Common life 日常的非日常   作:Dangelo

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No,4.7

綾小路side

 

「じゃあ俺たちも戻ろう、平田にも話を聞いておきたいところだしな」

「なあ幸村、今日軽井沢の様子が少しおかしくなかったか?」

「軽井沢の様子はいつもおかしい、というか様子がおかしいのは烏間もだろ、話し合いの中ずっと携帯と時計ばかり確認して、おまけに話を聞いてないときた。あいつらには向上心というものがないのか?」

 

 なんだか『こころ』のKみたいなことを言い出した。確かに遊ぶことや、恋愛に興じている人間という点で2人はあながち間違ってはいないかもしれない。実際、軽井沢は平田と付き合いながら町田とも仲良くしているし、杏樹は今から龍園のところだろう。

 

 ただそんなことをオレは聞いたのではない。違和感程度のものだが、軽井沢は確かに様子がおかしかった。その正体はオレにもわからなかったが……。

 

 入室前に切っておいた携帯に電源を入れると、佐倉からのチャットが入っていた。中を見てみると時間があれば会いたいとの連絡だった。

 

「ちょうどいいかもな」

 

 平田や堀北、そして杏樹以外から見たこの奇妙な試験の感想を聞いてみたいと思っていたところだ。もし佐倉自身の意見が聞けなくても、他クラスの様子くらいは教えてくれるだろう。

 

「えーっと、どこで落ち合うかな」

 

 とりあえず昨日と同じ所で会おうと伝えると佐倉からはすぐに了解の連絡がきた。

 

「……だと思うんだけど……ど、どうかな?」

 

ん? 佐倉と距離を詰めていくにつれ何か喋っているのが聞こえてきた。

 

「わ、私と、そ、その……で、でで、デー」

 

 誰かと話しているわけでもなさそうだ。でででとは何だろう。アレか、ピンクで丸い形をした約20cmのキャラクターが出てくるゲームのペンギンっぽい形をした大王がそんな名前だった気もする。

 

「悪い、オレはその手のゲームの知識はあまりないんだが……相談相手として大丈夫そうか? 外村とかーー」 

「トゥをおおおおおおおおおおお!!!?」

 

 ビャーっと飛び上がるように驚く佐倉にオレも驚く。

 

「い、いいい、今の聞いていた?!聞いちゃった??」

「でででと言っていたからゲームの話かと思ったんだが……忘れてくれ、で、用事ってなんだ?」

 

 佐倉があまりにもキョトンとした顔でこちらをみるのでゲームの話ではなかったらしい。初手の失敗を隠すために話題を変えようと、用件を尋ねることにした。

 

「えぇと、その、だから、あー……そ、そう! 今回の試験のことで悩んでて! 誰も知り合いいなかったから……」

 

 渡されたのは紙のリスト。

 

A 沢田、清水、西、吉田

B 小橋、二宮、渡辺

C 時任、野村、矢島

D 池、佐倉、須藤、松下

 

 

「すまん、池と須藤以外は全く知らないメンバーだ」

「あ、謝ることじゃないよっ、私の方が全然友達いないしっ」

 

 これ以上この会話をすると自分にいかに友達がいないかを語り合うなんとも寂しい会になってしまいそうだったので早急にまた別の話題に移る。最近気がついたのだが、コミュ力がある人間とない人間の差は話題が膨らませられるか否かなのではないだろうか。佐倉と話していると平均4回の発言で会話が途切れる。一方杏樹と話していると永遠に話が続いている、といっても杏樹の場合飛躍して別の話題になっていることもあるが。たぶんそういう小さな差が原因なのだろう。

 

「そうか、そういえばオレも佐倉に少し聞きたいことがあったんだが、いいか?」

「え? 私に?」

「ディスカッションが終わってから、山内に声をかけられたりしてないかと思ってな」

「山内くん……? 特にないよ、なんで?」

「そうか」

 

 無人島での試験で、オレは堀北を利用する時に間接的に佐倉も利用した。山内を動かすために、アドレスを教えると言ってしまったのだ。もちろん無断で山内にアドレスを教えるわけにもいかず、いまだこの件について山内と話をしていない。その余波が佐倉に及んでいるのではと危惧していたが、大丈夫だったみたいだな。

