コミュ障ぼっち、ガイアを行く   作:犬西向尾

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2話

 それから自分は前世と同じ職に就く決意を固めた

 すなわちニート、自宅警備員である

 これまでは頑張って優等生していた訳だがもうすっかり進学も就職もする意義を見出せなくなっていた

 東京大破壊、終末、どんな名称でどんなことが起こるかは何もかも不明だが

 それを乗り越え自らの幸せを追求するためにもしっかりした準備が必須であると確信した

 就職なんて持っての他だった

 日々の生活に追われ終末の事を意識の外に置きいざ事が起これば

「もうちょっと真剣に考えておけばよかった」と後悔するそんな自分が目に浮かんだ

 自分の事は一番自分が知っている、必ずそうなる

 そして自分に一番必要なものは時間である

 時間さえあれば富士山の星霊神社で修行してなにか攻撃スキルを得られるかもしれない

 一番時間を得られるのは無職である

 であるからして胸を張って言った

 

「進学も就職もする気はない、自分磨きをする」「俺を信じて」

 母は泣き、父は殴り、あんまり仲が良くない弟はごみを見る目で見てきた、シロは猫目をしていた、解せぬ

 いやもうちょっと良い言い方があったか

 何はともあれ家を追い出された俺は行く所がないので富士山の星霊神社に修行しようと転がり込もうとした

 お断りされたんでじゃあせめて仕事紹介して! 泣き喚いた

 そして仕事を紹介され、今霊能力者をやっている

 もちろん住む所と仕事を得たので即実家からシロも回収した

 

 

 

「今日も仕事持ってきてくれて、ありがと」

 依頼書を咥えてきたショタオジの所の【管狐】を撫でながら礼を言う

 この管狐、どうやら猫並みに賢いらしく礼を言ったらちゃんとわかるのだ

 しかも白くてモフモフしてる、可愛い子である

「マッカ、食べてく?」

 断られた、仕事熱心な子だ

 

「やっぱり東北かぁ、噂になってたからなぁ」

 それまで星霊神社と一括りにされていたショタオジ+修行者+職人集団+その他大勢の謎の集団が【ガイア連合】なる

 女神転生を知っている人間からすれば怪しげで不穏な名前になって数か月ほどした頃

 名前を付けて心機一転というのも違うのだろうが【ガイア連合】は積極的に外部からの依頼を請け負うようになっていた

 なんだか随分評判がよろしくない何とか寺とやらに認められたから云々とか掲示板で読んだ気がするがよくわからない

 ガイア連合が霊能者をしている転生者に仕事を紹介する、そんな事も良くある事になった

 回復しかできない貧弱ボーイな自分もその中にいる、覚醒者は腐っても覚醒者であるということだ

 もちろん自分のような、よく言えば役割がはっきりしていて悪く言えば尖った性能をしている霊能者に出来る仕事は限られているがそこはそれ、

 我らがガイア連合の優秀な事務方が上手い事合う仕事を見つけて回してくれる

 彼らには足を向けて寝れない、彼らのおかげで自分は満足できる食い扶持を稼げてるのである

 確か今自分はガイア連合傘下の派遣会社に登録してる、という扱いだっけな

 今回のは東北地方のガイア連合派出所に待機、つまり「お前がいる間に怪我人、怪我シキガミが来たら治せ」という仕事だ

 依頼書には報酬とやること、大雑把な期間、場所くらいしか書いてないかなり雑な文章である

 自分はこういった、前線に出ない後方での回復要員としての仕事をよくしている

 

 東北地方については掲示板で話題になっていた、

 曰く「これからは東北が熱い! 経験値とマッカのチャンスは東北にあり!」

 RPGをやった経験がある人にはわかりやすい話だろう

 効率の良いレベリングにはいくつかの条件が必要とされる

 効率の良い敵、数、潤沢な支援である

 大雑把に言えば「経験値が多く積める勝てる敵を、回復できる環境で好きなだけ叩けると美味しい」程度の話だ

 そして東北地方はその条件をいくつか揃えている、と見なされていた

 東北のような寒い地方の異界は氷結属性に強く火炎属性に弱い悪魔が多い傾向にある、

 代表例としては【ユキンコ】【ユキジョロウ】あたりだろうかヒーホーヒーホー言う【ジャックフロスト】もひょっとしたらいるかもしれない、【ユキンコ】が狙い目だろうなレベルが低い

 そしてガイア連合にはショタオジの修行でアギ系に目覚めた覚醒者がいくらでもいる

 東北地方はそんな彼らにとって良い実戦の機会になるだろう

 今東北地方は霊地活性によって本来の管理者が倒れ、あるいは独力での管理を諦め、外部からの支援を乞う有様となっている

 彼らに手を差し伸べることができる外部など他にどこにいようか、そうガイア連合のみである! 

 つまりそこは俺たちの草刈り場だ! 

