コミュ障ぼっち、ガイアを行く 作:犬西向尾
閑話1話
俺は源氏らしい
繰り返し言う
俺は源氏らしい
は?
事の発端はちょっと前
日本の神々が封印から解かれてからだ
その時封印を解かれた神の一柱の中に<ライコー>の本霊、【源頼光】様がおられた
おられたのだが
その結果、本霊通信にて<ライコー>に気軽に電波を垂れ流すようになってしまわれた
今まで力だけくれるありがたいお方だったのだが
それは単にこちらに伝える事が出来なかったかららしい、神社の時が物凄く限定的な機会だったとか
これからは今まで与えられなかった加護もしっかりくれるとか、これはありがたい
そして冒頭の話しに戻る
<ライコー>の言う所によると
俺は<ライコー>の夫なのだから源氏で、
源氏の(特に清和源氏系で摂津源氏系)更なる発展のために
頑張って一族郎党を増やせ、との仰せらしい
一族郎党なんて増やせって言われて増やせるもんじゃないだろ
そう思ったら「子供を増やす事」と「家臣を増やす事」で良いのだという
家臣なんてどうすんだよ! 扶持ねぇぞ!
子供なんてそうそう増やせるか!
相手いねぇよ!
いかなシキガミと言えども妊娠出産は無理なのである
本霊通信にてどうか【源頼光】様にそのあたりのご理解を平に願いたく……と
<ライコー>に伝えて貰うようお願いして見た所
ひとまず妥協して、一家を建てる事で許してもらえそうになった、よかったよかった
【源頼光】様に俺が養子入りし、【源頼光】様の娘さん(分霊)に当たる<ライコー>を嫁に貰い
分家を建て、当主となるのである
「摂津源氏一門の甲斐源氏」となるのだそうだ
有名な武田信玄が「河内源氏」からの甲斐源氏で
これが弟の血筋だから対抗意識を燃やしたらしい
何言ってんだこのお方?
が、どうやらこの一線は譲れない様子
終いには家の神棚においてあるとある神社のお札経由で直接俺に神託してきた
曰く「娘に手を出した責任を取ってください」
むむむ
微妙に納得が行くような行かないような
そして<ライコー>に「結婚して良い?」と恐る恐る聞いたら
しずしずと頷かれてしまった、ちょっと照れてた
俺の嫁さん可愛いし美人
かくして俺は源氏になる事となった、ところで養子や婿養子で氏って変わるのか?
こうなっては逃げ場がない、退路がない
年貢の納め時かもしれない
こんな形で年貢納める日が来るなんて全く思っていなかった
お武家様には逆らえぬ
しかし事が婿養子という話になると俺一人の話ではない
実家に帰らねばならぬ
帰って婿入りする説明をしなければならぬ
今まで年賀状と母の誕生日の祝いぐらいしか連絡してなかった実家だ
あっ<シロ>を連れ出す時に就職したって一応言ったな
正直、気が重い行きたくない、だけどしょうがない
というか<ライコー>の戸籍とかどうすんだろ
絶対にないと思うんだが結婚できるんだろうか
ダメ元で事務の人に聞いたらシキガミの戸籍偽造くらいは普通にやってくれるらしい
偽装親族もレンタル出来るって
こういう事は年頃をちょっと過ぎた女性転生者から特に需要があって、
【ガイア連合】の方で準備してるんだとか
結構利用数が多いサービスらしい
とりあえずそのサービスを利用する事を伝える
結婚式のプランは~と聞かれてしまった
神様から来た話しの流れだから神道系の神社な感じで纏めてもらう形になった
とりあえずそこそこの金額のスーツを買って(久しぶりに円を使った!)
<ライコー>が良い所の娘さんに見えるように良い感じの着物を買って
この辺りでようやく実家に連絡をする決心がついた
「俺俺俺うん、そう俺なんだけど、ちょっとしたら実家に帰るからうん
実はちょっと結婚する事になってさ、婿養子じゃないとだめって向こうのご両親がね
いや、違うって出来ちゃったじゃないよ、うんそれでそういう事だから次の休みの時に連れて行くから
うん、いや婿養子だからこういう事ちゃんと説明しないとと思ってさ、そうそう、じゃ」
そして実家に帰った
母には泣かれ、父には殴られた、弟は凄い美人捕まえたなって驚いてた
いやなんで俺殴られるの? えっ実家に連絡してなかったから?
