対魔忍戯作:斬鬼忍法帖   作:天野じゃっく

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その二十七

 泰陽(たいよう)寺は早朝から大騒ぎだった。

 数台ずつのパトカーと救急車が赤色灯を回転させながら寺院のまえに停まって、土塀や瓦屋根を夕日のように照らしていた。

 寺主の浄胤和尚と僧侶たちが防風林のなかで意識を失った状態で発見されたのは、太陽が昇って間もない頃だった。寺院から四百メートルはなれた民家の住人が漂い流れてくる異臭をたどって来たのが発端となったのだ。おまけに通報を受けて到着した一同がもれなく肝を冷やしたのは異臭の原因……寺院内の墓地のそこかしこに山となっている肉と骨、臓物、それらを覆い隠さんばかりに群がるハエとウジであった。

 和尚たちが病院に搬送された後、管理者不在の泰平寺に連絡を取り合った檀家たちがバケツやモップを持ち寄って現れた。その中には巡査部長・浅見由衣の姿もあったが、三子山のときと違って今回は私服姿である。

 同じような風景をほんの数日前に見ていたから彼女はとりわけ驚かなかった。寒気を覚えるものを強いて挙げるとすれば、目の前の惨状そのものより、自分の見知らぬところで大きなものが蠢いているように予感させる町そのものだろうか。

「嫌なもん思い出しちゃうなあ」

「富竹さん」

 浅見は振り向いて、そこに立っている老人に会釈した。しかめ面の富竹老人は猟師用の蛍光ベストを半袖シャツに替えて、頭にはカンカン帽、ライフルのかわりに「富竹」と名前の入った手桶と柄杓、プラスチックの柄のついたスポンジブラシと雑巾を携えている。

「まったく……こんな罰当たりなことしやがって」

「ええ、まったく」

「お巡りさんのほうで、なにか掴んでないのかい」

 さあ。と、浅見由衣は苦笑いして首をひねりながら、

「まだわかりません。それに、あたしもう警察でいられないかも知れないし」

 しばらくすると救急車と入れ替わるように清掃車と作業服をきた男達がやって来た。

「寄生虫や病原菌の危険がありますので、どうか迂闊に近寄らないように」

 その場にいた人々への挨拶もそこそこに、ゴーグルとマスクを装着した十人ほどは墓地に散らばる肉片を慣れた手つきで黒のポリ袋に回収すると、これまた決められた手順でもあるかのように、霧吹きに詰めた液体を何度も噴霧しながらこびりついた血泥を落としていく。

 境内に集まった檀家たちは手持ち無沙汰になってしまって、かといって自分の家の墓がどうなっているかは心配だから、ひとまず無人になったお堂に退避した。

 粛々と続けられる清掃をお堂の軒下から遠巻きに見届けていた浅見は、顔馴染みのおばさんを見つけて「あの人たちは?」と尋ねた。おばさんも首をかしげながら「なんでも特殊清掃の人たちだって」と返した。

「特殊……ああ、事故物件とかの」

「ま、なんにせよ助かったわ。あんなにされちゃ手に負えないもの」

「誰が呼んだのかしら」

「さあ、富竹さんじゃないかしら。こういうとき手際良いでしょう、あの人」

 富竹は首を振っていた。何人かから同じように問いただされ困惑しているようだった。

 三十分もかからずに男達は仕事を終えて、またしても挨拶もほどほどに清掃車とともに去っていった。謝礼を申し入れると「それは泰陽寺さんから受け取っているから大丈夫だ」と言って一切を受け取らなかった。

 なぁんだ、和尚さんの手引きだったか。と、ようやく納得する回答を得られた檀家衆は、思い思いのタイミングで解散していった。

「富竹さん、どう思いますか?」

「ああ、きな臭いやね」

 境内に二人のこった浅見由衣と富竹老人は、線香を手向けたばかりの中高年の家族連れを見送りながら、

「なんだか得体の知れないもんが三子(みつご)山から降りてきた、ってところか。しかし、こんな事をしでかす個体がいるなんて聞かんかったがなぁ」

「すると、やはり人の仕業でしょうか」

 富竹老人は明確な答えこそ出さなかったが「お巡りさんの出番だな」と、小さく笑った。

「まあ、そうなりますよね」

 ほのかに漂う腐乱臭に顔を歪めながら浅見はうなずいた。

 

