「よぉ、今日も3人で仲良しなことだな」
またもや会議の最中に彼が訪ねてきた。ただ今日はまわりの取り巻きをつれていない。
「龍園くん久しぶり」
「俺のことはなんて呼ぶんだったか?」
「なーに翔?」
「そうだ、いい子だ」
「気色悪いわね、そんなことをやるなら杏樹だけを連れてってくれるかしら?」
「落ち着けよ、今日は鈴音お前に用事だ。優待者を見つけ出す算段はついたか?」
「どんな考えを私がしているにせよ、あなたに聞かせるつもりはないわ」
「それは残念だな。ご考説願いたかったもんだ、しかしその様子じゃ優待者の絞り込みは進んでないように見えるけどな」
「随分面白い言い方ね。なら、あなたには優待者が誰かわかってるというの?」
「優待者の正体は既に分かり始めている。そう言えば信じるか?」
「信じないわ」
「杏樹携帯を貸せ」
「ん? はーい」
杏樹はスマホを軽く投げる。龍園はそれをキャッチし電源をつける。
「番号は?」
「01004651」
「ちょっと?! 杏樹何やってるの、他人に携帯を見せるなんて。しかもこの時期にそんなことするなんて……あっ」
「そういうことだ、学校側からのメールを見ればそいつが優待者か否かは判明する。こんなふうにな」
杏樹のメールボックスを確認して、堀北に見せる。
「クラス全員に携帯を提出させた。だから俺は既に3人優待者を把握している」
「……あなた正気? 強制させるなんて禁止事項に抵触しているわ。訴えれば退学になるのかもしれないのよ」
「おいおい。別に問題になんてなっちゃいない。問題になってないから俺がここにいるんだ。その意味がわかるか?」
絶対的な支配者だからできる強引な手法。
「翔、携帯返して」
「わかった、ほらよ」
携帯を渡した時と同じように投げて返され杏樹はキャッチして、そのままポケットにしまった。
「やっと状況がわかったようだな」
「……ええ。あなたが答えにたどり着いてないことがね。もし解き明かしていたとしたら、迷わず答えを学校に送ってるはず。試験は終わっていてもおかしくない」
「ただ俺が遊んでいるだけってこともあり得るぜ」
「いつ誰が答えに辿り着くか分からないもの。悠長には構えないはず」
「さて、と。俺は詰めの段階に入らせてもらうか。杏樹今日俺の部屋に来いよ、その代わり寝不足になるかもな」
「わたしそんなに安くないの、もっとわたしに尽くしてから言ってもらえる?」
「はいはいお姫様」
「今日の夜甲板でどう? 昨日は星が綺麗だったみたいじゃない?」
「後で連絡する」
そう言って龍園は去っていった。
「どこまで本当かわかったものじゃないわね」
そう言った堀北に綾小路は顔の前に人差し指を立てる。堀北は振り返るが誰もいない。綾小路は黙ったまま椅子の裏を覗き込んだ。そして顔を上げ堀北に見るように指示する。その間杏樹はひたすら話し続ける。
「あのね翔との初めてのデート? で言ったラウンジバーがすっごくおしゃれだったの。意外と女の子の気持ちがわかってて驚いちゃった。彼ってすっごくハンサムだしセクシーだと思わない?」
「その主観はよくわからんが、あそこってほぼ生徒が立ち寄らない場所だろ? すごいな」
「そう、これで普通にカフェで食事とかだったら醒めちゃうもん」
「今後の参考にしよう」
「そう言えば、こっちにはプロムがないって聞いたんだけどほんと?」
「プロムってあれか? 卒業の時にやるドレスコードありのダンスパーティーみたいな」
「そう、ハンナがあれは一生の思い出になるって。パートナーが最高でも最悪でも」
「そのパートナーが最悪な場合は最悪な思い出が残るってことか」
「そうかも」
『その携帯が彼のなら余計な真似はしないほうがいいわね』
「はぁ、あなたたち今日は作戦を立てるために集まったの、雑談をしにきたわけじゃないのよ?」
「悪い、なら龍園が言ってたこと本当だと思うか?」
「どうかしら……ただ可能性はあると思う。今回の試験あまり猶予があると言えないかもしれないわね」
「お前も大変だな」
「あなたたちには手足のように動いてもらうわよ、一刻も早くグループの優待者を見つけ出す必要があるから、後杏樹あなたのプライベートに口出しはしないけど行動には気をつけなさい。いつ何が原因で情報が漏れるか分からないんだから。特にいくら見られてもいいからって携帯の暗証番号を教えるのは危険だわ」
「わかったよ鈴音ちゃん、パスワードは変えとく」
杏樹はよく言ったという風にサムズアップする。
「はぁ、だが堀北言うは易し、オレに見つけられると思ってるのか?」
「あなたに過度な期待はしてないわ。ただ兎グループの情報が欲しいだけ」
「まぁ適当に頑張るよ」
龍園の携帯を放置して3人はその場から立ち去った。その後堀北からメールが届く。今から部屋に来いと。
「やっほー鈴音ちゃん」
「龍園くんに見せたメールどういうこと?」
「それは清隆くんと携帯のSIMを入れ替えておいたの。だからこれは清隆くんのメール」
「いつの間に?」
「優待者がわかったすぐ後」
「悔しいけど、それはいい考えね。私たちも今から櫛田さんとやったほうがいいかしら?」
「状況次第かな? 今携帯ショップに行くのを見られる危険性を考えると結構気をつけないと即バレの可能性もあるからね」
「そうね、あと他に黙っていることはある?」
「この試験の法則?」
「えっうそ、あなたわかったの?!」
「自己紹介って聞いた時から怪しかったんだけど、さっき優待者もう二人も清隆くんに聞いてそうかなって。干支の数字と名前順に優待者が決まってるんだと思う。わたしは兎で4。綾小路、一之瀬、伊吹、烏間で4。この通りだろ竜は5」
「確かに櫛田さんが5番目ね」
「つまり法則から優待者はわかった、ただわたしも鈴音ちゃんも清隆くんも裏切り者になれないからさ、この法則の利用の仕方にあんまり興味がないの。まぁそこらへんは鈴音ちゃん任せでいいかな?」
ミステリー小説のトリックを見破ってしまったら興味がどんどん下がっていくのと似た感じだ。解く前はあんなにウキウキしているのに答えがわかってしまったら急にどうでも良くなってしまう。ただここは現実世界、それがわかったら対処まで自分でやらなくてはいけない。杏樹はそれを堀北に丸投げした。
「そうね、ただこれがまぐれかそうじゃないかしっかり吟味する必要があるわね。まぁ必要なことは教えてもらったからここからはわたしの役目、ご苦労だったわ」
「じゃ、わたしは部屋に戻るね。あと勘違いしてるようだから言っておくけど、わたし龍園くんと恋人じゃないからそこんとこよろしく」
「えっ? ちょっと杏樹?!」