コミュ障ぼっち、ガイアを行く   作:犬西向尾

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13話

 耐性の事を考える

 <ライコー>は物理耐性、精神無効、呪殺無効

 これらを素で持っている

 これに装備品の耐性として【鬼喰いの兜(火炎耐性)】が加わる

 購入した霊装の鎧や【鬼神の籠手】はこれらは防御力やステータスに補正を加えても

 残念ながら耐性への強化はない

 

 <シオン>は火炎耐性と雷撃耐性を持っている

 オーダーメイドである利点と俺の血肉を入れる事で

 本来はこれに銃撃と呪殺を弱点として抱えていたのを埋めることが出来た

 が、弱点をなくしただけで耐性が増えたわけではない

 弱点を減らすか、耐性を増やすか、最後まで悩んだが

 弱点を減らすことを選んだ

 

 

 スキルの事を考える

 <ライコー>は物理型であり、範囲攻撃もある

 火力を伸ばすためにここから欲しいのは

 まずは【チャージ】

 物理に耐性を持っている相手に攻撃を通すために【貫通】

 つまり火力と、物理に耐性を持っている相手にも

 十分に攻撃が通せるようにしたい

 それ以外にもほしい物理系スキルは多くて切りがない

 

 <シオン>は魔法型でありスキルはジオとスクカジャしか持っていない

 使用してみた所、補助スキルを積むのはまずまず良い感触だった

 だが自分が<シオン>に求める役割を考えるに

 まずは汎用スキル【探知】を入れ偵察要員としての精度を上げ

 次に補助スキルを増やすべきだろう、特に欲しいのは火力を上げる【タルカジャ】だ

 欲を言えば【デクンダ】【デカジャ】等の敵の強化対策、味方の弱体化対策も入れたい

 何かジオ系統以外の攻撃魔法を入れたいがそこまで手が回るか悩むところだ

 魔法系で欲しいスキルもいくらでもある、これは<ライコー>の物理系攻撃スキル以上に切りがない

 回復以外の魔法は<シオン>に頼り切る形になる

 

 

 最後に俺である

 攻撃、補助は一切出来ない

 回復魔法はディア、ディアラマ、メディア

 状態異常回復はパトラ、メパトラ、ポズムディ、チャームディ

 回復ブースターを持っている

 

 状態異常回復の需要はあまりない、それを使いこなす強力な悪魔とまだ戦う所まで来ていないのだ

 回復屋をやってた時も使う事はなかった

【俺たち】やシキガミは軽い状態異常なら勝手に時間経過で治る

 早く治したいならガイアカレーでも食べておけばいい

 だから【俺たち】に通用するそれらを使えるのは相応に強い悪魔という事になる

 だから今まで使う機会がなかった

 とはいえ状態異常にはなりたいものではないので

 使う事がない事はまあいい事である

 

 回復量的に今はメディアで十分だが今後はわからない

 状態異常回復も今まで使っていなかったが、これを使わないといけない敵は普通に出てくるだろう

 今までが運良く使う機会がなかっただけだ

 

 

 纏めると火力の種類に不安があり、耐性に穴があり、支援は不足し、回復も今後は分からない

 俺の戦力はこんな所だと思った

 これを少しでも何とかしたい

 

 改めて自分の戦力を見直すには理由がある

 自分は16になれば地方異界攻略をするつもりだ

 そして、それは今までのような【ガイア連合】の狩場だったような所と違い

 規模が大きかったり単純に悪魔が強かったりで、今まで以上に対応力を求められる、らしい

 その対応力があるのか否か、その確認作業である

 もっとも「ない」もしくは「物足りない」という結果になってしまったが

 

 まず魔法攻撃がジオしか持っていないのが痛い、物理に強い相手との戦いは不利だ

 援護としてジオを使うならともかく、それ以上の役割は期待できない

 次にPT全体的に耐性の穴埋めが出来ていない、氷結や衝撃は通り放題である

 例えば【ユキジョロウ】を数体後ろに置いて、前に物理耐性や無効持ちの悪魔を置けば

 割とあっさり封殺できるのではないか? そんな風に見える

 

