【短編集型】英梨々がイチャイチャ過ごしたい冬休み 作:きりぼー
作中人物にもお礼を言いたいです。
30日。冬コミが無事に終わって、打ち上げ会場の料亭にみんなが集まった。
下駄番に靴を預けると、女将に誘導されて奥座敷へと案内された。
不慣れな倫也はあたりをキョロキョロと見る。
「高そうな調度品ですねー」と出海が置いてあるものに興味を示す。
他はあまり動じていない様子でコートをハンガーにかけていく。
席順は左側が倫也、恵、出海。右側が英梨々、詩羽、美智留である。
「とりあえずビールでいいかしら?」英梨々がみんなに聞く。
「居酒屋じゃないんだからメニューぐらいは目を通したいわね」
「そう?ならあたしも選ぼうかしら」
「まずは・・・アルコールであることを注意しようね」と倫也が軽くつっこむ。
「あんたそんな細かいことをこだわるからハゲるのよ」
「だから、そのハゲるの前提なのやめてくれよ」倫也がおでこを触って気にしている。
「わたしも、ちょっと今はアルコールを控えているから・・・梅ジュースがいいかな」
「あら、日本酒好きな加藤さんにしては珍しいわね」
「ちょっと飲みたいけど」
「高2だからね!?まじめにやろうね?」
「トモー。出海ちゃんが参加している時点で無理だと思うよ。あたしは・・・とりあえずビールで」
「じゃあ、ビールの人」
恵以外が手を上げた。
「結局、倫也も飲むんじゃない」
「いや・・・飲んでいいなら飲みたいよ」
「そういう一貫性のないところが倫也くんなんだよ・・・浮気性というか」
「それ関係ないよね?」
英梨々が注文をする。
まもなく、肴と飲み物が運ばれてきた。
倫也がグラスをもって、英梨々がビールを注ぎいれる。次に倫也が英梨々のグラスにビールを注いだ。
白い泡の量がちょうどいい。
「じゃ、みんな用意はいいかしら?倫也。挨拶お願い」
倫也が立ち上がる。
「今日はこうして無事にみんなにお集まりいただき・・・」
「倫也。固い」
「みんなの参加する忘年会ができてほっとしてます。思い起こせば一年前にはじまったこの同人も読者を減らしつつ一年がたち・・・」
「トモ、長い」
「・・・とにかく、今日はゲームが無事に完売したのもみんなのお陰なので、今日はささやかながら・・・いやいや、大奮発して労いの食事を」
「ノーギャラで女を働かせるとか、倫理君も相当なジゴロよね」
「いや、ちゃんと払うよ?いらないっていうから」
「倫也先輩、お金の話はよしたほうがいいですよー」
「そうだね。では、グラスをもって・・・乾杯!」
「乾杯!」
と、みんなでわいわいグラスを合わせる。
「かんぱい」と恵が小さな声でいって、最後に倫也のグラスと合わせた。
「ジュースでいいの?」
「うん。でも、この梅ジュースちゃんとおいしいよ」
「そう?良かった」
「少し飲んでみる?」恵がグラスを倫也に渡す。
「ん・・・」
「そこ、油断している隙にいちゃいちゃしないでくれるかしら?」
英梨々が釘を刺す。
「ふふふっ」と恵がおかしそうに笑っていた。
英梨々は倫也のグラスにビールを足す。
「お腹空いたー」と美智留が足を崩している。
「なんかお品書きが豪勢ですよー」
出海がさっきからお品書きを読んで、読めない字を詩羽に聞いている。
「うみねずみでナマコってよむんですね。海鼠。」
「食べたことないなー」
みんながコリコリと海鼠を食べる。
一口食べては感想言っている。
ナマコの他にも、いくつかの小品が並べてある。
お品書きと見比べながら、少しずつ口に運ぶ。
「もう、今はお腹いっぱい食べたいよー」と、美智留が空の皿を見ている。
「それ、ヒーロー側のセリフですよ」
「あたし、日本酒にしようかな」
「あら、私も蔵出し原酒のこれを・・・」詩羽がメニューを指さす。
続く、御造りが運ばれてきたときに、英梨々が日本酒をオーダーする。
「グラスは・・・えっと、5つで。恵は何か追加する?」
「ううん。まだ平気」
「うわぁ・・・」出海が御造りを見て感動している。
「なんかリアクションが初々しいわね」と余裕の英梨々。
「みんなどんな人生を歩んできた高校生なんですか・・・」と不思議そうに出海がいう。
「まっ、あたしはお嬢だし、詩羽は高校生でも稼いでいるしね」
「それに波島さん、別に感動していないわけじゃないのよ?ちょっと疲れているのよ」
「おばさんくさいですねー」
「そうね」と素直に認める。3歳違うとけっこう離れている。
「これ、海老の頭が焼いてあるけど食べられるのー?」
