コミュ障ぼっち、ガイアを行く 作:犬西向尾
「全然当たらなかったなぁ」
異界ボスであった妖鳥【タンガタ・マヌ】との戦闘を思い出してついぼやく
せっかく購入した自衛隊採用の小銃、それが全然当たらないのだ
いや止まってる対象には当たる、足が遅いのにも当たる
ただ、凶鳥や妖鳥等の【速】のステータスが種族的に高い悪魔には当たらない、俺が下手だから
そして敵が近寄るとそもそも撃てなくなる
射線上の<ライコー>に当てずに敵だけを撃つ自信がないからだ
使えるのは【速】くない相手で、余裕を持って撃つことが出来る程度に距離が離れている相手、という事になる
それを解決する方法も一応ある
大まかに言えば二つ
1、俺が前に出て前線で銃を撃つ
2、<ライコー>たちの斜め後ろから、進行してくる敵の進路を射線で塞ぐように銃を撃つ
これである
が、1も2も<ライコー>に峻拒されてしまった
曰く「それほど当たらない攻撃の為にこちらの弱点を前に晒す必要はないでしょう」
曰く「攻撃の為にわざわざ敵からの射線を通すのですか?」
道理である
どちらも「射線を通すためにリスクを冒す」という事になる
俺が銃で行う攻撃はそこまでしなきゃ行けないほどの価値はない
更に言ってしまえば、仮に<ライコー>でも<シロ>でも<シオン>でも、誰が死んでも
【リカーム】ですぐに蘇らせることが出来る
だけど俺が死んだらそうはいかないのだ、一度異界から引いて蘇らせてもらい、という形になる
それを考えるとなるべく前に出ない方が良いのだ
だからこれは、「使える時に使う武器」と割り切り無理に使おうとしない方が良い
<ライコー>に接近される前は連射し、接近されたらあくまで自衛用の武器として使う
その辺りが妥当だろう
元々、小銃なんてそういう物だ
前線で斬り合い、殴り合いしている仲間を援護するような武器じゃないのだ
前に出て戦っている<ライコー>を援護したいと思ったのは俺の欲である
「まあ予想通りと言えば予想通りだったが」
購入の際、必須とされた自衛官を招いての銃の取り扱い講習
その時配られた小銃の整備マニュアルを見ながら分解しブラシでゴミを拭き取り、油を塗る
銃の整備はお金を払えば支部の方でもやってくれるが
「自分で出来るようになっておけ」とその講習で言われていたので
慣れるまでは自分でやる事にしたのだ
「という事で、<ライコー>、心配してたような事はしないから安心してくれ」
こちらをじっと見ている<ライコー>に声を掛ける
小銃購入時に浮かれすぎたせいか
「銃を頼りに無策で突っ込む様になるんじゃないか」という疑惑を持たれてしまったのだ
だが使ってみれば銃は強力な武器だが
何でもかんでもそれで解決! 突っ込めー! するようなものじゃない、それが分かった
それが出来るほどの腕はないし、使い方もそうだ
「そう思っていただけるのでしたら安心しました」
そうか
自衛隊、というより、自衛隊において陸将の階級にある五島さんこと【ゴトウ】との関係は
急速に深化している
この小銃も【ガイア連合】が依頼を受けるにあたって【協力要請】をした結果
流通されるようになったものだ
数こそ少ないが【火炎弾】等の属性銃弾も生産され、出回り始めている
その数も時間と共に解決されるだろう
【ゴトウ】と自衛隊はきちんと契約を守ったのだ
当然、【ガイア連合】も契約を守り【五島歩兵師団】の【対霊歩兵師団】化に協力をしている
【対霊歩兵師団】化への協力は当たり前であるが
「オカルト業界の常識、知識の供給」というアドバイザーとしての物だけでは達成できない
相手も満足しない
では俺が危惧していた【五島歩兵師団】の【覚醒者】化に進むのかと思えば
大まかに言えばその通りであったが段階を踏む事となった
【ガイア連合】は【五島歩兵師団】に【非覚醒者】向けのとある霊装を供給する事となったのである
それが通称【デモニカ】
正式名称【DEMOuntable Next Integrated Capability Armor(着脱拡張型次世代能力総合兵装)】
である
【デモニカ】、真女神転生 STRANGE JOURNEYにおいて登場した主人公たちが使うギミックである
作中において使われた表現は「進化する戦闘服」
過酷な環境下でも不自由なく活動することができ、AIのサポートによる運動能力の増幅
各種アプリの追加により耐性の付与すら可能にする戦闘服である
通信機能、生体モニター機能、生体活動のサポート機能等も有する
強化を重ねたデモニカスーツを着た作中キャラは神と言われた悪魔達とすら互角以上に戦った
【五島歩兵師団】へ供給された【デモニカ】はその【デモニカ】をリスペクトしたものである
とは言え完全再現とは言えない
理論上、極地すら探索できるスーツとしての性能
簡易式神とレーダーの組み合わせで疑似的に【非覚醒者】に悪魔を認識させる【デビルアナライズ】
部隊としての行動を可能とする各種通信機器
こういった物を組み込んだ戦闘スーツである
【宇宙服+軍装備+オカルト霊装】とはこの装備の要約である
もちろん欠点もある
まず第一に装備重量が90キロを超える重装備である事
次に仕様により状態異常が普通に効く事
そして他の霊装と併用不可という点である
着る棺桶かな?
