Common life 日常的非日常   作:Dangelo

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第五巻(途)
No,5.1


「やっぱ堀北さんの予想当たってたんだ。てことはもしあたし達の方が先に裏切ってたらもっとクラスポイントももらえてたって事?」

 

 場所は混雑するカフェ『パレット』の一番奥のテーブル席。夏休み明け杏樹は、綾小路と平田、軽井沢と堀北というメンバーで昼食のテーブルを囲んでいた。

 

 目的は夏休みの特別試験の復習。優待者当ての答え合わせが行われていた。

 

 

「とうとう堀北も話し合う気になったか」

「仕方ないでしょう。夏期の試験はどちらも私一人には攻略しきれない特別なものだった。今後もそれが予想されるとすればある程度繋がりを持つことは必要になってくるもの。杏樹や綾小路くんに頼むといつの間にか私の手から離れて好き勝手やっているみたいだし。橋渡し役は任せられないわ」

「清隆くん、めっちゃ失礼なこと目の前で言われた気がするんだけど」

「激しく同意する」

「そんなこと言ってるけど、それならあなたたちは従順に動いてくれるのかしら?」

「オレはいつも従順だぞ」

 

 

「このように話し合いの場を持つのは大賛成なんだけど、一つ僕からも提案があるんだけどいいかな?」

「聞いてから判断するわ」

「まずはクラスを一丸とするために、櫛田さんを仲間に引き入れたいんだ。僕たち5人で補いきれない部分を彼女なら補ってくれると思う。池くんや山内くんを始め、男子の一部をまとめきれる人は限られているからね」

 

堀北はバッサリとその意見を切った。

 

「不要ね。赤点組をまとめる必要を感じないわ。私たちだけでもやれると思ってあなたと軽井沢さんのみに声をかけたのよ。二人が力を貸してくれれば問題は打破できる。どこかの誰かさん達のように気まぐれだったり捻くれていれば別かも知れないけど」

 

「(またわたし達失礼なこと言われてるよ清隆くん)」

「(本当に失礼なやつだ)」

 

「確かに。綾小路くんはよくわかんないけど、杏樹をコントロールとか無理そうだもんねー、なんかよく懐いた野良猫みたいな感じ」

「待って恵ちゃん!わたしのことそんな風に思ってたの?!」

「でも、杏樹飼われるタイプじゃないじゃん」

「……まぁそうだけどさぁ」

 

「杏樹はそうかもしれないが、オレがひねくれものだというのはお門違いだ。長いものに巻かれる群集の一人。まさにお前の言うコントロールできる人間。つまり小さい人間ってことだ」

「自分が小さい人間と言える人は小さくない。それが一つの答えよ」

「じゃあお前は小さい人間なのか?」

「私?私が小さい人間なわけないでしょう?バカにしないでもらえる?」

 

「…小さい人間と言える⇨小さい人間でない。小さい人間と言えない⇨小さい人間である。まぁこれは対偶じゃなくて裏だから命題の真偽は一致しない……か。いい例だね鈴音ちゃん」

「あなたは何を言ってるのかしら?」

 

その様子を本人達以外は呆れた目で見ていた。

 

 

午後の授業は二時間ホームルームになっている。

 

「今日から改めて授業が始まったわけだが、二学期は9月から10月はじめまでの一ヶ月間体育祭にむけて体育の授業が増えることになる、新たな時間割を配るためにしっかり保管しておけ。それから時間割表とともに体育祭に関する資料も配っていく」

「先生、これも特別試験のひとつなんですか?」

 

クラスの代表として平田が挙手した後に質問をする。

 

「どう受け止めるのもお前たちの自由だ。どちらにせよ各クラスに大きな影響を与えることは違いはないがな」

「っしゃ」

 

 運動に対して自信を持つ須藤たち一部の生徒はここぞとばかりにテンションをあげていた。

 

「すでに目を通して気付いているものもいると思うが、今回の体育祭は全学年を二つに分けて勝負する方式を採用している。」

「うお、そんなことあるのかよ」

 

体育祭のルールを見ながら杏樹はぼんやりと昔の会話を思い出していた。

 

「僕たちE組は体育祭でA組と棒倒しで委員長の退学をかけて勝負をしたんだ」

「でも渚、人数が2倍違ったらほぼ勝ち目がないじゃん」

「そうなんだ。しかも相手には急遽交換留学で来た屈強な外国人生徒が4人もいてね……浅野くんも本気で僕たちを潰しに来てたよ」

 

渚は苦い顔をしながらそう言っていた。

 

