Common life 日常的非日常   作:Dangelo

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No,5.2

 一ヶ月後に開催される体育祭に向けて、ホームルームを好きに使って構わないと言われた。こういう場は平田が必然的に前に立つことになる。それを平田も特に何も思わないし、クラスメイトもそれが当然だと思っている。

 

 平田が今回の推薦競技の参加の決め方について説明しクラスメイトに意見を募る。

 

 案の定クラスが能力主義と平等主義にわかれ、なかなか決まらない。

 

 主張のできる人間がどんどん意見を出していき、残りはそれに同意したり不満げな顔をしたりするのみ。堀北、須藤の意見にクラスが押し切られそうになった時だった。

 

「あーちょっといい? あたし反対なんだけど。篠原の言うように他の生徒が泣きを見るのってどうなわけ?それでクラス一丸になって戦っていけるっての?」

 

 軽井沢は篠原を擁護するように堀北を睨みつける。

 

「一丸になると言うことは、自分の利益よりクラスの利益を考えること。わかるかしら?」

「全然よく分からないんだけど。ねぇ櫛田さんどう思う?」

 

 この状況を『珍しく』静かに見守っていた櫛田に声をかける軽井沢。櫛田は少し驚いた様子だったがすぐに考え込むようにしながらも発言をする。

 

「難しい問題だよね。私はどっちの考えもわかるなって考えていた。堀北さんと同じでクラスとしては勝ちたいし、篠原さんの言うようにみんなが勝てる可能性も残したいかな。もし解決策があるとしたら、2人の意見を汲んだ形にするのが理想だよね」

 

「もちろん考えはあるわ。テストの点数が不要と感じている生徒が上位を取って得たプライベートポイントを相殺すること。増減をクラスで分担する。これなら文句はないでしょ?」

「でもそれってポイントだけだよね。入賞の可能性が減るじゃん。皆はどうなわけ?」

「……軽井沢さんが反対するなら私も反対かな」

「あなた達はバカなの? 彼女が反対するから反対? 全く論理的じゃないわ。これは試験なのだから効率的に勝てるよう戦略を立てることは当然のこと。他のクラスにはあなた達のような愚か者は存在しない」

「そんなの堀北さんにはわかんないじゃん?現にあたしは嫌だし。他の子だって同じように嫌だって思っている子がいるんだからそう言う人たちのことも考えてよ。競技は公平に決めてもらわないと納得できない」

 

「じゃぁくじ引きでどう? 平等だよ」

 

 杏樹はその言い合いの間でそう言い放った。二極化していた意見に第三の意見が飛び込んできたのでクラス全員が杏樹に注目する。

 

 杏樹はクラスの中では普段はふざけていることが多いが成績や運動神経などの良さは目立ち、やるときはやるやつだった。高円寺を女子にしてナルシストを取り除いて協調性をちょっと追加した、皆からはそんな認識だ。

 

「杏樹何を言ってるの!?」

「個人種目の順番はくじで決める。そのくじ引きは代表して洋介君とかが動画を撮りながらやって不正がないようにして、誰にも言わずにギリギリに提出してもらう。受理が通った後に結果発表。そしたら速い人とあたってても運だから仕方がないし、入賞のチャンスも皆平等」

 

 杏樹の突拍子もない意見に堀北は困惑を隠せていない。

 

「そんなことしたら全員確実に勝つ確率は下がるのよ? それは合理的とは言えないわ」

「んーそう言われればやっぱそうかも、じゃぁ鈴音ちゃんと恵ちゃんの意見でいいんじゃない?」

 

 杏樹はあっさりと意見を破棄する。クラスメイトのほとんどは杏樹がなぜこの意見を出したのかがわからないままで、よくある場を和ませるジョークか程度に流している。

 

 真意に気づいたのは、杏樹が見渡した時には3人だろうか?綾小路、平田、そして櫛田。平田に関しては気づいたが、クラスメイトを疑うという観点がない彼にとってはこの意見は通す必要がないと考えたようだったが。

 

 杏樹がこの提案をしたのはただクラスの対立を収めたかったからではない。

 

 本当に今回櫛田が仕掛けてくるのか知りたかったのだ。龍園に言われたことをそのまま信じて動くのはDクラスを分断させることに繋がりかねない。

 