「食べられるわよ。ぼたん海老よね」
「あとは、中トロと平目とミル貝?青みはなんだろう・・・イワシ?」
恵はひとつずつ食べながら確認する。あまりお品書きは確認していない。
「あー、やっぱり飲みたいな」
「飲んだら?」と倫也が促す。
「うーん」
倫也がお猪口を恵にそっと渡す。
恵は手にとって匂いを嗅ぐ。
「あっ、これ、いいお酒だ。少しフルーティーだし・・・」
「一口ぐらいなら・・・大丈夫じゃない?」
「うーん。やめとく。また夢になるといけねぇ」
「芝浜落ちのボケしてもわからんと思うぞ?」
「そうかなぁ・・・」
恵は飲まずにお猪口を倫也に返す。
「ほんと、2人でいちゃいちゃと・・・」詩羽がため息をつく。
英梨々はあまり嫉妬もせずに、ニコニコしながらお刺身を食べている。
「なんか和やかですねぇ」
「そうだねー。いいんじゃない?こんなところでギスギスしててもしょうがないし」
「らしくないというか、盛り上がらないというか」
出海はそう言いながらも上手いお酒を飲んで機嫌がいい。
やがて、テーブルに鍋がセットされる。
2人に1つだ。
大皿にサシのはいった上等な肉が並べられているのが運ばれると、美智留と出海のテンションがMAXになってはしゃいでいる。倫也も驚いている。
「やっぱりこれって、A5等級とかの肉なの?」
「倫也、そういう価値基準はつまらないわよ?」
「いや、そうかもしれないけどさー」
「倫也先輩、お品書きには松坂牛って書いてありますよ」
「ほう・・・」
恵が肉を見て、ちょっと口元を抑える。
「恵・・・大丈夫か?」
「ううん・・・ちょっとごめん」
恵が席をたって部屋から出ていく。
倫也が心配そうに後ろ姿を見送る。
「あたし見てこようか?」と英梨々が気遣う。
「いや、大丈夫だろ。詩羽先輩、席変わってもらえますか?」
「あらいいけど。どうしたのかしら?」
「何よ、倫也、あたしの隣に来たいわけ?」
「そうじゃねぇーよ」
「そんなに強く否定しないでよ」
「ごめん。ちょっとな」
それから倫也は女将に頼んで、野菜を追加する。
「連れが今日は肉がダメそうなんで、すみません」
「でしたら・・・フグでも用意いたしましょうか?」
「えっと、ちょっと考えてみます」
倫也が肉の大皿を美智留に渡す。
「食べていいぞ、こっちの分も」
「おお、太っ腹」
「倫也先輩は食べないんですか?」
「ん・・・鍋に肉が入るのがダメそうだから、野菜鍋食べるよ」
「・・・優しいですね」
「トモ、無理はよくないぞー」
「別に無理はしてねぇーよ」
英梨々と詩羽は黙ってしゃぶしゃぶと食べ始めていた。
やがて、恵が戻ってくる。
「大丈夫?」英梨々が心配そうにきく。
「うん。ごめん、心配かけて」
恵が席に戻る。目の前に倫也が座っている。
「あれ?」
「ここは野菜鍋にしようぜ」
「あっ、・・・うん」
「なんかフグも頼めるらしいぞ?」
「ううん。いい」
恵がしいたけをプカプカと鍋に浮かべる。
少し静かな時間が流れる。
「肉、うまっ」美智留が感嘆している。
「とけますね・・・」出海がしみじみと食べている。感極まったか。
「すみませーん。ご飯くださーい」美智留が大きな声で頼む。
「こういうのは最後に香の物と一緒にご飯がくるんだぞ」と倫也。
「えー、あたしら高校生だもん。ご飯とお肉だよー」
「それ、酒飲みながら言うセリフじゃないよな」
「わたしもご飯くださーい」と出海も追従する。
「もう、自由にしろよ」
「トモ、肉はこっちで食べれば?」
「うん。倫也くん、無理しないで肉食べていいからね?」
恵が野菜を煮ながら言う。
「ああ、うん、適当にするよ」
やがてご飯が運ばれる。
「トモ、肉追加していい?」
「大皿二枚食べたよね!?」
「だって、しゃぶしゃぶ肉っていくらでもはいるじゃん」
「えっと・・・予算が」
「倫也、気にしないでいいわよ。すみません。肉の大皿あと二枚追加でー」
「日本酒ももらえるかしら?」
「それと日本酒も」
「躊躇ねぇな」
「ケチケチしてもしょうがないじゃない。出る時は出るのよ。150万分食べれるわけでもなし」
「そうだな」
※※※
宴もたけなわといったところ。だいぶ酔いが回っている。
「やっぱり稼いで、贅沢をする。それが人生よね」
「うわ、詩羽が人生語りだした。おじさんくさっ」英梨々が軽くひく。
詩羽は目が座りながら、隣の倫也と恵の様子を見ている。
恵の機嫌がだいぶいい。
「はい、倫也くん」