 橋楯鍾乳洞の件から一日経ち、軽傷だった彼女は即日退院したが巡査部長として完全復帰とまではいかなかった。

 浅見巡査部長ならびに佐竹巡査の単独行動とその顛末は、野生動物に即時対応した結果ということで不問に付された。しかし、それとは別に、彼女の所持していた拳銃の弾倉に空の薬莢が三つ残されていた、という事が問題視された。

 いつ、どこで、誰が、なにを撃ったのか。──緊急性の有無、発砲までの手順など当時を知るための事情聴取が早速執り行われたが、浅見はなにも答えられなかった。

 なにしろ三発を発射したのは彼女から拳銃を強奪した佐竹巡査であり、橋楯堂内での記憶が頭からすっぽり抜けて落ちているから、佐竹の負傷もさることながら、発砲の件ですら後から知らされて驚いたほどだ。

 ──わかりません。覚えていません。を言い過ぎて、浅見は答弁をはぐらかす大臣みたいな自分に嫌気がさした。

 すでに橋楯堂のほうでは、寺の住職への聞き取りや現場検証に人員が割かれているだろう。自分のミスのために大勢が忙しなく動いているのが悔しくてたまらない。

 拳銃の使用が適正か否かを判定するためにも発射された銃弾を探さなくてはならない。発砲だけでも大事なのに、万が一にも市民が発見して、それを世間に知られでもしたら、地方の警察官の不手際で済むはずがなく、日本国家の警察機関としての沽券(こけん)に関わる。

 山谷に囲まれたなかで豆粒を三つ探し出す……何日かかるか分からない。まるで修行だ。だが見つけるまで自分は赦されないだろう。暗澹たる思いが浅見のからだを重くしていた。

 

「──あれは、お前さんの知り合いかい?」

「──え?」

 ふいに富竹老人に言われて浅見は顔をあげた。

「こっち見ながら、ずっと立ってるけど」

 境内にある大きなクスノキの木陰に黒の日傘をさした女が立っていた。胸元まで垂らした黒のストレートヘアーに保険の営業のようなパンツスタイルのスーツ。地元の人間でないことはすぐにわかった。

「誰だろう」

「まあ、なんでもいいや。おれは帰るからよ。ガクが腹空かして鳴いてらあね」

「そうですか……お疲れさまです」

 富竹老人と入れ替わるように日傘の女がこちらに歩いてきて、人ひとり分の間隔を空けて浅見のよこに座った。

 痩身で病み上がりみたいな白い肌に、前髪を横一線に切りそろえた黒髪、パンダみたいなアイライン、服装から連想されるイメージよりずっと幼い顔をしていたので浅見は内心驚いた。

「あの、なにか?」

「浅見由衣さんですね?」

「はい、そうですが」

 女は名刺を差し出した。そこには『文部科学省外局 日本神祇会 御子江華怜』とあった。

「にほん…しん…なんですかこれ?」

日本(にっぽん)神祇会(じんぎかい)、といいます」

神祇会(じんぎかい)……の?」

御子江(みこえ)華怜(かれん)……と、申します」

 うやうやしく女は礼をした。浅見も反射的に頭を下げ返した。

「あまり聞き慣れない名前ですね」

 ふふふ、と、女は笑いながら、

「そうですね、御子江なんて苗字、片手で数える程度しか……」

「いや、日本神祇会という会が……」

「あ、そっちですか。──そうですね、日本神祇会は国内から海外まで各地の宗教に基づく民俗的慣習を研究調査する学術機関でして、まぁ大雑把に言うなら……オカルト調査団といったところでしょうか」

