コミュ障ぼっち、ガイアを行く   作:犬西向尾

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15話

 それからしばらく【異界攻略】の仕事をこなしマッカを稼いでいる

 あれから聖女ちゃんからそこそこの頻度で仕事に誘われ異界攻略し

 そして聖女ちゃんの知り合いも紹介されるようになった

「リーダーは強くはないけど便利だから良い感じ」「そして【リカーム】持ち! これは美味しい!」

「これなら紹介できるわ!」

 とは聖女ちゃんが俺を評した言葉である

 便利、前世では他人から便利扱いされる事に良いイメージはなかった

 便利扱いされてる人を見ても、都合よく利用されてる人という目で見ていただろう

 しかし今、この【ガイア連合】で戦闘要員として

 PTメンバーとして「便利」というのはそれとは違った気持ちが湧く

 命が懸かる場での「便利」は安い言葉ではない

 確かに自分は成長しているのだ

 

 さて、聖女ちゃんと、あるいは聖女ちゃんの知り合いに誘われたら異界を攻略し

 それがなかったら臨時PTで異界を攻略している

 しかし異界攻略ばかりしているのはけして充実感からしているわけではない

 単純に実入りが良いのだ

 自分の戦力が、「自分 <ライコー> <シオン> <シロ>」の4ユニットになり

 そこそこ揃ってきたと思うが

 そうなるとなおさらに、さらに強く、更に使えるスキルが欲しくなってくる

 まずメイン火力である<ライコー>に【貫通】は必須

 耐性も埋めたいし、良い装備も欲しい

 <シオン>、<シロ>のどちらでもいいから【テトラカーン】【マカラカーン】は欲しい

 魔法攻撃の種類も欲しい、より上位の攻撃スキルも欲しい

 そして「中級者」と俗に言われるような段階になると

 ガチャを控えていた頃の自分のような、マッカによるスキルカードの購入等は有効な手段ではなくなってくる

 確かに売りに出される、出されるがそういう「強い」スキルはあっという間に買われてしまい

 購入には良いタイミングで出会う運が必要とされる

 その為この段階にまで来ると皆が皆、それまで以上にガチャに手を出すのだ

 収入が増える、それによって足りない物や欲しい物を自覚し

 支出が増える、欲しいスキルや装備を手に入れ、それによって

 収入が増える

 こういう循環の始まりに足を踏み入れるようになってきた

 

 しかしどの段階に居てもガチャの魔の手が沼に沈めてくるなぁ

【俺たち】は何度ガチャに魂を売ればいいんだ

 

 

 

 小さめの異界を攻略し臨時PTを解散し、

「用事がある」と言って去ったさっきまでのPTメンバーを見送り

 手配されたホテルの一室で一息つく

 霊地でも何でもないホテルだからか、魔力の回復が遅い

 彼がもう夜にも関わらずこのホテルで一泊もせずに移動したのもこれが理由の一つだろう

 こんな所では休めるものじゃない

 もっとも今回の異界ボスは弱かった為大して消耗はしていないが

 だが自分も明日になったら最寄りの支部に武器を預け

【山梨第一支部】に帰るつもりだ

 そんなつもりでいたら……

「お願いします、先生!」

 今、拝み倒されてる

 

 

 

 事の始まりは一週間ほど前

 とある地方の名家の娘さんが行方不明となったという

 娘さんはまだ乳児であり、自分で出歩いたとは思えない

 そして居なくなったのは自宅から、

 朝、目を覚ますと娘さんがお気に入りのぬいぐるみと共にどこかに姿を消していたという

 これは何かある! とオカルトに対し知識を持っていた家の人が

 懇意にしていた(現地人)霊能者に調査を依頼

 丸一日掛けて準備して行った霊視が完全に弾かれた事で妖(悪魔)の仕業と断定

 そして霊視した霊能者とは別の霊能者が、自宅にて調査中不審な物を発見

 妖の猛毒が付着した子供の衣類である

 霊視を弾く強力な妖、誘拐された子供、猛毒が付着した子供の衣類、ここが茨城県である事

「この事から犯人は妖怪「姑獲鳥」にて間違いなし! 