 こんな感じだった

 せっかく運良く良い敵に恵まれやる気があるガイア連合員が多いのなら、では十分な支援体制をという流れの一つで来た依頼がこれだろう

 

「じゃあ判子したから、はい」言うや否や管狐は紙を咥えて飛び去ってしまった

 あの依頼書は、正式には契約書の一種である

 それもシキガミ製で契約を遵守させる力を持っているそうな

 それが理由で前述したような雑な文面になっている

 遵守させる力を持っているから意図せず遵守できなかった時のことを考えて緩い内容を、というのはお互いの信頼の表れか甘えなのか

 ガイア連合の内向きの契約書は力が弱く、外向けには詳しくは知らないが様々な機能がついているんだとか

 契約書に付ける機能なんて呪殺くらいで十分じゃないか? そういくつも付ける機能ってなんだ? と思わないでもない

 もしかしたらノリと勢いで作る職人たちがノリと勢いで作ったものかもしれない、ここではよくある話だ

 

 

「さて、ちょっと長くなるかもしれない仕事ならシロをシッターさんに頼まなきゃか」

 シロと離れるのは辛い、シロも心細いだろう

 だけど悪魔が湧いて出てくるような危険な土地にシロを連れて行きたくない、ストレスになるし何かあったらそっちのほうが嫌だ

 それにショタオジがいて、転生者も大勢いる、ここ【ガイア連合山梨支部】以上に安全なところはないのだから

 

 

 

 そこそこの出張なら準備しなくちゃいけないものがいくつかある

 そのうちの一つが【ガイア連合製レトルトカレー】通称ガイアカレーである

 レトルトカレーと侮るなかれ、霊薬だのなんだの使っててこれを食べて一晩寝れば体力も魔力もググっと回復してる優れものである

 レトルト食品としてはアホみたいな値段だが霊薬としてみると激安で強力で、しかも美味い

 これは手放せない、最低でも一日一食で一週間分、七食分は確保しておきたい

 特に自分のような派出所で待機している臨時の回復要員が魔力不足で回復できないなら何のためにいるんだって話である

 そしてもう一つがストーン類、攻撃手段を持たない自分にはいざという時の攻撃手段でありいざという時の死後の安寧に繋がる自決手段である

 これはまあ使う事が全くと言ってないのでちゃんと揃ってるかのチェック程度でいい、ガイア連合製アギストーンが複数とアギラオストーンが一つ、よし

 

 実を言えば実家を出る時に思っていた攻撃手段の獲得は一向に進んでいない、無職になる決意をして最終的には何故か働いてるのに一向に

 このストーン類だって仕事で持っていく分には良いかもしれないが、【終末】が来た時に自分の身を守れる質と量かと言えば無理だと言わざるを得ない

 貯金をして暇を作ってはする修行でも、得られるのは他の回復魔法だの状態回復だのそんなのばかり

 未だアギ一つブフ一つ唱えられない

 年々悪魔が強くなって来てる、そんな気がする

 そしてそんな悪魔を倒して強くなる存在はもっと強くなってるはず

 そしてそんな奴らが齎すか、食い止められないのが【終末】のはずだ

 なのに自衛のための魔法一つ使えずにいる自分はどうすればいいのだろうか

【ガイア連合】に所属していれば【終末】後も安全な生活が出来るかもしれない

 でもガイア連合は「俺たちの互助」が基本のはずだ

 回復なんて言う、もう量産型のシキガミで担うことができるようになった役割だけじゃ互助も何も……

 

 シキガミ、【ガイア連合】内における自分の存在価値を脅かしてる脅威にして

 自分にとって希望の一つである

 

 

 

 シキガミの存在を知らないガイア連合の人間は存在しないだろう

 ショタオジが使っていた強力無比な最初のシキガミ

 空を飛び、物理耐性を持ち、落書きのような顔をしてる

 覚醒者20人がかりでようやく倒せた存在

 

 そしてガイア連合の妄念の結晶、人型式神

 人の装備が使え、スキルによっては飲食ができる故に回復アイテムも効いて

 攻撃スキルも回復スキルも使えるかもしれなくて、見目麗しく

 技術発展の余地もあり可能性に満ちたそれ

 

 どれも素晴らしく魅力的だが前者と後者では明確な差がある

 それは前者のシキガミはいくら優秀でも未だショタオジの個人芸である事に対して

 後者のシキガミはすでに量産が始まり供給されていることだ

 そしてガイア連合では有用なスキルを所持してるシキガミを生産し、貸出式神として霊能者のサポートに当たらせる事まで出来ている

 出張所に【ディア】【自然回復】【チャクラウォーク】の三点セットを保有しているシキガミが置かれることも全くないことではないのだ

 

 

 これは自分の思想である

「十分な魔力さえあるならディアで十分」「状態回復なんてアムリタ一つあればいい」「それとリカームがあれば完璧」

 結局、前線に出ない回復役なんてこれなのだ

 自分の立場は優秀なシキガミに代替される、今はされなくてもやがて来る更なる優秀なシキガミが置き換わる

 しかしてシキガミは自分にとって希望でもある

 

 シキガミという盾にする事ができる戦力を使うことができるなら自分も前に出て戦う事ができるのではないか

 例えば(当然であるが)自分が回復役を担い、シキガミに高火力なスキルを付ける事で自分の火力不足を補えるのでは

 そして更に言えばシキガミの生産性が上がり一人でも複数のシキガミを保有できるようになれば

 自分は回復役兼シキガミへのMAG供給役として、一人でシキガミ隊を指揮する事で両立することができるのでは? 

