Common life 日常的非日常   作:Dangelo

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ベスキャンでのおはなし


No,3.3

 探索から無事戻り、杏樹が女子の中でだべっていると池達のチームが帰ってきた。

 

「川だよ川! ものすごくきれいな感じの!ここから10分もかからないから行こうぜ」

「それは大手柄だね。水源が確保できたら僕たちの状況は大きく好転するかもしれない」

 

 移動してきたところはキャンプをするにはちょうど良い場所だった。ベースキャンプが決まったところで後回しにしていた問題が戻ってきた。

 

「じゃあリーダーをどうするかだ。肝心なのはそこだからね」

 

 そこで何人かの女子が意見を言い出す。

 

「杏樹ちゃんか平田くんがいいと思う!」

「そのどっちかでいいんじゃね?」

「櫛田ちゃんか杏樹ちゃんがいいと思いまーすっ 」

 

 それに続いて何人かの男子も賛成の意見を示す。

 

「本人の意見も聞かなくちゃだよ、杏樹さんはどうしたい?」

 

 その推薦はありがたかったが本人は拒否した。

 

「んーわたしと、平田くん桔梗ちゃんは他クラスに名前知られちゃってるかもだから避けたほうがいいかも。リーダーじゃなくてもクラスをまとめるのはできるし。わたし的には鈴音ちゃんとかにやってもらいたいな、どう?」

 

 杏樹は平田や櫛田より他クラスに名前を知られているわけではないが、見た目が目立つのと一ノ瀬に少々知られすぎているところからリーダーはお断りしておいた。そしてみんなと協力するきっかけでも作れればいいのではと余計なお世話かもしれないが堀北を推薦しておいた。

 

「わたしも杏樹ちゃんに賛成! 他クラスから見てあんまり目立たないかつ責任感あるもん、どうかな?」

 

櫛田が杏樹の意見に援護射撃を打つ。それに平田くんも同意し、クラスの代表格はこぞって堀北を推した。

 

「わかったわ。私が引き受ける」

 

 そうして堀北が装置に触れ、川を占有することに成功した。

 

「これで風呂と飲み水の心配はなくなったな!」

「はぁ? 川の水飲むとか正気?」

「そりゃ泳いだりする分にはいいけど、飲むのはちょっと……」

「なんだよ、全然いいじゃんか。きれいな水だろ」

 

 やっぱり川の水を飲むのに抵抗がある人も多いだろう。

 

「平田くんほんとに大丈夫? 川の水飲むなんて普通じゃないよ」

「篠原。お前文句ばっか言ってんなよ。全員で協力しなきゃならない試験だろ、これって」

「ちょ、やだ笑わせないで。全員で協力って、それ須藤くんが言う?」

「俺がクラスに迷惑かけたことはわかってんだよ。だからこそ言ってんだ。つまんねーことで反感買ってたら、何それが自分に跳ね返ってくるってな」

 

 須藤はアレ以来何か思うところがあるらしい。少し成長しているようだ。

 

「ねぇ清隆くんベイビーがキッズになってるよ」

「確かに須藤は成長してるが……その例えは褒めてるのか貶してるのか?」

「そういうのは気にしちゃダメ、どっちにしろ可愛いってことだよっ」

 

「水の問題はとりあえず後にしようか、他には寝る場所についてだけどーー」

 

 テントの数はもちろん足りるはずがなく、二つのテントは女子で占有することになった。

 

 杏樹はテントの設置を終えると焚き火に困ってる綾小路たちを見つけた。そしてそれにアドバイスして小さめの枝や葉っぱを集めている池を手伝う。

 

「池くんこれとかいけそう?」

「そうそうこういうやつ、杏樹ちゃんもキャンプとかやってたの?」

「小さい頃、裏山によく家庭教師の先生に連れてってもらってその時に覚えた感じだよ、池くんは?」

「俺ちっちゃい頃から家族でキャンプとか行ってて、あとボーイスカウトにも入ってたからこういう系の知識はあるんだ」

「それはちょー頼もしいね!わたし泊まるとかはなかったからちょっと不安だったの」

「夜とか寝心地悪かったり、暗かったりって普段と違うとこもあるもんな」

 

「杏樹ちゃんと池くんが話してるとか珍しいね、何話してるの?」

「池くんのキャンプ知識を伝授してもらってる!池くんすごいんだよ焚き火の火一発でつけてくれたの」

 

 少し大きめの声で言うと、何人かがこっちを気にし始めた。

 

「へへっキャンプのことは俺に任せろって」

 

 その後池がキャンプ知識があることが広まったのか、山に生えてる果物を積極的に判別したりすることでみんなからの信頼を着々と得ていた。

 

「杏樹さすがだな」

「どうしたの清隆くん?」

「さっきので反対してた女子まで池に頼るようになった。狙ってやっただろ?」

「あぁ、適材適所ってやつだよね、わたし自由に動く方が好きだから。こういうの教える役目とかは適性持ってる人が積極的に動いてくれるとありがたいもん」

「そうだな、なら今回の試験、杏樹はどう動くつもりなんだ?」

「キャンプの基盤ができたらリーダーとかを探りにいくつもり。ちょっと試してみたいことがあるんだ。そう言う清隆くんは?」

 

「今回、俺は俺の平穏を守るために積極的に動くことになった」

「……どういうこと?」

 

 急に深刻な顔でそう語りだした綾小路に杏樹の動きが一瞬とまる。

 

