コミュ障ぼっち、ガイアを行く   作:犬西向尾

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11話

 さて、時間というものは過ぎ行くものである

 かつて【ガイア連合】が地元霊能組織のいくつかを吸収しあるいは提携した事の影響

 時と共に波紋のように広がり、あるいは熟成されたそれは

 当のガイア連合に所属している人間ですら完全に予想できるものではなくなっていた

 

 

【ガイア連合】は技術革新を迎える

 

 

【ガイア連合】は霊的アイテムの高い開発能力、製造能力を持っている

 その産物の代表例はやはりシキガミであろう

 シキガミ、それも人型式神は他の組織に全く真似できない凄まじいものである

 これだけでも他組織の追随を許さない技術であるが

【ガイア連合】はただそれだけではない

 霊薬、霊装、祭具に至るまで【ガイア連合】、あるいは【山梨産】と呼ばれるそれは他者の一線を画す力を持つ

 残念ながら現在進行形で霊的に世界征服活動をしている【メシア教】を除いて、だが

 

 それを支える力の源、

 それは表世界の日本に強い影響を与えるほどの資本力であったり

【ガイア連合】の霊能者たちが持ち込む異界や悪魔由来の希少な素材類であったり

 大量に運用され消費される万能資源としてのマッカだったり

 あるいはショタオジだったりする

 その中にあって、【ガイア連合】内でも誰もがその功績を否定することの出来ない存在がある

【ガイア連合】が誇る技術部である

 

 【ガイア連合】が恐山から

 まだこの日本の霊的国防組織が健在であった頃に製造された高度な武具、霊具を借用し分析し、

 その技術の一部の解析、取得、蓄積に成功した結果、彼らは刺激を受ける事になる

 限られた狭い範囲の視界がさっと広がり、遥か遠くの果てに夢を描けるような

 そんな感動を味わった

 そしてそんな彼らの中にこう思ったものが出てくるのも自然である

「もっと知識を! もっと技術を! ジャンプしろオラァ!」

 その結果、生まれた物の一つが【アガシオン】である

 

 

 妖魔【アガシオン】

 西洋系魔術師が使い魔とする実体のない悪魔である

 女神転生においてはレベル10前後で壺に入ったお化けのような姿をしている

 元ネタの方は壺や指輪、護符に入るお化けだそうだ

 姿は不定、人、獣、小鳥、何でもありだ

 が、このアガシオンは女神転生や元のイメージを捨てて見るべきである

 何せこのアガシオンはごく最近この【ガイア連合】で【生産】され始めた悪魔だからだ

【悪魔の生産】、高い技術力を持った【ガイア連合】が、吸収した現地霊能組織からの

 その伝手をたどって西洋系霊能組織の技術を入手したことで生産を可能にした

 まぎれもなく最新の技術の産物

 

 このアガシオンの本格的な販売が始まった

 そう、販売である

 買えるのだ、マッカで! 

 シキガミに次ぐ二人目の【仲魔】そう期待されている

 だから買った

 それも、オーダーメイドで注文、俺の血肉も製造過程に使ってもらった、痛かった

 高いし痛い買い物だったが<ライコー>も反対しなかった

 絶対に無駄にはならないと思っている

 それが家に届いた

 アガシオンだから縮めて<シオン>そう名付けた

 最初はアガにしようと思ったけど呼びにくかったからやめた

 

 

 さてこの<シオン>、実力のほどはいかなるものかというと

 まずアガシオン自体の評価を羅列すればこうなる

「レベルは5程度、無論同レベルの式神と比較して弱く、

 MAG消費は強さを考えれば少々お高い程度、手数が増える事を考えればあり」

 この評価を極端に塗り替えるほどの事はいくらオーダーメイド産でもできない、俺の出すマッカ程度では

 俺の<シオン>は上の評価にプラスしてこの程度の項目を付随すればいい

「利便性が高い指輪型」「量産型よりちょっと高いっぽい? 程度のステータス」

「所持スキルはジオ、スクカジャ」「汎用スキル【テレパス】持ち」

 俺の戦いが変わる、そう確信しての購入だった

 

 その新戦力の<シオン>を得て俺は

「メディア!」

 異界で回復屋をしている

 

 

 

 高額な買い物をしたから労働意欲に燃えた、という側面もないではない

 だが、とりあえず本格的な【メディア】の試し撃ちと<シオン>の軽い評価

 特に後者の場合はお高い買い物であったので自分の考えが間違っていないか、それを知るためにも必要な事だった

 事務の人から紹介された仕事の中で特に報酬が高く、安全性もそこそこある仕事

「異界内での回復支援」なる今までと比べても大雑把に見える文面の仕事を受けたのはそういう理由だった

 報酬が高く安全性もある、なんて美味しい仕事を受ける事が出来た理由

 それがこの回復魔法【メディア】だ

 

