【短編集型】英梨々がイチャイチャ過ごしたい冬休み 作:きりぼー
クリぼっちじゃない皆様にはメリークリスマス。
恋人達のクリスマスイブ。
英梨々はついに倫也と一晩を一緒に過ごす!
24日。クリスマスイブ。
午前3時。
倫也が来てからも英梨々は必死に絵を描いていた。日付が変わったぐらいから目が冴える。
倫也はパソコンで仕事の続きをしながら、スカイプで恵と会話を続け、ネチネチとした嫌味をたくみにかわしていた。
「少し仮眠をとって、明日の午前中までにはなんとか・・・」
倫也は締め切りが迫って苛立つ恵の気をなだめる。
「そう?2人きりで仮眠をとるんだ?」
「別々の部屋だからね!?」
「まっ、いいけど、どうせサブヒロインだし」
スカイプが切れた。
倫也は深々とため息をつき、仕事に没頭している英梨々を横目に風呂に入ることにした。
バスルームは広く、バブルバスをいれてお湯をはれば見事な泡風呂になった。
倫也はようやく息抜きができてほっとする。
・・・あれ、なんで男の入浴シーンを描写してるんだろ・・・
どうせなら英梨々にしろよな・・・
バスタオルで頭を拭きながら、倫也は英梨々に声をかける。
「そろそろ風呂はいって、寝たら?」
「・・・あと少しだけど・・・」
ノルマはあと二枚。色塗りだけだった。締め切りには間に合いそうだ。
「まだ時間はあるよ」
「その甘い誘惑に何人のクリエイターが地獄をみたと思っているのよ」
倫也は肩をすくめる。仕事熱心な女が周りに多いのは、自分がダメだからだろうか?
英梨々は仕事を中断して、風呂場へと向かった。
結っている髪をほどき、頭を振るとブロンドの髪がキラキラと光りを放つ。白皙の裸体はあどけなさがなくなり、大人の体つきになっている。
湯舟に浸かり、体育座りをしながら英梨々はぼんやりとしていた。
ときどき顔をお湯につけると、泡が顔中にくっついた。
倫也と2人で入れないものかな?と考える。順番がよくわからない。
男女の関係になったら、一緒にお風呂に入ることもあるんだろうか?
顔に着いた泡をお湯で流す。
男女の関係・・・?
どうしたら、そういう関係になれるんだろう?
自分が描くエロ同人誌のような無理やりな展開でなく、どうしたら自然な感じで倫也と結ばれるんだろう。
倫也もそういうことを考えるんだろうか。
倫也があたしを好きで、あたしが倫也を好きで。
できれば誰にも邪魔をされない場所で、2人で夜を過ごし・・・
同じベッドで眠ったら・・・自然とそういう風に発展しないだろうか?
そのシチュエーションまでいったら、もう女の子の自分は体を委ねるだけだ。
それはどんな時だ?
と、英梨々が妄想をしていて、それが今だとやっと気が付く。
それから1人で顔を耳まで真っ赤にして、バカなことを考えたと恥ずかしくなって、お風呂の中に潜って、ぶくぶくと空気をお湯の中で吐き出した。
(こういうあざといのは、あたしの役柄じゃないわね・・・)
そして、少しだけ胸がチクリと痛くなった。
※※※
黄色いパジャマを着て、倫也の寝ている部屋を覗いた。
ベッドサイドランプが微かに柔らかい光を放っていた。
キングサイズのベッドの端っこで倫也はすでに寝息をたてている。
決心のつかない英梨々は部屋を出てキッチンに行き、冷蔵庫のアイスティーをグラスに注いで飲んだ。
人生は分岐点の連続だ。何が正しくて、何が間違っているかわからない。
振り返ればなんとなくわかる。その程度だ。
このまま絵を仕上げてしまうか・・・
ベッドにもぐって一度眠るか・・・
それとも倫也の隣で甘えるか・・・
グラスが空になった。
もっと倫也が積極的だったらと思う。
後ろから軽く抱きしめて、耳元で愛の一言でも囁いてくれればすぐに落ちるのに。
恵に負けないぐらいチョロインなのに。
グラスを片付けた英梨々は、再び倫也の部屋に向かった。
寝ている倫也の側に腰をかけ、顔を覗きこむ。バカみたいに無防備で眠っている。
