あれから1ヶ月が経ち、少しだけ僕の気持ちの面や体も落ち着いてきた。
美晴さんの負担にもなっていなかったみたいでなんだかホッとしたし、この期間も美晴さんはすごく仕事をたくさん頑張っていた。
今日と明日は美晴さんの仕事が休みだし、6月12日で、美晴さんの誕生日から1ヶ月が経った今日になってしまったけど、美晴さんとお出かけデートをすることに。
ちょっとだけ緊張してるけど、なんだか嬉しい。
久しぶりに外の空気を吸える嬉しさもある。
あ、熱が下がったあとは倦怠感がすごくて、とにかく休んでたんだ。
ほのかの部屋にあるトレーニング用の用具も使いながら少しづつ体を慣らしていたから、体力面はちょっとだけ戻ってきつつあった。
「マネージャーさんとこうして2人でお出かけするの、いつぶりかしら?」
美晴さんも今日この日をすごく楽しみにしてたみたい。
僕と美晴さんは電車を使って、ちょっと大きなショッピングモールでお買い物をすることにした。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
「いえいえ、マネージャーさんの体調も悪かったですし、大丈夫ですよ。それに……」
「それに……?」
「マネージャーさんがわたしの誕生日を大切にしてくれている気持ちの方が、わたしは嬉しいです」
「ふふっ、嬉しい……」
「あ、今ちょっと恥ずかしがりました?」
「もう……何でわかるの……」
「うふふ、感性ってものかしら?」
「うう……ずるいよ……」
こんな話をしていても、自然と楽しいと感じてられる。
それは、きっと美晴さんだからに違いない。
2人でゆっくりと歩いていく。
この時間も、僕は好きだったりする。
久しぶりに外の空気を吸って、お出かけしているからかな……
駅から歩いて5分くらいで、美晴さんお目当てのお店に着いた。
「ここで合ってる?」
「はい」
美晴さんがお店の中に入る。それに続くようにして、僕も入った。
やってきたのは、ちょっと高価な化粧品の専門店。ここに来たのは、実はある理由がある。
「あ、すみません。先日この会社のこの商品についての宣伝の司会をさせていただきました夜峰美晴です」
「あ、これはこれは!先日はありがとうございました!こちらが新商品になります。是非ご使用して頂けると嬉しいです」
「ありがとうございます」
美晴さんはスタッフの人から小さな袋を貰っていた。
その袋を持って僕の元に帰ってきた。
「この前の仕事のやつ?」
「大正解。あの時スタッフさんが体調不良でいなかったから、今日貰ったの。莉子、きっとわたしが使ってるのを見て「いいな〜。あたしも使いた〜い」って言いそう」
「あはは、確かに言いそうだよね」
2人でそんなことを話しながら店内を歩く。
「あ、これですよ。この前紹介したコスメ」
「おお〜」
あまり化粧には興味ないけど、何故か興味が湧く。
それは、きっと美晴さんと一緒だからなのかもしれない。
「うふふ。わたしも莉子にコスメのこと教わろうかしら?」
「莉子は何でも知ってそうだもんね」
「きっと莉子のことだからオススメとかあるのかしらね」
「あ、僕もせっかくだし買っていこうかな」
「え?マネージャーさんもですか?」
「この前の会議で化粧してた男性がいてね。その人に聞いたら「今は男性も化粧する人いますよ」って言ってたからね。少しだけだけしかやらないけど」
そう言って僕が手に取ったのはごく普通の化粧水。
それを見て美晴さんも納得した。
「確かに化粧水くらいならしてる人いますもんね」
「でしょ?ちょっと待ってて」
「はーい」
僕が会計を済ませる。
美晴さんのために来たのに、自分もこうして買ってしまっていたのは……きっと、美晴さんのせいなのかもね……
「お待たせ」
「じゃあ、次はこっちのお店に行きましょう?」
「うん。行こっか」
二人でその店まで歩く。
歩く早さも、今日はいつもよりもゆっくりな気がした。
初めて来た場所でもあったからというのが要因なのかもしれない。
しばらくすると、そのお店に着いた。
「あ、ここです」
「早速入ろっか」
「はーい」
やってきたのは洋服屋。美晴さんがよく着てるブランドの服が多く並んでいた。
実際に着ている服がいくつか並んでいて、僕も少しだけ記憶にあるものも。
「試着してきますね」
美晴さんは僕にこう言って試着室の中へ。
ふと時計を見ると12:00を回っていた。
これが終わったらお昼にしようかな……
そんなことを思いつつも、今日は美晴さんのペースに合わせようかな……
でも美晴さんは「マネージャーさんもやりたいこととかあればやったらいいんですよ?」って言ってくれていたけど、そんなことはできるはずもない。
何せ、美晴さんのために今日はお出かけしてるのだから……
「お待たせー!」