家出た男なんて年に一度お年賀あれば十分では? えっダメ?
あと、弟が「うちの社員とその家族は全員シェルターに入れる!」
と言ってた【俺たち】が社長さんしてる会社に就職してた
当然【ガイア連合】系列の会社である
安心した、後でこの社長さんに家族のシェルター分のマッカを包んでおこうと思う
正直、自分が「世界に終末訪れるからシェルターに避難しようぜ」なんて説得できる気がしなかった
弟も会社の命令ならとりあえず従って父母と一緒にシェルターに入るだろ
久々に会ったら生来感じていた家族に対する後ろめたさが少し弱くなってる気がする
そして滞りなく婿養子する算段を整え、家族の近況を聞き自分の捏造した仕事内容を話し
<シロ>がまだ元気な事に驚かれ、とりあえず今まで健康に過ごしていた事を伝え
偽装親族の方とご挨拶し(水元頼光って凄い偽名の人がいた)、
各種書類、手続きを整えて良き日を選び神前式にて俺は<ライコー>と結婚した
神前式を上げたのは俺の地元の神社だった
そして結婚したら
「うちの神社で結婚したんだからうちの子でしょ! 私の氏子よ!」(地元の神社の祭神クシナダヒメ)
「私はこの子の母です! 私の氏子に決まっています!」(源頼光)
「この子はうちの神社でお宮参りもしたんだから!」(クシナダヒメ)
「この子は自分の意志で私の子となりました!」(源頼光)
と寝ている時に神託の振りをした喧嘩を聞く羽目になった
どうすりゃいいのかわからないから寝た
次の日、とりあえず折衷案として
神棚にてお二方を奉る方向でどうか?
と提案したら
「じゃあ私が右ね!」(クシナダヒメ)
「あなたは左でしょう? 氏神であり母である私が右です!」(源頼光)
とお札を置く位置で争った、扱いの話しになるらしい
うーんどうすりゃいいんだろこれ
決着がつかないので祠を二つ、家の敷地内に建てる事にする
またどっちが左右か、奥かで揉めたので家の敷地図に適当にダーツを投げて
「神意が示された」って事にして何か言われる前に柏手を打った
源頼光様の祠が家の北東の方(鬼門)
クシナダヒメ様の祠が台所の裏(水回りの近く)になった
本当に神意が示されたのかもしれない
そういう事があってから異界探索の仕事をする事になった
攻略じゃないのは近頃は攻略の仕事が減ってきているからだ
霊地が安定した結果、攻略(消滅)しなきゃいけない異界が減ってきている
取り合いになっているレベルだそうな
その結果、既に狩場となっている異界や安定化している異界への更なる調査や
その地での霊的素材の採取の仕事が増えてきたとか
これはあくまで小康状態に近いものではないか、また活性化するのでは? と噂されている
俺もそう思う、比較的安全な今のうちに稼いでおかねば
宴会で俺が感慨に耽っている間
何やら割と深刻で爆弾のような情報が投下されていたらしい、あとで掲示板で見た
なんでも【俺たち】は「ww2で負けて【戦後メシアに封印された日本の神&悪魔】の最後の悪あがき」で
異世界の冥界から勝手に召喚された異世界人の魂らしい
全く予想もつかない所からポロリと出てきた真相だった
酒の席で話す話じゃなくない? と思う
思うが神様方(悪魔)にとってはそんなに気にする事でもない話しらしく、聞けば
実はさ~みたいなノリであっさり答えられたらしい
軽いな神様
俺としては間違いなく前世より幸せになってる自覚があるので
召喚されたって聞いても悪感情は持たない
そういう【俺たち】は結構いるんじゃないかと思う多分
どうせなら女神転生している世界よりももうちょっと平和的な世界が良かったが
ただ問題は【俺たち】の存在が召喚された事で
【GP】が急上昇、霊地活性化を招く原因そのものとなってるそうだ
つまり封印された神々(悪魔)が霊地を鎮めるのはマッチポンプでしかないのでは?