 そして俺が弱い、ステータスタイプ【魔】であるため、魔力に余裕があり魔法防御は高いが

 体力は低い力は弱い、攻撃手段がない

 そして回復特化にしても際立つほどの要素がない

 状態異常回復も回復できない状態異常があるし、回復魔法にしてもメディア、ディアラマまでだ

 特化というより、しかできない、という表現が正しいように思う

 嫌な現実だ

 

 

 この戦力を改善するためにはとりあえず2つある

 1、スキルカードの入手、マッカでの購入でもガチャでも何でもいい、それを用いてスキルや耐性を得る

 2、<シオン>のレベル上げである

 

 1については言うまでもない、<ライコー>に「無計画なガチャは控える」と約束した身であるが

 あの頃と今では状況が変わっている

 <シオン>の加入により、純粋に「当たり」になるスキルカードの種類が増えているのだ

 言うほど分の悪い賭けではなくなった

 

 2はこれはもう単純な話である、レベルを上げ、それによるステータスの向上

 それとスキルの入手と【スキル変化】を期待する

【スキル変化】、読んで字のごとくスキルが変化することだ

 所持しているスキルがより上位のスキルに変化する

 ただし何を入手、変化するかはさっぱりわからない、ガチャほどではないがギャンブル性が高い

 しかし無駄にはならないだろう

 

 

 もちろんPT戦であり、自分(+ライコー+シオン)だけで完璧に何とかするのは難しいかもしれない

 しかし上手い事補って貰える人と組めるかわからない事

 今までは基本4人~5人と組み、人数分のシキガミがいたけど、今後はどうなるかわからない

 というのがある

 レベルが上がれば上がるほど人数は減り、ちょうどこの辺りのレベル帯が

「自由にPTを組む」事が難しくなる、らしい

 その結果、実力や性格が合う特定の人物と組む固定PTが増え始めるとか

 もちろん俺にそんな相手はいない

 ならばなるべく穴のない完結した強さを得なければならない、最低でもその努力はするべきだ

 

 

 

 そしてそんな未熟な戦力である事を知っているからだろうか

 事務の人が【試験的な覚醒者向け覚醒修行】の仕事を紹介してきた

 既に覚醒している霊能者に更なる深い覚醒を促し、より強くする、という趣旨の修行だ

 まだ確立していないらしく、試験を繰り返しているらしい

 しかしなんでだろ

「仕事で修行?」

「はい、近頃は非覚醒者向けに「覚醒修行を受ける事」そのものが仕事になっております」

「今回の仕事もそれと同じように、仕事としてそれを受けるという形になります」

「もちろん仕事ですので、受けた場合、今までのような自由意志での離脱は出来ないようになっています」

 そんな仕事が

 逆に言えば「金やマッカを出してでも転生者の覚醒者を増やしたい」という段階になってきてるのか

【俺たち】の自由意志を尊ぶ【ガイア連合】がそこまで

 これは思っていたより厳しい状況なのかもしれない

「報酬の方はこんな所です」

 目を見張る、えっ、この金額? やばくない? なにやらせるんだ

「お察しの通り、ちょっと厳しめの修行になるとの事」

「またとある事情によって報酬が加算されてる事から、この金額になりました」

 事情? なんだろ

 

「エジプトの件、ご存知でしょうか」

 頷く

 あれから気になってたびたび調べた

 今はもうエジプトは完全に陥落した、組織的な抵抗は皆無

 エジプト神話勢力は終わった、そう思った

「そのエジプトの残存勢力、神として信仰される悪魔も含むその集団が」

「【ガイア連合】に接触、安全な日本への移民を希望しています」

 移民……

 実は今までも来ていた、現地で生きるのが苦しい霊能者が日本やガイアに駆け込むのだ

 しかし神として信仰されるような、そんな悪魔も連れてきた例なんてあったか? 

 不安になる

「【ガイア連合】運営は受け入れる方針のようです」

 断れないのだろうか? 