 諦めましょう、これにて一件落着!」

 と、伝えてその霊能者はそそくさとどこかに消えたそうな

 さて困るのはその親御さんである

 諦めましょうと言われても諦める事が出来るものでもなし

 逃げた霊能者と違って「コカクチョウ」とやらの事を知っている訳でもなし

 これではとても引けるものでもない

 そこで、伝手を辿って「強力な霊能者」を抱えると噂される【ガイア連合(の支部)】に縋った、が

「今急いで調査の準備をしております、細かい事が決まり次第連絡します」と言われたらしい

 彼らが望んでいるのは即座の娘の救出である、それじゃ違う! と嘆いたという

 嘘だな、と思った

 この話そのものじゃない、「急いで調査の準備を」の部分だ

【ガイア連合】からして見れば、

 今まで大した関わり合いが有った訳でもない【現地人(非転生者)】の娘がどうなろうと知った事ではない

【ガイア連合】は慈善団体でも公務員でも霊的国防組織でもないのだ

 あくまで一民間の霊能団体である、その力と影響力と技術力は別として

 単純に優先順位が低い、その程度の話しだろう、そう思った

 多分調査はしているはずだ、異界から悪魔が出てきた可能性があるのだ、何かあったら困る

 そしてその結果の全てを伝える気はないのだろう

 

 そして昨日、異界に入り攻略をした俺たちの事を、霊視を担当していた方の霊能者から伝えられ

 急いで駆け付けたという

【異界攻略】が出来る強力な霊能者である俺たちに期待して

 うーん、こういう事が起こる可能性が分かってたからあの人はとっとと移動したのかなぁ

 一人、面倒ごとに捕まった俺はそんな風に思った

 

 

 

 結局あの後受けた、かなり嫌々だが

 別に報酬に釣られた訳ではない

 彼らの出すお金も受け取るがそれほど心は動かない(ガチャ3回分に満たないのだ)

 ただ、俺に頼み続ける娘さんの母親の憔悴しきった顔を見て頷いてしまった

 受けた内容は「娘さんの救出、もしくは遺体回収」

 

 とりあえず近くの支部に連絡する

 そしてこの事を伝えたらもうある程度調査を終えて

「コカクチョウ」が湧き、飛び出した異界の特定、中から出ないように異界の入り口を塞ぐ事まで終わらせていたらしい

 俺に依頼した人以外にも似たような事が起こっていたとか

 まあそんな事だろうと思った

 そして仕事を受けた事の報告と、報酬の受け取り代行を頼み

 快く了承された

 地方に仕事に行った【俺たち】が現地でこういう事に巻き込まれるのはそこそこある話らしい

 そして【異界探索、出来れば攻略】を受ける形に処理してもらう

 もともと異界探索は近々やろうと言われていたから多少早まる程度らしい

「あまりレベルは高くないと思うが、無理そうなら撤退してくれ

 それだけでも【ガイア連合】からは仕事として報酬は出る

 現地人の方はこちらで処理する」

 と言われ最後に

 こんな仕事受ける物好き、扱いされた

 

 

 異界に向かうまでの道程で<ライコー>に話しかける

「やっぱ俺はダメな奴なんだなぁ」

 ピクシー狩りの時と変わらない、つい何となくで情に流される

 違いは迷惑掛けるのはあの時はPTメンバーや、最悪あの異界にいた人たちにまで膨れたのに比べて

 今は俺の身内だけという事だ

 しかし、ならば良いという話ではない

「ええ、まったく」

 と<ライコー>に同意され更にへこむ

「次からは多少無理してでも支部や派出所の方で休みましょう」

 うん、そうだな

「流される自覚がおありなら流されないようにすればよろしいかと」

 はい

「あの、<ライコー>?」

「なんでしょうか?」

「怒ってる?」

「はい」

 気を付けよう、自然、俯き気味に歩いてしまう

 

 

 

 いつも通り<シオン>から入り、安全を確認、異界に入り撮影を開始

 そして<シロ>の【マッパー】を発動させ雑魚悪魔を倒しながら探索する

「弱い……」

 

 妖鳥【コカクチョウ】、女神転生ではレベルは10代半ば~後半程度

 種族妖鳥の例に漏れず銃属性に弱い事が多い

 それ以外の耐性は作品によってばらばらだ

 子供をさらい自分の子供として育てる怪鳥である

 女神転生では手が翼になった女性、上半身が女性の鳥等として描かれる

 この異界の【コカクチョウ】は上半身が女性の鳥だ

 クリーチャーな感じがしてあまり心を痛めないで済む

 

