コミュ障ぼっち、ガイアを行く   作:犬西向尾

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閑話3話

【農業】持ちの手付き一反木綿式神二体を購入出来た

「支援向け低品質アイテム特需」はまだ続いている、続いているがいつ終わるか分からない

 終末が来るか、【メシア教】に目を付けられて支援の意味がなくなるか

 海外の現地霊能組織が亡びるか、【ガイア連合】のマッカが尽きるか

 どれかすれば終わるものである

 終わるような状況が来ないで欲しいと思うが終わった時の事を考えざるを得ない

 そして終わったら身近な事で少し問題が生まれる

 この一反木綿二体の使い道だ

 個人消費分+α程度の野菜やアイテムの生産はするつもりだが畑二反分は多すぎる

 終末が来てからだと今生産している作物もどこまで需要があるか分からない

 購入してから悩むような話ではない、だからちゃんと畑作以外の使い道も考えてあった

 戦力化である

 この一反木綿たちは手が付いている

 農業をするために着けられたマッカと美味しい物を生む尊い手である

 であれば武装できる

 

【メシア教日本支部】の口利きで日本政府から微妙な公認を受けて

【ガイア連合】が銃刀法をガン無視できるやばい組織になった事と

【五島歩兵師団】との関わり合いから生まれた銃の供給、銃弾の生産体制の確立から

 とある汎用スキルの需要が急激に高まった

 汎用スキル【銃撃】である

 シキガミに後衛をさせている【俺たち】も当然いて

 そういう人たちにとって【銃撃】は

「魔力を使わないでシキガミが後方から攻撃出来るようになる」という事で評価が高い

 魔力の節約は大事である

 魔力が尽きてオホーツクされたピクシーの群れを何度も見た俺が言うんだから間違いない

 需要が高まれば当然のように更なる供給を求められる

 その結果、汎用スキル【銃撃】はそこそこお求め易い金額の一般的なスキルとなった

 なんとガチャを回さなくて良い、定価で買える

 この【銃撃】を一反木綿に着けて

 この頃発展著しい【ガイア連合】製の【退魔銃】を装備、もちろん対霊弾である【銀の銃弾】もセットする

 とりあえずしばらくはこれで使えるか実験してみよう

 その間は彼らの代わりの農業持ちの一反木綿式神二体をレンタルする

 短期間のレンタルは少々割高になるが必要経費だ

 

「使いにくい……」

 なんかもう駄目だった

 一反木綿タイプがあまり普及していない理由を実感した

 一反木綿タイプは装備ができないものの、飛行能力が高く回復力が高く

 戦闘力もそこそこあり、安い

 という風に言われている、これだけならまあ良いだろう

 しかしその代わり思考能力が弱い、と続く

 この「思考能力が弱い」というのが思ったよりも痛い

 撃て、と命令すればとりあえず悪魔の方を狙って撃つくらいはしてくれる、だけど狙う先は完全ランダム

 攻撃しろ、だけだと銃を棍棒にして殴りかかろうとした

 銃をおろさせてから、敵に突っ込めと指示したら<ライコー>の周りをうろちょろして切られかかった

 これをどうにかするなら事前にいくつも状況を想定して「~~の場合はこうしろ」と設定するとか

 細かく具体的な指示を出すかしなきゃならないだろう

 様々な悪魔と戦うならまず前者はキリがない

 後者の場合は、俺の能力不足で出来ない

 現状、戦闘では

「回復魔法とアイテムの判断、仲魔への指示、

【マッパー】を見て警戒、たまに銃で攻撃」をしているわけだが

 これに一反木綿への指示を入れるとパンクする

 掲示板で一反木綿タイプ使ってる人の書き込みを調べたら

「一反木綿を突撃させて後ろから銃を掃射」や

「一反木綿を文字通り盾にして銃や魔法を掃射」等のやり方が多かった

 多分、理由はこれと同じだろう

 用途を限定し、その中で使う分には良いが複雑な事はさせられないし、

 一々指示してられない、という事だ

 おそらくレベルが上がったり汎用スキルをいくつか入れればまた話は変わる

 けどそれまで異界捜索ではちょっとなぁ

 二体の撃つ銃での火力は良かったけど

 その代わり忙しくなったせいで俺の注意力が散漫になって、とかなったら何かありそうで怖い

 防衛戦で貼り付けの投射火力としては十分使えそうなんだが……

 うーん、まあ、郎党を得た! と喜んでいた【源頼光】様には悪いけど

 武者の郎党っぽい働きはちょっと無理かなぁ

 あっでも普通に農民を郎党扱いしてた武士っていたらしいな

 何か言われたらそれで言い訳しよう

 この一反木綿たちの本業は畑作って事で良い

 特需終わった後もなるべく作物作ってもらおう

 と言うか畑作って結構複雑な事だと思うけど

 割といい加減な指示でしっかり作ってくれてたよな? 