「うん。すごく似合ってるし、ちょっと今までと違う雰囲気があって僕は好きかな」
「うふふ、ありがとうございます。マネージャーさんにこうして褒められると……なんだか……照れちゃいます……」
美晴さんは顔を赤くしていた。
でも、それも彼女の良さなのかも。
何事も素直に受け止めて、自分なりに考え答えを出す……
それって、一番難しいことなのかも……
そう思いつつ、美晴さんが買いたい服を買った。
「さて、お昼にしよっか」
「あ、もうそんな時間ですか?」
「うん。今12:30かな」
「あ、じゃあ、ご飯食べましょう?」
「そうしよっか」
お昼を食べてるときに、僕があることに気づく。
「そういや美晴さん」
「なぁに?」
「そういや今日は、ピアスつけてないね」
美晴さんは少しだけ笑っていた。
「もう。気づくの遅いですよ」
「ご、ごめん……」
「わたし、いつもピアスしてますけど、たまに「付けたくないかな〜」っていう日があるんです」
「じゃあ今日は付けたくなかった日だったんだね。それも美晴さんらしくていいと思うよ」
「うふふ。嬉しい!」
それもそれで個性だと思うし、いつもとちょっとだけ雰囲気が違って落ち着いてる。それも僕は好きなのかな……
普段はピアスをしてたから、ピアスをしてない美晴さんが新鮮で、新しい一面を見れたような気がした。
お昼を食べた後も、2人でゆっくりと楽しみながら、満喫した1日を過ごした。
「楽しかったー!」
「うん。僕も」
美晴さんはこれ以上ないくらい元気だった。
「マネージャーさん、今日はありがとうございました」
「気にしなくていいよ。それこそ、僕だって美晴さんの誕生日に何も言わなくてごめんね……?」
「うふふ。謝らなくていいんですよ?」
「うん。ありがと」
夕日に照らされた美晴さんはより一層綺麗に見える。
この美しさが彼女の魅力でもある。
「マネージャーさん」
「ん?」
美晴さんが僕に耳打ちする。
「今日は、マネージャーさんの家で泊まっていいですか?」
「いいけど……みんなには伝えたの?」
「もちろんですよ。莉子から「あーいいなー。楽しんできてね」って言われましたし」
美晴さん……いつのまに伝えてたの……
「そっか……おいで……」
「はい……!」
10分後、僕の家に美晴さんを連れて帰ってきた。
日も落ちかけていて、夜ご飯の準備をするにはちょうどいい時間だった。
夜ご飯の準備をして、待ち時間があった時……
「あ、マネージャーさん」
「ん?」
「マネージャーさんからのプレゼント、ないの?」
こんなことを美晴さんが聞いてきた……
あれ?ちょっと欲張り?
ちょっとだけ戸惑いながらこう返した。
「んー……用意してない」
「えー。マネージャーさんなら用意してくれてると思ったのにー」
美晴さんが拗ねる。
でもそれもかわいい。
ちょっとだけ意地悪してるけど、実は僕も作っていた。
それを渡す。
「冗談だよ。ちゃんと準備してるから。はい、これ」
「これは……?」
「スマホのカバーケースだよ。最近美晴さんのスマホカバーがボロボロになってるのをみて、そろそろ交換するのかなって思いながら変えてなかったからさ、自分でアプリ使って作ってみたんだけど……デザインどうかな……?」
「ありがとうございます。すごくいいデザインで気に入りました。大切にしますね」
「うん、ありがとう」
美晴さんに誕生日プレゼントを渡したらご飯が炊けた。
今日のご飯は新しく届いたお米を使った炊き立てですごく美味しそう。
「さ、美晴さん。ご飯食べよ」
「はーい!」
美晴さんも僕が渡したスマホカバーを早速付け替えていた。
よっぽど気に入ってくれたのがすごく嬉しかった。
「今日は、忘れられない誕生日ですね」
「え?」
美晴さんの言った言葉がわからなかった。
それでも、すごく幸せそうなのが見てもわかる。
本当は1ヶ月前に祝ってあげたかったから、来年こそは……ね?
美晴さんと一緒に美味しいご飯を食べながら、最近あったことを一緒に話した。
そして、寝る直前に美晴さんがこんなことを言ってきた。
「ねぇ、マネージャーさん。1つお願いが……」
「なぁに?」
僕から美晴さんに「5年後結婚しよう」と約束した。その際、「美晴さんも約束してほしいことあったら何か言ってね」と僕は伝えていた。
きっとそれが決まったんだと思う。
美晴さんは僕に耳打ちしてきた。
「新婚旅行のことなんですけど……」
「ふむ……」
美晴さんからのお願いを僕は聞いた。
その時、少しだけ納得した。
その時、1つ思い浮かんだことがあったので、僕はあえてこう答えた。
「うん。わかった。大切に覚えておくよ」
「わかりました。楽しみに待ってますね?」
「もちろん。楽しみに待ってて」
6月12日。それは、忘れられない誕生日。
でも、それは今日だけの話。
来年からは、きっと1ヶ月前の今日に、お祝いできたらいいな……