【短編集型】英梨々がイチャイチャ過ごしたい冬休み   作:きりぼー

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紳士的なふるまいとヘタレは似ていると思う


【3日目】クリスマスにはプレゼント交換したい英梨々

25日 クリスマス。

 

「チキン食べたい」

「鶏粥で我慢しろ」

「ケーキ食べたい」

「いちごだけで我慢しろ」

「あーん」

「ほらよ」

倫也がスプーンでお粥をすくって、英梨々に食べさせている。

 

前日に絵を完成させた英梨々は原作通り風邪をひいた。

 

「やっぱり裸になったのがまずかったかしらね?」

「・・・不摂生な食事と生活のリズムが原因だろ」

「認めないわね?」

「記憶にないからな」

「別にいいけど。あーん」

「ほらよ」

倫也がお粥を口に運ぶ。

 

絵が完成したので発注を予定通りに行った。

あとはPCで細かい作業はしているものの、冬コミの準備は一応一段落したことになる。

 

「これで恵が機嫌を損ねる理由を回避できたわね」

「ああ、なんの解決にもなってない気がするがな」

「そうでもないんじゃないかしら?恵だってあたしに対する嫉妬を認めないだろうし・・・」

「そりゃあ、普通に加藤恵をシミュレートすればそうだろうけどな」

「そうよね・・・そこはあたし達の恵ですものね。あーん」

「ほらよ」

英梨々が甘えている。風邪は引いているものの上機嫌だった。

 

「で、今後の予定は?」

「29日が納品。30日が冬コミだから、あと三日以内に風邪が治らなければ英梨々はここでお留守番だな」

「そうやってあたしを捨てていくのね・・・」

「治せよ」

「あーん」

「ほらよ」

 

あとはポップアップを作ったり、おまけを作ったり、宣伝用のポスターを作製したりと急がない仕事があるだけだ。商品さえあれば、同人なので自分達のペースでいい。

 

「あっそうだ。プレゼントあるのよ。そこの棚を開けてくれるかしら?」

英梨々はベッドから起き上がろうとしない。

倫也はイスから立って、棚を開ける。ラッピングされた袋が二つ置いてあった。

「すまん英梨々。俺・・・またプレゼントもってこなかった」

「期待なんかしてないわよ」

なんか、ついこないだ高1のクリスマスをやった気がする・・・

 

「二つあるけど?」

「どうせ倫也が用意してないと思って、あたしの分も自分で用意したのよ」

「そりゃどうも・・・」

袋を二つ抱えて、ベッドの横に戻る。

英梨々はフォークで苺を刺して食べていた。

自分で食べられるなら自分で食べろよ。みたいな野暮なことを倫也は言わない。

 

「はい、倫也」

「どうも」

倫也が英梨々から袋を受け取った。

「開けてみなさいよ」

倫也がゴソゴソとリボンをほどき、袋から中にはいっていたセーターを取り出した。

「なんか、いい触り心地のセーターだな」

「カシミアよ」

「カシミア?」

「それくらい常識でしょ・・・とにかく、いいものだから大事にしなさいよね」

「ああ、うん。ありがと。もしかして・・・お高い?」

「そうね、今の倫也じゃ1/10の値段でも買う気がしないんじゃないかしら?」

「おうぅ・・・」

ちなみに、クラスメート全員にウニクロのセーターが配れるぐらいの値段。

「ちょっと着てみなさいよ」

 

倫也が上着を脱いで、セーターを頭からかぶった。

紺色のセーターの胸元には小さなブランドロゴが付いている。

「どう?」

「あら、思ったよりも似合うわね」

「どうも」

「じゃ、次あたしね」

英梨々が赤い袋を倫也に渡した。

「ん?」

「それをあたしに渡すのよ」

「ああ、うん。はい英梨々。メリークリスマス」

「あら、倫也、気が利くわね。まさかクリスマスプレゼントを用意するぐらい気の利く男になるなんて思わなかったわ」

「皮肉はいいから開けろよ・・・」

英梨々がごそごそと袋あけて、白いセーターを取り出した。

 

羽織っていたカーディガンを脱いで、セーターを頭からかぶり、長い金髪を両腕でセーターの中から出した。

こちらはタートルネックで、体のラインもよく出る女性用だった。

 

「どうかしら?」

「・・・」

倫也が一瞬ドキッとして言葉を失う。ここに来てからお仕事モードで黒メガネのださい英梨々しか見ていなかった。改めてみるとやっぱり可愛い。

「どうしたのよ?何かいいなさいよ」

「似合ってる」

ぼそりと言う。それが精いっぱい。

「何、突然昔の喪男みたいになってるのよ」

「いや、すまん」

倫也は目線を外して、顔をぽりぽりと指でかいた。頬の当たりがほのかに赤い。

 

しばし、沈黙の時間が流れる。掛け時計がボーンと鳴って、夜の8時を告げた。

 

