『こちら、【ハンター】。敵対象発見。これより攻撃行動に移行する。』
『【マスター】把握した。やりすぎないように気をつけろ。』
『了解【ラジャー】。』
通信を終えて俺はボウガンを取り出す。睡眠弾を装填しスコープを覗き込む。
[パシュッ・・パシュッ]と音がしてその針が向かった先にいた全身が黒いスーツの人間に当たる。何も言う事なく二人は昏倒しそのまま眠りについた。
『【ハンター】より【マスター】。対象は眠らせた。後の回収を頼む。』
『了解した。御苦労。』
俺は今、学園の一番高い塔から全体を見渡している。闇夜だろうと俺のテリトリー内に何かが入り込めば気配がすべてわかる。いろんなモンスターの力を使っているからだ。
【ライゼクス】で磁場の網を学園沖に張り、【ホロロホルル】の目で夜間の暗闇も見ている。動きがあれば耳が聞きつけるし、感じることができる。更にフルフルの嗅覚や温度探知能力で学園全体の動きさえも把握している。地図を覚えていればどこでどんな事をしてるやつがいるかわかる。そして、今も外のテロリストと連絡を取っている奴がいるが、そいつは学園に攻める気があるわけじゃないので放っている。来るなら殲滅対象だがそうじゃないから、ただの生徒として守る対象だ。
「ふぅ・・元気ドリンコでも飲んで眠気覚ましでもしておこう。」
そう言って飲んでいると急激な反応があった。間違いなく高度、大きさ、速度から考えてもISだ。隠してもなくただ学園に突っ込んできたようだ。
『【ハンター】より緊急。IS襲撃あり。繰り返す、ISの襲撃あり。緊急行動に移る。』
『【マスター】了解!』
俺は【ライゼクス】でクロスを展開し、即座にISが学園敷地内に入らないように先回りする。
『止まれ!!』
『見つけた。あんたが、ハント・・イチカ・ハントね?』
『その通りだ。警告する。敵対行動するなら即座に貴様を・・』
『私は・・名前をバルファルク。あんた達が言う『モンスター』だった存在。』
『バル・・ファルク?モンスターと言うなら・・まさか!?あの世界の事か!?しかし、そのような名前は聞いたことがないんだが?』
『私は世界中を回ってあんたがあの世界を去った後で、あんたが居た地域に行ったの。そして、二人のハンターにやられて気が付いたらこの世界にいた。』
『モンスターだったんならなぜ俺と話せる?人間にでも転生したと言うのか?』
『いいえ、私の存在は・・』
そう言うと展開を一部開く。と言うか全身装甲の鎧を開くようにして見せられる。
そこには・・誰もいなかった。
『ISのコアとしての転生よ。そして、あんたが持っているかけらに引き寄せられて一時期の記憶を持ち、あんたの元に来た。』
『それで、俺にどうしろと言うのだ?』
『その腕を出して。専用機の待機状態にしてほしいの。』
言われた通り、二機で地面に降りて、俺は待機状態にする。
なぜかこいつの言う事を信じてやらなくてはいけないとクロスが言っているようだ。
そこに首に吊っていた『鱗のかけら』が鎖を引きちぎり空中に浮く。
そのかけらが目の前の機体に刺さると目の前のISは光り、そのかけらに吸収されるように消えていく。そして、そのかけらは俺のクロスの待機状態に向かって飛んできて刺さった。
「な!?」
クロスが異常に熱く感じるがそれでも外せない以上、耐えるしかない。クロスに重なるようにもう一巡のX字に燃え盛るような形で組み合わさった待機状態になった。
一度光るとそのまま熱は引き、データを見てみると名称が変わっていた。
『ダブルクロス』
今以上の出力や俺の知らないモンスターの装備が増えて、出力が飛んでもないことになっていた。
『これからは、私があなたのパートナーとしてナビゲートするから。長い付き合いになるでしょうけど、よろしく。』
さっきのバルファルクの声が聞こえる。どうやら俺の機体に入ったようだ。
「勝手な事を・・。だが、分かった。よろしく。後、機体の説明の際はモンスターとかは伏せてくれるか?面倒だからな。」
『了解。・・私はあなたを何と呼べば?』
「イチカでいいよ。」
『分かった。【ハンターイチカ】。』
「長いからイチカでいい。」
そう言いつつ俺は通信回線を開く。
『【ハンター】より各員。緊急状態は解除。面倒な事が起きたので一時俺は離脱して学園側に説明に行かなければならない。』
『【マスター】より【ハンター】。それはどういうことだ?襲撃ではなかったのか?』
