コミュ障ぼっち、ガイアを行く 作:犬西向尾
「中級」「中位」「中堅」の霊能者や異能者
掲示板を見てこれら三つの中の文字がある時は眉に唾を付けねばならない
なぜならこれらにはそれを認定する存在があるわけでもなく
全て頭に「自称」が付くからだ(以下これらはまとめて中級と表す)
とはいえそれを名乗っている者とて、多少の見栄はあれど別に悪意で名乗っているのではない
そこそこ納得が行くような理由も存在する、場合もあるのだ
自分が知っている例を紹介しよう
1、15を「中級」と見なす場合
30から上を「幹部」という位があると見なし殿堂入り、
30レベルまでの半分である15が「中級」であるとする
この場合では20~30くらいまでが上級になる
15から30を中級と見なし30より上を幹部=上級とする場合もある
2、20前後を「中級」と見なす場合
30からを幹部、と見なすのは1と変わらないが
40を上級にする
基準は「簡易アナライズ(通称計測機君)が壊れるのが40から」だからだ、
つまり「簡易アナライズを壊せるようになって上級」
それの半分くらいを中級とする
これら二つはまだ基準がある分マシである
「経験を積んだから中級」「もう初心者ではない気がするから中級」等
完全に主観で名乗っているのもいる
まあ規則で決まっている訳でもないのだから何を名乗ろうと勝手だ、好きにしていい
しかし早ければ15から「中級」を名乗るのはいかなるものだろうか
上の理屈を知らずして肌感覚で15から「中級」と主張して納得できる土壌はあるのか、というと
実はある、上の屁理屈に近い物の他にもこういう理由がある
それは今は、(特別でない平均的な)地方異界ボスを倒せるレベルがこの辺りからだと言われているから、というものだ
つまり直接的な異界攻略に携わる事が出来るのがこの辺りのレベルからなのである
異界探索で、情報を集めたり素材を集めるのではなく、出来れば攻略ではなく
異界ボスを討伐、異界消滅そのものを仕事として受ける事が出来るようになるレベル
それがレベル15から、という事だ
そして俺はアガシオン購入からレベルを2つ上げ14、
そろそろ異界攻略に携われるかもしれない所まで上がってきた
あくまで、かも、だけど
俺としてはこの「異界攻略」を意識せざるを得ない
覚醒し、ステータス魔と回復特化で、このままでは悪魔の餌でしかないと恐怖した自分
しかし自分では大したことが出来ると思えず、腐っていた自分、
それがここまで来た!
恐らくここで何か痛い目を見れば「調子に乗っていたから」と反省せざるを得なくなるだろう
しかしそれくらい俺は嬉しかった、力という形で何かを掴めた気がした
もうあの頃の自分とは違うのだと思っていい、そういう確かなものを得られる気がした
当然ながらこれは最前線ではない、しかし前線に到達できる、そう思った
「15になっても異界攻略はご紹介できませんよ」
「えっ」
「今日の朝、基準が1レベル上がったとの通達がありました」
今日……
時が経つごとに世界的にGPが上がり終末を感じさせる
【GP(ゲートパワー)】、魔界と現世を結ぶゲートの大きさを指す数値である
大きいほど強力な悪魔が現世に出現しやすくなると言われている
雑に【魔界】との距離感の近さの数字と解釈してもいいだろう、高いほど魔界に近くなるのだ
高くなれば異界でも何でもない人里で悪魔が発生したりもする
そしてGPが高くなる事での変化、その分かりやすいものとして
異界ボスのレベルが上がるというものがある、そして異界の雑魚悪魔のレベルも上がる
極端な事を言ってしまえば、同じ異界で
「昔のボスと同じくらい強い奴が今じゃ道中の雑魚扱い」みたいな現象もあり得るのだ
GPが直接的に悪魔を強化するわけではない
ただ、悪魔を現世に湧いて出やすくする、その結果、弱い悪魔が淘汰されより強い悪魔を支える糧となる
これはGPが上がればピラミッド自体の大きさが大きくなる、位の認識で良い、上の構造物はより高い所に行く
【ガイア連合】も最初期の頃はレベル一桁から異界ボスを討伐していた、がそれは今は昔の話しである
現地霊能組織の多くが限界を迎え、消滅、あるいは【ガイア連合】の手を取ったのもこれと無縁ではない
強くなり続ける敵、補充が効かない戦力、消耗し失っていく組織的な体力
これらの悪材料の中で余裕を保てる組織などそうはいないのだから
自分が15になる前に基準が跳ね上がり
「せめて〇〇になってからじゃないとねー」と
まるで飲酒を咎められる少年のような事を言われる可能性はもちろんあった
あったけど
何もあと1レベルってところで上がらなくても良いじゃないか……!
