【短編集型】英梨々がイチャイチャ過ごしたい冬休み 作:きりぼー
7日。
「まいったなー、波島兄ちゃん。一話分作れだてっさー」
「ん~、澤村さんらしいよ。この適当さは」
「で、どれ使う?」
美智留がテーブルに広げたボツ原稿を眺めている。どれも未完成やオチのないものが多い。メモ書きやプロットのみもある。
「問題は内容そのものにはないからね」
伊織がつまらなそうに一枚ずつ目を通している。
「これって、あたしと波島兄ちゃんのサイドストーリーってことなんでしょー?」
「そうだろうね」
「じゃ、これかなー」
美智留が一枚のレポートを渡す。一番まとまりがあり完成に近い。
「妥当だけどね」
アイシーテイルの活動の一日を描写したものだった。
レコーディングに向かうのに、伊織が運転してみんなを乗せスタジオに向かう。
徹夜で作曲していた美智留は後部座席で寝ている。
少しでも寝させておこうと気をつかう伊織。
美智留は寝ているのでその間のアイシーテイルのメンバーの会話が肝だ。
それだけの物語。
「で、アイシーテイルの他のメンバーはどうするんだい?」
「やっぱ、そこだよねー」
そう、登場するほかの三名、ランコとトキとあと誰だっけ・・・
名前と担当楽器と容姿とキャラがわからない。
焼肉回で一回復習した気がするんだけど、どうにも思い出せない。
「なら、みんなと会話でもしてきたら?」
「そうするー」
ここは伊織の部屋で、隣では出海が受験勉強か、コミケの作品作りか、はたまたブレッシングソフトの仕事をしているはずだ。それがいつなのかは時間軸による。
英梨々によると高2時空なので、出海は受験生ということになる。
コタツに2人で向かい合って座りながら、美智留が腕を伸ばしてレポートを見ていた。
アイシーテイルのメンバーがどんなのだか記憶にない・・・
それもそのはず、この同人では一度も登場していないのだから。
※※※
「というわけで、アイシーテイルのみんなにも出てもらうことになったからー」
「まじ!?」
「突然。」
「いやいや準備できてないし無理でしょ」
「そこをなんとかー。お願い」
「いやいや、頭下げられても、ここがどこだかわからないし」
「それはどこでもいいと思うけどー、場所とか大事?」
「大事。」
「じゃあ、レコーディングスタジオの休憩室の雑談ってことでー」
「いい加減だろ・・・」
「そんなもんだってー、まさかレギュラーメンバーが良い環境で出演していたとでも思ってるー?」
「ミッチーってそんなキャラだったっけ?」
「さぁー?」
「あんたって気楽よね・・・」
「いい加減。」
「ちょっとまって、わたし・・・これからデートで」
「さぁ、作ろうか。ランコ」
「そうだね、ランコ」
「うん。がんばろ。ランコ」
「そこは結託するんだ・・・」
「で、わたし達は何をすればいいの?」
「えっと・・・短編を1つ作る予定なんだけどー、これみてくれる?」
「どれどれ・・・」
「車に乗って移動するだけ?」
「地味。」
「うん、でもその時の些細な会話をアイシーテイルのメンバーでしてもらうから」
「ふーん、でもこれってミッチーが波島プロデューサーとのサブストーリーでしょ?」
「そうだけどー?」
「で、なんであんた寝てるのよ!」
「いや、さりげない日常の、さりげない優しさみたいな・・・ほら彼・・・照れ屋だしぃー」
「彼?」
「あっ、波島兄ちゃんのことねー?他意はないからー」
「そ。で、何が問題なんだっけ?」
「ほら、誰が何をしゃべっているかわかりずらいでしょー。小説ってこうやって会話オンリーのところも多いしー」
「ほう?それで」
「なんで、みんなで会話しながらとりあえず、キャラ付けをしてもらおうとー」
「それで、さっきからそうやって語尾を無意味に伸ばしているのね」
「そうそうー」
「いい加減。」
「じゃあ、うちは関西弁にするわー。ほな問題ないやろ?」
「んじゃ、ウチもそうするワ」
「マネてどうすんねん!」
「やっぱ、あかん?」
「そりゃそうやろ」
「じゃあ・・・カタコトとかドウデショウカ?」
「ほな、それでいってみよ」
「あと1人はー?」
「無口キャラ。」
「おぅー、最初からちゃんと意識してマシタネ?」
「カタコトキャラ変ちゃう?」
「ソウデスカ?」
「まぁそれでいいよー」
「で、どないするねん?」
「誰が誰?。」
「そこはもういいよー、とりあえずやってみよ」
「やってみよって、何をデスカ?」
「うーん。とりあえず四人だから・・・司会1人とトリオ漫才かな」
「漫才やるんかい!」
「台本はありマスカ?」
「あるわけないじゃんー」
「適当。」
「じゃあ、いくよー、『アイシーテイルでいい子悪い子普通の子』で」
「なんか、唐突にはじまるんやな・・・」
「じゃあ、いい子の場合―」
「そうやなぁ・・・ファンのために創作活動して睡眠不足」
「いい感じだねー。次、普通の子」
「ファンと握手するときは、笑顔デス」
「ほい、じゃあオチ。悪い子―」
「プロデューサーと寝る。」
「・・・それ、普通じゃないー?」
「普通ちゃうやろ、あんたがそうなだけちゃうん」
「関西弁ちょっとおかしいデスネ?」
「普通のとこ、それにしてみよか」
「なるほど、じゃもう一度。良い子の場合~」
「そやな・・・プライベートでもイメージを崩さないように振る舞う」
「ふーん。次、普通の子」
「プロデューサと寝て、お仕事もらいマース」
「次、悪い子の場合―」
「ファンと寝る」
「ビッチだなぁー」
「なんでオチが下ネタやねん」
「面白くないデース」
「そうだねー。ちゃんと無口キャラが落としてくれないと」
「即席。難解。我。挫折。」
「キャラ変わっとるやんけ」
「気持ちワカリマース。オチはミッチーが責任もってやるべきデース」
「ん?いいけどー」
「ほな、うち司会やるわ!良い子の場合」
「枕営業も厭わナーイ」
「最初から下ネタかよ。次普通の子の場合」
「ギャラでるか、気になる。」
「そうやね・・・で、次、悪い子の場合」
「せっかく出てもらったけど、つまらないからボツにするー」
「もうええわ!」
※※※
美智留がコタツで眠っている。
「う~ん」と唸って、うなされていた。
手には新曲の楽譜を握りしめたままだ。
伊織は立ち上がって、ブランケットを美智留の背中にそっとかける。
それから音をたてないように、スマホで静かに仕事をすすめた。
(了)