「はぁ……」

 そう説明されたところでよくわからない。まったくもって聞き覚えのない名前に浅見は曖昧な返事をした。

「お父さまはお気の毒でしたね」

「はい?」

「あなたのお父さま。ここの和尚さまでしょう?」

「……そりゃ大昔の話。いまは他人ですよ」

「でも、心配でここに来たんでしょう?」

「ここには母と祖父母の墓がありますから」

 そうなんですね、と、女はうなずきながら墓地のほうを眺めていた。

 浅見はため息を吐きながら、

「……それで、わたしになにか?」

「単刀直入に申しますと、あなたに協力をお願いしたいのです」

「協力……わたしに相談ということですか?」

 浅見は警官らしく背筋を伸ばしてみせたが御子江という女は首を振った。左右に揺れる黒髪のツヤがてらてらと光った。

「あなたにしか相談できないことです」

 はぁ、と相づちを打ちながら、浅見は眉をひそめた。御子江は静かに言った。

「この町で起きている現象と、我々がこれからしようとしている事を理解してくださる方は、この町にあなたしかいませんわ」

「わたし、なんてことない巡査部長(おまわり)ですよ」

「これまで貴女は何度も違和感に遭遇して、その都度、よくわからないまま煙に巻かれてきた。見えないところで何かが動いているのを予感しながら自分一人ではどうにもできない不満が限界に達しているのではありませんか?」

 みるみるうちに浅見の顔が不機嫌になっていって、

「……あの、勧誘ですか?石とか壺とか、数珠でも買わせるつもり?」

 うんざりして立ち上がると、御子江も立ち上がって彼女の正面にまわった。手で軽く押してやればあっさり倒れそうなくらい華奢な体格だが、なにか距離を詰めづらい雰囲気がある。

「一家の集団失踪。車両の炎上事故。三子山と泰陽寺に残された大量の死骸。その他二、三の細かな騒動──ここ数日の騒ぎについて、わたし達は大いに関心を持っています。勿論、橋楯堂の件についても」

「陰謀論ならどうぞご勝手に。わたしを巻き込まないで」

「あなたはすでに渦中に足を踏み入れてしまったのですよ」

 肩に置かれた手を浅見は乱暴に振り払った。──払われた御子江の手のひらには三つの塊が乗っていた。ザクロの実を潰したような原形のない鉄クズに浅見は一瞬、目が点になったが、

「こちらのほうがよかったかしら」

 と言って、手首を返してもう一度開くと手品みたいに中身が変わっている。午前のさわやかな日の光を受けて山吹色に輝く三つは、三八口径のフルメタル・ジャケット弾、まぎれもない実包であった。

「なにそれ」

「あなたの今日の探し物ですよね。撃ったのは佐竹巡査でしたが、なにも知らないあなたにこんな豆粒みたいなものを鍾乳洞から探して来いだなんて、お巡りさんも結構エグいことさせますね」

 ──なんなの、コイツ。

 浅見の背筋を悪寒がはしった。

 橋楯堂の発砲の件は周知の事実としても、自分と佐竹のどちらが発砲したか、いくつ発射されたか、そして弾丸はどこへ飛んで行ったか、署内でも知っている人間は限られている情報を、いや、警察や自分すら知らない「三発」という情報まで加えて、この女は半笑いで銃弾を召喚した。──

「今日の現場検証は中止ですね」

「なに言ってんの?」

「大いに関心を持っている。と、さきほど言いましたよ」

「…………」

 呆然とする浅見由衣を揺り起こすように、パンツのポケットに入れていた携帯がブルルっと震えた。着信は課長補佐からだった。

「浅見、ちょっと顔出してくれ」

「……わかりました」

 日傘をくるくる回しながら御子江はにっこり口角を上げた。

「送って差し上げましょうか?」

「自分で行きますから、結構……」

 ポケットに携帯をねじ込みながら浅見は足早に泰陽寺を後にした。

 