「狸寝入りやめなさいよ」
一応、かまかけてみるが、特に反応はなかった。
英梨々は顔を近づけて、頬に軽く唇を当てた。
「役が逆じゃないかしら?なんであたしが『辛抱たまらんwww』みたいな状況になっているのよ」
倫也は静かに眠ったままだった。英梨々は体の芯が火照ってくるのを感じていた。
自分の感情が整理できない。自分の体からこみ上げてくる情欲に気が付かないふりをするので精一杯だった。
「倫也っ!」
英梨々は自分が悩んでいるのに、安眠している倫也に腹が立ってしまい、その顔をパチンと叩いた。
「ほえっ?」と倫也が寝ぼけている。
「ちょっと、もう少し真剣にやりなさいよ・・・」
「今、何時だよ!?」
「えっと・・・午前4時を回ったところね」
「・・・寝ろ」
「・・・眠くない」
「寝ないと、風邪ひくぞ?」
「そんなの関係ない」
「英梨々・・・」
倫也は体を起こして、英梨々の隣に座る。端に2人で座るにはベッドはあまりにも大きい。
「このまま起きて、絵を仕上げるか?」
倫也が優しく声をかける。英梨々は黙って首を横にふった。
「落ち着いて少し横になれよ?」
「こ・・・ここでいいかしら?」
倫也は静かにうなずく。
英梨々は蒼い瞳をキラキラと輝かせて、倫也の隣にもぐりこんだ。
「とにかくだな・・・眠いから寝るぞ」
「あたしは目が冴えていて眠れそうにないんだけど」
倫也は体を横にした。横には英梨々がいて甘い香りが鼻をくすぐる。
ほわほわと柔らかい髪がベッドランプに照らされていた。
「まずは仮眠をとってだな・・・それから絵を仕上げて・・・」
「倫也」
「ん?」
英梨々はまっすぐ天井を見上げていた。
「もう・・・無理」
英梨々が小さく呟く。
それから左手で倫也の右手を握った。
倫也は努めて冷静を装い、そして英梨々を諭すように言った。
「英梨々ルートはさ、簡単なんだよ。最初にやろうとした通り、この冬休みをしっかりと2人で過ごせばいい」
「そうね」
「ただ・・・それだと・・・」
「恵のことでしょ?」
倫也は答えない。
どんなに探したって、2人の女の子を幸せになるルートなんていない。
答えを先伸ばしにして、シーソーゲームを繰り返すだけだ。
「強引だけど、あるにはあるのよ」
英梨々が淡々といった。
倫也に抱かれたからといって、ハッピーエンドにはなれない。
「見つかったのか?」
「まぁね・・・ほぼSFだけど」
「俺が2人?」
「ううん・・・詳しくはまた別の物語の時に詩羽が説明してくれるわよ」
「ふむ・・・」
倫也もぼんやりと天井をみている。隣にいる英梨々の顔を見たら止められない気がする。
「あたし達は成長しながらも、やっぱり別の物語をそれぞれ生きているのよ」
もう一年たつ。
「だからね、倫也・・・」
英梨々は言葉を選ぶ。
「結論が先。結論の制作は後でいいのよ」
「・・・なるほどな・・・」
英梨々が体を横にして、倫也の腕にしがみついた。
その腕が英梨々の控えめな胸に押し当てられる。
「あんた、男でしょ?」
「R18ついてないからな?」
「あんたバカでしょ?さっき説明したわよね。制作は後でいいのよ」
「・・・英梨々っ」
英梨々が倫也の上に馬なりになった。
倫也を見下ろす青い瞳の中にベッドランプのオレンジの明かりが揺れていた。
心なしか震えている。
長い金色の髪が倫也の顔に触れてくすぐったかった。
「で、どうするのよ?これ以上あたしに恥をかかせないで欲しいのだけど」
英梨々が焦れた。
「わかったよ。できるかどうかわからないけど・・・全部終わったらな」
「うん」
R18を作る気らしい。
「じゃ、そろそろオチをよろしくね。倫也」
英梨々が倫也のパジャマのボタンをはずしていく。
「そんなこと言われてもだな・・・」
その時、毛布がベッドからずさりっと、床にオチた。
倫也と英梨々の目が合って苦笑いをする。
(了)
へぇ・・・がんばってね・・・