僕を愛する、君のために。   作:おみのSS部屋

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Op.11 リスタートへの一歩

マネージャーさんが熱を出してから2日が経った。

でも、マネージャーさんは目を開けることはなかった。

次第に、不安が募っていく。

まほろや莉子と一緒に話していると、だんだんと不安になっていく。

だからわたしは、1人でいることの方が多くなっていた。

 

「マネージャー……さん……」

 

マネージャーさんの方を見ても、目を閉じている。

2日間、ほとんどこんな感じが続いている。

たしかにマネージャーさん、普段から忙しくて、なかなか大変だったとは聞いてたけど……

 

マネージャーさんはすごく真面目だから壊れやすいのかな……でもそれでわたしに迷惑をかけないでほしい。

そんな思いが強くなる。

本人はそんなこときっと意識してないし、わたしのこともちゃんと考えてくれているはず……だとわたしは信じていた。

それでも、時計の針は止まったまま。

わたしとマネージャーさんの2人だけの…‥秒針はいつ動くの……

このまま永遠に止まったままなんて嫌だよ……わたし……どうしたらいいの……

そんなことを思っていたら、気づけば夜になって、わたしも寝ないと行けない時間になっていた。

 

「あ……もう寝ないと……」

 

わたしは、マネージャーさんがいるベッドに入ったその時……

 

「ん……んん……」

 

え……?

 

私は何が起きたのか分からなかった。

 

「み……みは……る……?」

 

わたしの名前を呼んで、マネージャーさんが起きてくれた。

 

「マネージャー……さん……」

 

マネージャーさんの頬にわたしの雫が1滴落ちた。

その雫が光り輝いていた。

 

「あれ……?何があったの……?」

 

マネージャーさんの記憶が少しだけ剥がれ落ちていたのかな?

私は悲しい気持ちを和らげるため、マネージャーさんの唇を奪う。

 

「ん……」

 

それは、優しくて深くて……ゆっくりと時が動くのを感じる。

自然と悲しい気持ちが薄れていく。

お願い……マネージャーさん……目を覚まして……

 

ただこの一心だった。

正直、わたしもあまり覚えていない。

でも、マネージャーさんが目を覚ましたことだけは鮮明に覚えていた。

 

「マネージャー……さん……」

 

わたしは優しくて、甘くて……透き通るような声で呼ぶ。

 

「美晴……さん……?」

 

マネージャーさんもわたしの声に応えてくれる。

この時間が、一番好き。大好き。

それは、この先ずっと変わらない。

マネージャーさんがわたしの頬を触る。

 

「美晴さん……ごめん……」

 

「マネージャーさん……大丈夫ですか……?」

 

「僕の心と体のバランスが……完全に崩れ落ちちゃったみたい……」

 

「だから……こんなことに……」

 

「うん……ごめん……」

 

「マネージャーさん……謝らなくていいですよ……これから……ゆっくりでいいですから……マネージャーさんのこと……ゆっくり調律していきますね……?」

 

「ありがとう……」

 

マネージャーさんがわたしに抱きつく。

それは、少しだけわたしの胸を締め付ける。

でも、幸せな気持ちが強かった。

 

「美晴さん……」

 

「なぁに?」

 

「すっごく……幸せだよ……大好き……」

 

マネージャーさんが幸せっていう言葉を口にしたら、わたしもちょっとだけ胸が高まる。

でも、その気持ちを抑えて、わたしは応えた。

 

「わたしも……すごく幸せだし……大好きです……」

 

マネージャーさんがふとした時に発した言葉って……彼はきっと、何も気付いてない……

でも、その幸せっていう言葉だけは、わたしも、マネージャーさんも、きっと覚えているはず。

 

マネージャーさんは、熱が下がってないのに、まだちょっとクラクラしてた。まだふらついてて、目線も合ってないような感じがした。

でもそれ以上に、マネージャーさんが目を覚ましてくれたことが嬉しかった。

 

きっと彼は、まだ喋るのもままならない。

それでも、わたしに伝えたいことがあるから、口を開いてくれているはず。

でも無理だけはしないでほしい。

わたしはマネージャーさんの目を見つめた。

 

「いっぱい……甘えていいんだよ?」

 

それは、わたしもマネージャーさんも、お互い無理しないでほしい……そういうことに違いない、そんな気がした。

 

「はい……」

 

不安と疲れから解放されて、わたしはコテッと寝てしまった。

マネージャーさんが頭をポンポンと撫でてくれて少しだけドキドキしてる。

うぅ……いまだに慣れないよ……

ちょっぴり恥ずかしい気持ちもあったけど、幸せな気持ちが強い。

わたしは、ゆっくりと目を閉じた。

 

「おやすみ……」

 

マネージャーさん……おかえり……

 

ー翌朝ー

 

「ん……」

 

