Common life 日常的非日常   作:Dangelo

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No,4.12

綾小路side

 

一之瀬が葛城に会いに行くと聞いてオレも堀北に会いに行くと言う程で便乗することにした。杏樹も連れて行こうと思ったが逃げ足が早くもうすでにいなかった。

 

「結構時間がかかってるみたいだね」

「龍園や葛城が話し合いの場を持つとは考えにくいけどな。それともBクラスの力が作用してるか」

「どうかな、神崎くんは場をまとめるタイプじゃないし……話をまとめるなら堀北さん達Dクラスじゃない? Dクラスのラインナップは相当だしさ」

 

 規定時間から10分が過ぎた頃ドアが開いた。先陣を切って出てきたのは葛城とAクラスの面々。

 

「一之瀬か、こんなところで何をしている?」

「少しだけ葛城くんに話があって、時間大丈夫?」

「問題ない、俺だけ残っていればいいのだろう?」

 

 葛城は後ろの生徒に先に行くよう指示をしていた。なんとなく話の輪に加わりつつオレは一之瀬の横に立つ。

 

「話の内容は、葛城くんなら検討がついていると思うけど。君が全てのグループに話し合いの拒絶をお願いしたのは本当? もしそうなら一度考え直してもらえないかな? 今回の試験は対話をもとに答えを見つけるもの、試験そのものが成立しないよね?」

「至極当然の疑問ではある。昨日の話し合いで耳にタコができるほど追求された。一之瀬にしては随分遅い接触だったと言えるほどにな」

「こっちもこっちの事情があるからね。それで、葛城くん。さっきの質問だけど、対話を絶つ考え方には賛同できない。考え直してもらえないかな?」

「これは誰が聞いてこようと同じことを答えるが、俺は勝つために戦略を立てている。そしてそこにはきちんとした理由があるつもりだ。お前は今回の試験対話ありきと考えている。だから否定的、賛同できないと言っているがそれは違う。俺はしっかりと()()()()()をしてその結論を出したのだから問題ない」

 

 今回は葛城意見の方が正しいとオレは思う。試験の結果は4通り。そのどれかの沿ってさえすれば正当性は成立する。あくまで葛城はAクラスのリードを維持するための手をうっただけに過ぎない。

 

 参ったなと頭をかく一之瀬に落胆の様子はない。あわよくば程度の期待だったというところだろうか。

 

「足掻くつもりか?」

「もちろん、それが試験だしね」

 

 たとえA以外の3クラスが結束しようともこの試験は簡単に勝てるものではない。優待者の正体を明かせば誰かが裏切る。裏切り者が得することになっている以上協力関係の維持は難しいのだ。均等に報酬を得られなければ協力する理由も生まれない。もちろん兎グループでもそれは然りだろう。

 

 葛城は話が終わるとその場から立ち去りまたもや廊下にはオレと一之瀬の状態になる。

 

「この試験はほんと守る側からすると楽だよね〜。余計なことはしなきゃいいもん。それにしても神崎くん出てこないな」

「神崎を待つつもりなのか?」

「綾小路くんは堀北さんを待つ予定なんでしょ? 話も聞きたいし、一緒に待とうかな」

 

 30分たってようやくもう一度ドアがあいた。

 

「あれ、綾小路くん? 堀北さん待ちかな? 入っていいよ」

 

 出てきた櫛田に尋ねる前に入室の許可をもらってしまった。待つのに時間がかかった分あっさりと入れてしまい肩透かしを食らった気分だ。

 

 部屋に入ると中には椅子に寛ぎながら座っている龍園とそれを睨みつけるように見る堀北と神崎がいた。

 

「よう、わざわざ偵察にきたのか? 遠慮せず座れよ」

「随分と面白い組み合わせだね。時間外で何を話し合ってたのか興味あるな」

「それにしても……俺も女のケツ追いかけるのは好きだがお前はそれ以上だな綾小路。鈴音といい杏樹といい、一之瀬といい、いつもケツに張り付きやがって」

 

 別にそんなつもりはなかったが、言われて見れば否定できない。龍園もオレに興味があるわけじゃないのだろう、それ以上何か言ってくることはなかった。

 

「良いところにきたな一之瀬、お前に面白い提案があるぜ」

「くだらない話よ。耳を貸すだけむだね」

 

 龍園の言葉にすぐ堀北が反応する。そこから察するに堀北も同じ提案をされたのだろう。

 

「Aクラスを潰すための提案だ。悪い話だとは思わないんだがーー」

 

