【短編集型】英梨々がイチャイチャ過ごしたい冬休み 作:きりぼー
26日。快晴。
「おはよー倫也」
英梨々が元気に倫也を起こしに来た。
「おはよう。英梨々」
倫也もベッドから起き上がる。時刻は朝の7時。
「健康的だな・・・」
倫也が大きく伸びをした。
「あんなに早く寝たら、嫌でも起きるわよ」
「体調はどうだ?」
「うん。おかげさまで熱も下がったし、治ったみたい」
「そっか。良かった」
熱も高かったので長引くと思ったが、風邪がすぐに治った。
「じゃ、帰るか」
「そんなに慌てなくても、もう少しゆっくりしましょうよ」
「いや、冬コミ前で立て込んでいるし、早く戻れるなら戻りたいんだが」
「そう・・・」
英梨々が少し残念そうにいう。このまま別荘に泊まって遊んでいたい。
スキーをしにいかなくても、庭でかまくらぐらい作りたかった。
「じゃ、支度するわよ。とりあえずシャワー浴びて来るわね」
「俺はメシでも作っとくよ」
それぞれの一日が始まる。
倫也はコーヒーを飲みながら英梨々が来るのを待つ。外は快晴で冬らしい青い空がとても綺麗で、二階の窓からは下の街が雪化粧されているのが見える。
風呂からでてきた英梨々は髪を黒いリボンで結んでツインテールにしていた。ジーンズをはいて、上は昨晩の白いセーターを着ている。タイトな服装なので溌剌とした英梨々がよく映えていた。
「それでね。倫也。考えてみたのだけど・・・もう一度みんなで別荘にこないかしら?」
英梨々が倫也の前に座って朝食を取り始める。パンと野菜と果物。それにコーヒー。
「ここに?」
「うん。冬コミまでは忙しいけれど、年を明けたらみんな暇でしょ?どうかしらね」
「みんなの予定はみんなに聞いてみないとわからないけど・・・英梨々の家族がくるんじゃないの?」
「あたしの両親は今年もスイスらしいわよ」
詩羽先輩はネットがつながればどこでも仕事ができる。美智留は・・・まぁ予定があるわけがないな。ということは恵が了承するばみんなでここに来られるわけだ。
「・・・いいんじゃね?」
倫也が了承する。倫也の家に集まっても、英梨々の別荘に集まっても対して変わらないだろう。雪で遊べる分だけ楽しいかもしれない。
「あとは・・・あたし達の関係の説明ね」
「ん?俺たちの関係?誰に何を説明するの?」
倫也が食事を終えて、コーヒーを飲んでいる。
「何って、あたしと倫也が結ばれたことの報告をみんなにするのよ」
「・・・結ばれ・・・?」
「あら、とぼけるのかしら?」
英梨々の中では後回しとはいえ、あのタイミングでR18に分岐している。当然、今の状況では『事後』ということになる。
とはいえ、顔は耳まで赤い。
「俺としてはだな・・・英梨々とは・・・プラトニックな関係をだな・・・」
「・・・倫也?」
「・・・なんだよ」
「怖気づいたの?」
「そうじゃねーよ・・・」
「男ならはっきりしなさいよ」
「そういう問題か?」
「そういう問題でしょ。あなた・・・英梨々ルートにいるってわかってるのかしら」
「それは・・・わかってるよ」
「じゃあ、何が問題なのよ」
「確かに・・・」
倫也は言い返さずに食器を片付けて洗い物を始めた。
英梨々はため息を1つついて適当に掃除をする。また来る予定なので冷蔵庫の中は片付けない。
午前10時を回ったところで、英梨々の呼んだタクシーが到着した。
荷物を運びながら階段を降りる途中で、倫也が前を歩く英梨々に言った。
「なぁ英梨々・・・俺と付き合ってくれ」
少し固まった英梨々がゆっくりと振り返る。表情が少しひきつっている。
「あんた・・・ほんとにバカなの?」
「なんだよ・・・」
「もう少し、情緒とかロマンとか環境とかタイミングとか場所とかいろいろあるでしょ」
「そうだよ、いろいろあるよ。昨日の夜がそうだったんだよ!クリスマスだし、雪も降ってたし・・・けど英梨々が先に寝ただろ?」
「風邪だったんだからしょうがないでしょ!それにね、そういうクリスマスを特別視して、情緒とかロマンとか環境とかタイミングとか場所とかにほだされて了承するのは嫌なの」
「・・・どっちなんだよ」
「知らないわよ!そんなの」
もう一度、玄関の呼び鈴が鳴った。
玄関を開けると、英梨々はさっきまで怒っていたのが嘘のように愛嬌を運転手に振りまいている。
倫也はまた深くため息をついた。
タクシーの後部座席に並んで座る。最寄りの駅まで2人は何もしゃべらなかった。
別に喧嘩してしゃべらないわけじゃない。
英梨々が時々にやにやしたり、耳まで真っ赤になったりしながら、いろいろと空想にふけっていただけだ。
