コミュ障ぼっち、ガイアを行く   作:犬西向尾

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14話

 その後、ショタオジ監修の下、魔獣【ケットシー】となった<シロ>との悪魔契約をした

 契約はあっさり終了、<シロ>の方から望んでいたのでずいぶん楽な契約だったらしい

 無体な事をしない事とちゃんとご飯を出すこと、MAGを供給するだけで良いとか

 <シロ>、お前そんなに俺の事を……

 と感極まって抱きしめようとしたら逃げられ、鼻であしらわれた

 あれぇ? 

 

 魔獣【ケットシー】

 スコットランド地方に棲む黒猫の妖精で、犬くらいの大きさ

 二足歩行し、人間の言葉を解し、猫の王国を作りそこで生活をするという

 猫を虐げる者には容赦しないと言われている

 女神転生では手にサーベル、長靴、マントをした二足歩行の猫の姿で描かれる

 ステータスは力と魔のどっちつかず

 魔法スキルと物理攻撃スキルの両方を持っている事があるが、どちらもさして強くはない

 

 そして俺の<シロ>はというと

 

 ★魔獣ケットシー<シロ> Lv1

 魔法型 衝撃耐性 電撃弱点

 ザン 衝撃強化

 

 すっきりしたスキル表だ、あまり書かれる項目がない

 ステータスは魔速タイプ、

 シキガミやアガシオンのように強くなるよう作られた存在ではないため強くない

 Lv1なのと合わさりはっきり弱い

 元々身近にいたことで俺のMAGを浴びていた事と

 舐めたり噛んだりして俺の身体を摂取していた事で

 霊的な素養が養われていたらしいんだが(飼われていた動物ならままある話らしい)

 それでも野良悪魔より弱い

 一応、レベルが上がればステータスも上がるし

 宝石等の各種強化アイテムも使えるらしいからそう腐すものでもない

 元祖ケットシーなら剣や靴類を装備出来たかもしれないが

 猫型だから無理らしい、猫だからね

 

 というか俺、<シロ>を戦いの場に引きずり出すのか? 

 ちょっと本人の意思を確認して……

 と思って話しかけたら「ニャ」の一言で顔を叩かれた

 これはまだ元気だった頃の<シロ>がよくやっていた事だ

 多分付いてくるつもりだろう、そんな顔をしている

 シロを戦力として数えるならレベル上げをしないと

 元々<シオン>と俺のレベル上げもある、寄り道ですらないさ

 

 

 

 そしてレベリングを行い無事16になり、無事ガチャでマッカを飛ばし

 今、【異界攻略】の仕事を受け、ここにいる

「初めまして」

 自己紹介し、ステタイプとスキルを口に出す

「やーやーどーもどーも、私が聖女ちゃんです、気軽に聖女ちゃんって呼んでください」

 色物が来た

「あなたの事はヒーラーくんと呼びます! 

 私のような聖女系美少女に名前を憶えてもらえると思わないように!」

 凄い事言われた

 彼女は確かに聖女っぽい? 気がする服装をしているが……

「インデックス?」

「あっ? わかっちゃいました?」

 コスプレをしている

 

 転生者は前世を持っている

 当たり前である

 そして前世において外見に自信を持てなかったような者が今世は、というケースは割と多い

 覚醒者ならなおさらだ

 霊的に美しくなる云々という理由もあるが

 覚醒者になれば身体の多くの不具合が強制的に治る、強くなる、健康的になる、若返る

 その結果、化粧の乗りが違う、肌荒れしない、徹夜しても目元に隈が出来ない等

 美容と健康的に良いことづくめ! 

 そしてお洒落に嵌ったりコスプレに嵌る、前世じゃ似合わなかった服が似合う! この快感! 

 ノリが良い【俺たち】の誰かが実用的なコスプレ装備を作るし

 何ならシキガミ用装備を使っても良い! 

 という事で転生者の覚醒者は日常的にコスプレしている人が多いの! 皆やってる! 