 3クラスで情報を共有し、Aのみを狙いうちしようという提案だ。この提案は結局棄却された。龍園は残念だなと良いながら少しも残念そうな態度を見せず去っていった。

 

 

 

 次の日に1日休息日を控えた今日。オレが部屋にたどり着くと珍しくCクラスの女子がAクラスの町田のまわりに群がっていた。

 

「ねえ町田くん。今日これが終わったら私たちと遊びに行かない? 女子3人で遊ぼうってなったんだけど、遊び相手が見つからなくて」

「……そうだな」

 

 対話には参加しない町田だが、その存在感は女子の中では強い。一之瀬や伊吹、そして杏樹を除く女子は全員町田に興味があるようだ。別に羨ましくない。……オレには杏樹と言う最高の友がいるじゃないか。

 

 Cクラスは半分優待者を見つけることを諦めているのか、あるいは作戦か、町田を遊びに誘っている。こうして男女の仲は深まっていくんだろうか。町田も満更ではないようで、考えたそぶりを見せつつも少し嬉しそうだった。女子に誘われて嬉しくない男子はいないだろう、たぶん。

 

 次に来たのは杏樹と軽井沢。今日はギリギリじゃないのか、珍しい。

 

「ちょっと、そこあたしの場所なんだけど?」

 

 遅れてやってきた軽井沢が先に来ていたCクラスの生徒を鬱陶しそうに睨みつけた。他の女の子が町田と親しそうに話していた場面を見つけて、より苛立ちをあらわにする。

 

「意味わからないんですけど。あなたの場所って何。どこか適当に座ればいいじゃない」

「あたしそこがいいの、どいて」

「はあ? 今町田くんと話してるんだけど。夜遊ぶ約束してるところなんだから」

「ねぇ町田くんからも言ってくれない? あたし達が隣って」

 

 少し困った様子で町田はどちらの味方をするべきか逡巡しているように見えた。しかし、その様子をすぐに理解した軽井沢は真鍋と町田の間に割り込んで手を握り込む。そして杏樹は困った顔をしながらちゃっかり町田から真鍋以外の二人が見えなくなるように動く。つまり2対3から2対1の状況を作り出す。

 

「今度杏樹と3人で遊ぼ? それとも、こっちの子たちと遊ぶって言うならこの話はなしにするけど……」

 

 美の暴力だ。杏樹も軽井沢も美少女だからこそこの作戦が成り立っている。しかも2人きりにならなければ、平田と付き合っている軽井沢としても一応問題ないのだろう。杏樹もそれを理解しているのか『わたしも町田くんと遊んでみたいな』なんて言っている。

 

「どいてやってくれないか? 前と同じ席でいいだろ」

「は……? 何それ、ムカつく」

 

 勝者は軽井沢、杏樹チームだったようだ。まぁそうだろう。二人に対抗できるのは櫛田や一之瀬くらいだろうからな。オレの知っている女子が少ないだけでもっと対抗馬はいるのかもしれないが、真鍋たちに関しては申し訳ないが勝ち目は薄かった。

 

 こっちだってあんたの隣はごめんとばかりに女子はその場から離れていった。そして空いたスペースに杏樹と軽井沢が座る。杏樹は座れたことに満足したのか、タブレットを取り出して何かを読んでいる。軽井沢はほぼ町田に密着するような……いや、もはや体が触れ合っている。その行為を軽薄だと感じないのは、すでに軽井沢の人となりがわかっているからだろうか。軽井沢は平田と付き合っている。その事実を知ってか知らずか、町田は軽井沢に対し心を開くと言うか、好意を持ち始めているようだった。好かれている側からすれば守ってやりたくなるのかもしれない。

 

 面白いもので、ついこの間できた即席グループで力関係を含めた独自の生態系が生まれている。ボッチの人間はボッチ、媚びる人間は媚びる。仕切る人間は仕切る。だが、まるっきり普段と同じわけではない。例えば仕切る人間が2人いれば一人は振り落とされる。そしてその戦いに負けた者は一つ以上の階級を落とされる。場合によっては一気に最下層だ。

 

 この試験の面白いところは普段敵として警戒している連中と組まされることにある。仲間内では絶大な人気を誇る一之瀬だが、明らかな敵には影響力が薄い。これが平田であればもっとまとまりのあるグループに仕上げるのではないだろうか。

 

「みんなよろしくね」

 

 一之瀬がやってきて辛気臭い部屋に活気をもたらす。場の空気が重いことはすぐに気がついたと思うが、不用意に話しかけたりはしない。

 

