3回生になって、大学の講義も始まってから1ヶ月経ったある日。
僕は今日も大学に行っていた。
今日は実験がある。それに向けて頑張っていた。
「では、始めてください」
実験が始まる。
実験そのものは楽しいんだけど、実験レポートを書くのはだるい。
何故なら、やり直しというものがあるから。やり直しって、どうしてこんなにだるいのかなって思っちゃう。
そして、美晴さんとまた会えなくなっていた。
美晴さんは東京にいて、AiRBLUEのみんなと、楽しい毎日を送っている。写真が送られてきたり、莉子からも「マネージャー早くきて欲しいなー」って言われたりもした。
その時、「僕は一人じゃないんだ」って感じる。
そう思いながら、実験を楽しんで(?)いたが、ある休憩時間にこんなワードが入ってきた。
「平野一家殺人事件」
最初は、すごい殺人事件が起きたなって言う程度だった。しかし、映像を見てみると、明らかに自分の家が燃えていた。そして、殺害された人の名前を見ると、自分の両親と妹が殺害されていた。
「え……」
僕は放心状態になる。まさか、こんなことが起こるなんて……
その場にスマホを落としてしまう。
事情を知ってしまった僕は実験をやる元気など残ってなかった。
実験を終わると、いつもはこの後レポートを書いてから帰るが、今日は一刻も早く家に帰りたかった。
僕の家が、なくなっているかもしれないから。
そして、僕の命が狙われる危険があるから。
大学の最寄駅から電車とバスで約1時間、家に着いた。
しかし、家はなくなっていた。
思い出も失われた。そこに、何もなかった。
近所の人に事情を聞く。
どうやら、犯人は捕まったとのこと。
犯人の名前を聞くと、僕のことを昔いじめていた中学の同期の4人だったらしい。
「……」
僕は焼けた家に入る。
両親と妹はすでに他の場所に運ばれていたが、生々しい血が床にあった。
「どうして……こんなことに……」
僕の心の中は絶望で満たされていた。
この先、僕はどうしたらいいのか、途方に暮れていた。
「美晴さん……僕……どうしたらいいかな……?」
外は大雨が降っていて、雷が時々鳴っている。
そんな悲しみに暮れた夜、1件の電話がなってきた。
どうやらセレモニーホールの人らしく、家の電話にかかってきた。
僕はその電話を取らなかった。
やったところで、僕は悲しみの気持ちを背負ったまま、この先を過ごすことになる。それは嫌だったのと、この場所に嫌気がさした。
自分はすでに1人になっていたから、もうこの場所に帰ってくることはない。
そう思いながら、この夜を過ごした。
でも、この先はどうしたらいいんだろう。
不安に怯えながら寝ようとした時……
ーーーーーーーーーーーーー
わたしは夜峰美晴。
今は東京で声優を目指していつも頑張ってます。
そして、これはわたしの誕生日の日のこと……
「美晴、お誕生日おめでとう!」
「みんな、ありがとう。うふふ」
今日はわたしの誕生日。
なのに、マネージャーさんからは何一つ連絡がこない。
きっと、忙しいからなのかな……
そんなことを思いながら、ふと莉子がテレビをつける。
そのテレビには、あるニュースが流れていた。
「今日の夜19時半ごろ、奈良県の平野家で一家殺害事件が起きました」
その言葉と、次の映像を見た瞬間、わたしは放心状態になる。
「美晴……どうしたの?」
「……」
「おーい?美晴〜?」
わたしは何も言わずに、みんなのところを去った。
嘘だと言って欲しかった。
こんなことが起こってしまう世の中を理不尽に感じた。
怒りと悲しみの気持ちが入り混じって複雑になっていた。
わたしの誕生日なのに、まるで何もない1日のように感じてしまった。
わたしは、部屋で虚しく泣いていた。
「なんで……こんなことが起こるの……」
マネージャーさんの携帯に電話しても、繋がらない。
この瞬間、わたしは全てが崩れ落ちた。
何をどうしたらいいのかわからなくなっていた。
ーーーーー
僕の家の近くには、取材の人たちが、集団で集まっていた。
記者の人たちに見つからないように僕は家の電気を消したまま、移動していた。
それはまるで、暗闇に閉じ込められた、1人の少年のようだった。
ゆっくりと時間だけが止まっていく。
止まぬ雨が、僕らの悲しみの気持ちをまた一段と強くさせる。
美晴さんと話したいのに話せない。
心の底にある、怒りの気持ちがあったまま美晴さんと話すのは良くないと思ったからだ。
それはきっと彼女も知っている。
でも、僕の「この先」についてはわからない。どうなるのか、どこにいくのか、このままここにいるべきなのか、わからない。
前を向きたくても、向けれない。
美晴さんに、「お誕生日おめでとう」って言うはずだったのに、言えなかった。
そんな自分が嫌で嫌で仕方がなかった。
だって、大好きなのに、忘れられたみたいに認識されそうだから……
でも今は、それどころではなかった。
ままならない感情を抱いたまま、僕は、焼けた家の中でただ1人、立ち尽くしていた。
その家から聞こえるのは、チクタクと動く時計の秒針の音だけだった。
世界ってどうしてこんなにも残酷なんだろう。
誰が、こんな世界を作ったのだろう。
誰がこんな別れを予想したのだろう。
それは、僕には分かるはずのない、運命からの宣告であった。
見たくなかった、こんな現実。
虚無感に駆られた夜。
この夜が明ける時は、果たして来るのだろうか……
それは、きっと分かるはずのない、運命が決めるもの。
僕は、一睡もせず、少しだけ燃え跡が残る自分の部屋を片付け、必要なものだけをちょっと焦げ臭いスーツケースに詰め込んだ。
皆さんこんにちは。おみです。
この度は「僕を愛する、君のために。Op.8」を読んでいただきありがとうございます。
この小説が完全にフィクションであることがわかりましたね。
実際どんな感情を持つかについては、僕もからないので、ここは想像で書いています。
この先マネージャーはどうなってしまうのか、美晴さんはどんな感情を抱くのか、マネージャーと美晴さんの繋がりはどうなってしまうのか、乞うご期待ください。
それでは次話もお楽しみに!