Common life 日常的非日常   作:Dangelo

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No,1.3

 授業初日。

 

 大半は授業方針等の説明だったため杏樹は教師を目で追っていた。 飽きたら外を見て、外を見飽きたら教師を見てを繰り返していたらどんどん時間が過ぎていた。今日の茶柱先生のメイクはアイラインを少し失敗している。朝は急いでたんだろうか?

 

 今は昼休み、昼ごはんは自分で調達しないと食いっぱぐれるシステムだ。なんと言っても寮生活、お弁当を用意してくれるママはいない。

 

「杏樹もよかったらお昼一緒に食堂行かない?」

 

 杏樹は仲良くなった軽井沢達に誘われたため一緒に行くことにした。

 

 軽井沢恵はクラスの美少女の一人だ。見た目こそギャルで気が強い感じだが、なにかと初日から杏樹のことを気にかけてくれている優しい子だ。杏樹自身入学時に声をかけられた理由がわからなかったので素直に聞いてみると顔だと言われた。顔か。

 

「杏樹どれにすんの?」

「わたしこれにチャレンジしてみる!」

 

 杏樹が指差した食券は山菜定食。無料と書かれたボタンだった。明らかに一番押されているのだろう、ボタンがへたっている。

 

「まじ? それは最終手段って感じじゃない? もっと美味しそうなのあるじゃん」

「結構いろんな上級生達が食べてるから案外美味しいのかも?しれないし〜」

 

 杏樹はお盆を持ち列に並んで、食券を引き換えに山菜定食を手に入れた。みんながとっておいてくれたテーブルにお盆を乗せ席につく。

 

 杏樹は海外に行くことも多く、そこで様々なものを口にしてきたのでちょっとやそっとじゃへこたれない舌を持っている。だから普通の山菜にそこまで抵抗はないためどんどん箸を進める。

 

「で、どう? どんな味?」

 

 あまりにも平然と食べているのでみんなに食レポを求められる。

 

「ご飯もお漬物もお味噌汁もたぶん他の定食と一緒。山菜が好きなら美味しいと思うよ、ただ独特な風味が苦手な人にはつらいかも? いい意味でも悪い意味でも素材の味がしっかりあるから」

「うわ、やっぱ私それ無理なやつ」

「あたしもーーーー」

 

話を遮るような大きな音量で放送が流れた。5時から部活説明会が開かれるので希望者は体育館にということらしい。

 

「洋介くんはサッカー部希望だっけ?」

「そうだね、他の部活も気になりはするけど、入るとしたらサッカー部かな」

「サッカーやってる平田くん絶対かっこいいじゃん!」

「杏樹さんは? 何か興味ある部活あるのかな?」

「んー今のところはないかな、恵ちゃんは?」

 

 お互いに入りたい部活や強い部活、この学校の施設の話で盛り上がり最初の食事会は成功だった。

 

 

 午後5時体育館に新入生が集まっていた。杏樹は配られたパンフレットに目を通しながら比較的空いている場所を探して歩き回っていた。

 

「あっ清隆くんと鈴音ちゃんだ! 二人だけ?」

「あぁ、堀北についてきてもらった。一人なのか?初日からいろんな人と話しているイメージだったが」

「ちょっとはぐれちゃったから一人で来ちゃった感じ、これだけ人多いと探すの大変そうだなぁって。二人はどこか部活入る予定なの?」

「いや、多分入らない。杏樹こそどこか入りたいところはあるのか?」

「んー、部活には入らないかなぁ。まだこの生活にも慣れてないし。鈴音ちゃんは?」

「特に入る気はないわ、私は綾小路くんの付き添いで来ただけ」

「なんだぁここにいる全員が部活入る気ないってことね」

「もしかしたら紹介で運命的な部活との出会いがあるかもしれないぞ?」

 

 アナウンスが入り部活紹介が始まる。

 

 杏樹は堀北が綾小路にわざと柔道部を薦めているのを横で笑って聞いていた。

 

「どうした?」

 

 杏樹は綾小路が堀北に声をかけているのを聞いて隣を振り向く。堀北の顔には畏怖、尊敬、渇望いろいろな感情が合わさった表情をしていた。その原因となったであろう壇上に杏樹は目を向ける。

 

 壇上に向かって歩いていたのは一人の知的な雰囲気を纏った男子生徒。

 

 マイクの前に立ったものの一言も話していない。だんだんと周りがざわついてくる。周りの生徒からは緊張でセリフが飛んでいるように見えてるのかもしれないが、あれは違うだろう。

 

 だんだん何か違和感を感じてきたのかだんだんと笑い声は減っていき最終的には静寂が広がった。

 

