Common life 日常的非日常   作:Dangelo

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No,2.2

 残された食堂組は雑談をしていた。

 

 櫛田は杏樹が席を離れた後にたまたま出会った知り合いの先輩に声をかけるのに席を外している。

 

「須藤なんかのためにも一生懸命だよな、櫛田ちゃん。可愛いよな」

 

 池は櫛田の背中に見惚れうっとりしている。

 

「俺まじで告ろうかな櫛田ちゃんに……」

「無理無理。池ごときに落とせるかよ」

「山内よりは成功率あるって」

「俺は杏樹ちゃん派だな。あの見た目であんなことされたら……むふふ」

「やっぱ高校生活の華は女子だと思うんだよ。そろそろ真面目に彼女欲しいな。夏に彼女がいれば一緒にプールなんかにも行けちゃっうってか! 最高だな!」

「杏樹ちゃんが彼女だったら最高なんだけどな、あのハーフ顔は最強だよなぁ、彼女になってくれたらなぁ、結局水着も期待外れだったし」

 

「つかさ、二人とも可愛いしそろそろ彼氏できそうじゃないか?」

「それを言うなよ山内。けど、まだ二人に男の気配はないぜ、強いていうなら杏樹ちゃんが一番一緒にいるのは綾小路だけだけどな」

「なんでそんなことがわかるんだ?」

 

 池は自信をもっている。根拠があると言いたげだ。

 

「知りたいか? 知りたいよな?」

「なんだよ何か知ってんのかよ池? 教えろよ」

「学校からもらった携帯さ、実は友達登録してると位置情報がわかんだよね」

 

 池が携帯をこことここと言いながら指差したところには、食堂にいる櫛田と化学室にいる杏樹のマーカーがついてた。

 

「でも実際問題二人はレベル高いよな、もう少しランク下げてもやむなしか……」

「ブスじゃなきゃいいや」

「並んで歩くこと考えると70点くらいは欲しいよな」

 

 自分たちのことは棚に上げて妄想を膨らませる池と山内。

 

「綾小路だって彼女欲しいよな?」

「そりゃ、できるなら」

「一応確認しておくけど、堀北とは何もないんだろうな?」

 

 須藤が確認するように綾小路に聞く。

 

「ないない」

「本当だろうな!?」

 

 須藤に詰め寄られ綾小路は大きくうなずく。普段の態度から考えるに堀北には絶対思われていない。話は須藤の堀北トークにうつっていた。

 

「普通のやつなら断られるデートも、彼氏ならオッケーするに決まってんだろ。そんで、普段他の男には絶対見せない顔見せるんだよ」

「なるほど、それ考えるとありな気がしてきた。可愛いし」

「ちなみに堀北と何もないなら、綾小路は杏樹ちゃんか?須藤は堀北、俺は櫛田ちゃん、山内は杏樹ちゃん。ちゃんとライバルのターゲットは調べてとかないとな」

「誰って……」

 

 綾小路には特定の好きな人なんてまだいないというか、浮かばなかった。

 少しだけ真剣に考える。

 

 強いて挙げるならやっぱり杏樹なのか?最初に連絡先交換したし、名前で呼び合ってる。よく電話もするし(だいたい情報共有だが)話のテンポも合っているし、むしろ合いすぎて怖いこともある。ただだからこそ彼女と、そして自分自身を疑ってしまう。

 

 綾小路が長考した末出た結末は

 

「……いないな」

「いや! 今の間何?! 絶対いるやつじゃんそれ隠すなよ」

「そもそもオレはそんなに女子と関わりがないからな」

「嘘つけ」

 

 

「ーー佐枝ちゃんによると夏はバカンスなんだよな?! 絶対そこまでに彼女作りてぇな」

「俺も俺も! 最低でも彼女はゲットしてやる! できれば杏樹ちゃんがいいけどそのためなら妥協はやむなし。そしてラブラブな高校生活を送ってやる!」

「……堀北にいつ告るか」

 

 上から順に池、山内、須藤と思い思いのことを好き勝手に語る。綾小路はなぜ杏樹が勉強会の時、池と山内を避けていたか分かった気がしたが特に忠告してやる気にはならなかった。