 出来立ての異界である事からあまりMAGを溜め込めてないのだろう

 マッカもあまり落ちない

 <ライコー>の【アローレイン】の一つで群れだろうが何だろうが沈んでいく

 <シロ>の【マハザン】でも同じだ

 銃属性と衝撃属性弱点、多分そうだ

 これなら何とかなりそうだ、おそらくレベル10行かないか

 そして異界内で子供をさらった【コカクチョウ】が居そうだとあたりを付けた場所に辿り着く

 森である

 コカクチョウは怪鳥として描かれる、であれば棲むのは家ではなく巣だろう

 鳥が巣を作りそうなところは、と思って探したのだ

「何かあれば【テレパス】で連絡」と少々曖昧な指示をして<シオン>を偵察に送り出す

 待つ

 

 

 <シオン>からの【テレパス】を【マップ】を見ながら待ち一時間ほど

 ようやく連絡が入った

 脳内に一枚の画像が浮かび上がる

 森の中を歩く女性の姿だ、着物のような服を着ている

 なんだろこれ、【マップ】は悪魔である事を表示している

 ぱっと思いつくのはまず【ユキジョロウ】

 しかしここは雪山ではない、あれはそういう異界に出る

 その後、鬼女、地母神の順にいくつか当てはめるがどれもピンとこない

 着物を着た妖精ドリアードやエルフなんて聞いたこともない

 天女、女神の可能性に思い当たるも

 それらは高レベルな事が多いのと、そもそも存在が確認された覚えがない

 正体に悩んでいると続報が届いた

 巣だ、カラスの巣のような中でその女が子供を抱いて乳を与えている

 生きているか確認したい、<シオン>に画像でなく映像で少しだけ送るよう念ずる

 幾分かのタイムラグの後に脳内に映像が流れ込んでくる

 乳を吸っている、生きているようだ

 そしてぐわんぐわんする視界に耐えかねて打ち切らせる

 とりあえずあの子供が救出対象のようだ

 依頼人が言っていた「娘さんお気に入りのぬいぐるみ」らしき熊のぬいぐるみがあった

 特徴も合う、向かう

 

 道中、正体が判明する

 あの女は妖鳥【コカクチョウ】だった

 巣の中にあった羽毛を着て、上半身が女性の怪鳥へと変化する姿を<シオン>が捉えた

 

 

 俺たちの仕事は「娘さんの救出、もしくは遺体回収」である

 であれば別に無理して戦う必要はない

 巣を留守にした時、空き巣して赤子だけ盗んで逃げればいいのではないか? 

 そう思って<ライコー>に相談する

「無理かと思われます」

 と言われてしまった

「巣にしている木はこの辺りで特に大きな巨木、

 空を飛ぶ以前に、相手は常にこちらを見下ろすことが出来るでしょう」

 その通りだ

「恐らくもう既に相手には見つかっています

 怪しい者が近づいてくる中、巣を留守にするとは思えません」

 なるほど、しかしそれでは疑問がある

「じゃあなぜ【コカクチョウ】はこちらに攻撃をしてこない?」

 これである

 今まで遭遇した【コカクチョウ】はこちらを見かけたら攻撃してきた

 好戦的な悪魔、なのだと思う

 それがこの【コカクチョウ】は巣から見える周りにいる俺らに攻撃をしてこない

 これはおかしい

「子供、がいるからだと思われます」

 そして確認をするように

「乳を与えていたのですね?」

 頷く

「であればその子供はその【コカクチョウ】にとって守護の対象なのでしょう

 守る存在が近くにいていたずらに敵を作るわけにもいきません」

 それに食べる為に連れてきたのであれば既に食しているはずです、と続けるライコー

「また、その【コカクチョウ】は特に強い個体であると思われます、もしかしたら知能も

 ……【大江山】の件、覚えていますね」

【大江山】、自分たちはそれで酒呑童子の伝説になぞらえ異界ボス【酒呑童子もどき】を討った

 そして逸話通り兜を噛ませ【鬼喰い兜】も手に入れた

 こういうのを【神話再現】というらしい

 伝承になぞらえる事で力を得、あるいは奪う

 そうか

「子供を奪い、乳を与えている【コカクチョウ】は【神話再現】をしているのか」

 声に出して確認する、頷く<ライコー>

【コカクチョウ】はその伝承において他人の子を奪い、乳を与え育て、コカクチョウにする妖怪である

 出産で死んだ妊婦が化けた者、とされている

 元は中国の妖怪で日本に入ってきた、日本では産女と同一視されている

 