最初に説明を読んだ自分の感想であった
だが考えてみればこれを「身を守るための装備」と思うから
不満を持つのである
「悪魔を認識し、攻撃を通すための装備」と解釈するなら問題はない
例えば、リヤカー(異界内だと普通の車は動かない可能性がある)に
【デモニカ】スーツを着た自衛隊員を乗せ【覚醒者】がそのリヤカーを引けばいい
そして悪魔を見かけたら【デモニカ】スーツを着た自衛隊員が銃を掃射する
悪魔を何度か殺せば覚醒するだろう
きっと【五島歩兵師団】はこんな感じでレベリングしているに違いない
そう思って自衛官ニキのスレを見たら
「普通に着て普通に運用してる……」
筋肉自慢の歩兵たちに90キロ越えの【デモニカ】を着せて訓練しているらしかった
筋肉って凄い
いや何も無理やり筋肉運用しているだけではないらしい
それと並行して分解、分析、機械部品関連の改良による軽量化等々もやっていて
そういった動きの中で「とりあえずそのまま運用してみる」というのをやっている方々もいる
そういう話らしい
うーん、【五島歩兵師団】の方々、【デモニカ】への期待がガチだな
それともある程度大きな組織が本気を出したらこんなもんなんだろうか
この【デモニカ】は【五島歩兵師団】が改良したらその内容、技術がフィードバックされる契約になっている
【ガイア連合】の【非覚醒者】が【デモニカ】を装備して戦闘をする日が来るのも近いかもしれない
そんな風に思いながらいつも通り異界攻略していたある日
自衛官ニキのスレを見てたら、ああやっぱりなと思う話が出てきた
ショタオジが五島さんから【共同クーデター】を誘われたらしい
やっぱり【ゴトウ】だったわ!
【ショタオジVS自衛隊】の編集動画を見た
怪獣映画みたいだった、但し怪獣が最後まで勝ち切る
「クーデターのお誘い」からなんで【ショタおじVS自衛隊】になったのか
もちろんこれはクーデターを鎮圧した動画ではない、演習だ
ショタオジ1人VS自衛隊(五島歩兵師団の2000人)の
流れとしてはこうらしい
【デモニカ】の改良を行い、覚醒者を増やした【五島歩兵師団】は
先日、東京守護の結界の一角を構成する鬼神【ゾウチョウテン】の試練を乗り越え撃破
鬼神【ゾウチョウテン】を【ゴトウ】の仲魔にし訓練用異界を賜りレベルを上げる
そんな日々を送っていたら見事【ゾウチョウテン】のアンチメシアン的言葉に誑かされ、
【ゴトウ】、ショタオジや【ガイア連合】運営、幹部が勢揃いした場で演説
【武力クーデター】と更なる【デモニカ量産】を訴え、これによって国内から【メシア教】を排除
未だ残存する世界の諸勢力を糾合し【対メシア戦線】を構築すべし!