※※※
ローカル線の間も2人はしゃべらず、東京行きの電車に向かい合って座ると、ようやく英梨々がしゃべり始めた。
「いいわよ」
英梨々がぽつりとつぶやく。
それからポシェットの中のソーダ飴を1つ取り出して、倫也に渡した。
倫也はそれを受け取って口に放り込む。英梨々はゴミを倫也から受け取ってポシェットにしまう。
「付き合うって何なのかしらね」
「知らん」倫也が即答する。
「まっ、そうよね」英梨々だってよくわからない。
電車が揺れている。車窓からは畑か田んぼだったところが一面雪になっているのが見える。
「キスとかするのかしらね・・・」
英梨々が手に顔を乗せながら外を見ている。自分でつぶやいたことに気が付いていないようだ。
倫也はギクリとした。
合意もなく、英梨々の頬にキスをしている。
英梨々がチラリと倫也を横目で見る。倫也は目をそらす。
「ああん。もう!」英梨々がクシャクシャと髪を両手でかいている。
「ど・・・どうした?」倫也が驚いて声をかけた。電車の中は空いていて、ボックスシートを占領している。
英梨々はそのまま座席に横になって、1人悶えていた。
倫也はその奇妙な動きをしている英梨々をじっと眺めている。気持ちはわからんでもない。
「倫也・・・」
「ん?」
「やっぱり・・・エッチとかもするのよね」
「知らん」
「しないの?」
「知らん。聞くなそんなこと」
「あああっ」
英梨々が声を殺しながらうめいている。
「お前、大丈夫か」
「わかんない・・・」
「安心しろ。とりあえず英梨々が描くエロ同人のようなことはしないから」
「そりゃそうでしょうよ」
「・・・たぶんな」
「変態」
「お前にだけは言われたくない」倫也が少し笑う。
英梨々も少し落ち着いたようで、座り直す。とはいえ倫也の顔がまともに見られない。
※※※
倫也の家の前に着いた。
「寄ってく?」
「えっ・・・昼間からヤルの?」
「何をだよ・・・」
「ナニをでしょ?」
「・・・そんな下ネタ全開キャラになるなよ」
「・・・そうよね・・・ごめん」
倫也が鍵を開け中に入る。英梨々は無言であとから玄関にはいる。寄る理由もないが、寄らない理由もない。
倫也がキッチンでぼんやりとお湯が沸くのを待っている。
「何飲む?」
「倫也と同じものでいいわよ」
「じゃあ、インスタントのレモンティーな」
「うん」
英梨々はリビングのソファーに座ってくつろいでいる。
倫也はカップに粉を入れてお湯を注ぎ入れる。
テーブルの上にカップを置く。
「ありがと」と英梨々が言った。
「なんかさ・・・今回は順調に進んでいるような気がする」
「いつも、途中までは順調なのよ。それはいいけど、みんなと会うのは明日でいいわよね?」
「ああ、戻ってきたことはもう伝えているしな」
「あんたからちゃんと紹介してよね」
「わかった」
「で、なんて紹介するのよ?」
「いや、何も考えてねぇーよ」
「練習しておいた方がいいんじゃないかしら?」
「いいよ・・・」
「ほら、言ってみなさいよ」
「いいって」
倫也が照れながらカップの紅茶を飲む。レモンの香りがする甘ったるい飲物だ。
お互いに知っている友人に彼女を紹介するというのもなんか変だ。
かといって黙っていてもおかしいか。
「んんっ」倫也が咳払いをする。
英梨々がにやにやしている。
「この度は英梨々さんとお付き合いさせていただいてます」
倫也がカチコチになっていう。顔が真っ赤だ。
「親じゃないんだから。・・・うちの親が相手のほうがあがらなそうね」
「面識あるからなぁ・・・」
「まっ、いいわよ。詩羽にはこっそり伝えておくから」
「ふむ」
TVをつけると年末のニュースが流れていた。
「溜まっているアニメもみないとな」
「今日、見る?」
「とりあえず荷物片づけて・・・それから冬コミの確認して・・・」
「アニメ見ながらできそうね。手伝うわよ?ポップアップとか作るんでしょ?」
「それなら、英梨々には看板作って欲しいな」
「いいわよ」
「上、行くか」
「うん」
倫也がマグカップをもって、階段を上がっていく。
英梨々は下で立ち止まって、倫也の後ろ姿をじっと眺めていた。
それから一呼吸を置いて、階段をトントンと上がっていく。
そこからは2人の時間。
(了)
・・・あらやだ。倫理君と澤村さんがオチをつくってないじゃないの。
2人が飲んだレモンティーとかけまして、迷子の子供が無事に帰ってきた時の親心と解きます。
その心は。
ほっと(ホット)するでしょう。
蛇足かしらね。