 

「この中で誰が一番最初に彼女作るか競争しようぜ。最初に彼女作ったやつが全員に飯を奢ること! いいな!」

 

最初に集まった須藤をどうするかの問題からいつの間にか彼女の話になっていて綾小路はなんとも言えない気分になっていた。

 

 

 翌日の朝。

 

 一部のクラスの人間は須藤に関しての情報交換に忙しない様子だった。昨日目撃者探しを行った実行グループ、平田班と櫛田班だ。

 

 池たちは平田をモテ男と嫌っているが、平田にくっついている女子には興奮を抑えきれないようで楽しそうに雑談をしている。杏樹が離れたところから綾小路と一緒に聞いている分には特にめぼしい情報はなかったようだ。

 

「なかなか難航してるね」

「そうだな」

「まぁ目撃者が簡単に名乗り出たらB級映画だからこれでいいのかな?」

「この際、B級だろうがC級だろうがなんでもいい。この事件には面白さや予算はいらないからさっさと目撃者なり、神なり出てきてくれるとありがたいんだが」

 

 杏樹と綾小路がふざけていると、クラスの雰囲気がいつの間にか須藤を救うためのものから無いものねだりをするものに変わっているのに二人は気づいた。

 

「なんで俺、最初からAクラスじゃなかったんだろ。Aクラスだったら今頃すげぇ楽しい学校生活送れただろうな」

「私もAクラスだったらな、ポイントもいっぱいだから友達といろんなとこ遊びに行けるのに」

「一瞬でAクラスに上がれる裏技があればいいのに。クラスポイント貯めるなんてむずすぎるっしょ」

 

 その言葉に教室の前方入り口から返事が帰ってきた。

 

「喜べ池、一瞬でAクラスにいく方法は一つだけあるぞ」

「先生、今なんて?」

「クラスポイントがなくてもAクラスに上がれる方法があると言ったんだ」

「またまた〜。佐枝ちゃん先生俺らをからかわないでくださいよ」

「本当の話だ」

「せんせーその方法ってなんでございましょう……?」

「私は入学式の日に通達したはずだ。この学校にはポイントで買えないものはないと。つまり個人のポイントを使って強引にクラス替えができるということだ」

「ま、マジすか?! 何ポイントためたらそんなことができるんすか?」

「2000万だ。頑張って貯めるんだな。そうすれば好きなクラスに上がれるぞ」

「無理に決まってるじゃないですか?!」

 

「確かに通常では無理だろうな。しかし無条件でAクラスに上がれるんだからそれくらい高くて当然だろう。仮に一桁減らしたらAクラスは100人を超えるだろうな。そんなAクラスに価値はない」

「じゃあ、そのクラス替えに成功した生徒はいるんすか?」

「残念だが過去にはいない。理由は火を見るより明らかだろう。入学時からクラスポイントを維持し一切使用しなかったとしても3年間で360万。Aクラスのように効率よくポイントを増やしても400万。普通にやっても届かないようになっている」

 

「私からも一つ質問させていただいてもよろしいですか?」

 

 挙手したのは先ほどまで静観していた堀北。

 

「学校が始まって以来、過去最高どれだけのポイントを貯めた生徒がいるんですか?」

「いい質問だな、3年ほど前だが一人の生徒が1200万ほど貯めていたことが話題になったな。だがその生徒は貯め切る前に退学になった。退学理由はポイントを貯めるために知識の浅い一年生徒から次々と騙しとった詐欺行為だったな」

 

 それから部活の大会で優勝したらそれ相応のポイントがもらえることが伝えられて一部の生徒が盛大に嘆いていた。部活に入っていればよかったと。

 

「部活かぁ、テニスとか高いのかな? もしウィンブルドン出れたら3億2000万だもんね」

「部活でウィンブルドンに出られたら真剣にやっている選手の立つ瀬がないだろうな」

「確かに、じゃぁせいぜい20万ポイントとかかぁ」

「杏樹は興味があるのか、2000万で上がれること」

「んーそこに興味はないけど、科学部入るのもありかなって思って。勧誘されてるし」

「あぁコンテストとか出てるんだったな」

「まぁ要相談かなぁ」

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