Common life 日常的非日常   作:Dangelo

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探索篇です。


No,3.2

 青々と生い茂った緑は、森の中へ足を踏み入れるたびに色濃くなっていく。

 

 直射日光を避けられる分浜辺よりマシだが、ジメジメとした暑さは苦痛で、綾小路はクールネックの首回りを掴みバタバタと煽ぐ。ただその行為も焼け石に水だったようだ。綾小路の不快そうな表情は改善しなかった。

 

「高円寺ーー」

「あぁ、美しい。大自然の中に悠然と佇む私は美しすぎる! 究極の美!」

「巷で噂の筋肉美ってやつ?」

「ノンノン、ミズアンジェリーナ、私とただの物体を比較することがナンセンスなのさ。私という存在そのものが光り輝いていることが究極の美だからね」

「んーとつまり高円寺くんはエネルギーを持つ離散的量子ってことだね」

 

 違うだろ、何がつまりだ。そう綾小路は心の中で盛大に突っ込んだがそれを音にするほどの力はなかった。

 

 ダメだ……。成り立っていない会話を続け前を歩く二人に声をかけるのを諦めた綾小路は佐倉に声をかけることにした。

 

「偉いんだな」

「……え?」

「あと一人欲しいって言われて挙手をしただろ?なかなかできることじゃない」

「そんな、私は別に偉くなんてないよ。ほんと全然。今もまだどうしてこんなことになっちゃったんだろうって少し混乱してるの」

「ならどうして面倒な森の探索に手をあげたんだ?」

「だって……綾小路くんが手をあげたから、って違うんだよ?!話せる人がいないから、だからそのってあのそういうこと!」

「あ、おいあぶなっ」

「わきゃ!?」

 

佐倉は大木の根っこに気がつかず、足をひっかけて後ろに倒れ込む、慌てて綾小路は手を伸ばすが間に合わなかったようだ。間に合わせる気もなかったようだが。

 

「大丈夫か?」

「うぅ、痛い……」

「森の中でてきとうに歩いていると怪我するぞ、ほら掴まれ」

「……あ、ありがとう」

 

 綾小路は佐倉のことを引っ張り上げる。

 

「佐倉ちょっと急ぐぞ」

 

 先頭を突き進む高円寺とそれに簡単についていってる杏樹。綾小路にとって人生初の森だ、二人を見失ったらどちらの方向に自分たちが歩いているかすらわからなくなってしまう。ここで迷うわけにはいかないとペースを上げようと思うが、隣には佐倉がいる。彼女にこのペースは酷かとまた歩調を戻す。

 

「二人とも歩くの早いね」

 

 女の子の歩幅のことを何一つ考えていなさそうな高円寺はどんどん森の奥に進んでいる。まぁ隣に規格外の女の子がいるから一概に彼だけを攻められないが。

 

「それにしても、あいつまさか……」

「どうしたの?」

「いや、問題ない」

 

 高円寺と杏樹の足取りには迷いが一切ない。二人は何か目的があるように一直線に進んでいく。

 

「二人とも、あまり速いスピードで進むのはまずいんじゃないか? 迷うぞ」

「私は完璧な人間だ。この程度の森で道に迷うほど愚かではないさ。それにミズアンジェリーナは完璧な方位磁針の役割を担ってくれているからね。私たちに死角はないのさっ。もし困るときはそれは君たちが私たちを見失った時だろう。その時は諦めたまえ」

 

 結局、やはりというべきか、高円寺を綾小路たちは見失ってしまった。高円寺の良心によって杏樹は残していってくれたらしい。ただ、遊び心たっぷりの杏樹が木の影で出待ちをしていて油断していた佐倉を驚かせたのさえなければ完璧だった。佐倉が風呂に落ちた猫みたいに飛び跳ねていた。

 