「ごちそうさま」

英梨々が苺を食べ終えて、フォークをトレイの上に乗せた。

倫也はサイドテーブルの引き出しから、常備薬の風邪薬を取り出して英梨々に渡す。

「あたし、粉薬は苦手なのよね」

「子供じゃないんだから・・・」

「そういうのって、大人とか子供って関係ないと思うけど」

「じゃあ、シロップの風邪薬でも今度買ってくるよ」

「はぁ?バカじゃないの。人を子供扱いしないでよ」

「・・・同じだろ」

「さってと、バカなこと言ってないでアニメでも見ましょ」

倫也は体温計のスイッチを入れて、英梨々に渡す。

「寝ろ」

「つまんない。今日だって一日中寝てたし」

英梨々が下から体温計をもぞもぞといれて脇にはさんだ。

「風邪、治らないと冬コミ参加できないだろ」

「わかってるわよ・・・そんなこと」

 

ピピピッと体温計が鳴った。

また、英梨々がもぞもぞと体温計を取り出して、それを眺める。

「あらやだ。38度もある・・・以外としっかり風邪ひいたわね」

倫也が受け取って確認してからケースにしまった。

「明日、病院行くか?」

「大丈夫よ。そんなに辛くないし・・・寝てれば治るわ」

「辛くなったらいえよ。無理するなよ」

「うん。風邪ひくと、倫也って優しいわよね」

「いいから、早く寝ろ」

「歯、磨きたい」

英梨々が立ち上がろうとする。倫也がそれを支える。

「大丈夫よ。まさか・・・トイレまでついてくるつもり?」

倫也はため息で答える。

英梨々が1人で歩いて洗面所に向かった。

 

寝る準備を終えて、英梨々はベッドに横になった。

倫也はそばのイスに座って、様子を眺めている。

「大丈夫よ。そんなずっとそばにいなくても」

「他にすることもねぇーしな」

「でも、そんな風にそばにいられても、気になって寝れるもんじゃないわよ?」

「そうだな」倫也は立ち上がった。

「風呂でも入ってきなさいよ。倫也はまだ起きているんでしょう?」

「うん。もう少し作業を進めておくよ」

「うん」

それから英梨々があくびを1つした。

 

倫也が風呂に入った。

英梨々の部屋に戻って様子を見ると、すっかり眠っていた。

サイドランプの豆球の明かりではっきりとは確認できないが、静かに寝息を立てていて辛くはなさそうだった。頭の冷えピタだけ貼り換えて部屋を出た。

 

※※※

 

家の中は全体的に温かい。廊下もリビングも床暖房が温めているからだった。

倫也は部屋の窓の結露をふいて外を眺める。窓明かりで白い雪が積もっているのが確認できるが、少し先は暗闇で何もみることができなかった。

雪が音を消すのであたりは本当に静寂に包まれていて、そんな時は少し世界から隔離されているような気分になる。

 

「あいつ・・・オチを作る前に寝やがったな」

1人呟く。

 

短編はオチがあった方がいい。別に無理をすることもないがクリスマスならいくらでも作れるだろう。

当初のアイデアは、寝る前に英梨々がキスをせがむやりとりだった。倫也とちょっとした押し問答がある。

そして、英梨々がいうのだ。「クリスマスでしょ?倫也の答えなんて1つしかないのよ?」「なんだよ?」「イエス」

・・・くだらない。

 

倫也はため息をついて本棚を眺める。きっと英梨々はそういう無理な明るい話が好きというわけではないのだろう。並んであるラノベのどれも読む気になれない。棚の端に置いてある純文学の本を手にとる。

それから、ベッドの上で静かに目を通してみたが、頭にまるではいってこないので本を閉じた。

アニメも見る気がしない。時間だけが過ぎていく。

 

ノートPCに目をやる。インターネットをつなげば・・・恵と話ができるかもしれない。

午前中に仕事のやり取りをしたものの、「メリークリスマス」の一言も言っていなかった。

恵となら何か明るい話題でクリスマスらしいオチができるかもしれない・・・

 

倫也がノートPCを開く、考えたが電源をいれずにもう一度閉じた。

 

※※※

 

英梨々の部屋に戻って、そばのイスに腰をかける。

それからぼんやりとして、何も考えずにうつらうつらと過ごす。

時々、英梨々が咳をするので、その度に様子を見るが問題はなかった。

また静かに寝息を立てはじめている。

 

英梨々の横顔をじっと見つめる。

ずいぶんと長い時間を一緒に過ごしてきたように思う。

 

それからずいぶんと悩んだが、クリスマスが過ぎてしまう前に、倫也は英梨々の頬にそっと唇をあてた。

 

そして大丈夫そうなので、部屋に戻って倫也も眠った。

 

(了)




いい感じなんだよなぁ。
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