【メディア】、味方全体に【ディア】を掛ける女神転生ではお馴染みの回復魔法である

 範囲回復、とうとうここまで来たかという感慨すら覚える

【古戦場】ではあんな事になってしまったが確かにレベリングとしては成功していたのだ、

 レベルも10を超え12になった

 あんなことにならなければもう少しこの魔法の取得を喜べたのに

 

 

 この異界は【古戦場】と同じく、【ガイア連合】が活用している狩場としての異界である

 但し【古戦場】よりも出てくるレベルが低く、悪魔の数も多くない

 そこそこ弱い敵が中々の数出てくる、そういう異界だ、そしてやはりドロップが渋い

 その異界内で我らが【ガイア連合】は陣地を構え

 回復役を置き、弁当含む飲食物の販売をし、

 割高になるが【チャクラドロップ】等の霊薬も販売している

 手厚い支援体制だ、異界内で夜を過ごすのを避けるため朝に出来て夕方には撤収する陣地、それがこれだ

 その陣地に案内され、周りを見渡し思った

「なんで古戦場にはこれがなかったんだろ」

 そんな俺のちょっとした疑問に<ライコー>が

「あの異界は入り口から近い所でも悪魔がいましたから、それではないでしょうか」

 と答えた、得心が行く

 この異界はちょっと奥に進まないと敵があまり出てこない、だから奥に行き休憩できる陣地を作った

 逆に言えば【古戦場】は「異界に入ってすぐ敵を見つけ魔法攻撃を連射して倒したら撤収」が出来る異界だったのだ

 陣地がないんじゃない、必要ないんだ

 異界の外という安全地帯に近いから

 敵集団を探し回る必要なんてなかったんだ、入り口付近で適当に見つかる敵を倒すだけで

 それなら帰り道の戦闘も……

 かつての、というにはちょっと時間的に近い自分たちの失敗を改めて確認させられた思いをする

 

 

「じゃあここが君の持ち場だから」と案内されたのは

 その陣地の入り口の近く

 自分はここで1PT50マッカで全回復するまでメディアを掛けるのが今日の仕事だ

 俺の給料分のマッカがギリギリ回収できるか分からない料金設定である

 

【ガイア連合】の霊能者のレベルの分布はピラミッド型をしている

 という話しを聞いた覚えがある

 その時は「そりゃそうだよ」と思ったがその意味するところを少し実感した

 この「低レベル向けの狩場異界」思ってたより仕事が多い

 自分が思っているより覚醒転生者が増えてきたのかもしれない

 もしくは増したのは危機感か

 なにはともあれ、自分の給料分以上は仕事した事に小さな満足感を覚えた

 

 

 人が来たらメディアを掛けて瞬時に治って去っていくのだから

 この仕事は待機時間との戦いという側面がある

 しかし自分にはその時間を利用する当てがある

 本命の<シオン>のとあるスキルの実験、評価、もしくは訓練である

「<シオン>」

 声を掛けると指輪から煙のような物が出てくる、これが悪魔アガシオン

「じゃあ、この辺りをぐるっと行って【テレパス】を使ってその風景を伝えてくれ」

 こくりと頷くような気配を感じる<シオン>、良い子だ、軽く撫でてから言う「行け」

 消えた

 

 汎用スキル【テレパス】これはどうにも人によって使い方が変わるスキルなのだそうだ

 言葉を交わせないシキガミに付けて会話が出来るようにする

 というのが一般的である

 しかしこのスキルに目を付けた人たちがいた

「音を介して言葉を交わしてないなら、じゃあ何を脳内に伝えてるの?」

「なんなら声じゃなくて映像を伝えてもらえない?」

 つまり【テレパス】を介してシキガミを自分の目として使う、という使い方である

 それが出来て、覗き行為を行い、掲示板で自慢し、ガイア運営から軽く呪われて腹を壊したそうな

 これに自分も目を付けた、もちろん覗き行為が目的ではない

 

 

 

 自分の想定としては次の通りとなる

 アガシオンは空を飛び回ると言うほどではないが、宙を浮くくらいのことは出来る

 実体がないのでそのあたり自由なのだ

 だから【テレパス】持ちの<シオン>に常に俺の頭上数メートルで待機し、視界の広さと高さで奇襲回避の為の見張りを担ってもらう

 そして時には離れ偵察要員になっていただき【テレパス】で報告

 戦闘時には手元に戻ってジオ、スクカジャで支援

 これなら行ける、と思った

 自分は出会い頭に集中攻撃を浴びてシキガミを失った竹田さんのようにはなりたくなかった

 突然の奇襲を受ける事も先手を取られる事もなるべく避けたい

 <ライコー>と今後も共にいるための細やかな努力の一つ、それがこれだ

 

