雪山の洞窟内、暗く寒い中に一人の少女が居た。彼女はロシアの代表候補生。北部の哨戒任務中にISが異変を起こし、不時着。ブリザードに見舞われ命からがら隠れた洞窟内だ。火も暖を取る物も無く、このままでは凍死するしかないという状況の中、それはあらわれた。
《ドシーン・・・ドシーン・・》
そんな足音が聞こえる。一体何の音なのか・・そう思ったが体がもう動かなくなってきている、ISスーツのみで自分が後いくら生きられるかという瀬戸際の様だ。重くなった瞼に抗っていた気力も失せ、眼を瞑ろうとしたその時、声が聞こえた。
『おい・・どうしたお前さん、声が聞こえるか?』
「・う・・・うん。」
『動けるか?・・いや、無理はするな・・。すまないが、コレは必要な事だ。お前さんの命の為だから・・恨むなよ。』
そう言ってやけに太い腕と手が私の頭を支える。そして、目の前にはどこかの原住民の様な姿の存在が・・被り物を取り・・男の子だった。
「・・たく、完全に凍死寸前じゃないか。・・っん。」
何かを口に含みそして・・
「んぐ・・」「・・むぐ・・んくっ。」
それを口づけで私の口に流し込んだ。私はソレを飲み込む。急に体がほてるように熱くなる。今思えば初めての異性との口づけだった。
「あ、・・あれ?わたし・・」
体が温かくなるにつれて少しづつ動けるようになり始めた。
「動けるか?ならこれを残りも飲み干せ。凍死しないようになる薬だ。」
「・・うん。」
一気に飲み込む。体が温まり、まったく寒さを感じなくなる。
「どうしてこんな所で居たんだ?」
「ISがおかしなことになって・・昨日メンテナンスした時は何もなかったのに。」
エラーを起こして不時着した際に待機状態に戻ってしまった専用機。
「あぁ・・ちょっと貸せ・・ログ表示、・・ロックだと?クラックして・・良し開いた。・・おい、お前名前は?」
「更識、楯無。」
「・・まったく違う名前が今朝がたデータをいじったログが有るが?」
「は!?・・こいつ・・同じ代表候補生の、しかも敵対派閥の・・。」
「つまりはそう言う事だ。わざとこの山辺りで不調を起こすよう仕組んでいたんだな。雪山の中で死ねばよし。帰ってきても自分のISのメンテもできない奴って言うつもりか。ったく、下手するとISコアを無くすという危険も考えんかね。そこら辺をついて上官に言ってやれ。コイツは一生、地獄を見る事になるがな。お前さんの恨みを十分に張らせるだろ。・・と、さて、そろそろ実験再開と行くか。」
「ねぇ、貴方は此処に何をしに来たの?」
「あ~、この装甲の寒冷地対応能力の実験だ。ふむ、人里まで連れて行ってやる。このままほっといて凍死されたんじゃ、目覚めが悪いしドリンクが無駄になるのも嫌だからな。この袋に入れ。」
そう言いながらも彼は私を袋に入れて雪から守るようにしてくれた。袋の口はふさぎ過ぎないようにしてしかし雪や風は入らないようにしてくれて背負って山を降りた。人里が見えてくる所まで来たらそのまま彼は私を袋から出してその袋の中にあった服をくれた。何かの毛皮で出来た服だった。
「さて、それでも着て行け。これ以上は面倒見切れん。んじゃな。」
「まって!せめて名前を・・」
「『ガムート』・・。この格好の時はそう名乗っている。」
そう言って彼は去って行った。そして、私はこの事を彼の事は言わず、付近の住民と言って上層部に報告、その結果敵対派閥は壊滅。そして、この一件で自分の力不足を感じた私は更に力をつけてロシア国家代表にまで成れた。それもこれもあの時助けてもらったからだ。
◇
◆
「だから、貴方には返しきれない恩が有るのよ。あのフワフワの服は今も飾って大事にしまっているわ。」
「ふん、俺の事を上層部に報告しなかった分でチャラで良い。あの時騒がれていたら面倒だったからな。」
「あら、アレはISと知らないから言わなかったのよ。貴方の見た時の通り私の機体は壊れてレーダー機能も動かなかったし・・EOSの派生かと思っていたわ。」
「そうか、ならまぁ、いい。借し一つで何かまたお願いでも言ってやるよ。」
そう言って俺は席を立つ。あぁ、目的忘れてた。
「重点的に警備するあたりをまとめておいてくれるか?また校内を見学する際に目安にする。」
「わかりました。警備用には必要だもんね。・・それだけかな?」
「そうだな。また何かあればあてにさせてもらう。此処に来るまでに織斑教師と戦闘になりそうになったからな。アイツとはそりが合わん。」
そう言いながら俺は生徒会室を後にして部屋に戻る。