「じゃあ負けちゃって退学?」

「それは違うよ。僕たちE組は他のクラスよりちょっと結束が強くて、人徳のあるリーダーがいて、奇襲や騙し討ちが得意だったからね。結果は()()()()と勝利だよ」

「どうやったの?」

「それはねーーーー」

 

 渚たちの武勇伝のあとにはだいたいあの記憶までセットで思い出されるのは仕方がないのかもしれない。彼の頬に傷がある顔が襲ってくるようなそんな感覚に悪寒を感じた。これはあれだ。彼氏との映画デートの思い出を振り返っていたら見たホラーまで思い出して怖くなるやつだ。そんな経験はないから想像でしかないが。

 

「残りの20分は好きに使って構わない雑談するのも真面目に話すのも自由だ」

 

 一人で何かと戦っていた間に体育祭の説明は終わっていたようだ。慌てて資料に目を通し、後ろを振り返ると既に須藤や池、山内などが壁になっていて綾小路や堀北の姿が見えなかった。

 

話しかけるのをあきらめて杏樹はトイレに立つことにした。無性に口をゆすぎたい気分だ。

 

 

 二時間目のホームルームは全学年の顔合わせが行われるらしい。ぞろぞろと人の流れに沿って杏樹も体育館に歩いていく。

 

「俺は3年Aクラスの藤巻だ。今回赤組の総指揮を取ることになった。1年には先にアドバイスしておく。一部の連中は余計なことだというかもしれないが、体育祭は非常に重要なものだということを肝に銘じておけ。体育祭での経験が必ず別の機会で生かされるはずだ」

 

 指揮を取るのは生徒会長ではないらしい、まぁ指揮を取ると言っても3年は1年に大きく干渉することはないようだ。学年で頑張れって感じのスタンスらしい。

 

「今から各学年で集まり方針について話し合ってくれ」

 

赤はAとDの共同、白はBとCの共同。杏樹的にはCとペアが良かったが仕方がない。杏樹は龍園とはバカンス以降もいい関係を築いている。まぁ毎月5000prのお小遣いをもらう関係とでも言っておこう。P活ではない。

 

「奇妙な形で共闘することになったがよろしく頼む。できれば仲間内で揉め事を起こすことなく力を合わせたいと思っている」

「僕も同じ気持ちだよ葛城くん。こちらこそよろしく」

 

 平田と葛城が挨拶している間杏樹は一人の女の子に近づいていた。

 

「坂柳さんだよね? Dクラスの烏間杏樹です。今回の体育祭ではよろしくね?」

「こちらこそ、私は体育祭自体は参加できませんが……烏間さんとは一度じっくり話したいなと思っていました。よければ有栖とお呼びください」

「わたしのことも杏樹でいいよ有栖ちゃん」

 

『私はあなたのことを小さい頃から知っています。本も持ってるんですよ』

『そうなの? あー恥ずかしいな』

『それで、あなたはなぜDクラスなのですか?』

『それはわたしより理事長せんせに聞いた方がいいんじゃない?』

『あら、私の父のことをご存知で』

 

「坂柳ってもっとやばそうなやつかと思ってたけどめっちゃ可愛いじゃん」

「あそこの二人やば異次元」

「何話してるんだろ? てか何語?」

 

 杏樹と坂柳は周りから自分たちが何を話しているかわからないようドイツ語でお喋りをしていた。スパイごっこみたいなものだ。

 

 自分たちが注目を集めているのに気付いたのだろう、坂柳が一言謝罪する。

 

「私に関しては残念ながら戦力としてお役に立てません。すべての競技で不戦敗となります。自分のクラスにもDクラスの皆さんにもご迷惑をおかけするでしょう。そのことについて最初に謝らせてください」

 

 誰もそれに批判することなく、みんなすんなりと受け入れていた。その後は平田と葛城が今後の方針を固めている中、坂柳と杏樹は違う話をしていた。

 

『本読んでるなら知ってるんじゃない? わたしが2Eだって、だからじゃないかな?』

『それを言うならわたしは運動は全て禁止されていますがAクラスです』

『んー確かに、じゃあなんでだろう?』

『本人も知らないことを聞いても仕方がありません……ね』

『そうだね、机上の空論ってやつだね』

『良かったらいつでもAクラスに移籍してきてください、杏樹なら歓迎しますよ』

『そのAクラスに行くっていうのが大変だということをご存知でない?』

『もしポイントが足りないということでしたら、いくらかなら私も出しますので遠慮なく』

『考えとくね』

『いいお返事が聞けることを期待しています』

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