 それにしても軽井沢の行動は強引すぎるし不可解だ。本当に町田と親しくなりたいのだとしても、あそこまでに露骨に揉める必要はない。ただ、このことと試験は直接関係ないようにも感じた。

 

 今回のグループであれ、軽井沢は自らが一番でありたいと思っているのだろうか? もちろん女子でトップに立つのは容易なことじゃない。一之瀬みたいに求心力のある才女であれば別だが、そんな能力は軽井沢にはない。しかし、学校生活においては『人間関係』こそがカースト制度の上下を決める。事実軽井沢は強気な物言いと態度でDクラスのリーダーになった。それに杏樹も積極的に貢献している。さらに平田というクラスの導き手の彼女の座を確保したことでそれが強固になった。

 

 だから男子の中で一番発言力のある町田を手中に収めようとするのは自然である。事実Cの生徒達は町田に逆らえない状況に渋々引き下がっているのだから。なら、嫌われる覚悟で場を支配して得られるものはなんだ。

 

優越感?

自己満足?

自己顕示欲?

 

 根底は見えてこないが、そう言った類の何かであることがうっすらと見えてきた。

 

「よくないな……」

「そうだな。このまま言ったら優待者の勝ち逃げを許す」

 

 オレの言葉を試験の心配と捉えたのか、隣の幸村が答えてきた。

 

「さてさて、今回もAクラスは対話に参加しない感じ?」

「もちろんだ。勝手に話し合いをしてくれ」

 

「じゃあ、無言もあれだし今回もトランプで遊ぼうか。杏樹ちゃんまたシャッフルやる?」

「うん、やりたい」

 

 杏樹はなんというか、自分に素直だな。

 

 杏樹はコツをつかんできたのか徐々に縛りを設けていても勝てるようになってきたようだ。まぁババ抜きは勝つ気がないのだろう。表情をそのまま出したり、ジョーカーだけ弱く持って遊んでる。

 

 結局また1時間トランプをして解散となった。

 

「戻ろう。綾小路も行くだろ?」

 

 それと同時に軽井沢が杏樹とどこの店の料理が美味しかっただの話をしながら外に出ていく。そしてオレ達の脇をCクラスの3人が通り抜けていく。

 

「今の3人どうも様子がおかしくなかったか?」

 

 幸村も何かに気づいたようで、少し怪訝な顔を見せる。

 

「一悶着あるんじゃないか?」

 

 幸村とオレの視線の先には軽井沢と杏樹の後ろをぴったりつけていく3人。先ほど町田に関してもめたメンバーだ。

 

「一応追いかけるか。暴力沙汰にはならないと思うが、騒ぎになるかもしれない」

「全く烏間も軽井沢も面倒くさいことを……綾小路仲良いならなんとか言っておいてくれ」

「いや、オレたちはただのだべり仲間兼、堀北の使いっ走りだ。そんなことをいったら煙たがられるのが関の山だ」

「そういえばそうだったな」

 

 非常階段の扉が閉まる音が聞こえた。こっそりオレ達は扉を開けると、声が聞こえてくる。

 

「ちょっと、こんなところに連れ込んでどういうつもり?!」

「とぼけんなよ。あんたがリカを突き飛ばしたんでしょ? それに関する話よ」

「突き飛ばされたのは真鍋さんじゃないんでしょ? 本人同士が話し合う話じゃない? こんなところに無理やりはおかしいって」

 

 順に軽井沢、真鍋、杏樹の声だろう。

 

「あたしらこれから用事なんだけど、どいてくんない?」

「だったら確認させてよ。今ここにリカ呼ぶから。それであんたじゃなかったら許してあげる」

「それ、リカさんが裏で組んでたら絶対わたし達に勝ち目ないよね? やっぱ帰ろ恵ちゃん。先生に報告しにいこ?」

「先生に報告って何を? 私たち別に暴力振るってないし、なんなら突き飛ばしたこと問題にしてもいいんだよ」

 

 逃げようとした杏樹と軽井沢はそれぞれ腕を掴まれている。軽井沢に関していえば壁に押し付けられている。真鍋が携帯で連絡しようとすると軽井沢が静止するよう言う。

 

「……今思い出したのよ。前にあたしとぶつかった子がいたこと」

「白々しい。最初から覚えてたくせに。まぁいいわ、ちゃんと謝るわけ?」

「そうじゃない。あれはあの女が悪かったのよ。鈍臭い子だったから」

「こいつまじムカつく。リカに謝るならさっき私たちにしたことは忘れてやろうと思ったのに」

 

「どうせ最初から許すつもりなんてないくせに」

 

 杏樹がそう言うと腕を押さえていた子が杏樹のことを床に押さえ込む。杏樹は素直に倒された。

 