「いやーさすがに疲れるね」

「さっきまで高円寺に悠々とついっていっていたお前が言うと嫌味にしか聞こえないんだが」

「なんか高円寺くん、わたしに求めるレベルが高いのか『ミズアンジェリーナならこれくらい造作もないだろう?』みたいなスタンスで……」

「まんまとそれに釣られて頑張ったんだな」

「That’s right」

「杏樹引き続き道案内頼めるか? 高円寺の認める方位磁針さを存分にはっきしてくれ」

「いいけど、どこ向かえばいい? 高円寺くんがいくであろう場所? それとも道?」

「とりあえず道で頼む。このまま道無き道を歩くほどスタミナが残っていない。佐倉もそれでいいよな?」

「う、うん!」

 

 杏樹は要望通りカーナビの役目を果たす。先程の高円寺との会話でこの島の配置を彼の独特な言語で伝えられたことを日本語訳しながら道への道を切り拓いていく。そして数分で開けたところに出た。高円寺語の解読は正解だったらしい。

 

「目的地に到着しました。ルートガイドを終了します。運転お疲れ様でした」

「カーナビは知ってるんだな」

「タクシー様様だよ」

 

 道に沿って歩いて行きしばらくすると道が途絶えた。

 

「うわ……すごい!」

 

 辿り着いたのは山の一部にぽっかりと大穴があいた洞窟の入り口だった。そこは一見天然の洞窟のようだが、よく見るとしっかり補強が施されている。

 

「綾小路くん……もしかしてアレ、スポットなのかな?」

「さて、どうだろうな」

 

 確かめるべく洞窟に近づいたところで穴の奥から人影が見えた。慌てて杏樹は手頃な木の上に飛びつき隠れる。綾小路は状況がイマイチ理解できていない佐倉の腕を引っ張って物陰へと引き込み隠れた。杏樹と綾小路はアイコンタクトで人影が去るまでここでじっとしているべきだという意見に同意しあう。

 

「この大きさの洞窟があればテントは二つで十分ですね葛城さん。それにしても運が良かったです。こんな早くスポットが押さえられるなんて」

「運? お前は今まで何を見ていた。ここに洞窟があることは上陸前から目星がついていた。見つかるのは必然ということだ。それと言動には気をつけろ、どこで誰が聞いているかわからないんだ。俺はリーダーとしての監督責任がある。些細なミスもしないように心がけろ」

「……す、すみません」

「次に行くぞ弥彦、スポットを押さえた以上長居は無用だ、あと二箇所ほど船から見えた道があった。その先にも施設等何かあるはずだ」

 

 言動には気をつけろと言う割には自分がどんどん情報を落としている葛城くんに杏樹は吹き出しそうになるのを必死に抑え肩を震わせていた。その様子を綾小路にジトッとした目で見られた。万が一杏樹が音を立てたら終わりなのだからそんな目で見るのだろうが、杏樹にとってそれもツボだったのだから大変だ。

 

 杏樹の無言の爆笑が落ち着いた頃には二人の姿は見えなくなってきた。

 

「……行ったようだな」

 

 杏樹も綾小路にOKサインを出す。

 

「悪い佐倉……佐倉?大丈夫か?」

「だだだ、だい、大丈夫、ぶ……はう、はふっ、し、死ぬかと思った……心臓止まるかも」

「二人とも大丈夫?」

「問題ない、杏樹は前世猿か何かか?」

 

 杏樹が木の枝から飛び降り地面に転がって受け身をとったあと立ち上がったのを見てそう言う。

 

「女の子に猿はナンセンスすぎない? リスとかオコジョとかそう言う可愛いのがいいなぁ」

「その二つならリスだな、食べる時とかそっくりだぞ」

 

 

「ーーで、あの弥彦くんがリーダーだね、わたしの視力2.5がカードの顔写真をしっかり見たからお墨付きだよ。ちゃんと髪の毛があった」

「入学前は髪があった可能性も否定はできないが……とりあえずそいつの苗字は知ってるか?」

「とつかやひこ。漢字はわかんない」

「十分だ」

「どどど、どうしようすごい秘密、知っちゃったっ、ね!」

「落ち着け佐倉、後で俺の方から平田に報告しておくよ」




綾小路の佐倉と杏樹に対する対応の差を出していきたい。
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