まあこんな感じだったらしい
【デモニカ】をメシア教に譲れと政府筋だかなんだかに言われただの
ちょっと信じがたい情報もちらほら流れてる
そしてこれに対してショタオジや【ガイア連合】幹部たちは一顧だにせずに拒絶
「その程度の強さでどうにかなるわけねぇだろ! (意訳)」
「世界の広さ、教えてやんよ! ヒャッハー! (意訳)」
と言う訳で、勝った場合、負けた場合等の条件を詰めて契約を行い
この度の演習となった
「ふぅ」
凄い物を見た、ショタオジも当然凄かったがショタオジが凄いのは分かり切ってる事である
俺が凄いと思ったのはやられ役だった【五島歩兵師団】の方だ
彼らは圧倒的なショタオジに対しあらゆる兵器、戦術を用いて最後の一兵となるまで戦い抜いた
ショタオジはそれを逃げ隠れもせず真正面から粉砕した
「<ライコー>、もし俺があの【五島歩兵師団】の面々とやり合ったらどの程度……」
「何もできずに死にます」
だよなぁ
仮にレベル1であっても【覚醒者】は【覚醒者】だ、【非覚醒者】とは重みが違う
彼らの銃弾は【覚醒者】の身体を穿つ
彼らがレベル10に満たなくても、俺のレベルが22になっていても
それは変わらない
【ゴトウ】という超人じゃない
自衛官ニキという【俺ら】じゃない
覚醒した普通の人の、訓練された集団の攻撃で俺と仲魔は成すすべもなく死ぬ
「強いな……」
強い、そして彼らは実際に実績も積んでいる
鬼神【ゾウチョウテン】
彼らが倒し乗り越えた敵だ、作品にもよるがレベルは20後半~30前半くらい
多分30越えの個体のはずだ
それに勝てたからこそアナライズで同じように30越えで【測定不能】と出るショタオジに立ち向かったのだ
この戦力が更に磨かれ【ガイア連合】に向く時があれば……
「大丈夫だと思いますよ?」
<ライコー>に考えを読まれたようだ
「なんで?」
「彼らにとっても【ガイア連合】の戦力、技術力、生産力は当てにしたいものだからです
そして今、強力な集団の力が個に打ち負ける経験を積みました
それも【ガイア連合】の神主の手によってです
彼らにとって【ガイア連合】の価値はこれまで以上に上がっています」
言われてようやく頭が回ってきた
考えてみれば、【デモニカ】のコアとなるパーツも【ガイア連合】が抑えてる
可能な限り敵対は避けるはずだ
そしていよいよ敵対、となるならその前兆が何かあるはず
「うん、まあ大丈夫か、とりあえず【メシア教】よりは信用していいだろ」
少し【五島歩兵師団】の強さに刺激を受けすぎたようだ
それから数日後、【ガイア連合】は対メシア教戦略の変更を掲示板にて発表
積極的な動きを見せる事となる
演習の後、【ゴトウ】は【ガイア連合】に事前の取り決め通り
【五島歩兵師団】が集めた全てのオカルト情報を譲渡した
そういう契約になっていたらしい、恐らく【ガイア連合】としては
【ゴトウ】の判断の理由となったものを知りたかったのだろう
その中に【ガイア連合】にとって無視できない物が含まれていた
海外の戦地で発見及びアナライズしたメシア教の天使のレベル
【計測不能(レベル30以上)】である
戦地は異界ではない
異界ではないのに並の異界ボスを超えるレベルの天使が現界している
情報に含まれていたのはそれ一匹であったがこれは断じて見逃せないものだった
レベル30以上の天使に対処できる人間はいかに【ガイア連合】と言えどもそう多くはない
30を超える物が「幹部」と通称される事からもそれは分かるだろう
そのレベル30以上の天使がもし、集団を形成し襲い掛かってきたら?
ただの敗北ではない、ガイア連合、日本国の死まで見える脅威となる
事態を重く見た【ガイア連合】はそれまでの【メシア教】との距離を置くことを重視した方針を変更
将来的な敵対を確信
以後、二種類の作戦を展開させることとなる
一つは【妨害】とだけ言われるもの
国内メシア教との交流で得た情報をもとに反メシア勢力及びメシア教以外の一神教への接触
現地組織への各種物資支援、霊装の供与などで可能な限りの時間稼ぎを行う作戦である
もちろんこれは【ガイア連合】が目を付けられないように細心の注意を払ったものだ
そして二つ目は【地固め】と呼ばれるもので
「【国有霊地】の攻略支援?」
【国有霊地】、読んで字のごとく国有している霊地である
しかし今までそんな所の攻略なんて聞いた覚えがない
自分の訝しがる声に事務の人は
「はい、それも我ら【ガイア連合】が攻略するのはただの異界ではありません
【封印異界】そう呼ばれるものです」
【封印異界】そこは【メシア教】に封印された日本古来の神々(悪魔)の異界である
「攻略、と言いましても異界の主の討伐ではありません、封印を解くのが目標となります」
そして俺の方を見て
「その攻略支援に【リカーム】持ちの方が必要とされています」