 と力説する聖女ちゃんさん

 後で気になって掲示板で質問したら「んな事ねーよ」「さすがに皆ってのは……」という反応だった

 だがこの時は「そうなのかー」くらいの気持ちで流した

「それに、若返り系の術とかもありますからね!」

 私なんて実年齢40代よ、40代、と中学生くらいにしか見えない聖女ちゃんさん

 霊能者はこんな風に徐々に常人とは違う生き物になっていくんだろうか

「それで聖女ちゃんさんの……」

「さんはいらない、敬語もやめて」

「……聖女ちゃんのステタイプとスキルは?」

「ああ、それなら」

 魔体で破魔属性多めですよ、と言われた

 

 なら、今回の仕事には相性抜群だな、少し気が楽になった

 このPT、PTと言ったが人は俺と聖女ちゃんの二人しかいない

 スキルや属性が偏ったらどうしようかと思っていた

 攻略する異界は【廃ビル】

 ボスはレベル19の悪霊【モウリョウ】

 異界内の雑魚はボスよりは弱い【モウリョウ】と幽鬼【ガキ】

 異界探索をしたPTがアナライズした結果だから確かな物のはずである

 悪霊【モウリョウ】、見た目は「心霊写真に写ってそうな」幽霊である

【モウリョウ】は女神転生でも作品ごとにレベルや耐性にぶれが大きい、が破魔属性は効くのが殆どだ

 ここの異界の【モウリョウ】は

 火炎氷結呪殺に耐性を持ち、電撃衝撃破魔が弱点

 そして厄介なのが【自爆】持ちで更に呪殺魔法【ムド】まで持っている事だ

 

【自爆】、術者が死ぬ代わりに敵に万能属性の大ダメージを与えるスキルである

 ゲームではこれは敵単体だったが、この世界では巻き込めれば複数の相手にダメージを与える事が出来る

 より厄介になっていると言って良い

 この異界では、このスキルをいくらでも出る雑魚悪魔の【モウリョウ】が持っている

 

 悪霊【モウリョウ】は耐性がはっきりしている倒しやすい悪魔だ

 それが出る異界が、狩場にならなかった理由が二つある

 異界ボスが【モウリョウ】で文字通り話にならない事

【自爆】【ムド】を持っている【モウリョウ】では事故が起こりかねない事

 この事から狩場にするのは不適と判断された

 自分も適切な判断だと思う

 

「このPTのリーダーはどちらがやりますか?」

「私はそういうのパス! ヒーラーくんがやって欲しいな」

「分かりました、ではヒーラーくんは止めてリーダーと呼んでください」

「じゃあ私に敬語もやめてね! リーダー!」

 うーん、ぐいぐい来るなこの人、これが所謂陽キャって奴か? 

 光属性はよくわからない

 

 

 中級者、と呼ばれる段階になると

 PTリーダーが臨時PT立ち上げを申請→メンバーの募集(支部等に要請)→加入、という流れでPTが生まれる事は少なくなる

 臨時PTの場合では、依頼を受ける→現地で同じ依頼を受けた人と合流→PTを組むという流れが多くなるそうな

 これは先述した「人数が少ないレベル帯になる事で固定PTを組む人が多くなる事」も関係するが

 それより強い理由が「なるべく手間を減らしてサクサク異界を攻略して欲しい」という事情もある

 前者のやり方では少々時間がかかる、ぱっと行ってぱっと異界攻略してきて欲しい、そういう事らしい

 異界はいくらでもあるからだ

 だからこのPTのリーダーがあっさり決まった事は良い事だ

 募集した側、応じた側という関係から始まる前者と違い

 後者は全員が横並びである為揉める可能性が高まる

 案外、彼女もそういう経験から「リーダーに拘らない」というやり方を身に着けてるのかもしれない

 

 