 もっとも全てが上手く行くわけではない

 俺は【テレパス】で伝わってくる情報はリアルタイムの映像だと知っていた、これは間違っていない

 ところがいざ使ってみると

 自分の視界と脳に入り込む映像が脳内でぐるぐる回るような感覚、

 強い吐き気がして長時間は無理なのだ

 目を瞑り横になって力を抜けばそこそこ行けた、だがこれでは異界では使えない

 妥協点として、<シオン>に映像ではなく画像として送ってもらう事にする

 写真を送り付けてもらう感覚だ

 行けた

 しかしこの場合、<シオン>には何を撮って俺の脳内に送るかを考えてもらわなきゃいけなくなる

 一先ず、優先順位を決め、訓練をする事にする

 この仕事中に覚えてもらいたい

 

 

 またその訓練と並行しとある実験をしてみる

 アガシオン購入前から考えていたことだ

「アガシオン爆弾」そう名付けた

 とりあえず出来るか出来ないかを知るだけでも意味がある、程度の実験だ

 やる事は単純、ストーンを抱いてアガシオンが爆撃、もしくは抱いて自爆である

 前者の方でやってみたがこれは出来なかった、ストーンが発動しない

「うーん、悪魔はストーン使えないのか」

 <ライコー>にストーンを使わせてみる、普通に使える、違いはなんだ

 わからないが出来ないもんはしょうがない

 将来的には「アガシオン部隊によるメギドストーン爆撃」の可能性とかちょっと考えていたから残念だ

 

 

 使い魔という性質だからだろうか

 思っていたよりも物覚えが良い

 俺が歩く速度に合わせ宙を動き、不審なものがあったら画像で報告することも

 隠れ、潜み、目的の物の様子を伺い画像で報告することもしっかりできるようになった

 望んでいた役割はしっかり果たして貰える、満足した

 その後、ジオ(<ライコー>も使えるから目新しい物はない)や

 スクカジャの使い勝手、効果時間、効果等を実際に使用して評価し

「戦闘が開始したら俺が指示しなくてもスクカジャ」や

「戦闘中に切れる前にスクカジャ」や「指示した時以外はジオ禁止」等決める

 実験と<シオン>の訓練を終える事になる

 

 

 

「異界内での回復支援」の仕事はしっかり終えた

 中々の稼ぎになった、今後も受けてもいいかもしれない

 その後一月ほど低難易度の異界探索の仕事を受ける事にする

 <シオン>の実戦評価と、

 今度は自分が<シオン>がいる事前提の戦いを出来るようにする為の訓練である

 おおむね満足、これからはこの戦い方で行こう

 

 

 

 

 ある日掲示板で信じられない物を見た

 異界【鬼ヶ島】攻略、とっくにされていたらしい

 いつの間に【ガイア連合】に管理が移されていたのだろうか

 そして

 攻略後の異界【鬼ヶ島】に豊穣神降臨、以後【ガイア連合】はその豊穣神に異界管理を委託する

 それに伴い異界の名を【ヒノエ島】と改名

 支部建設を決定、支部としては瀬戸内離島支部と命名

 終末後に備えて食糧生産地になる異界を見繕った、という事らしい

 米作を中心に農業を行う予定で

 【ガイア連合山梨第一支部】の社食にそこの産地の食材が使われるから

 是非食べてみてね! とのことだ

 自分はこの「是非食べてみてね!」の宣伝から流れを知った

 神が治める異界から出た食い物を社食で食える企業なんてガイア連合くらいだろうなぁ

 

 

 

 焦りを感じる、自分は確かに前に進んでいたと思っていた

 しかしそれは足踏みでしかなかったのではないか

 自分ではとても無理だと思っていた【鬼ヶ島】が実はあっさり攻略されててとっくに農地になっていた

 自分が前に進む以上にもっと強い人たちはもっと早く先に進んでいる

 俺はもっと歩みを早めた方が良いのでは? それこそ積極的にレベルを上げて、そのためには……

 そんな思考が頭をよぎる

「あなた」

 声を掛けられ、<ライコー>の方を見やる

「そう焦らなくても良いでしょう?」

 はっとした

 そうだ、俺はじっくり進めると決めたじゃないか

 俺には守る家も<ライコー>もいる

「ありがとう」

 礼を言い軽く抱きしめる、<ライコー>の肩越しに見える風景に

 フラフラ宙に浮く<シオン>の姿があった

 俺はちゃんと前に進んでいる、そう思えた

 

 

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