「志保ちゃんやっぱこの2人無理」

「でしょ? 絶対リカに対してもこんな感じだったと思うんだよね。本気で虐めちゃう?」

 

 今度はさっきよりも強く掌で軽井沢の肩をついた。幸村はとっさに扉を開けようとしたがオレはその腕をつかんで静止する。この段階で止めても杏樹と軽井沢が奇襲をかけられるだけだ。

 

「はあ、はあっ」

「ちょっと?! どいてっ」

 

 杏樹が押さえつけていた子を振り払い、軽井沢に駆け寄る。

 

「今更女の子ぶったって許してやらないから」

「これからの攻撃は明らかに過剰。これ以上言うのはおかしい、恵ちゃんがやったのはぶつかっただけ。しかもリカさんにでしょ? 部外者は見守るだけでしょ」

「あんただって部外者じゃん入ってこないでよ」

 

 杏樹は軽井沢の背中をさすって必死にケアをしているようだ。

 

「私軽井沢の顔嫌い。ブッサイクじゃない?」

「いえてる、いっそズタズタに切り刻んじゃう?」

「や……やめて……」

「大丈夫だよ恵ちゃん、こんな子の言うことなんて気にしないでいいんだよ?」

「こんな子って何よ、てか軽井沢なんか庇うなんて人間として大丈夫?」

「好きにいえばいいじゃん、恵ちゃんの容姿に嫉妬してるからって見苦しいよ」

 

 軽井沢は杏樹に抱きつきながら小刻みに震えている。その姿にいつもの面影も一切感じない。

 

 杏樹が軽井沢を抱え動けないことに、とうとうCクラスの足が出る。

 

「あんたも顔だけだよね、アホだし。見た目だけ同士仲良くしたってとこ? てかあんたの顔品がないよね、その顔で何人の男喰ってきたのか私らに教えてよ」

 

 杏樹の白いワイシャツに靴の跡がたくさんついていく。それでも杏樹は表情を崩さない。

 

「お前達何してんだ」

 

 とうとう幸村が我慢できなかったのか出て行ってしまった。

 

「何って……別に? ねえ。二人と話してだけだよ」

 

 杏樹と軽井沢を無理やり立たせてそう言うがそれに黙ってる2人じゃない。

 

「ねぇ幸村くん何か一言言ってやって、こいつらあたし達拉致って暴力振るってきたし。まじ最低じゃない? うざいから消えろとか言われたし、他にもいっぱいひどいこと言われたし」

「軽井沢さんとリカの問題で手を貸してただけ。ぶつかった話は聞いてるでしょ」

「……穏便にした方がいいんじゃないか? ぶつかったのだって軽井沢に悪気があるとは思えない」

「あんたは黙ってて。関係ないでしょ」

「……」

 

 軽井沢は情けない男を見る目で幸村を見つつ携帯を手にした。

 

「さっさと立ち去りなさいよ。じゃなきゃ人呼ぶから」

「何、呼ぶって誰を? 平田くん? 町田くん? それともヤリマンのあんた達には他の男でもいるわけ?」

 

 その煽りには杏樹が反応する。

 

「じゃぁわたしが翔よぼっか、翔のクラスの子に蹴られたんだけどって言おっかな?」

 

「は? 翔って誰?」

「龍園くんって意外と知名度ない?」

 

「絶対リカに頭下げさせるから」

 

 Cクラスの面々は顔を青ざめながら捨て台詞を言って逃げて行った。さすが龍園、影響力はすごいのだろう。杏樹は多分報告はしないだろうが。

 

「大丈夫か?」

「これが大丈夫に見えるならメガネの度を変えることをおすすめするよ」

 

 そう言って杏樹はワイシャツをめくった。蹴られてすぐなのに脇腹には内出血が浮かび上がっているが、そうじゃない。

 

「おいっそれはアウトだろ」

 

 オレは慌てて服を戻すよう杏樹の手を掴みワイシャツを下げさせる。隣の幸村は顔を真っ赤にしている。

 

「じゃ、わたしは恵ちゃんと部屋に戻るね」

 

 杏樹はそう言って軽井沢の背中をさすりながらオレ達の横を通って行った。その時に杏樹にエルボをくらったのは、気づいてて助けなかったことに対してだろう。これで内出血ができたら杏樹とおそろいの場所だな。あとで医務室に湿布でももらいにいくか。もちろん急所は外していたようだが結構痛そうだったしな。




今日は杏樹ちゃんの誕生日ですね。原作軸ではまだ真夏ですが。
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