「担任に脅されているんだ、Aクラスを目指さないと退学っていう当たれば一発ゲームオーバー、コンティニューが効かないチート魔法だ」

「それは大変。我ら普通会、会員番号2への援助は惜しまないよ」

「まだその会続いてたんだな」

「うん、任期は3年で退会不可だからね」

「なんだそのブラックな会は」

 

 二人は周りに警戒しながら顔を寄せ合ってお互いにしか聞こえないように現状について話し合っていく。

 

「ーーじゃあ潜入捜査するとしたらCかぁ」

「潜入ってなんだ?偵察じゃなくて?」

「そのままいって情報を聞いてもらってくる」

「冗談だろ?」

「本気だよ? わたしが頑張れば初対面でもみんなエスコートしてくれてプレゼントを用意してくれるから」

「……杏樹は何個びっくり箱を隠し持ってるんだ?」

「パパもママもびっくり箱の量産機だから、一人っ子のわたしは量産機1.5台ぶん?」

「そろそろ夢見る子供達へクリスマスにその能力分けてやった方がいいんじゃないか?」

「わたしもそんな気がする。清隆くんいる?」

「生憎お腹いっぱいだ」

「びっくり箱は食べれないよ」

「そうじゃない」

 

 

 綾小路と杏樹が話を脱線している間に平田が購入するものを決めてくれていたようだ。

 

 シャワー、調理器具、釣竿、栄養食、コップ代わりにこれから使っていくためのペットボトル。

最初では考えられないくらい男女お互いが妥協しあっていた。Cクラスからきた伊吹も受け入れることにしたらしく、櫛田が栄養食とペットボトルを伊吹に渡していた。

 

 

 食事の時間。皆平等に栄養食と水が配布された。

 

「なぁこうしてみると顕著だよな、女子連中もさ」

 

 食事をしていた山内がそれぞれのグループを指差す

 

「軽井沢率いる女帝チーム、櫛田ちゃんの仲良しチームに、篠原の傲慢チーム、そんでもって堀北と佐倉が一人ずつだ。ん? 杏樹ちゃんは?」

「ほらあれ見ろよ、くっそ」

「は? 綾小路のやつ何抜け駆けしてんだよ」

 

 指をさす先には綾小路と杏樹が食事を持ちながらなんだか楽しそうに話をしている姿。

 

「俺、決めたやっぱ佐倉を狙う、杏樹ちゃんは綾小路に譲ってやる」

「山内、佐倉に乗り換えんの?」

「いや、まぁうんそんな感じ」

 

 

 

「ねぇ清隆くんっ、一緒にあっちで食べない?」

 

 返事も聞かず杏樹は綾小路のジャージを引っ張る。杏樹の奇行に驚きながら少し離れたところに二人で座り栄養食をかじる。

 

「どうしたんだ?」

「恵ちゃんに行ってこいって言われて追い出されちゃった」

 

 そう言って杏樹がチラッと軽井沢の方を見る。

 

「そうか」

「キャンプが意外といい感じになってきたから明日、点呼後からCクラスに混ざろうかなって思ってる」

「場所の検討はついてるのか?」

「たぶん、砂浜付近だと思う。伊吹さんから聞いたから」

「俺は明日堀北と動く予定だ」

「鈴音ちゃん、大丈夫なの?」

「少し体調は悪そうだが、まだヘルプはもらってない」

「そっか」

「杏樹はあれ以来体調は大丈夫なのか?」

「うん、あれは乗り物酔いだから。普段の運動では三半規管むしろ強い方なのに乗り物系は苦手なんだよね」

「杏樹の数少ない弱点だな」

「そんなことないよ、猫舌だし睡眠不足に弱いしにんじん嫌いだし……」

「なんだか急に可愛らしい弱点が出てきたな」

「清隆くんも弱点ないじゃん」

「いや、友達が少ないことがまず弱点だろ。オレももう少しコミュ障を克服できたら……いや想像できないな」

「清隆くんはそのままでも十分素敵だよ、しかもコミュ障なわけではなさそうだし」

「オレは陰キャのコミュ障だぞ?」

「じゃ、わたしと話してる時はそう感じないよって言い方が正解かな?」

「たしかに杏樹とは普通に話せるが、そういうことなら世界中の人が杏樹の前ではコミュ障から解放されるんじゃないか?」

「んー、人と会話を続けるのは得意だけど、なんていうか、そうじゃなくて、清隆くんには自分の話ばっかりしちゃうというか、なんか清隆くんが聞き上手?って感じ。わたし家族の話とか昔の話は基本しないつもりだったんだけど、うっかり全部話しちゃってるし」

「オレには杏樹と違ってそんなたいそうな能力はないが」

「清隆くんが思ってるよりわたし、清隆くんのこと信頼してるのかもね」

「オレが悪いやつだったらどうするつもりだ?」

「なんか清隆くん悪い設定多いね。んーでも、わたしを凌駕する悪いやつだったらついていくし、わたし以下ならわたしについてきてもらう……かな?」

「それなら後者だな」

 

 

 一方それを遠くから見ていた軽井沢達に

 

「え、めっちゃいい感じじゃん」

「やっぱ二人って距離近いよね軽井沢さんナイス!」

「見てるだけだったら少女漫画みたいだよね二人って」

 

 なんて言われているのに二人は気付いていなかった。

 




杏樹の処世術が光るのは周り全員他人の時なんですよね。
両親の前=綾小路、恵の前<鈴音の前<クラスメイトの前<目上の人の前<他人の前<目的の人物の前
って感じに。使い分けてるんですね。

まぁ少なからず世の中みんなそんなもんでしょう。
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