わたしがマネージャーさんよりも早く起きた。

 

でも、マネージャーさんはすぐ起きた。

 

「おはよう」

 

久しぶりに、この言葉をマネージャーさんに言えた気がした。

なんだか、嬉しかった。

少しだけ気持ちも和らぐ。

 

「美晴さん……おはよう……」

 

マネージャーさんも少しずつ元気になっていた。

それが何よりも嬉しかった。

 

「マネージャーさん、朝ごはん食べますか?」

 

そう聞くと

 

「うん。美晴さんが作ったご飯が食べたいな……////」

 

「うふふ。今から作ってくるから、待っててくださいね?」

 

「うん。楽しみにしてる」

 

なんだか、ちょっとだけ夫婦感があったけど……マネージャーさんも気にしてなかったし……いいよね……?

 

わたしは、マネージャーさんの分のご飯も作る。

風邪が治ったばっかりだから、口に入れやすいものがいいよねということで、朝はフレンチトーストにした。

でも、ちょっと甘さは控えめだけど。

これなら、わたしとマネージャーさんでわけわけして食べれるからね。

わたしがご飯を作ってる間にマネージャーさんが階段をゆっくりと降りてきた。

マネージャーさんは重たい目をこすっていて、まだ眠そうだった。

みんなは仕事やレッスンに出ていて、わたしは今日は休みだし、マネージャーさんもこんな感じだから、ずっと家にいようかしら。

たまにはこんな日が……あってもいいよね?

そんなことを思っていたら、朝食ができた。

 

「おまたせー!」

 

「うん。すごく美味しそう」

 

マネージャーさんも美味しそうに見つめる。

それがわたしは嬉しい。

 

「美晴さんは優しい」ってよく言ってくるけど、マネージャーさんだって、優しいですよって言いたくなっちゃう。

 

「冷めないうちに食べましょ?」

 

「そうだね。いただきます」

 

「はーい。いただきます」

 

マネージャーさんと私で、ちょっと遅めの朝ごはんを食べる。

マネージャーさんも美味しそうに食べているのをみてなんだか安心した。

ここ数日、何も口にしてなかったからかな?

まるで、お腹をすかせた子どもみたいに食べていた。

その様子を見てると、何だか嬉しくなってきた。

それは……わたしがマネージャーさんのことを好きだからなのかな?

答えはわからない。

でも、嬉しいことに変わりはなかった。

 

「ごちそうさまでした」

 

「あ、洗い物やっておきますから、置いといてくださいね?」

 

「うん、ありがとう」

 

マネージャーさんには、いっぱいお世話になっているから、これくらいはやらないと……ね?

 

洗い物が終わって、部屋に戻ると、マネージャーさんはわたしのベッドで再び眠りについていた。

まだ本来のマネージャーさんには程遠いけど、これからちょっとずつ良くなってほしいな……

 

わたしは、洗い物が終わると、わたしの部屋に戻った。

マネージャーさんは、またうとうとしてた。

まだ心のどこかで体のだるさが残っているのかな?

でもしばらくは無理をさせない方が良さそうね……

でも、マネージャーさんが元気そうでよかった……

マネージャーさんがまた元気になったら……散歩に出かけたり、また2人で何かしたいな……

 

でも、それができるようになるまでは、もう少し先の話。

それまでは、みんなで支えてあげよう。そんな思いが強くなっていた。

 

「すぅ……すぅ……」

 

マネージャーさんは寝ていた。

まだマネージャーさんが元通りになるまではもう少し時間がかかりそう……

でも、もう少し……だよね……?

わたしの知ってる「静かだけど、いつも優しい」マネージャーさんと早くお話したい……

わたしは彼が寝ているベッドに毛布をかぶせる。

ゆっくりしてて、ふわふわしてるこの空間と時間に、わたしたちは支配される。

その時間に、チクタクと時計の秒針の音だけが流れてゆく。

わたしは、少しだけ笑顔になる。

マネージャーさんの寝顔がかわいいから、ついついいじりたくなっちゃう。

でも、それをするとマネージャーさんにいじわるって言われる……

それも、1つの楽しみ。

 

わたしは、机の上に置いてある日記をしまった。

 

その日記に、「マネージャーさんが、マネージャーさんであるために、わたしは何でもする」と決意を書いた。




皆さんこんにちは。おみです。
この度は「僕を愛する、君のために。Op.11」を読んでいただきありがとうございます。
このお話は実は書く予定がなかったのですが書き足しました。
マネージャーも美晴さんと同じく心因性発熱を起こしてしまい、それにより数日だけ寝込んでいました(人によって治りが違うのが特徴です)
そして最後の言葉「マネージャーさんが、マネージャーさんであるために、わたしは何でもする」というのは美晴さんならではなんじゃないかなと思ってます。
さて物語は間も無く東京編へ。お楽しみに。
それでは次回。
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