野菜をとりわけて、倫也の皿に入れる。
「ども」倫也は黙々と野菜を食べる。
「澤村さん・・・やっぱり、間違ったんじゃないかしら?」詩羽がつぶやく。
「そうでもないわよ」
英梨々もさっきから楽しそうな2人の様子をつっこみもせずに静観していた。
「マロニーちゃんとそろそろ食べごろかな」
「ずいぶん庶民的なものも入っているんだな・・・」
「春雨かな?」
「いや、俺はわからん」
「はい、倫也くん」
「ども」
恵がニコニコしている。梅ジュースのあとはレモンソーダを飲んでいる。
「トモ、フグも頼んでいい?」
「美智留。自重しろ」
「ともやしぇんふぁーい。おさけもういっぽんいいれすかー」
「出海ちゃんは中学生設定ってこと忘れないですね?」
「そうれしたっけぇ@@」
出海が目を閉じる。
「美智留、ちゃんと介抱してやれよ・・・」
「まっ、しょうがないな」
美智留が出海を壁にもたれさせた。
「倫也。肉食べた?」
「いや」
「そう・・・、じゃこれ」
英梨々が最後の一枚をゴマダレにつけて、倫也の口元に運ぶ。
「・・・」
「ほら、あーんしなさいよ」
倫也が恵を横目で確認する。固まっていた。
「倫也・・・?」
倫也が英梨々の方をみると、その青い瞳が少し潤んでいた。
「あーん」倫也が口を大きく開ける。
英梨々がそこに肉をいれた。
「・・・肉、うまっ」
「でしょ!」
英梨々が笑っている。
「最後まで貫けばかっこいいのにね」
と恵がぼそりと呟く。
「不可抗力だろ・・・」
「どーだか」
恵の目からハイライトが消えている。
「トモー。すき焼きもできるみたいんだけど」
「まだ喰うのかよ!」
「冗談よ。ほら、雰囲気悪くなりそうだったし」
「そんなことないよー」と恵。
詩羽はため息を1つ。
※※※
帰り道。
恵の家に前にタクシーが止まる。
「じゃ、恵。また明日ね」
「うん。・・・って、明日!?」
「いわなかったけ、いくわよ・・・那須別荘」
「ああ・・・うん」
恵はごねるのをやめた。
「ごちそうさま、倫也くん」
「ああ、今日はいろいろとありがとうな」
恵が儚く微笑んで、小さく手を振った。
タクシーの中には倫也と英梨々が座っている。
恵はしらふだし電車で帰るといったのだが、英梨々が途中だからとタクシーで送ってくれた。
タクシーのドアが閉まる。
素直にお礼を言えなかった恵は2人の乗ったタクシーを黙って見送った。
タクシーに揺られながら、「お腹いっぱい」と、英梨々がお腹をさすっている。
「そうだな。うまかったな」
「倫也が優しいのはわかるけど、やっぱり肉も食べたほうが良かったじゃない?」
「食べたろ」
「そうね」
タクシーの窓が曇っている。
「倫也の家の前でいいかしら?」
「いや、英梨々の家の前でいいよ」
「どうして?」
「少し夜風にあたってから帰る」
「そう」
年末の東京は道路も空いて静かだ。
街も少しだけ暗い。
やがて2人の街に近づくと、英梨々はそこでタクシーを止めた。
カードで清算をすませる。
「ここでいいのか?」
「うん。あたしもほら・・・少し風にあたりたいし」
2人が並んで歩く。
「今日はよく星みえるわね」
英梨々が見上げている。空は澄んでいて、オリオン座がはっきりと見える。
「ほんとだな。これだけ見えるなら・・・しばらく眺めて目が慣れたら他の星もみえるかもな」
「カシオペヤも北斗七星もある」
あといくつかの星が見えた。
「手・・・手つないであげてもいいわよ?」
倫也は返事もせずに、英梨々の左手を握る。
それから2人は無言で少し歩く。歩きなれた街並みも年末は少し様相が違う。
とても静かだった。
倫也の家の近くになる。
「難しいものだな」
「考えすぎなのよ」
英梨々が赤いマフラーを右手で触っている。少し寒い。
恵の登場する英梨々ルート。どこかやっぱり底抜け明るい話にはならない。
「家まで送ってくよ」
「いいわよ」
英梨々が手を離すと、よろめいてしまった。
倫也がそれをそっと支える。
「だいぶ飲んだな・・・」
「たまには・・・ね」
英梨々がポケットからフリスクを出す。それから数粒出して倫也に渡した。
「ども」
「しゃぶしゃぶ味ってわけにもいかないでしょ」
「さぁな」
倫也がフリスクを食べる。英梨々も食べる。
家まで送っていくと別れたところで話が終わるから。
今回はここでおしまい。
(了)
オチ?知らないれすよぉ~。
ちゅーう!ちゅーう!
って、こんな風に終わるから澤村しぇんぱいは澤村しぇんぱいなんれすよ~@@