「あの【コカクチョウ】は【神話再現】にて力を得ています」

 

 

 困った事になった、なったがやる事には変わらない

 つまりあの【コカクチョウ】を討ち子供を奪い返すのだ

 

 

 

 そのために今、正面から正々堂々逃げ隠れもせず巣に向かっている

 悪魔交渉の時間だ

「人間め! 妾の巣に何用でまいった!」

【コカクチョウ】がこちらに向かって叫ぶ、妙に強そうな気配を感じる

「その子供の親に依頼されて連れ戻しに来た、引き渡していただきたい」

「断る! この子は妾の子ぞ!」

「お前にとってはそうかもしれないが、親にとってはそうではない」

「何を言うか! この子はもう妾の乳を……」

「そういう話をするために来たのではない、暴力の話しをしに来た」

 その言葉に咄嗟に翼を広げ子を隠す【コカクチョウ】

「俺は取り返す、お前は抵抗する、簡単な話だ

 そして俺たちには話し合える余地がある」

「話し合える余地だと?」

「まず素直に子供を返す気はないんだな?」

「ない!」

「なら話を進めよう、俺もお前もその子供に死んでもらいたくないんだ

 だからこの巣の周りを戦場にしたくない、流れ弾が怖い」

「妾がこの子を連れて逃げれ「人間の子供は脆いぞ」

 最後まで言わせず否定する

「空を飛んで逃げてる間に身体が冷え切って死ぬんじゃないかな

 もちろん俺は追いかける」

【コカクチョウ】は子供を連れ去り、自分の巣にさらう悪魔であるが

 連れ去り安全な所に避難させる悪魔ではない

 

「場を移して戦おう、勝った方が正しい、勝てばお前がその子の親だ、俺が認める

 無論、戦ってる最中に奪ったりはしない、危なくなっても子供を狙って盾にしたりしない

 その代わり俺が勝ったらその子を親に返す」

「その言葉、違えるでないぞ人間」

 

 

 最後の言葉で身体が霊的に一瞬締め付けられる感覚がした

 悪魔との約束や契約はお互いを縛る呪縛となる

 

 

 

 

 そして今、戦闘をしている

「畜生、あいつ強いなぁ」

「恐らくこの異界のボスですね」

 やっぱりなぁ、偉そうな言葉遣いしてたもんなぁ

 場所を移した先は何もない平地、荒野の類だ

 そこで【コカクチョウ】は天高く舞い、時折こちらに

【アギラオ】や【マハラギ】を降らせてくる

【コカクチョウ】って魔法攻撃持ってたんだな、【子守歌】と【ひっかき】のイメージが強かった

 こちらも反撃したいが

「まさか【銃撃反射】で【衝撃耐性】かよ」

 飛ばれてはこちらの攻撃手段がジオくらいしかない

【アローレイン】も【マハザン】も通じないのだ、反射されたし効きが悪い

 今までは攻撃が通じる異界を選んでいただけにこんな事は初めてだ

 とはいえ状況は悪くない、相手にとっても効きが悪いのは同じだ

 まず<ライコー><シオン>は【火炎耐性】を持っている

 そして<シロ>は持っていないが代わりに魔速型であるため、素の魔法防御が高い

 俺はその<シロ>より魔法防御が高い

 そして何より

「メディア!」

 俺の回復である

 

 途中から【コカクチョウ】が【マカカジャ】を使い火力を上げてまで魔法攻撃してきたが

 その都度メディアで回復し、無に帰す

 うーん戦闘で役に立ってる感じがする、戦闘中ここまでメディア使ったのは初めてかも

 

「そろそろですね」

 そう、そろそろだ、こんな持久戦を選んだのには理由がある

「<ライコー>、【チャージ】、他は支援」

 その言葉でタルカジャ、スクカジャが掛けられ<ライコー>は【チャージ】する

「来るぞ!」

【コカクチョウ】の【ひっかき】が襲い掛かる

 <ライコー>は俺に向かってくるそれを身を持って庇うと【反撃】、範囲攻撃である【大切断】で切り裂く

 それをもう一度繰り返し、異界ボス【コカクチョウ】は落ちた

 

 

 なんだか悪い事をした気になる

【コカクチョウ】が持久戦を続けなかった事には理由がある

 今この場にいない子供の事を気にしてだ

 もちろん俺は手出ししていないし、俺のPTメンバーにもそんな事はさせてない

 他の悪魔の餌にもしていない

 

 持久戦になった時、異界ボスと人間では異界ボスの方が通常は有利だ

 異界からのバックアップで徐々に体力や魔力の回復を期待できるからである

 しかしそれは時間経過でじわりと回復するものだ

 瞬時に体力魔力を全回復させるようなものではない、時間がかかる

【コカクチョウ】にはその時間がなかった

 

 人間の赤子、それも乳児がこの異界で誰かの世話なしで何時間生きられるだろうか? 

