【短編集型】英梨々がイチャイチャ過ごしたい冬休み   作:きりぼー

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報告。連絡。相談。
そしたら、恵は倫也が別荘に行くのを許可したのかな?


【1日目】最初のステージが最難関だった件

高校二2年の冬休み。(ということで英梨々は作るよ)

倫也たちのゲーム作りも大詰めだった。

あとは英梨々が絵を完成、それをプログラムに組み込むだけである。

ゲームをDVDにしてくれる業者の締め切りは25日。納品が29日。コミケ販売が30日。

よくわからんがそんな日程ってことでタノム。

 

倫也の部屋。

 

「倫也~あそぼ~」

猫なで声で上機嫌な英梨々が倫也にまとわりつく。

「って、英梨々!?なんでここにいるんだ」

「なんでって、なんでよ?」

「挿絵を仕上げるために那須の別荘に引き籠っているはずだろ?」

「ん・・・」

 

英梨々が原作をパラパラとめくる。

「どこだっけ?」

「さぁ・・・」

「相変わらず細かいわね」

「いやいや、英梨々ルートの大事な分岐だからね?」

「そう?」

「とにかく、那須の別荘に早く戻れ」

「なんか冷たいわね?まさか・・・また恵といちゃつくつもりじゃない・・・」

「なんでそうなるんだよ!はやくいけ」

「・・・いいわよ。どうせ、どうせ、あたしなんかー」

英梨々が半べそをかいて部屋から出ていった。

 

「・・・どんなキャラだよ」

倫也が深々とため息をついた。

「倫理君も相変わらずね」

霞ヶ丘詩羽がゲームをプレイしながら校正をしていた。

「そうだぞー、トモ。澤村ちゃんにはちゃんと優しくしとけー」

ベッドの上でギターを抱えながら美智留が言った。

倫也が美智留をじぃーと見つめる。

「な・・なにをそんなにじっとみてんの?なんかエッチいんだけど」

「ちげぇーよ!つか・・・ひさしぶりだなっと」

「一応、ここに毎日通い詰めてゲーム作りをしていることになってんだけど」

「あっそ」

「ほんと、たまには出してくれないとキャラ忘れちゃうしー」

「語尾伸ばしておけばそれっぽくなるし大丈夫だろ・・・」

「扱いがぞんざいなんだよなー」

美智留が少しいじける。

そもそも原作のしゃべり方がそうじゃなさそうだけど、今更。

「そこまで手が回らないんで、ほんと勘弁してください」

倫也が素直に頭を下げる。

 

「さて、くだらない雑談はこれぐらいにして倫理君。最初のミッションよ」

「はい・・・」

「いいかしら?原作の加藤恵が怒った理由の建前は、倫理君が相談もせずに勝手に那須までいったこと、締め切りが遅れてゲームが作れなかったことよ。本音は単純に澤村さんに対する嫉妬でしょうけど、それは認めるわけにはいかないものね」

倫也は考え込む。

そう、あとは加藤恵がサブヒロインとしての役割を果たせば英梨々ルートは完成する。

 

「そこで倫理君。ちゃんと加藤さんの許可を得て那須へいくこと。ついでにサブヒロインになってもらうことも約束してもらえるといいわね」

「・・・あの・・・詩羽先輩」

「何かしら?」

「それって、最初から無理ゲー感がありませんか?」

「知らないわよ、そんなこと。とにかく、加藤さんの怒る表面的な理由を取り除いて、コミケのあとに打ち上げをすること。わかったわね?」

「・・・はい」

倫也はまったく自信がなかった。

 

再び扉がガチャリと開いて、英梨々が顔をのぞかせた。

「そうだ、倫也ぁー。これあげる」

ぽんっと、キノコを投げた。白地に緑色の水玉模様。

倫也がそれをキャッチする。

「なんだよ・・・これ」

「はぁ?あんたバカなの?見ればわかるでしょ。1UPキノコよ」

「いや・・・そうなんだが・・・」

「じゃ、那須で待ってるから!」

英梨々が笑顔で出ていった。

 

倫也が1UPキノコを食べる。

「・・・死ぬの前提かよ」

 

美智留は楽しそうに笑っていた。

 

 

※※※

 

 

恵の家の前に倫也が立っている。電話は通じなかった。

すでに、怒っていることは知っている。かつてないほどに。

何しろ、夏にいちゃいちゃする物語を作ったのに、その直後が英梨々と高1を過ごす物語なのだ。

しかも、倫也は英梨々を選んでいる。

 

「無理ゲーと言うか、攻略ルートが用意されているんだろうか?」

倫也がインターホンを押した。

 

ピンポーン。

「・・・」

ピンポーン。

「まっ、出るわけないよな」

 

 

※※※

 

 

