く取り戻してプラスに展示させること。でもあなたの一件でおそらくポイントはまた支給されなくなる。水を刺したということよ」

「待てよ。そりゃそうなるかもしれないが、まじで俺は悪くないんだって!あいつらが仕掛けてきたから返り討ちにしてやっただけだ」

 

 須藤は席を立ち上がって身振り手振りで自分の正当性を伝えようとしている。

 

「あなたはどちらが先に仕掛けたかに焦点を置いているけれど、それは些細な問題でしかないのよ。そのことに気づいてる?」

「助けてくれねーのかよ? 仲間じゃねぇのか!」

「笑わせないで、私はあなたを一度も仲間だと思ったことはないから」

 

 そう言って堀北は席を立ってしまった。

 

「ちょっと冷たいよな。テストの件で協力してから少しは仲良くなったと思ってたのにさ」

「よくわかんないよな堀北って。どうなんだよ綾小路。あいつ今どんな状態?」

「空腹ではないことは確かだな」

 

 綾小路は適当に質問をかわしている。

 

「でもおかしいよね、堀北さんはAクラスに上がりたいんでしょ? 須藤くんを助けたほうがプラスになるのに、どうしてなんだろうね」

「須藤が嫌いだからなんじゃね?」

「あーー別に堀北を庇ってるわけじゃないけど、あいつの言っていることは間違ってはいないんじゃないか?たぶんあいつも意味なく協力しないって言ってるわけじゃないと思う、ぞ」

「どういうこと綾小路くん?」

「いや、まぁただの憶測だ」

 

 綾小路の煮え切らない反応に一堂皆不審そうな顔をする。

 

 ちょうど杏樹の携帯がなった。

 

「もしもし、え? はい、わかりました。今から行きますね。はい。はい。失礼します。 ごめんね、先輩に呼ばれちゃった」

 

 杏樹は席を立つ。

 

 この会議で杏樹ができることは今のところ思いつかなかった。それに科学部のほうで何やらトラブっているらしい。そちらの方で目撃者とかのお話を少し聞いてみてあげるくらいだろか。

 

 化学室につくと、先輩がパソコンのグラフと睨めっこをしていた。

 

「杏樹ちゃーん助けてぇ、なんかさ、リハやってたらこの資料のグラフとこっちの原稿が言ってることが合わなくなっちゃってさ。何が違うんだと思う?」

「え、この資料横軸がモル濃度になってるじゃないですか? わたしに送られてきたのは横軸時間の資料だったんでそっちで書いてたんですけど」

「まじ?乗っける資料ミスったってことか。やば、もう資料の方は本部に提出しちゃってんだよね、こっちのグラフでなんとかこの結論に持ってけない?」

「そうですねぇ、この一個前の資料でここの結果を言ってしまって、こことここは口頭での説明を補えば先輩がやりたいことは達成できるのでは?」

「なるほどちょい待ち、メモるわ」

 

「……お疲れ、ありがと」

「先輩もお疲れ様です、あのひとつ聞いてもいいですか?」

「恩人の願いだからねなんでも聞くよ」

「わたしのクラスの子が暴力を一方的に振ったって訴えられてるんですけど、なんとかすることってできると思います?」

「証拠は? って証拠があるならわざわざ聞かないかぁ。んー。その訴えを回避できればいいんだよね、お互い痛み分けとか、訴えを取り下げてもらえれば万歳って感じかぁ」

「やっぱり難しいですよねぇ」

「ごめんね、とりま3年に目撃者がいないか聞いとくよ」

「ありがとうございます」

 

 杏樹が今回できることは先輩に目撃者がいないか聞いてもらうなど微々たるもので、しかも特に役立ちそうな情報を得るのは難しいだろうなと感じた。




たくさんのお気に入り登録、しおり、評価、感想、本当にありがとうございます。まさかこのような大勢の人に見られると思っていなかったのでなんだかソワソワしてしまいますね。ありがとうございます。
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