 ──十五分後、警察署で浅見由衣を待っていたのは課長補佐ならびに課長、部長のお歴々であった。四人だけの会議室で、彼女は対座する三人から橋楯堂の現場検証の中止を告げられた。

「浅見巡査部長と佐竹巡査は、武洸山の山麓付近にて野生動物と遭遇。佐竹巡査が重傷を負うなか浅見巡査部長が拳銃を三回発砲、これを撃退した。後日、現場から南東に約三キロ離れた泰陽寺の境内にて野生動物の死骸が発見され、事態は収束。──」

「──まぁ、こういうことだな、浅見巡査部長」

「は?」

「当時、きみは頭を強く打って数時間、意識を失っていた。そのため前後の記憶が非常に不明瞭で、供述にも曖昧な点が多数ある。始末書の作成もままならない程にな」

「そこをハッキリさせるための現場検証ではないのですか?」

「その件は中止になった。きみの拳銃から発射された銃弾はすべて発見されたよ」

 えっ、と浅見は声をあげた。

「い、いつのことですか」

「今朝、情報提供者があった。文科省の寺社仏閣に(たずさ)わる人間でな。──日本神祇会と言ったか、あちらが研究調査のために鍾乳洞に入ったところ、偶然みつけたそうだ」

 ──日本神祇会……本当に存在していたのか。……と、浅見は銃弾が見つかったことより、そっちのほうが意外だった。

「それでだな、拾得物をこちらに届け出すかわりに、浅見巡査部長の協力を要請してきた」

「わ、わたしですか」

「我々も耳を疑ったが……どういうわけか、きみ以外は受け入れられないようだ」

 唖然とする浅見をよそに、課長が身を乗り出して言った。

「──どうだろう、浅見くん。ここはひとつ彼らに協力してやってくれないか」

「そんな……得体の知れない相手と交渉するつもりですか?」

「そうは言っても、ほら、文科省の管轄下にある団体だろう?彼らの素性に嘘偽りの無さそうだしだな……それに協力といっても、要するに寺社仏閣における防犯指導ということだ」

 浅見の脳裏では日傘の女が笑っていた。

「それならそれで、別口で依頼すると思いますが」

「しかし、我々としては一刻も早く拾得物を渡してもらわねばならん」

「そんなの……もはや脅迫ではありませんか。遺失物の横領です」

「その落とし主はお前と佐竹じゃないか」

 課長補佐が言ったのを、やめなさい。と課長がたしなめた。浅見はなにも言えなかった。

「いいか、浅見くん。──きみと佐竹は橋楯堂でクマを撃った。逃げたクマは泰陽寺で死んだ。発砲は正当な行為だと判断された。銃弾もすべて回収された。……これで終わりだ。きみと佐竹くんの過失は無かった。すべてチャラだ」

「……巡査部長(わたし)銃弾(タマ)の交換、ですか」

「そう言うな。このままだと、キミの警察官としてのキャリアは水の泡だぞ。──いや、それだけじゃない。ことが公になれば我々だけにとどまらず県警の面目まで丸潰れになる」

 部長の言葉に課長が続いた。

「拳銃の発砲、弾丸の紛失……いかにもメディアの好きそうな話題ですな」

 部長は眼鏡を取ると、ひたいの汗をハンカチで拭った。

「ま、面目と言ったが所詮は意地の張り合いだ。菓子折りもって頭を下げてまわれば大抵のことはなんとかなる。……だが今回はそうなる前に穏便に済ませられるかもしれん。……それには浅見くん、きみの力が必要だ」

「…………」

 ふちがピンク色のハンカチは色褪せて、もとのイラストがなんだったのか判別がつかないが、部長はそれを丁寧に折りたたんで上着のポケットに戻した。同時に彼は特大のため息を吐いて言った。

「今年、娘たちが大学受験なんだ。双子でそろってね。私はまだ腹を切りたくないんだよ。──」

 