「恵!話を聞いてくえ」

「・・・これは、ずるいんじゃないかなぁ・・・」

「時間がないからなっ」

「あのさ・・・もう少し、ちゃんと小説っぽく書いた方がいいと思うんだけど」

「だって、そうすると二か月ぐらい怒るだろ?」

「ううん。もうずっと怒る」

「・・・なぁ、恵・・・英梨々ルート・・・作ってやれないか?」

「もう、言い訳もしないんだね。倫也くん・・・」

「まぁな!いいか、恵。これもすべて作品のためなんだよ。それぞれが役割を果たす。そうやって物語は紡がれていく」

「だからさぁ、それなら、イデアが育つとかそんなことしないで、ちゃんと台本つくって、その通りにやるべきだったんじゃないかなぁ?」

「それでも、夏休みは楽しかっただろ?」

「そうだけど・・・今は楽しくない」

「違う物語だからな?」

「それは詭弁だよっ」

「・・・そうだな。けど、英梨々ルートが完成しないと・・・俺らは終われない」

「あとは・・・わたしだけ?」

「だな」

「ねぇ・・・倫也くん。わたしにチャンスはなかったのかな?恵ルートにはなれなかったのかな」

「うん。どんなに足掻いても英梨々ルートしかない」

「・・・そう。倫也くんも英梨々をちゃんと好きになれたんだね?」

「うん」

「・・・」

「恵。何度もいいたくないんだ・・なぁ・・・恵」

「なによー」

「俺の・・・サブヒロインになってくれ」

「それ、サイテーだよね」

「ごめん」

「でも、ここが表情もわからないイデアの世界でよかったね」

「・・・恵」

「わかった。サブヒロインをやればいいんだよね?」

「たのむ」

「1つだけ条件いいかな?」

「ん?」

「作ってよ・・・英梨々ルートが終わったら・・・加藤恵の物語を1つ」

「どんな?」

「子育て編」

「・・・恵!?」

「いってらっしゃい」

 

 

※※※

 

 

「ただいま・・・」

倫也が部屋に戻る。

「おかえりートモ」

「あら、無事に戻ってこれたのね。倫理君」

「無事なのかな・・・」

膨大なボツで何度死んだかわからない。英梨々ルートに進む倫也を抹殺し続けたヤンデレの恵。しかし、その方法では英梨々ルートを阻止することはできなかった。

 

「トモ、那須にいけるんだね?」

「ああ、いってくる。こっちに完成した画像ファイルを送信する、あとは手はず通りに進めてくれ」

「あたしは無理だよー。加藤ちゃんができるんでしょ?」

「・・・そうだな」

「じゃ、大丈夫だ。いってらっしゃい」

「いってくる。詩羽先輩も後はよろしくお願いします」

「ええ。R18はついてないけれど、いいのかしら?」

「そこまでは・・・」

「そう・・・決めてしまった方がいいのよ。そういう時は」

「健全な高校生の物語だからね?」

「いいのよ・・・別に。いってらっしゃい。倫理君」

「いってきます」

 

その時、倫也のケータイがなった。

 

「やぁ倫也君。元気かい?」

「伊織か・・・」

「いやだなぁ・・・そんながっかりしないでくれよ」

「なんだよ?」

「那須にいくんだろ?車・・・だそうか?」

「いや、まだ電車があるから大丈夫だ。それに・・・紅坂さんに英梨々の才能を気づかれるわけにはいかない」

 

原作では紅坂さんの車で那須にいき、その時に英梨々の絵を見られてしまう。のち、英梨々が引き抜かれる。

回収すべきフラグと回収してはいけないフラグがある。

 

「うん。あとは、画像ファイルさえ送ってくれれば・・・こちらでフォローも手伝うよ」

「悪いな・・・たのむ」

「1つ聞いていいかい?もう、手遅れだって気が付いている?」

「何がだよ!?」

「いや、気が付いてないならいいんだ。Good luck。倫也君」

 

電話が切れた。

倫也は首をひねった。手遅れ?

 

 

※※※

 

 

ローカル線からバスを乗り、さらに徒歩だと一時間ほどかかるのでタクシーに乗る。

タクシーはスタッドレスで、道路の雪を踏みしめながらガタガタ揺れながら進む。

東京から約4時間。那須の別荘に倫也は着いた。

 

あたりは東京では考えられないほどの暗闇に包まれていた。

微かに灯る別荘の光をたよりに、門から玄関まで歩いてインターホンを押す。

 

「あら、倫也。無事に着いたのね」

英梨々がのんきに玄関から出てきた。人の気も知らないで・・・

「ああ、この物語では無事にたどり着けたよ」

「そう、寒いでしょ?上がりなさいよ」

 

英梨々のサロペットは絵の具で汚れている。

いつもと違うのは、頭に大きな赤い水玉模様の白い帽子をかぶっていたことだ。

 

「なんだ、その帽子?」

「見てわからないの?一応、オチのある短編集の構成なんでしょう?」

「ん?」

「だから、わざわざ用意したのに・・・」

「えっと・・・ん・・・」

「・・・キノピオ」

英梨々が恥ずかしそうに呟いた。

 

英梨々が大きな帽子を取り、ソファーの上に放り投げる。

「コーヒーでいいかしら?」

「頼む。ずいぶんと冷えるな」

「そりゃー、スキー場が近くにあるくらいだしね。雪は大丈夫だった?」

「うん。今はやんでいるよ。で、その帽子は・・・」

「ほら、だから・・・その、1ステージクリアってことで」

英梨々が顔を赤くして照れている。バカなことをしているのは重々承知だ。

「ああ、マリオか?」

「そうなんだけど・・・あとは倫也に任すわよ?」

「何を!?」

「オチ」

「投げやりだな」

「何言ってんのよ。短編なんてオチがすべてじゃないの」

 

倫也は考える。ベストでないまでも、ベターなつっこみがないものか?

 

 

「ピーチ姫じゃないお前に、不安を覚えるよ!」

 

 

「何よ、それ」と英梨々が笑う。八重歯が少し見えた。

 

(了)




うん。いつもの英梨々。
自覚がたらんな。
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