 なんでその場合だと問題起こらなかったんだろ

 

 後で知った事だが

 この一反木綿たちは製造過程で農業や植物に関連する悪魔の素材を使用する事で

 農業に対する適性を付与していたらしい

 そして一般的な一反木綿に使うような戦闘に向いてそうな悪魔の素材は殆ど使ってなかったとか

 そりゃ戦闘に向かないわ

 悪いのは一反木綿じゃなくて俺だった

 それとあまり戦闘に出なくても郎党扱いで良いらしい

 

 

 今、【ガイア連合】の【俺たち】の中では俺がやってるような試行錯誤が盛んに行われている

 それまで戦力に数えていなかった何かが役に立たないか? 

 これは何かに使えないか? 等々だ

 大雑把に言えば「今持っている物、簡単に手に入る物」の中での創意工夫である

 今までは「強くなりたい」=レベリングしろ、ガチャ回せ、良い装備買えが基本だったのが

 それ以外の事に目を向ける人も増えてきた

 それには日本神話の神々(悪魔)に告げられた【終末】が背景にある

 これまで【終末】は騒がれてはいたが具体的な事は何もわかっていなかった

 女神転生シリーズの設定を下地にああではないか、こうではないか、と掲示板で騒ぎ

 いつも元気一杯な【メシア教】を見て「やっぱこいつらだよ」と決めつける程度だった

 そもそも起こるのか? という声も少なくなかった

 しかし、日本神話の神々(悪魔)の言葉で【終末】が起こった後の世界

 それが朧げに見えるようになった

「魔界との壁が崩れる」=【魔界】化する

 つまり「世界中が異界化する」位は最低でも起こると認識して良い

 とすればこの程度の事は確定で起こると言われた

 

 野良悪魔がそこら中に湧き、物理法則が壊れ、インフラが使用不可となり、地形も気候も変わる

 特別な対策を取っていない機械類は全滅する

 

 そんな世界が間もなく訪れる、ならばどうすればいいのか

 生きるためには? 幸せに過ごすためには? 

 と考えた末が

 戦力強化や【ガイア連合】での居場所を得る事等だった、そういう【俺たち】が大勢いる

 ある者は【覚醒修行】を受け、ある者は【デモニカ講習】を受け

【ガイア連合】の工場班に就職を、【ガイア連合】の事務方に就職を、

 今ある資産をマッカに換金を

【未覚醒者】の家族の為に簡単なレベリング方法の模索を、物資の買い込みを

 終末後に快適に生活できる技術開発を、生産設備の拡張を

 中には【外様】の悪魔の所で氏子や種馬になってる人もいるそうだ(通称が生贄、人柱である)

 そして前述のような創意工夫もその中の一つである

 レベリングが間に合わない中で、なるべく戦力を整える、という事だ

 より強く【終末】を意識した【俺たち】はより積極的に動く事となった

 その手に握っている物とそうじゃない物を確認して、その先を見据えた

 そんな中、俺もまた【終末】に向けて自分にできる事をやっている

 そういう事である

 

 俺はそういう点では恵まれてる方だ

 嫁は<ライコー>だから【終末】の説明しなくていいし、<シロ>とはずっと一緒だし

 家族はシェルターに入る予定だし

(結婚後、弟の就職先の社長さんに会って話しマッカを包んだ、受け取って貰えてほっとした)

【俺たち】じゃない友人関係なんて構築してないし

 家は安全な【山梨第一支部】にある、小さいけど畑も持ってる

 最近は【バリアモロコシの苗】も仕入れる事に成功して、アイテムの供給源としても一層頼りに出来そうだ

【ガイア連合】の存在が前提だけど【終末】に備える、という点でそれなりの準備ができている

 であればこれ以上の備えは戦力向上とマッカ稼ぎが妥当である

 やるべき事がシンプルなのは助かる

 残念ながらその一環であった一反木綿たちの戦力化は思わしくなかったが

 とすると残された選択肢の中で有望なのが……

 

「【管狐】譲渡の審査、受けて見るか」

 

 

【管狐】、女神転生での珍獣【クダ】だと思われる

 思われるというのは【ガイア連合】にいる【管狐】は耐性もスキルもブレが激しく

 イコールで捉えて良いのかわからないからだ

 ただし珍獣【クダ】の元ネタの伝承である【管狐】らしさはある

【管狐】、飯綱、オサキ、ゲドウとも呼ばれる

 竹筒で持ち運びされる使い魔の一種で、持ち主を占術や泥棒等で裕福にすると言われる

 見た目は40センチ(1.2~1.3尺)ほどの狐と伝わる、が諸説ある

【ガイア連合】の【管狐】は耳の長いフェレットのような姿をしており、竹筒に入る

 この【管狐】が条件付きであるが希望すれば、ショタオジから譲渡されるのだ

 条件とは、最低でもレベル25以上である事、審査に合格する事、そして受け取る時きちんと契約を交わす事だ

 レベル25は大丈夫、つい最近26になった

 25になった時にこれらの説明を受けたのだが

 条件が最低でもレベル25以上なので「まだ早い」と判断して審査の申し込みをしていなかった

 切りの良いレベル30になったら、と思っていたのだ

 なんとか審査に合格できればいいんだが……

 