手が届きそうだと思っていたのが
「もうちょっと手を伸ばしてね」とちょっと遠くに置かれてしまったような、そんな気分になった
でもいつまでもそんな気分に浸ってもいられない
狩場である異界にてレベリングをする事にする
場所は【古戦場】、PTリーダーは自分、人数は5人で申請し人員を要請する、
全員の希望がなければ狩り開始2週間で自動解散
「無理をしないレベリング」でこれが出来る所まで来ていた
異界最寄りの支部で合流、打ち合わせをする
PTリーダーは自分(ライコー)、物理(シキガミも物理)、物理アタッカー(魔法)、魔法アタッカー(物理)、魔法アタッカー(物理)、
中々バランスが取れた良いPTだ
そして純物理型で知っている顔もある
かつてシキガミに損害を受けた【S疾風の秘法】の人だ
何か言いたい事があったようだが、
あえて無視しPTメンバーと自己紹介をして、スキルの申告、役割を決める
組んだばかりのPTでPTリーダーと特定のメンバーが特別親しい(かもしれない)というのは
他のPTメンバーを不安にさせるかもしれないからだ
全員に自分を「リーダー」とだけ呼ばせ、自分の構想を説明
それぞれの役割を割り振る
全員事前に言われていたメンバーで良かった、そう思った
今回のPTでの基本は以下の通りである
前衛をするのは<ライコー>と【S疾風の秘法】の人+シキガミの3人
自分と魔法アタッカーはPTの中央部に、魔法アタッカーの物理型シキガミたちはその護衛として中央部の左右の脇に
最後に残された物理アタッカーの人は後衛として、バックアタックに備えてもらう
本来はバックアタックに備えるこの役割は<ライコー>でも良い
しかし駄目だ、それではリーダーとそのシキガミが楽をしすぎる
オーソドックスな良いPTだ、紙に書いたそれをつい見つめてしまう
方針として
【異界入り口近くからは大きくは動かない】
【オニ、モムノフ問わず10匹以上の群れには手出しをしない】
【余裕がなくなるまでは戦わない】
【なるべく魔法で仕留める】
これらを明言する
特に魔法アタッカーの人たちには今回のレベリングで使う魔法は
最大何回使えるか申告して貰った、これが継戦回数に直接的に関わってくる
最後にドロップした素材、マッカは均等分配と決め
質問がない事を確認し【S疾風の秘法】の人以外を退出させる
「何か言いたげな顔をしていたんで……」
と水を向けると
「いや、それはなくなったよ」
「今回は気持ちよく経験値稼がせてもらうわ、じゃっ」
と言われ彼は退出した
釘を刺されたのかな
「<ライコー>、今回は何時になく前に出て敵と戦う役目になると思う」
「任せる」
「承知いたしました」
狩りはすこぶる順調である
特に「なるべく魔法で仕留める」と明言し、
前衛には魔法アタッカーへの壁となる事を指示したのが良かった
流れとしてはこうなる
俺の<シオン>からの【テレパス】を受けて獲物を選定、
周りに援けとなる同種族がいない10匹以下の群れを選ぶ
そして獲物を選んだら遭遇すべく移動を開始、
遭遇後、<シオン>が【スクカジャ】を使用
<ライコー>が攻撃スキル【アローレイン】を発動、これを合図として
魔法アタッカーと魔法型シキガミがそれぞれ「マハ」が付く範囲攻撃で釣る瓶打ちにする
仕留めれればそれで良し、仕留められなくても前衛を抜けるほどの力はない
仮に耐えきった悪魔が複数いても<ライコー>の【大切断】でまとめて仕留める
この間<シオン>は俺の後方や側面を見張っている
【アローレイン】【大切断】
どちらも範囲攻撃である、【大切断】は物理属性、【アローレイン】は銃属性で
【アローレイン】は<ライコー>のスキル【物理激化】の効果が乗らないが
その代わり遠距離攻撃手段として使うことが出来る
レベルが2つ上がる間に稼いだマッカはこの2つのスキルを購入できる程度の額にはなった
このような戦いを1日5~7回繰り返し
大きな損害もなく2週間経ち、何人かのレベルが上がり、PTは解散された
分配されたマッカや素材はやはり雀の涙である
残念ながら今回は自分のレベルは上がらなかった
自分が上がるまで付き合えとも言えない
しかし手応えを感じた
そうしたレベリングを何度か繰り返し、その合間にマッカを稼ぎ
ようやく1レベル上がって15になってから少しした頃
掲示板で見かけた
【悲報・エジプト神話再び滅びる】
世界が動いた
「エジプト神話なんてもうとっくに滅びてんだろ」と思うのは正直な人である、
そう思った人はそこそこいるだろう
だけどエジプト神話の神々(悪魔)は滅びていなかった
彼らはあるいはピラミッドで、あるいはスフィンクスで、観光名所として知られるそれらから得られるMAGで耐え忍び
自分たちの少数の信者たちを隠れさせ、維持し、その命脈を保っていたのである
【多神連合】そう名乗る大同盟が存在する