『後で話すが・・、無人機が俺の機体に合体しに来たというか・・まぁ、そういう暴走を起こした。今は完全に融合をしてコアが二つある機体になってる。その説明と扱いを話しに行く。』
『全く話がわからんが、一時離脱を許可する。』
そう通信をした後で学園長に緊急連絡。生徒会長も近くにいるそうだ。
「特殊な機体が俺のクロスに融合しました。実はこの機体は篠ノ之束博士でもわからなかった特殊機体なので、どうしてそうなったかはわかりませんが、今から何が起きたか話します。お時間をとらせていただけますか?」
『わかりました。今から学園長室に来てください。』
連絡を終わると俺はため息をついた。
「つまりはその無人機はAI機能で君の元に来たと!?」
「その通りです。その後、俺の専用機『クロス』と融合して新たな機体『ダブルクロス』となりました。その証拠に、これ、以前と形が変わっているでしょう?」
俺は自身の専用機を見せる。
「確かに・・。しかし、にわかには信じれない事ですなぁ。」
『面倒くさいなぁ。だから私が来たって言ってんじゃん。信じれないならこの場でイチカに展開させればいいじゃないの?!』
「な!?誰ですか!?」
『さっき言っていたAIよ。名前は【バルファルク】。古の流星龍の名前を製作陣に名付けられたわ。赤き流れ星は天空に居る赤い龍が星のように光っていたという記述があったからそれにあやかったの。分かったら黙っててくれない?私は理解しない愚図は嫌いだから。』
俺は頭を抱えた。明らかに喧嘩売ってるレベルの物言いだ。丸く収めたいというのにこんなこと言われたら丸くできないじゃないか。
「【バルファルク】さん、とお呼びしましょうかね。しかし、・・『龍』、ですか。人型であったと聞いていますが?」
『あやかったと言ったわ。それに一番の高速モードになると変形するわ。えぇっと、・・あぁ、これね。データを開示するわよ?イチカ、いいかしら?』
「好きにしろ。俺が丸く収めようと思ってるのに、勝手にするなら俺は知らん。」
『あら、拗ねちゃって。かわいいとこあるのね?』
「勝手に言ってろ。」
ダブルクロスを付けている手とは反対の手を振って諦めのポーズを見せる。
『えぇ、そうするわ。では、開示できるデータを展開するから、それを持ってIS委員会に説明も任せるわ。それ以上の情報は開示しないし、必要以上に探るようなら・・分かってるわね?』
「・・分かりました。それでは先ずは高速時の姿を見せていただきたいと・・。」
『えぇ、コレよ。』
展開した画像はほぼ槍のようになり周りに空気抵抗で赤い膜のようになっている画像だった。銀色と言うか焼けた鉄色と言うかそんな色の機体が『成層圏を飛んでいる』。
「こ、これは!?」
『この機体はこの形態なら大気圏離脱、または突入が可能。更に全身装甲なので宇宙空間での航行も可能。そもそもこの高速移動時には普通ならば呼吸ができないし潰れてしまうわ。それすらもISの機体能力で可能とした新世代機。篠ノ之束の目指した目的を可能とする最終世代。現存では第四世代が篠ノ之束が作れる世代の最高。それを超えたものが『クロス』。多種多様なスタイルと装備を展開できる機体のそれが『第五世代』だったけど、この私が融合したダブルクロスは『第六世代』。独自で宇宙まで航行できる世代。篠ノ之束の目標よ。』
「・・これは大変なことになりますよ!?貴方を作ったのはどこの研究所ですか!?」
『えーとね、これはごまかしじゃなくて何だけど、【研究所は存在しない】。私はイチカの持っていた【かけら】に呼ばれてこの世界に紛れ込んだの。ワームホールみたいな並行世界からこちらへ。そして、その反応の元であるイチカの持っていた【かけら】に飛んだ。そしてその【かけら】が何だったかは、篠ノ之博士が調べても分からなかった。しかしそれがもとで私はクロスと融合した。言えることはそれだけ。』
確かに言えないよな。本当はもとはモンスターでこの世界に来たらこんな姿になってましたとか。・・古龍種って性別ってあったのか?そもそも他の龍もどうやって増えてるのか知らんが。
「なら、あなたを造った研究所などは存在しないと!?」
『信じれるかどうかは、あなた達次第ね。後はこれがスペックと機能。』
クロスを大幅に上回るスペックに更に増えた装備を見せる。
「もはや何も言えませんな。データを記録させていただき、委員会に提出します。しばしお付き合いを・・。」
『話が分かる人は嫌いじゃないわ。』
学園長よりも偉そうだな。俺の胃と頭が痛くなってきたわ。