「今後、【多神連合】は崩れると想定」

「その際に生き残った勢力を【ガイア連合】の戦力として活用したい」

「その為のモデルケースであり、今後の前例となります」

 前例……

「エジプト神話勢力は立場が弱く、行き場がありません」

「我々にとってより有利な形で関係を構築できるでしょう」

「それが前例となります」

「また彼らは疎まれ嫌われています、今後来る【多神連合】からの移民や難民を先達として纏め上げ統率する事は出来ません」

「分割して統治せよ、基本ですよね?」

 なるほど、しかし

「それと修行の報酬が加算される事と何の関係が?」

 話が見えない

 エジプト神話勢力の有り金を没収して財政面で助かった、とかそんな話だろうか

「エジプト神話はその神話上に、死者の蘇りが重要な要素として入っています」

「それは【リカーム】持ちが多い可能性がある、という懸念に繋がります」

「事実、女神転生においてもエジプト神話出身の悪魔に【リカーム】持ちが複数います」

【リカーム】、死亡(瀕死)状態から復活させる蘇生魔法だ

 そして

「現在、【ガイア連合】では【リカーム】持ちはさして多いとは言えません」

 いない訳ではない、しかし足りない、そう言われている

【リカーム】持ちは【俺たち】の中でもそう多くはない

【俺たち】の中から死者が出たらショタオジが【トラフーリ】で医療班やリカーム持ちを運んでいる位には

「エジプト神話勢力がそれを解決することは」

「【ガイア連合】にとって望ましくない、そういう事だそうです」

「彼らは我ら【ガイア連合】から居場所を与えられる側であって」

「勝ち取る側、ましてや何かを奪う側ではない、確かな役割を果たす側でもない」

「信仰も特別な信頼も与えるつもりはありません」

「彼らに隙を見せてはならないのです、今後の為に」

 

「【ガイア連合】は十分な【リカーム】持ちを揃える」

「そのために【リカーム】を習得する可能性が高いと見込んだ霊能者を選出」

「現在、支部の各地でこのように一部の霊能者へ更なる覚醒修行を勧められています」

 

 

 多額のマッカに釣られた、リカームがあればきっと役に立つ

 そして【リカーム】持ちであるならばきっと役に立てる

 そう思って頷き、仕事を受けた

 この【試験的な覚醒者向け覚醒修行】は正式採用された時このように呼ばれる

 新地獄巡り、と

 

 

 

 

「行ってくるよ」

 本当は行きたくない、あれから覚醒修行の時の辛さを思い出して「ああああ」ってなった

 非覚醒者が覚醒する時の以上に辛い修行だったらどうしよ

 ちょっと厳しめってどこまでがちょっとなんだろ

 <ライコー>が「行かなくていい」とか言ってくれないかとか思ったけどそんな様子はない

 このままキャンセルしたい、家の中で全てを忘れて逃げたい、<ライコー>の胸に顔を埋めたい

 だけどやると決めたし今更引けない、上手くいったら【リカーム】覚えられるかもしれない

 マッカも美味しい、ガチャに運を託しても結構良いの引けそうな額だ

 行かねばならない理由が他にもある、気を取り直す

「居ない間、シロの世話を頼む」

 これは<ライコー>に特にお願いする事だ

 最近、シロの体調が悪い

 霊地であるここに住むようになり、歳の割にずいぶん元気になったシロだが寝込むようになってきた

 毛艶も悪い、甘噛みする力も弱い、声が弱い

 もう良い歳だ、考えてみれば何歳だっけ、子供の頃からいたから……ああそろそろかもしれない

「ディアラマ」

【星霊神社】に行く前にシロに回復魔法を掛ける

 この霊地に居ればいつか【ネコマタ】になってくれるんじゃないかという期待はあった

 けどそういう様子はない、尻尾が分かれない

 きっとそういうのに向かない子なんだろう

 悪魔になる才能がないんだ

 頭を撫でる、いつもは鬱陶しそうな顔をするのに、目を細めていた

 それが悲しい

 気が重い

 リカーム、は猫にも効くんだろうか

 ああ、だけど俺の勝手で蘇らせても、この子にはこの子の生が……だがエゴと言われても……

「行ってくるよ」

 もう一度、その言葉を出すことを必要とした

 

 

 

 肉体的苦痛を伴う修行は一通りやったらあっさり終わった、

 覚醒修行の時に受けたそれと大差ない

 この【覚醒者向け覚醒修行】は覚醒者の覚醒した内容、覚醒した事で起きたスキルから

 特に覚醒者個人にあった覚醒内容をカスタマイズして修行する、のが特徴らしい

 手当たり次第にやってた最初の覚醒修行とは違うのだ

 だからあっさり終わった、俺にそういう修行は元々効果があるとは見込まれていなかった

 本番はこれからである

 