 異界攻略が始まる

 異界の入り口に立ち、声を出す

「<シオン>、行け」

 煙の塊のような<シオン>が異界に入り【探知】で得た情報を【テレパス】で伝える

 入り口に敵はいない、人が入れる環境だ

「大丈夫なようだ、撮影を開始する」

 カチ

 なるべく落ちないように身体に括りつけられたスマホで撮影を開始する

 このスマホは【ガイア連合製スマホ】である

 異界内で動作するよう霊的な各種素材を使い、電池切れを起こさないよう所持者のMAGを使う

 特別性スマホである

 ひたすら頑丈なのが特徴だ

 このスマホは【異界攻略】の仕事を受けたら支給された

 このスマホで異界内を撮影、情報収集、そして異界攻略の証拠にする為である

 そして武運拙く亡くなった場合、このスマホから情報を回収し、後に役立てるためだ

 故に頑丈

 入り口から入ったら今度は<シロ>に声を掛ける

「<シロ>、【マッパー】」

「にゃー」

【マッパー】、女神転生において初期作品で採用されていた魔法スキルである

 この世界では異界内の2Dの地図を脳内に作り出す魔法だ

 まず映し出される地図の広さはおよそ50メートル四方分、ゲームでの描写よりも広いと思う

 そしてこの【マッパー】は継続して使えばきちんと一枚の【マップ】になるのだ

 これは良いスキルだ、ちなみにガチャ産ではない、<シロ>がレベルアップ時にスキルとして入手した

 そして

「<シオン>、偵察を頼む」

 <ライコー>は俺の前方に、俺の横に<シロ>と聖女ちゃん

 その後ろに聖女ちゃんの物理型シキガミ(全身鎧で性別すらわからない)の配置で進む

「PTメンバーである<シオン>」が【探知】で得た情報、それが自動的に【マップ】に書き込まれる

 それを見ながら進む

 一度【マップ】が書き込まれた所は敵の移動や地形の変化がない限り、そのままだ

 そして何か変化があれば自動的に「今は違う」事を示すために黒く塗りつぶされる

 だから安心して<シオン>を先行させることが出来る

 自分たちの横や後ろに悪魔が湧いても【マップ】が教えてくれる

 敵を避け、あるいは聖女ちゃんに発動を準備させた【マハンマ】を出会い頭にぶつけ

【モウリョウ】も【ガキ】も消滅させ足を進める

【自爆】も【ムド】も受ける気はない

 

 五階建てのビル、の四階奥にボスはいた、取り巻きはいない

「聖女ちゃん、打ち合わせで言ったが」

 という俺の声に

「ボス単独の場合は【ハマ】系は使わない、オーケー!」

 と応じる聖女ちゃん

【マハンマ】、敵全体に即死効果をもたらす破魔属性の魔法攻撃スキルだ、但し即死するかどうかは確率である

【モウリョウ】は破魔弱点だ、普通なら効く、しかし異界ボスは耐性が強化されている可能性が十分ある

 そうでなくても即死効果の攻撃は異界ボスには効きが悪い事が多い

 いわゆるボス補正という奴である、異界のMAGがボスの存在を支えるのだ

 即死すれば美味しいがボス戦をそんな不安定な攻撃に頼りたくない

「支援魔法で戦闘準備を、<ライコー>は【チャージ】」

 という俺の声に従い、<シロ>と<シオン>がそれぞれ【タルカジャ】と【スクカジャ】を掛ける

 <ライコー>も【チャージ】する

【チャージ】はガチャ産だ

「聖女ちゃんのシキガミは退路の確保と何かあったら時間稼ぎを

 一気に仕留めるつもりで行く

 仕留められなかったら<ライコー>以外は弱点を突く魔法攻撃を続行、撤退の指示は俺が」

「オーケー!」

「突撃」

 

 呪殺無効の<ライコー>を先頭に突撃する

 <ライコー>が【チャージ】した攻撃を【モウリョウ】にぶつけ、射線を妨害しないようにすぐ引く

 聖女ちゃんの【コウガ】が突き刺さり

 <シロ>の【マハザン】、<シオン>の【ジオ】が後に続く

 そしてこの初撃を何とか耐えきった【モウリョウ】は

 マハザンとジオを食らっている間に稼がれた時間で

 再び攻撃準備を整えた聖女ちゃんの二発目の【コウガ】で沈んだ

 無傷での勝利である

 

 

「強かったな」

 正直、初撃の途中で仕留められると思ってた

 まさか二巡目までいくとは

 下手したら自爆を受けていたかもしれない

 異界ボスの自爆、そんなのを受けなくて良かった

「異界ボスはレベルの強さ以上に体力あるからねー」

 とニヒニヒ笑ってる聖女ちゃん

 倒した後に出てきたマッカと宝石にご満悦らしい

 実際、異界ボス撃破でこんなにマッカが手に入るものとは思わなかった

 収入やお金の話は掲示板でも中々出にくいし、自慢話が多くてあまり信用できない

 まだガチャの爆死報告の方が信用できるくらいだ

 異界攻略って美味しいんだな

 

 