「私は、生徒会会長を務めている堀北学と言います。生徒会もまた上級生の卒業に伴い、一年生から立候補を募ります。特別立候補に資格は要りませんが、もしも生徒会に立候補を考えている者がいるのなら部活への所属は避けていただくようお願いします。それから、私たち生徒会は甘い考えによる立候補は望まない。そのような人間は当選することは愚か、学校に汚点を残すことになるだろう。わが生徒会には、規律を変える権利と使命が学校側に認められ、期待されている。そのことを理解する者のみ歓迎しよう」

 

 体育館全体の雰囲気は徐々に開放されて、話し声が目立つようになってきた。

 杏樹は特に部活にも生徒会にも興味を持つことなく寮にそのまま直帰することにした。

 

 

 入学式から一週間たったぐらい、いつもより教室が賑わっていた。

 

「おはよ〜? 今日はなんだか賑やかだね?」

 

 杏樹は女子で固まってるところに混ざる。

 

「今日の体育水泳だから、男子達が……」

 

 池、山内、外村をメインに何やら大きな声で騒いでいる。

 池や山内はこの一週間でこのクラスのお調子者の立ち位置をゲットしていた。外村も博士というあだ名をつけられ、オタク気質として名を轟かせている。

 

「博士、女子の水着ちゃんと記録してくれよ?」

「任せてくだされ。体調不良で授業を見学する予定ンゴ」

「記録? 何させるつもりだよ」

「博士にクラスの女子のおっぱい大きい子ランキング作ってもらうんだよ。あわよくば携帯で画像撮影とか」

 

 杏樹は自分の胸を見て静かにため息をついた。杏樹の身長は160。痩せ身で筋肉がついてる分脂肪が削ぎ落とされていた。ここだけはママに似ないでパパに似た(?)ようだ。いや、パパほど筋肉もないから胸は誰にも似ていない。

 

 ちなみにママのは人の顔を挟めるくらいとでも表現しておこう。

 

 

 一部の人間にとって待ちに待った水泳の授業、杏樹は指定外のスクール水着に着替えプールに向かった。ちなみに杏樹の水着は半袖タイプの水着なので、肌が出ているのは手と足だけとなっている。水着は派手でなければ理由さえあれば比較的簡単に変更の許可が出せる。

 

「うわ〜すっごい! 広い! しかも室内さいこー!」

 

 そんな声が女子から次々と出てくる。

 

「2人とも何やってるのかなっ?楽しそうだね」

「く、くく、櫛田ちゃん?!」

 

 男子達が何やら騒いでるのを気にすることなく櫛田は山内と池に話しかけていた。一瞬櫛田に釘付けになった男子はすぐに視線をそらした。

 櫛田の身体はなんというか杏樹より発達しているのは確かだ。

 

 先生から集合がかかり皆が集まっている方に向かう。

 

 準備運動をしたあと体を慣らすために50mほど泳いでいく。プールの温度は室内ということもあって温水ですぐに体になじんだ。杏樹は適当に泳ぎおえ、プールサイドに上がる。

 

 今日の授業は実力を測るために男女別で競争することになった。1位には5000ポイントをくれるらしくみんなのやる気も上がる。女子は10人男子は16人。

 

 女子からスタートということで杏樹は第二レースで指定された5コースにつく。

 

「桔梗ちゃん隣のコースだねよろしく!」

「杏樹ちゃんはやそー、でも私なりに頑張る!」

「うん! お互いベストを尽くそうね〜」

 

 二人が可愛らしい会話をしている間に男子達のテンションは最高潮だった。

 

「櫛田ちゃんくっそ可愛い、てか杏樹ちゃんとの絡み最高すぎる、はぁはぁ」

「杏樹ちゃんまじスタイルいいな、正直侮ってたわ。ただあの水着はイカンよ、せっかくの露出の機会が……」

 

 男子の下世話な会話に杏樹は聞こえないふりをしていた。

 

 第1レースは堀北が28秒をだしレース内1位だったようだ。

 

 第2レース。杏樹は笛と共に飛び込み泳いでいく。目立ったミスもなくターンは綺麗に決まり、引き返す。まだそこまで泳いでいないため体力も問題なかった。

 

 結果から言うと杏樹がギリギリ1位だった。

 

「やった! いっちばーん!」

 

 ピースしながら櫛田がプールから出るのを手伝う。

 

「杏樹ちゃんやっぱめちゃくちゃ早かった〜水泳部だったとか?」

「昔お父さんに教えてもらったの」

 

 コンマ数秒の世界だったが水泳部に入ったらしい小野寺さんにも勝って、5000ポイントもらった。 肌についている水滴を落としながら男子と場所の交代をする。

 

「清隆くんファイティン」

「ビリは避けるよ」

 

 なんともやる気のない返事に杏樹は笑ってしまう。

 

 男子の結果は須藤と高円寺、平田が実力を発揮していた。

 

「清隆くん最下位回避おめでとう」

「杏樹こそ一位、すごいな」

「運動神経はパパ似だから感謝しないとだねぇ」

 

 杏樹は泳ぎ終えた山内と池に綾小路を奪われそれ以上話すことはできなかった。

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