電化製品や生活必需品が届いたと連絡が入ったのでソレを取りに行く。それと一緒に束から荷物が届いたのでソレを開ける。
「・・なんだコレ。」
それは赤く光る黒っぽい鉱石・・いやコレは甲殻か!?中に手紙が入っていた。
「謎の物質を拾った。どうやらクロスに関係ある物らしいので研究よろしく・・か。ふむ、コレは確かに・・今は小さなかけらだからネックレスがわりにでもして持っておこう。」
丁度いい大きさなのでネックレスに繋ぎソレを常に持っておく事にした。どこで何が起きるか分からん以上、こういう者は端身放さず持っておくにこした事はない。
「イチカ・ハント。警備を兼任している為あまりクラスには顔を出せないと思うがよろしく。特殊な環境に居た為、専用機を持っている。もし操縦で分からない事が有れば聞いてくれ。座学はあてにならないからそこら辺は共に学ぶ予定だ。」
さて、挨拶も終わりクラス内には国家代表候補生が一、日本の更識簪と言うらしい。四組のクラス代表だそうだ。昨日のうちに決まっているらしい。俺はどうか、やる気はないか?と言われたが、警備の仕事が有ると辞退した。どうやら生徒会長の妹で、あまり家族でうまく行ってないとか・・。一年の恐怖を体験した姉がこんな恐怖や面倒事に巻き込まれてほしくないという親心があだと化したらしい。面倒な事だ。まぁ、妹の方の気持ちも分からんでもない。姉に事あるごとに否定されて居ればそういう気持にもなるだろう。よくわかるよ。
「さて、と言う事でクラス内に男子が来たという歓迎会をします。」
「待て。俺は聞いてない。ただ食事に来ただけだ。」
「まぁまぁいいから、ねぇ更識さん。クラス代表として挨拶お願いしていい?」
「え?あ、えっと、クラス代表の更識簪です。今、自分の専用機が開発最終段階なんですけど、クラス代表戦には間にあわせます。そして、クラスのみんなと一緒に・・その・・応援よろしくお願いします。その為にも、先ずはここで一緒に楽しみたいと思います。・・以上です。」
「ありがとう更識さん!!さぁ、私達と仲良くなる覚悟はOK?拒否されてもぐいぐい言っちゃうからね?あ、私の名前は藍城『らんじょう』。よろしくね。」
「わ、分かった藍城。だから、あまりぐいぐい来るな。近い近い・・。」
すでに至近距離超えてくっついてきているレベルだ。
「えー・・ふんふん、男の子って感じの匂いね。でも、甘い香りもする・・女が居るのか!?すんすん・・あれ?確か更識さんと似た感じの匂いが・・」
「匂うなよ・・。あー・・それは、生徒会長だな。仕事の件で話に行ったから。生徒会室ならその人の匂いが付いててもおかしくないな。」
顎に手を当てて考えた後、そう答える。
「なるほど‥密接な関係は?」
「昔、仕事の件であった事が有るくらいだ。一回だけであったし、そん時は再会する事は考えて無かったから偽名だったし。」
「へぇ・・じゃあ、彼女はいないんだね?」
一番面倒な質問だな。でも、しっかり答えないともし束が聞いていたら拗ねそうだしなぁ。
「・・彼女はいないが、内縁の妻状態の人はいる。その人が養子としている娘もいるから、実質、夫の様な父の様な立ち位置だ。」
「「「「はぃいいい!?」」」」
「彼女とかぶっ飛ばして内縁の妻!?な、名前聞いていい?」
「んー、まぁ、俺をここに送り込んだ本人。」
「え?確かハント君の事を此処に入るよう説得したのって・・」
「篠ノ之博士じゃなかったっけ?」
「じゃぁ、もしかして・・」
「まぁ、・・そう言う事になるが・・清い関係だ。まだ、そう言う行為はした事がないし、責任が取れる年になって無いからな。甲斐性無しのひもにはなりたくない。」
「うわー・・逆珠のこしか・・。」
「それじゃ確かに、専用機もらって当然だし、匿ってもらってもしょうがないね・・。」
「あぁ、代わりにこの機体のデータを取る事に協力していた。そん時の関係がさっきの生徒会長との話の事だ。まぁ、あっちはEOSだと思っていたらしいが。」
「なるほどね、・・じゃぁ、生徒会長さんとは恋愛感情はないと?」
「仕事の付き合い感だな。あっても悪友どまり。」
「はは・・確かに会長さん悪戯好きそうだし・・。」
「・・更識さんも姉の事で困った事が有れば俺に相談してくれていいぞ。アイツが頭が上がらない一人だからな。」
「・・うん。」
かろうじてそう答えたが、明らかに嫌悪感が有った。仕方ないか。
近い関係ほど溝は深く成りがちだ。まぁ・・
「俺と同じ所まで『堕ちる』事にならない事を切に願うよ。」