地方、国はおろか神話の枠すらも飛び越えた対メシア教同盟である
主力となっているのは多神教的宗教観を有する各神話の神々(悪魔)だ
北欧、中東、アジア、アフリカ系等々、
一部の例外を除いた世界中のアンチメシアン勢力の団結の表れ
ありとあらゆるメシア教に弾圧されている者たちの最大の希望、
メシアンに対抗し世界を二分する大陣営、それが【多神連合】だ
もちろん我らが【ガイア連合】も多少の関わりがある
この【多神連合】の一角、エジプト神話勢力が崩れ去った
かつては、と但し書きが付くが「文明圏」を形成し
その文明で崇められていた神々(悪魔)の神話勢力、
それは決して無力なものではないはずだった
それが崩れた
掲示板をじっくり読む、頭を抱えた
「なんだこれ」
戦場はエジプトだった
エジプト神話勢力とメシア教の本格的な戦争が勃発
エジプト神話勢力は自らが加わっていた【多神連合】に救援を要請、受け入れられ
【多神連合】を構成する各有力陣営が、自らの保有する霊能者たちを援軍に向かわせた
同盟の結束と意義を感じさせる
だがしかし、戦況は均衡、どころか徐々に劣勢になり消耗戦に近くなる
エジプト神話勢力は更なる援軍を要請、【多神連合】は各種調整に成功し、再度の援軍を向かわせるに至る
しかし事はエジプト神話勢力の望むようには運ばれなかった
【多神連合】は一大決戦にて現地のメシア教勢力に大打撃を与える事を決意
霊的に有利な地を決戦の舞台と定める
霊的に有利な場所、エジプト神話勢力に残された数少ない霊地と神殿がある、その地である
戦いは激戦だった、らしい、詳細は不明だ
ただはっきりしている事は、
エジプト神話勢力は自らの保持する霊地と神殿が破壊されるのを見届けた後
敵味方問わずの強力な範囲呪殺攻撃を敢行
そして自分たちが殺めた【多神連合】より来た霊能者たちの死体すらも
「彼らは王を守る守護者である」と解釈し
マミー、ミイラに加工
首都とスフィンクスを守る為にマミーとミイラの大軍勢を作り行進、再度の決戦へと挑む
【多神連合】はこのエジプト神話勢力の行動を裏切りと断定、非難
同時に即座の撤退を指示、残存兵力を回収、引き揚げる
その後のエジプト神話勢力は語るまでもない
彼らだけでどうこう出来るならそもそも【多神連合】にすら入っていない
順当にメシア教に敗北、現世から姿を消し魔界へと帰還することとなる
【多神連合】が援軍として向かわせた、
戦士であり信者である霊能者たちの【戦死者たちの魂】を土産にして
今、【多神連合】は戦後処理で揉めに揉めているらしい
当たり前だ、援軍を出したと思えば援軍を出した先の味方に殺され
魂すら帰ってこないのだ、どこの世界観でも死後の世界はある
その死後の世界に神々の為に戦った戦士の魂が帰ってこないなんて……
「これもうダメだろ……」
【メシア教】、女神転生お馴染みのやばい奴らである
どうやばい奴らなのかは作品によって違う
メシアの出現を信じ、それによって世界が救われると信じ、法と秩序を尊ぶ
これだけ聞くとちょっと宗教拗らせてるだけで良い奴じゃね?
となってしまい、どうやばい奴らなのかわからないだろう
作品によって違うが「洗脳」「クローンによる人工救世主計画」「悪魔との合体実験」
「他宗教の神を家畜化して食べる」「東京への核ミサイル発射、東京大破壊」
「死者の改造によるメシア化実験」
「天津神(日本神話の神々の一部)の封印」等の行いが作中で描かれる
上層部は種族【天使】もしくは【大天使】である
彼らのおかげで【俺ら】は「メシア教=天使=やべぇ奴」のイメージで見ていると言っても良い
メシア教もやばいし【天使】もやばい、メシア教が作中に出なくても【天使】は【天使】しているのだ
ちなみに女神転生では種族【天使】にもグラフィック的に恵まれていてそこそこ人気があるのもいる
天使エンジェルである
ちょっと偉そうで禁欲的な性格しててエロい格好しているこの悪魔を
つい脅したりマッカで叩いたりして仲魔にしてしまった人は多いのではないか
その【メシア教】と同じ名前の組織がこの世界でも世界中に広がり
教会を建て、霊地を奪い、霊能者を抹殺し
各地域の神話勢力と戦争状態になっている
【ガイア連合】はそんな【メシア教】と敵対している【多神連合】との密かな友好関係を構築
交易、霊能技術の取得に成功した
俺の持つガイア連合産【アガシオン】もそういう流れから生産可能になったものの一つである
【多神連合】が【メシア教】との一大決戦で負けた
余力はあると思う、戦力差もまだ極端には開いていないはず、だが
小競り合いと言い張れる程度の戦いでもダメージでもないはずだ
最悪【多神連合】内で不信感が蔓延する
【メシア教】は伸長する、【多神連合】は停滞、で済むのか?
【ガイア連合】はこれからどう影響を受ける?
「今後どうなるんだ」
前途は暗い
終末はきっと近い