 いやもちろん最後のはまだ夢物語だと思っている、色々な意味で人気が高い需要過多なシキガミにそんな夢を見るべきじゃない

 だけど盾としてあるいは火力役として使う事、それは今でもできる現実的な自身への強化プランである

 あれから修行で自分の近接戦闘を行う戦士としての才覚も、マジックアタッカーとして活躍できる才覚もないと、見切りをつけざるを得なかった

 今まで全く異界に潜らなかったわけじゃない、最初のうちは普通の覚醒者として異界に入るような仕事もしていた、レベルも少し上がった

 そして分かった、自分は明らかにそして見るからに弱く、PTを組めば誰かが守ろうという気になるくらい弱い存在なんだと

 実際常に後衛で前に出る事なんかまったくなかった

 ガイア連合の人たちは良い人たちが多かった、妙に気が合うのも多かった多分前世陰キャだった人だろう、

 彼らのおかげで自分がオフ会まで感じていた孤独感を今になっては「中二病かなwww」と笑える程度の話になった

 だからこそ負担になりたくない、貢献したい、対等になりたい、自分は互助組織であるガイア連合の一人であり助けられてばかりじゃないと思いたい、一人前になりたい

 力を得たい、前線に出たい

 

 

 シキガミに自分の足りないものを補ってもらう

 この発想は実はシキガミが量産可能であり運用が開始されたと知った時からあった

 けどシキガミが戦力としてどこまで期待できるかわからなかったこと

(自分にはどうしてもレベル一桁前半の一反木綿みたいな弱い悪魔というゲームのイメージがあった、ショタオジ以外が作るシキガミには特にそうだ)

 それよりも自分の戦力向上(攻撃魔法習得)を優先すべきと思ったこと

 それと高レベルシキガミには自我が目覚めると聞いて避けてた(他人と仲良くできるか怪しい、強くなってから突然盾するの嫌がられたら俺死ぬかも)

 これらの事情から遠ざかっていた

 が、そろそろ本腰を入れてシキガミ入手の為に動くべきだ、他の人が安心して使ってるんだ多分大丈夫だろ、評判も良いというか悪い評判なんか聞かない

「その為には貯金だな」

 自分のディアラマは部位を喪失してなければ回復量の暴力でシキガミも治せる、いつかなくなると思っている仕事だがそれは今すぐではない

 それでお金貯めて自分のシキガミを買おう、なに自分には高価な美人なシキガミに興味は、まあちょっとあるけど、うんまあでもねうん我慢して安いタイプを、

 ああでも結局最近は人型の方が強いって話もあるなぁ、人の武器使えるから、うーん

 あとそういえば、シキガミは現金だけじゃなくてマッカでも買えるんだっけ? 

「たまにマッカ貰ってるけどあんま使い道ないんだよなぁ、なんで皆マッカで給料もらってんだろ」

 不思議である

 最近、この山梨の環境が合ったのか毛艶が良くなってきた膝の上のシロの耳をぐにぐにしながら話しかける

 シロはそっぽを向いて何も言ってくれない

 いつものように可愛い

 

 

 

 

 何となくもうここは任せておけば良いなと安心した事はありませんか

 俺はあります

 緊急で応援が来てくれたそうです

 現場に自分より頼りがいありそうな人ばかりが来て安心しました

 この人たちに任せて指示待ち人間していれば良いなって思いました

 まさかこんな日になるとは

 

 

 

「班長! その腕みたいなもんなんすか! そんなもん着くはずないでしょ! ディア! ディア!」

「あああああなんか着いた! えええええ! ディアディアディア!」

「はあああ?! なんか〇〇〇なくなってるんすけど! 男の子! 男の子どこおおお! ディア! ディア! ディア! おい起きろ! なんか大事なもんなくなってんぞ! ディアラマ!」

「うるさい黙れ、もっとディアラマしろ」「はい……」

「……3Dプリンターってしゅごい、人類の英知だわ」

 

 医療班って凄いと思った、回復役はスキル積んだシキガミに仕事とられるとか無駄な心配してた、スキル持ってるだけのシキガミに奪えるような仕事じゃないわ、どんな事態にもしっかり対応出来る判断力はきっと大事なんだね

 医療班は神か悪魔か天才か知らんけどまあ常人ではない

 良かった、俺医療班に所属してないスキル持ってるだけの派遣ガイアーズで

 いや良くねぇわ

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