 

「とりあえず、思ったことがあったら連絡してくれ」

「いいの?」

「携帯は頻繁に見ているからな、特にこの試験中は」

「必ず連絡するねっ!」

「お、おう」

 

 勢いのある言葉にオレは少し後退りする。なんだかんだ、積極的になってきているって解釈でいいんだよな? 無人島から数日しか経ってないのに佐倉は不思議とひと回り成長しているように見えた。突拍子もない試験だったが、成長期の高校生には思わぬ影響を与えていたのかもな。

 

 

「ああああああやあああああのおおおおおおこおおおおううううじいいいいい!」

 

 佐倉と別れるや否や背後から迫ってきた影に覆いかぶさられた。そして首へと腕を回され締め上げられる。振り解くように逃げ振り返るとそこには鬼の形相をしたクラスメイト山内がいた。危ない、もう少しで投げ飛ばして締め上げるところだった。

 

「ど、どうした」

「どうしたもこうしたも、佐倉のアドレスを教えてくれるって話はどうなったんだよ! つか、今お前佐倉と何か話してたよな! やっぱり佐倉狙ってたのか!」

「別に狙ったつもりはない。ただ言いにくいんだが、一つ嘘をついてたんだ」

「嘘、ってなんだよ」

「人見知りのオレが佐倉のアドレスなんて知ってると思うか?」

「もしかして……今佐倉に聞こうとしてたのか?アドレスを?」

 

 オレはうなずいて見せると、山内は愕然と両膝をついて崩れ落ちた。

 

「つまり綾小路、お前はアドレスを知らないのに俺に嘘をついて……?」

「そうなる……な」

「それで成果は?」

「……悪い」

「悪いってなんだよ、俺が求めてるのは謝罪じゃなくてアドレスだぜ?」

 

「よくも、よくも騙してくれたなあああ!!!」

「だが、山内、お前もオレに杏樹の下着を託したんだからおあいこじゃないか?」

「いやっ、でもあれはああするしかなかっただろ……もういい俺は自分で聞く!」

「無理やり聞くのか?」

「ああ、そうするさ」

「佐倉が言ってたぞ、口だけの男は嫌いだってな、間違いなく嫌われるぞ」

「んなの、どうすりゃいいんだよ」

「佐倉がカメラが好きなのは知ってるよな? 今持ってるやつが不調らしい、新しいカメラをもし山内が用意できたとしたら?プレゼントしたらどうなる?」

「そりゃ喜んでくれるだろうけど、俺ポイントないぜ?」

「この試験で優待者のまま逃げ切ったり、裏切り者になったりすれば、デジカメを買えるポイントが手に入る。違うか?」

「俺が頑張れば佐倉と親しくなれるってことか、やる、やってやる! 俺は自力で佐倉を手に入れて見せる!!!!」

 

 なんとか怒りの矛先を逸らし試験に参加する意味合いを教えることに成功する。一つ怖いことがあるとすれば、適当に優待者を狙い撃ちして外すことだが……。山内が優待者を誤って外してしまったら、それはそれでいいかもしれない。目先の利益よりも未来の益だ。どちらにしろ兎グループは確実に勝つのだからDクラスのclが±0になるだけだ。杏樹には悪いが。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「えっと、こんにちは?」

「杏樹、こっちこいよ」

 

 龍園は自分の横をトントンと叩いて座るのを促す。

 

 案内されたのは雰囲気のいいラウンジ。お酒の飲めない生徒には縁のない場所かと思っていたが、一応ノンアルがある以上使用に制限はないようだ。杏樹はソファに座って寛いでいる龍園の隣に腰掛ける。

 

「お望みどおり、()()()()()()だろ? 気に入ったか?」

「センスいいね、龍園くん。まさかこんな所案内されるなんて、期待しちゃうな。わたしも注文していいかな?」

「好きにしろ」

 

 杏樹はシャーリー・テンプルを注文する。

 

 持ってこられたそれはルビーのような薄い赤色をしていて、杏樹の白い手を魅力的に写してくれる。グラスに唇をつける動作さえも相手からの見え方を計算し尽くしたものだ。ノンアルコールなはずなのに、杏樹の顔はほんのり赤くなり柔らかい雰囲気を纏っている気がする。これもママ直伝の接待術である。

