「試験お疲れ様〜。はぁ、すっごく眠い」
杏樹は綾小路と平田と軽井沢そして堀北と須藤が集まっているところに向かった。
今の時刻は22:58。もうすぐ結果発表のお時間である。
「さっきの立て続けのメールだけど……」
堀北が言及してるのは二時間前に立て続けに送られてきた4通のメールのことだろう。
「うん、僕もそのことが引っかかってたんだ」
「馬グループは南くんが優待者だったわね」
「うん、つまり南くんは正体が見破られた可能性があるってことだ」
「4通のメールが届いたのはほぼ同時、つまりどこかのクラスが示し合わせて送った可能性が高いわ」
「あれ、鈴音ちゃんじゃなかったんだ。わたしてっきり法則を見抜いてたからそれぞれ指示を出したと思ったんだけど」
「確かにDクラス内であの法則は当てはまったけど、他クラスの優待者を知らない以上危険なかけは避けるべきと思っただけよ」
「えっ堀北さん法則気づいてたの?!」
「えぇ、よく考えたんだけどやっぱり法則があると信じ込んでランダムだった場合の損失が大きいもの。せっかくサバイバルで得たクラスポイントをダメにするなんてみんなが許さないでしょうし、私は確実さを優先するべきだと判断したの」
「ちなみにどんな法則だと思ったんだい?」
「名前のアイウエオ順と干支の数字よ」
「えーっと、竜は4だから櫛田さんか確かにあってるね」
「ん……待って、そしたら兎は綾小路くんじゃないじゃん! どういうこと?」
「兎の優待者は杏樹よ」
「嘘、まじ?! 杏樹? そんな感じ全然なかった。てかむしろ……」
「恵ちゃん、これはそういう試験だよ」
「うっわ、すごっ」
軽井沢は杏樹と綾小路を交互に見て大きく息をはいた。協力者の優秀さを改めて突きつけられてなんだかヤバイところに足を突っ込んでしまったかもしれないと今更少し焦っているようだ。
「やっぱりここにいたのか」
8人目の来訪者がカフェにやってきた。
「龍園……」
須藤が威嚇するように立ち上がるが、それを無視して龍園は近づいてくる。
「鈴音と杏樹を両手に結果を楽しもうと思ってな。わかりやすい場所にいてくれて助かったぜ」
「ええ。頭の悪いあなたがわかりやすいようにここを選んであげたの。感謝して」
「それにしても鈴音。お前にしちゃ随分大所帯だな。どういう心境の変化だ?」
「あなたにしつこく付き纏われているって相談してたのよ」
「珍しいこともあるもんだな」
龍園はどっかりと腰を下ろし、杏樹の肩に手をまわしている。
「もうすぐ発表だが手応えはあるのか鈴音?」
「それなりにね。あなたの方も随分と余裕そうね」
「クク。そうでなきゃわざわざ出向いたりしないさ。ちょうど前回と同じ連中もいる。やめとけ鈴音。今余計なことをすれば恥をかくのはお前だぜ? オレはグループの優待者がわかってるんだから」
「それはよかったわね。結果が楽しみね」
「結果を待たなくても竜グループの優待者が誰だったか教えてやってもいいぜ?」
「申し訳ないけど負け犬の遠吠えにしか聞こえないわ。すでに試験は終了していて、わたしの竜グループでは裏切りが出なかった。それが意味することはひとつなのよ」
「俺の慈悲深さを知れば股を濡らすかもしれないな」
「……だったら教えてもらおうかしら、竜グループの優待者が誰だったか」
「櫛田桔梗」
「え……?」
「悪いが二日目の時点で気付いてたぜ。櫛田が優待者だってな。お前の目の動き、口の動き、呼吸、動作、口調まで体のありとあらゆるところから見抜いたのさ」
「冗談でしょ……」
「認めたくない気持ちはわかるけどな。お前がグループの中で一番無能だったてことだ。相手が悪かったのさ。それに今回の試験は荒れに荒れてるはずだからな。特に顔面蒼白になるのはAクラスだ。安心しろ」
メールが一斉に届く。通知音が室内に鳴り響く。
Aマイナス200cl
B変動なし
Cプラス150cl
Dプラス50cl
「Cクラスがトップ……」
「よかったな鈴音、お前の失策で漏れた竜グループはまさかの結果1だ。これでクラスが大金を手に入れることになったな」
◆
この結果には裏がある。もちろん杏樹と龍園の間でだ。
軽井沢がいじめを受けている間、杏樹は龍園とある取引をしていた。
「そうだっ龍園君。優待者の法則、知りたくない?」
杏樹は雑談の中に唐突にそれを混ぜ込んだ。
「あ? どうしてお前がそんなこと知ってるんだ?」
「鈴音ちゃんに聞いたの、鈴音ちゃん自身は確信がないから使わないと思う法則。で、どう?」
龍園はしばらく考えた後口を開いた。
「対価は」
「優待者の法則を聞いた後でも兎グループは好きにさせてくれること、それと翔のppで毎月1000×Cの裏切りの数、3月まで私に頂戴? わたしはppさえもらえればそれでいいから。むーそんな疑わなくても……だってわたしいつかクラス変えるかもしれないでしょ? その時にこのクラスポイントで不利になるのはごめんだから」
「鈴音はこの取引について知ってるのか?」
「もちろんわたしの独断。どう?」
「乗った」
対価の少なさと、堀北がする取引ではないという考えから決定されたようだ。
「はい、これ。今回の優待者一覧、法則は見ればわかるよね?」
「干支の数字と名前順か、確かに理に適ってるな。Cクラスのとも一致する。ふっ……お前優待者だったんだな」
「えへへ、そう。約束破ったらダメだからね」
杏樹は胸の前でバッテンマークをつくる。
「あぁ、わかってる。鈴音のおどろいた顔がみれるのが楽しみだぜっ」
杏樹としては別にこの交渉自体に大きな意図はなかった。ただ、どうせ堀北は確証がないから使わない法則を誰かに使って欲しかったのと、自分のprが欲しかったのと、先に龍園が法則に気づいてしまった場合杏樹のグループの邪魔をする可能性を防ぎたかったのと、そして龍園からそこそこの信頼を得たかっただけだ。
まぁだけと言うには少し多いが。
櫛田よりもわたしの方が有能ですよ、害ないですよアピールを龍園にする。ただ自分のポイントのために動く人間と、誰かを退学にさせたがっている人間。どちらが使いやすいかはわかるだろう。平穏のためには盾がたくさんあるに越したことはない。杏樹なりに自分の身を守る方法を何個か考えた結果だ。
そして二学期からは櫛田との関わり方を今一度しっかりと考える必要があるかもしれない。二の舞にならないようにしなければ。
とりあえず彼女が堀北の退学に意識が行っている間はまだ穏やかに時が進むだろう、そう願いながら杏樹はバカンスを終えた。
4巻完結です。ここまで読んでくださっている皆さん本当にありがとうございます。これからも追いかけてくれると嬉しいです。(アニメ二期決定嬉しいですね
)