 他の悪魔に襲われる、という話ではない

 単純に「飲まず食わず」「高い木の上で暖も取らず」にいた場合の話しだ

 だから【コカクチョウ】は魔力が切れた後は

 空を飛ぶ優位性を捨て接近戦しかない、それを狙っていた

 子供が亡くなる前に俺を殺し一刻でも早く駆け付ける為に

 

 当初の計画では【子守歌】を使う【コカクチョウ】に対し

【メパトラ】あるいは【メパトラストーン】で回復し、持久戦に持ち込み接近戦に追い込む

 と考えていたのだが、全然【子守歌】してこなくて焦った

 あるいは遠距離戦で普通に仕留められると思ってたのにそれも無理だった

 その代わり【アギラオ】等を受けたがこちらは耐性持ちが多かったので怖くなかった

 火炎系の魔法で助かった

 結果的には予定通り接近戦に追い込み勝利したのである

 もし接近戦してこなかったらそのまま持久戦を続行

 子供が死ぬまで待ち、【コカクチョウ】の神話再現が解けるのを待つ

 子供をさらい乳を吸わせた【コカクチョウ】だから神話再現されているはずだからである

 子供がいなくなったら多分解ける

 そして弱体化した【コカクチョウ】を討ち、子供に【リカーム】を掛ける

 そういうつもりだった

 自分で考えてちょっとドン引きする、こうならなくて良かった

 でも子供がすぐ近くにいるような場所で戦闘出来ないし、巣近くの森なんて相手のホームだから嫌だし

 相手にこちらの強みの「物理攻撃」を押し付けるにはこれしか思いつかなかった

 

【コカクチョウ】が子供を思う気持ちが本物であった故に楽に勝てた

 というのは良い気分にはならないが……

 

 

 

「悪い事をしたな」

 死に行く【コカクチョウ】に声を掛ける

 この【コカクチョウ】は俺の狙いが分かってそれに乗ったのだ

 言いたい事はあると思う

「のう、酷い人間、最後に、頼みがある」

 空を見上げながら【コカクチョウ】が声を出す

「内容次第だ」

 何でもかんでもは頷けない

「この異界には、妾の子以外にも子供がおる」

 聞いている、先にさらわれた子供たちだ

 しかし日数的にもう亡くなっているか【コカクチョウ】だろう

「まだ人の子よ、奴らは弱いからのう」

「それで頼みとは?」

「妾の同類を打ち倒し子供を異界の外へ」

 何のために? 

「この異界は崩れる、このままでは……」

 そういう事か、異界に巻き込まれ消える

「わかった、可能な限りそうする

 場所は分かるか?」

 こくりと頷く【コカクチョウ】そして口にする

 大まかな場所を聞き出した急いで行かねば

「待たれ、報酬を受け取れ

 これは契約じゃ」

 

 異界ボス【コカクチョウ】がその一言で消えた後には一本の刀が残されていた

 

 

 

 その後、依頼の子供と三人の子供、一人の子供の遺体を回収し異界を去った

 

 

 

 

 諸々の手続きを終え【山梨第一支部】に帰り

 自宅で<ライコー>に抱き着きながら今日の事を思う

 人助けのつもりでいたら思ったより重い気分になった

 割に合っていない気がする

 いや人命が少しでも助かったから良い事なのか? 

 何にも考えないで異界攻略する仕事だけで良いや

 そんな気分でいたら、<ライコー>が

「他人の子供をさらって化け物にする化生の者の事をそこまで気にしなくてもいいのでは?」

 と身も蓋もない事言ってきた

 いや、そうだけどさぁ

「あなたのおかげで、命を失う子供、子供を失う親が減った

 それだけでいいでしょう」

 そんなもんかもしれない

 

 

 

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