 支部に撮影した映像を提出し、認められ、更に異界攻略の報酬を受け取る

 それらが終わった後に食事に誘われた

 正直、良く知らない年上の女性との食事なんて気が滅入る

 だけど誘われたのを断るのも悪いと思って頷いた

「いやー正直今回は楽できたよー

 今回が異界攻略初めてって聞くから身構えてたのにさ!」

 と異界最寄りの支部内部の居酒屋でぐびぐびとビールを飲んでる、俺はウーロン茶だ

 ある程度レベルが上がった覚醒者は普通の酒ではもう酔えない

 そうなると「酔える酒」を提供できる店に需要が生まれる

 当然そんな酒は中々仕入れる事なんて出来ないし、生産しても適当な所に卸す訳にもいかない、

 よってこういう店が支部の中にあり

 出てくる酒はもちろんガイア連合産の「覚醒者でも酔える酒」だ

「俺も楽が出来ました、買ったアイテムも使わずに済みましたし」

 今回、【自爆】や【ムド】を使うような【モウリョウ】がいる異界の攻略を決めたのには理由がある

 近年、ガイア連合は霊的な消費アイテムの質、生産量が向上し

 かなり安い金額で破魔属性の攻撃アイテムを購入することが出来るようになっていた

 恐山イタコたちの技術を導入、発展させた【破魔矢】

 異界【ヒノエ島】より生産される【ヒノエ島産の米】を使って作った【施餓鬼米】等である

 破魔属性の攻撃はお金で買える、そういう風になってきた

 それらのアイテムと<シロ>と<シオン>の魔法攻撃を当てにして受けたのである

 だけど聖女ちゃんの【マハンマ】のおかげで消費しなくて済んだ

 それにアイテムよりもやはり強い

「あーあれねーあれのせいでねー私の仕事は上がったりよー」

 ハイペースでぐびぐび飲む

「私は破魔系が取り柄なのにさー」

「そうなんですか?」

「そうよー!」

 はぁ

 破魔は刺さる相手が多いから腐りにくい良い魔法だと思うんだが

「でも【コウガ】があるじゃないですか

 あれは普通にダメージ与える魔法だから破魔弱点以外にも効くのでは?」

【コウガ】、ペルソナシリーズの祝福属性の魔法攻撃スキル、同じ類のスキルであるコウハの上位スキル

 違いはハマ等と違って即死がない代わりに普通にダメージを与える事だ

 そしてこの世界では破魔属性=祝福属性である

「だけどどうせなら刺さる奴に使って楽して勝ちたいでしょ!」

 そりゃそうだ

「昔はもうちょっと弱い悪霊系が多かったんだけどねー

 最近じゃあんな【モウリョウ】が出てくる始末よ」

 溜息を吐き、刺身を食べ今度はグラスの焼酎を一気飲みする

 ちょっと飲みすぎでは? 

「弱い悪霊が多かった時に一気に経験値稼いでここまで来たんだけど

 最近はこういうの多いの」

 なるほどなー

「それとリーダー! 敬語やめてって言ってるじゃない!」

 絡んできた……

「私のアガシオンは呪殺が軸だから、今回の件には向かないしねー

 リーダーのアガシオンは便利で良いねー

 シロちゃんも可愛いわねー、ちょっと撫でさせなさいよ出しなさいよ」

 ここにいないのに撫でさせろと言われても

 なんかもう<ライコー>の所に帰りたい……

「まあ私のアガシオンは対天使用だからその時に役に立てば良いんだけどさ」

 あれ? 

「聖女ちゃんとか言ってましたけど、メシア教はお好きじゃなかったので?」

「あー! そういう人格否定みたいな事言う! 

 メシア教なんてアレじゃん! 関わりたくないわ!」

 そしてチューハイをがーっと飲む

 何かあったのだろうか

 ところでこれ、食事のお誘いじゃなくて完全に飲み会では? 

 

 その後は更に支離滅裂になり

 女型シキガミは女の敵だとか、特にリーダーが持ってるような高級式神なんか完全に敵とか

 美少女がコスプレしてるのにチヤホヤしない男はEDとか

 地方に定着してる男は現地妻いっぱい作ってるとか

 なんで私はシキガミを女型にしちゃったんだとか

 前々から良いなって思ってた男を誘惑したら自分のシキガミの方をちらっと見てから断られたとか

 そんな話ばかり聞かされて何故か最後に連絡先を交換する事になった

 異界攻略より疲れた

 

 

 

 布団の中で今日の事を振り返る

 俺、初めての異界攻略はもっと思い出に残るようなものだと思ってたのに

 その後の飲み会で今日の印象塗り潰されちゃったんだけど……

 

 

 

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