 そして目的は達成されたのでこれ以上堀北を困らせる必要もないとあっさり引き下がった。まぁ堀北が乗ってくることも少しは期待したが。

 

「それじゃあ堀北さんの案を織り交ぜた徹底した能力重視の采配と、軽井沢さんの意見も合わせた個人の主張も汲んだ采配。どっちが良いか挙手でいいかな。どちらも決め難い人がいたら無効票もありだと思ってる」

 

 結果は16対13 堀北に軍配が上がった。

 

 推薦競技についても能力で決めることになり杏樹はいつの間にか、リレーに出ることになっていた。クラスで足の速い部類に入るのでまぁ妥当である。男女混合二人三脚は見たこともやったこともないので他の人に譲っておいた。

 

 リレーは6人でメンバーは小野寺、烏間、堀北、平田、三宅、須藤となった。

 

 

「お疲れ〜清隆くんと恵ちゃん」

 

 杏樹は廊下の隅でたむろしている綾小路と軽井沢に声をかける。

 

「お疲れ杏樹。で、綾小路くんこの指示はなんだったのか真意を教えてくれるよね」

「即興にしては上手い話の持っていき方だったな。あの状況でよく反論した」

 

 軽井沢の携帯の画面を見ると『どんなものであれ堀北に反論すること。その際櫛田に意見を求めること』と書いてあった。

 

「やっぱりあれ清隆くんの指示だったんだ。恵ちゃんらしくないなって思ったし」

「ホント、あたしどっちかって言うと堀北さんの意見に賛成だったもん。櫛田さんにふるってのもよくわかんなかったし。で、その指示の意味は何? てかその後の杏樹のアレもあんたの指示?」

 

「オレのすることの意味をいちいち気にしてたらキリがない。それに求められても答えるとは限らない。それが意味することはわかるか?」

「理由を聞かず大人しく指示にしたがえってことね。わかったわよ」

「そういうことだ」

「なんか聞いたことある発言」

「杏樹なんか言ったか?」

「なーんも」

 

「じゃ一つ教えて。あんたと杏樹は手をあげてなかったけど、どっちが正しいと思う?」

「どこに重きを置くかは人次第だからな」

「それ答えになってないじゃん。結局あんたはどう考えてるか答えてない」

「生憎オレは、どっち、って考え方を基本的に持たない主義だ」

「……何それ、よくわかんない。杏樹はどうなの?」

「わたしは楽しかったらなんでもいいよ〜」

「んー、まぁそっか。本来体育祭なんてそんなもんだよね」

「リレーに選ばれたからバトンの練習しないと、ジャパニーズはリレー強いもんね」

 

 体育祭についての雑談をするならオレは退散するぞと言うオーラが綾小路から流れ始めたので軽井沢は慌てて質問をふる。

 

「てか綾小路はなんでこんなことやってんの? クラスを混乱させんのが狙い? それとも本気でAクラスに上がれると思ってんの?」

「少なくとも堀北はそう信じているだろうな」

 

「あたしが聞いてんのは堀北さんの意見じゃない。あんたが見てるものと狙いをいい加減教えて欲しいんだけど」

「そうだな、もし教えられる事があるとすれば、Aクラスに上がることには興味がない。ただ今のクラスをAクラスに上がれるだけのクラスにしてもいいと思い始めている」

「何それ、何が違うかもよくわかんないし、超上から目線じゃん」

 

「今言葉で言ってもお前は信じないし、証明しようがない。だが信じさせるための予防線を張っておく。今度の体育祭ではDクラスから裏切り者が出る。そしてそいつはDクラスの内部の情報を全て外部に漏らすだろう」

「ちょ、は? それ本気で言ってるわけ?!」

「その時が来たらお前も信じるはずだ。オレが見ているもの、見えているものが」

「どう言うことか具体的に教えなさいよ」

「今はまだダメだ。だがその時がきたら全て話す。今は行け、あまり話し込みすぎると目立つ」

「言われなくてもそうするし。けど、万が一裏切り者が出ても大丈夫なんでしょうね?」

「あぁそのための布石は打ってある」

 

 綾小路が携帯を見せながら言う。ただこれだけでは軽井沢には何もわからなかったし、杏樹も綾小路の布石については初耳だ。これ以上綾小路が話す気がないのをなんとなく感じたので杏樹は綾小路と別れて、軽井沢についていった。

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