 

「慣れてるな」

「慣れてる女の子は嫌い?」

「いや、タイプだ」

 

 最初はお互い腹の探り合い、上部だけの会話を進めていく。しばらくそれを続けていたが、龍園は唐突に切り出した。

 

「おまえみたいないい女がどうして堀北や綾小路とつるんでる?」

「清隆くんと鈴音ちゃんは席が近いから何かと話すの、それに……Dクラスにいい人がいると思う?」

「俺はいると思ってるが、どうなんだ?」

「人気で言えば洋介くんだけど、わたしのタイプじゃないし……彼女もちには興味ないの」

「綾小路はどうだ? よく一緒にいるだろ?」

「そんなに気になるの? んーと清隆くんは、顔がいいでしょ? 隣に立ってたら、わたしの魅力を引き立ててくれる、そう思わない?」

「まぁ、顔だけならそうだな。ただ、俺と話してる時に他の男褒めるのは良くないな」

「ん?」

 

 龍園は杏樹の肩を抱き寄せる。より密着することで、室内でクーラーが効いているはずなのに熱い。

 

「俺ならお前を最高の女にしてやれるぜ、どうだ?」

「わたし強い男の人がタイプなの、どう? わたしのお眼鏡にかないそう?」

 

 抱き寄せられてるから、必然的に上目遣いになる。はたから見たらこの二人からは映画のワンシーンのような美しさと色気が漂っていた。

 

「俺につけ、杏樹。お前がクラスを変えれるくらいのポイントは俺が用意してやる」

「いいの? そんなに簡単にわたしのこと信じて。もしかしたらわたしがその裏で鈴音ちゃんを操ってるのかもしれないよ?」

「裏切ったら俺はお前を半殺しにして、もうその綺麗な面が二度と見れないようにしてやるよ、怖くなったか?」

I'm that bad type(わたしもそういうタイプなの一緒ね)

「強気な女はいいな、その余裕そうな顔を崩したくなるぜ」

 

 ただの男女の会話は取引きへと変化していった。今は雇用条件の交渉をしている。ただ、龍園の手は少々悪戯がすぎる気もするが。まぁ服の上だから許容範囲だろう。

 

「俺のもんになった以上俺の言うことを聞いてもらうぞ」

「最初からそれが目的でしょう、守ってくれるならなんでもいいけど」

 

「ーーお前は櫛田の様子を俺に伝えることと、メールを送ったらその通りに行動すること。それが仕事だ。できるな?」

「どうして? わたしが守られる保証は?」

「危ないことは櫛田にさせるから問題ない。櫛田がきちんと動かなかった時の予備だ。最悪全部櫛田に背負わせればいい。ただし、これからは俺の言うことにいちいち疑問を持つな。説明できないことも多いからな。言ってる意味はわかるか?」

「あーあ、本当に悪い男に捕まっちゃった。まぁ龍園くんが最強で有る限り、わたしは龍園くんの言うことを聞くから心配しないで」

「その龍園くんっての、変えろよ杏樹」

「んーと、翔?」

「あぁ」

「桔梗ちゃんには私の仕事を伝えないでね? 警戒されちゃったら監視なんて不可能だから」

「もとからそのつもりだ、杏樹を退学させられたらこっちも困るからな」

「精一杯がんばるけど、その代わり時々ご褒美頂戴ね?」

「いつでも抱いてやるよ」

「初めては特別がいいからそれは却下」

 

 こうして、杏樹は協力者兼恋人の立ち位置を手に入れた。恋人と言うには微妙な関係だが。

 

 ただ、櫛田がCクラスに交渉を持ちかけているのは初耳であり、よくない情報だ。嘘の報告をするにしても慎重にしなくてはいけないし、杏樹が櫛田にCクラスと仲良くしていることを気づかれるのも厄介だ。

 

 とりあえず午後の話し合いの時間が近づいているということで今日は解散となった。




龍園をもっとエロく、漢らしく書きたいのに……。いつかもっとbad guyに修正します。
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