 ある時、俺は医者だった

 村にいる唯一の医者として村中から敬意を払われていた

 ある日、村に伝染病が襲った、四方八方手を尽くしたがそれでも及ばなかった

 今、村の最後の子供の死を見届ける

 意識が途絶えた

 

 ある時、俺は薬師だった

 出産を終えた娘さんの体調が悪い

 いくつか薬を見繕ってやろう

 山に入り熊に襲われた、俺がいなくなったら村に薬師が

 意識が途絶えた

 

 ある時、俺は良き夫だった

 働き、養い、妻を愛すだけで人生を満足していた

 ある日、妻が犬に噛まれた、その犬は良くない病を持って来た

 あっという間に妻は死んだ

 そして墓を暴き死んだ妻を抱きしめている

 意識が途絶えた

 

 ある時、俺は医者だった

 街でろくでもない病気が流行った

 これ以上の病の広がりを防ぐために彼らを纏める

 小さな子供が這い寄ってくる、それを蹴とばし家に火を放った

 意識が途絶えた

 

 ある時、俺は軍医だった

 御国の為に戦い負傷した兵を見ている

 こいつはだめだな、あっちを優先しよう、

 負傷具合によって治療の優先度が変わる

 もう駄目だと判断された兵が泣きながら震えていた

 意識が途絶えた

 

 ある時、俺は心清らかな青年だった

 老いた両親の面倒を見ながらそれに不満を抱かず

 身を粉にして働き、毎日を過ごしていた

 ある日両親がこれ以上迷惑を掛けられないと、自分ひとり残して心中した

 意識が途絶えた

 

 

 ある時、俺は、ある時、俺は、俺は

 幻覚で人生を体験する

 その一方で完全に幻覚に浸れず、自分の半分がそれを幻覚だという自覚を持つ

 自覚を持った半分とは別の俺が、怪我に病に老いに何かに倒れる人々を見送り続ける

 その度に泣き、嘆き、自失し、失われる苦しさと恐怖を味わう

 これは幻覚だと言い聞かせても本物の感情が自分を苦しめる

 

 ある時、一人の女が白いものを抱いて俺に見せてきた

 シロ! 直感したそれはシロだ、ああ、なんでこんな所に! 

 見ると怪我をしている慌てて回復魔法を掛ける、治った、しかしまだ体調が悪い

 なんでだ、なんでだ、なんでだ

 泣きながらシロを抱きしめる

「もう死んじゃうよ」

 誰かが言っている、死ぬ! いなくなる! 消える! 

 恐怖に身が竦む、指が震え、足元の感覚が弱くなる

 シロの鼓動が弱くなっている気がする、体温が低い気がする

「死んだ」

 うるさい! 

 回復魔法を掛け続ける、効かない、効かない、効かない! 

 何かないのか! 

 ずっと一緒に居てくれ! 居なくならないでくれ! 

 ああ! 

 冷たくなる! 死に、物体になる! 

 置いて行かれる! 

 ああ! 

 

 

【リカーム】

 

 

 

 

 

 目が覚めた

 すぐ傍に<ライコー>がいた

 説明を受ける、覚醒修行は無事成功

 更に【リカーム】を習得できたらしい

 良かった、あんな苦しい思いして違う魔法スキルを習得したら泣くかもしれない

 やった甲斐はあった

 そしてあの幻覚で見たシロはやはりシロだった

 シロを連れてきたのはショタオジの【ネコマタ】だ

 死に際の本人の希望で連れてきた、とだけ言って去っていったらしい

 シロの知り合いだったのだろうか

 シロは今、魔獣【ケットシー】である

 俺の魔力と願いと【リカーム】が変質させた

 何故か二本足で歩けず、普通の猫っぽいけど

 

 

 なんだお前、やっぱり悪魔になる才能なかったじゃないか

 なるなら【ネコマタ】だろ、美人だし

 撫でようとした手を甘噛みされた、可愛い

 

 

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