それから俺は準備を整えた。
【立つ鳥、跡を濁さず】と言う事で俺の残してきたすべてを収めて、隠して、公式な情報も消した。
そしてすべての公的な人物には話をすると、大体が諦めたような反応を見せた。
「それじゃ、これで全部だね。いっ君?」
「そうだな。これで一夏・ハントは消えた。ここからは織斑一夏が、為すべき最後の事だ。今までのすべての事に終着をつける。それこそ、俺が残してきた命題だ。」
懐かしき仲間たちの顔を思い出しながら、束とクロエを共にして、目的地のアメリカの荒野が広がる地方へと来た。
元は町やビルがあった州の都市。その成れの果てだ。
大きな工業地帯もあり巨大な歯車が転がっていた。だが、それ以外には見えるのは砂と岩のみ・・。まさに荒れ果てた風景だ。
「ここ・・なの?」
「間違いありません。ここがこの州の主要都市・・でした。」
束とクロエの話を聞いてやはりこれ以上は放っておけないと思い、俺は空中に待機した束の機体から降りる。バルファルクを使い地面に降りて解除する。
「これが最後になるか・・。」
『きっとこの世界に来たのはコレを終わらせるためだったのよ。だから一夏はアッチの世界に来て、それから強くなってこっちに戻ってきた。』
「それが俺の姉と幼馴染が因果とは笑えるな・・。」
『それでも、アナタがこれを阻止しなければ、この世界は対抗するすべはない。ISではモンスターには勝てないのだから・・。』
だからこそ俺はここに居るのだ。化け物【モンスター】同士なら戦いになると・・。
「すぅ・・、織斑一夏はここに居る!逃げも隠れもしない!織斑千冬!篠ノ之箒!最後の勝負と行こうじゃないか!」
そう叫ぶと地面の一部が盛り上がり、そこから金色と紫のカマのような金属の腕が見えた。
そして、それは地面から現れて全体を見せる。
「ようやく顔を合わせれたなぁ、イチカ・ハント・・、いや織斑一夏。クズで・・化け物が。」
そう言ったのはニヤケて、いやらしいような笑いを見せる織斑千冬。
「・・一夏・・お前は・・私が・・。」
そう呟きながらも瞳孔が動かず、視線の合わない篠ノ之箒。
蟷螂のコアのように胴体に収まり、前を見続けている。
「・・そいつが【アトラル・カ】だな・・。」
「ん?お前はこいつの事を知っているのか?・・まぁ、いいか。こいつは私がお前に追い出されたあの後、道の途中に落ちていた金色の歯車を蹴ったのだ。中に入っている宝石もきれいだと思い拾って、飽きたらどこかで換金すれば良しと思っていた。」
指でその大きさを示すように円を描いた。親指と中指を合わせた大きさだ。
「しかし、何か不思議な感じがして持ち続けていたら、篠ノ之が入院している病院が判明してなぁ、お前への復讐を思いそこへと向かったんだ。すると傑作なことに、篠ノ之束の妹と言う事で人体実験のサンプルにされそうになっていたんだ。笑えるよな?まったく見た目も性格も違うというのに、何を実験にするのか・・。ついでと思い私も実験に参加したんだ。」
「・・何?止めたんじゃないのか?」
そう言うと明らかに馬鹿にした目でこちらをさげすんできた。
「止めるだと?バカバカしい。私はお前に復讐さえできれば問題はない。既に教師でもない私が小娘一人の命に対して何を遠慮する必要がある。私は世界の覇者だぞ?」
「・・すでにそこまで腐っていたか・・。」
「そんで、こいつにさっきの歯車を持たせたら反応しだしたんだ。どこからか糸が出てきて残る手の手首に歯車ごと巻き付いてブレスレットになったと思ったら、この姿になった。その時瞬時に思ったね。」
「あぁ・・化け物が・・面白いおもちゃが手に入ったと・・。」