という素直な気持ちで物事を見てはいけない、目を逸らせ
そしてその結果、【終末】は必ず来ると約束されたも同然らしい
【GP】が何度も急上昇した結果、魔界との間の壁がぼろぼろ
いつ崩れてもおかしくないから「崩れた時の事を考えようぜ!」と前向きな話になってしまった
ついでに言うと【メシア教】の世界征服活動の裏には
この霊地活性化を鎮静させるために世界の霊地を全て【メシア教】の物とし
教会を建て霊力を奪うという目的がある
これは前々から言ってた事だ、もちろん真に受けたりはしなかった
それが本当に「世界の為の世界征服(虐殺や洗脳や首がぽろりもあるよ!)」だったらしい
霊地活性化そのものは【メシア教】の仕業ではなかったのだ
でも霊地活性化とは関係なく日本の神々(悪魔)にやった事を考えると
「口実があったからやりたい事やっただけなんじゃないの?」と思わなくもない
時期的に霊地活性化とは関係ないしこれ
まあ【メシア教】の当初の思惑がどうだろうと
やった事は変わらないし、終末が来ることも変わらないし、【メシア教】のやばさも変わらないのである
でも正直、日本の神々(悪魔)が【終末】の原因とか大穴も良い所だった
そんな力があるとは全く思ってなかった
【終末】到来の実行犯は完全に【メシア教】だと思ってた
偏見で見ちゃダメだな
人の脳に天使の羽入れて洗脳したり讃美歌で洗脳したり、
征服した土地の人間を拷問したり粛正したり、更に人食い天使疑惑がある【メシア教】でもさ
……こいつらが犯人って事にして良いんじゃね? 誰も疑わない気がする
それからちょっとしたら我が家の敷地に祠が二つできた
真新しい祠ってあんまり風情がない
とりあえず周りを箒で掃き清めてから
ご神体として祠の中にお札を納め
(祠まで作ったんだしご利益ください)とお祈りしながら初めてのお参り限定と言ってマッカとお酒を出す
目を離すと消えてた
どちらの祠でも同じようにしてマッカとお酒が消えた、受け取ったんだと思う
まあこれでもう神託で安眠妨害される事もないだろ
「という事で、多分これで大丈夫だと思う」
「それは良かったです」
<ライコー>の作ったご飯を食べながら話す
自分の本霊が迷惑を掛けたと思って気にしていたらしいのだ
結婚してから最初の神託の時、「母が申し訳ありません」とちょっとしょんぼりしてた
まあ神様なんて我が儘なもんなんだから適当に付き合っていれば良いのだ
「ところでこの煮物の味付け……」
「はい、お義母様から教わりました」
覚えてたのか、そしてこれは母の味付けでもない
今世での子供の頃、母が作る煮物の味がどうにも受け入れられなくて
我が儘を言ってしまったのだ、小学生の時分だったと思う
これは俺好みの、ちょっと醤油の味付けを強くして煮込んだ煮物だ
母が普通に作る煮物とは椎茸の色の違いではっきりわかる
今まで<ライコー>が作ってくれてた煮物も美味しいが、こちらも良い
しかし、
「よく教わる時間あったな」
なんやかんやで結婚まで慌ただしかった覚えが
「連絡先を交換いたしました」
<ライコー>用のスマホ、そういや買ってた気がする
それでか
<ライコー>と母の意外な繋がりを感じた夕食だった
その日の夜、しばらくは来ないだろうと思っていた神託が来た、所謂夢枕に立つって奴である
ご利益として加護を頂いたらしい、嬉しい
【源頼光】様の方は<ライコー>に渡したらしくて後で確認する
そして【クシナダヒメ】様の方は
「五穀豊穣の加護……」
俺が農地でMAGを垂らしながら祈れば不作知らずで作物が実るそうだ
作物が美味しく実るかどうかまでは関わらないらしい、そこは頑張れって
いらない……
<ライコー>によく似ている【源頼光】様は「良い加護を頂きましたね」と喜んでる……
でもいらない……
平安時代の人の感覚だとそら良い加護なんだろう
【終末】控えた現代人で、しかも農業してる訳じゃない俺が貰っても困る
同業他社になる某【ヒノエ島の豊穣神】様には絶対叶わないよね
相手神様だし、規模的にもえぐいし、ヒノエ島のお米美味しいし
圧倒的な商売敵がいる畑違いの業界に新規参入はちょっと現実的じゃないよなぁって
俺、農業の素人だし
でもくれるってものにケチ付けるのは申し訳ない
【クシナダヒメ】様、ちょっとドヤ顔してるし
ありがたく受け取っておく
後日、力を目一杯込めれば家庭菜園で霊的な作物を栽培できる事が判明
全力で掌を返す事になる
俺は現金な男なんだ