 ──警察署のまえに黒のセンチュリーが停まっていて、後部ドアの横には日傘を差した御子江華怜が立っている。

「会議、終わりました?」

「説明はあるんでしょうね」

 浅見由衣の視線も意に介さず、御子江は彼女を後部座席に乗せた。運転席でハンドルを握るのはスーツを着た男で、前方を見たまま背後の浅見には目もくれない。

「説明するより見てもらったほうが早いでしょう」

 御子江が浅見の隣に座るとセンチュリーは発進した。

 ──五分ほど走ると、そこは緋辻山公園であった。

 芝桜の丘に黒煙と火柱が上がっている。恐ろしく勢いの強い炎で、渦を巻いた真っ赤な竜巻のようであった。炎の中心に黒い影がある。なにか巨大な物体を囲むように焚き木が井の字に組まれて、ログハウスのようになったものに火をつけたらしい。

 さらにそれを囲む人影……熱波のなかに居ながらすこしも怯む様子を見せない巫女装束の女たちが、手を合わせて拝み、弓を弾き、鈴を振り鳴らし、なにか祈祷じみたことをしている。

 煙に引き寄せられたのか遠巻きに見物人がちらほらいる。御子江と浅見もそのなかに混ざって事の成り行きを見守っていた。

「あれは、なにをしてるの?」

大祓(おおはらえ)……盛大な悪霊祓いです。この土地にあらわれた悪霊をあの炎で焼き清めるのです」

「どうしてこんな所で?」

「あそこで拝んでいる巫女が悪霊を捕らえる係。大体はこじんまりと儀式を終えるのですが、今回は相手と場所が悪かったようですね」

「それで、わたしに何をしろと?あの人たちの警護、それとも今すぐ止めさせる?」

「いますぐに、という話ではありません。然るべき時が来たら、あなたには警官として職務を全うしてもらいたいのです」

「あの巫女たちを捕まえろ、というの?」

「ここ数日、あなたの遭遇してきた面倒ごとのほとんどは、あの巫女たちによるものですよ」

 横風が吹いて炎が揺れた。巫女のひとりが横っ飛びに火の粉から逃げた。たしか夜の空き地で爆発騒ぎを起こした連中も似たような格好をしていた。

「捕まえるったって証拠でもあるの?」

「用意ならできますよ。あなたが望むだけの量をね」

 御子江は不敵な笑みを浮かべた。

「……そんな都合良くできるなら、なにも警察(こっち)に頼まなくたって」

「我々には逮捕する権限なんてありませんもの。最終的には巡査部長さん頼みですよ」

 ──やがて火の勢いが弱まって、丘にはストーンヘンジの一部のような立方体の、ほのかに燈色の火種をのこす炭柱だけが残った。これだけのことがありながら消防や警察の人間がひとりも駆けつけなかった。

 もちろん公園側に許可を得ていなければ火を灯すなんて行為が出来るはずもないだろうが、突発のイベントの終了を悟ってぞろぞろと散っていく野次馬を見るに、どこかみな他人事で、真昼のキャンプファイヤーを眺るのに夢中なあまり、しかるべきところに通報するということを忘れていたようだ。

「──彼女たちはあと二回、同じような祓いの儀式を行うでしょう。それまでは様子見で」

「様子見……儀式を阻止するとかじゃなくて?」

「わたしが合図するまで黙視でお願いします」

 御子江は腕時計に目を向けると「日暮れにまたお会いしましょう」と言って去っていった。浅見は小さくなっていく日傘と、一方で地面にへたりこむ巫女装束の数人とを交互に見ながら呟いた。

「奇妙な巫女(おんな)達、奇妙な背広(おんな)、奇妙な儀式……」

 ──結局、泰陽寺の異臭騒ぎは野生動物の仕業ということで終息した。

 緋辻山公園の丘に残された巨大な炭のオブジェは、何の目的で誰が企画したものか釈然としないまま夜更けにひっそりと姿を消したが、そのことに気付く者や、真相にたどり着いた者はついに現れなかった。

 無理もない。空間と空間を繋いで物体を跳躍させる人間が存在するなどと、はたして誰が想像できようか。──

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