「それからいろんなところでこいつの性能を試した。強くて、私の言う事を聞く、ちょうどいい手駒だったのでそのまま使い続けてきた。篠ノ之もこいつの意識通りに動くようで、指示したら食事やトイレも自分で動いた。反抗することなく・・まったくいい手駒だ。」
くくくっ・・と笑いながら肩を震わす織斑千冬。
「ここにあったはずの町を壊したんなら、その人たちはどうした?」
この州の大型主要都市があったはずだ。
「あぁ・・この化け物の餌か?篠ノ之は食事をとれるが、こいつは別に必要らしくてな・・」
「住民は全員こいつがおいしくいただいたよ・・。」
ニヤァ・・・と笑う織斑千冬に本気で吐き気がする。
『Kiyaaaaa!!』
「・・貴様も化け物になり果てたか・・。」
「ふん。お前らと同じにするな。私は【崇高なるブリュンヒルデ】。栄光の象徴だぞ?貴様らみたいに這いつくばって藻掻くだけの化け物とは違う。」
そう言われて俺は腕を前に出した。
「【ダブルクロス】・・奴はモンスターだ・・。」
「狩るぞ!!」
『応!』『『『GUAAAAAA!!』』』『『KYUOOOOO!!』』
中から『バルファルク』の声と共に自分が龍化してきたモンスターたちの声が聞こえる。
そして、俺は装備する。
俺自身の装備を強化して。
あちらの世界でつけていた装備のさらにその上の姿を。
空が急に曇り、暗雲が広がる中、一陣の雷が空を割り俺の元へ下りた。
その色は『蒼天』。
その力は『迅雷』。
その姿は『電晶』。
『・・ライトニングリボルブ!【青電主ライゼクス】!!』
雷を纏い青く光るライゼクス装備の俺がそこにいた。
「な、何だそれは!?まだそんな力を隠して・・」
『てめぇを追い出した後に得た力・・、進化した【XX・ダブルクロス】の力だ。それが今になってやっと、俺自身の決意が追いついたんだよ。貴様らを追い出すだけじゃだめだ。本当の意味で狩るしかないと・・。だから・・』
そう言って高速移動し、ライトボウガンを構えて撃つ。
【喊青電竜砲【峙瑠】】から連続で撃たれた弾を織斑千冬はよけるが、後ろにいた【アトラル・カ】には当たった。
『Kiyaaaa!!』
それは電撃弾をくらわせた際の悲鳴だ。どう見ても金属なこいつには強烈なダメージだったらしい。そして、俺は頭に雷を纏わせ、【アトラル・カ】の居る場所を強くイメージする。
すると自分のすぐそこに雷が落ちて、そこから地面を走り【アトラル・カ】に電気を浴びせる事でさらにダメージを食らわせた。
『Kiyaaaa!?』
「なんだと!?雷を操る?それがそいつのワンオフ・アビリティか!?」
『そんなわけが無いだろうが!』
そう叫んで空を飛び、翼を広げて急降下をした。
雷を纏いながら羽を叩きつけ、帯電させた尻尾で突き刺す。
『Giyaaaaa!?』
麻痺はしないが、それでも高出力の電気は体に効くだろう。動きが鈍くなった【アトラル・カ】の傍へと飛んでいき、羽ばたいてその場に浮かぶ。
『ライゼクスは電気を操るが・・、青電主はその上を行く。ライゼクスよりも高出力を使う事ができる。これこそが『青電主』たる名を足らしめる・・ライトニングリボルブ!!』
頭部に電気を集め、青白い光を放つ光の剣を生み、それを首の動きと共に叩きつける。
『GYAAAAAAA!?』
叫び声をあげる【アトラル・カ】。
「そんな・・」
『青電主・・戻れ・・。』
そう言うと俺はバルファルク装備へと戻る。
焦げた匂いがあたりに漂う。
それでもまだ【アトラル・カ】は健在だ。
「驚いたが、その程度か!それならばまだまだこいつには程遠いな!」
「何を言ってんだ?まだまだ終わりじゃないぜ・・。」
ダブルクロスの腕からまた新しく光が生まれて姿を変えた装備で立つ。
「お前に見せる地獄は、これからだ!」