 俺のPTは現状、物理アタッカーの<ライコー>、補助+魔法アタッカーの<シオン><シロ>

 回復とアイテム係の俺、という編成になっている

 レベルを上げても<シオン>も<シロ>もどうも補助の方に適性があるようで

 あまり攻撃手段を覚えない、その代わり補助は中々良い物を覚えてくれている

 幸いにも<シオン>はスキルカードによる習得が可能な為、

 ガチャれば攻撃手段を得られる見込みがあるが

 <シロ>はスキルカードでの習得は出来ず、レベルアップ時のスキル習得や変化に頼る事になる

 これは「そう作られた悪魔」ではないからしょうがない事だ

 俺としてはPTバランス的に【管狐】には出来れば<ライコー>に続く物理アタッカーに

 それも出来れば魔法攻撃も出来る子が来て欲しいと思っている

 ちょっと贅沢な願いだとはわかっている

 だけどこの【管狐】、

【血統】やその個性によって覚えるスキルが違うので戦力としての評価が一定ではないのである

 だから物凄く都合が良い子が来てくれないかなー、と思ってしまう

 これを【管狐ガチャ】なんていう人もいる

 そんな訳でそのPTで欲しいスキルを持っている子が来るかどうかは分からない

 一説にはショタオジが相性占いで決めてるとか、くじ引き引いてるとか

【管狐】の気分で選ばせてるとか、まあ適当な事が言われている

 全てを否定しきれないのが【俺たち】の【俺たち】たる所以である

 

 

 それから審査の申し込みをして、さて他に何が足らないか、何をやろうかと悩んでいた所で

 スマホにて聖女ちゃんから飲み会のお誘いが来た

 この人はたまにこうやって飲みに誘ってくる

 俺でも気兼ねしなくて飲み食いできるいい人だ

 行くか

 そういう事になった

 

 まずはお互いの近況等を語り合い、適当に飲む

 ほどほどに酒が進んだ所でふと疑問になった事を口にする

「そういえば聖女ちゃんは【終末】に備えて何かやってたりするんですか?」

「【終活】の事? やってるよー」

【終活】「人生の終わりのための活動」の略、ではない

 終末に向けての活動の略である

 最近使われる事が増えた言葉だ

「へー」

「源氏くんとこうして飲んでるのがまさにそれ!」

 源氏くんとは<ライコー>と結婚して以来呼ばれるようになってしまったあだ名である

「結局、一番頼りになるのは現地民だの【外様】だのよりも

【ガイア連合】や【俺たち】でしょ? 

 装備もアイテムも生活インフラも仲間も【ガイア連合】があれば解決するしねー」

 焼き魚を食べ、燗にした日本酒をグイっと飲む聖女ちゃん

「じゃあ一番の【終活】は【ガイア連合】で仲が良い人たちとの関係を維持する事じゃないかなー

 いざという時助けたり助けてもらったりできるしねー

 あっ日本酒おかわりくださーい! 同じ奴ー」

 そういう考え方はなかったな

「それよりも私としては」

 聖女ちゃんが唐揚げを齧り、飲み込んでから

「源氏くんには【恐山の冷水】で若返りをおすすめするな」

 若返り? 

「必要な歳ですか?」

 あんまり気にしたことなかった

「40代より30代の、20代より10代後半の身体の方がやっぱり動きが良いよー

【終末】考えるなら少しでも元気な身体の方が良いし、私たちみたいな専業でガイアしてるなら世間体もないしね」

 むむむ

「自分の身体のメンテは戦力維持に大事よー」

 来た日本酒をぐいぐい飲む聖女ちゃん

「よく、漫画とかだと不老不死とか不老長寿になった人間の悲哀ーとかやってるけどさー

 そんなの人生楽しめる人なら気にしなくても良いと思うのよねー

 とりあえず私は長生きできるなら長生きしたいし若返り出来るならしたいわ」

 なるほどなー

「【終末】が来たら恐山が存在してるのかも、

 冷水に若返りの効果あるままなのかも分からないしねー」

 そうかもしれない

 結局その後、聖女ちゃんが潰れるまで飲んだ

 身体のメンテが大事って言うならもう少しお酒控えた方が良いのでは? と思わなくもない

 

 でも聖女ちゃんの言う事ももっともだと思った

 それにシキガミ故にいつまでも若く美しい<ライコー>と老いた自分、という組み合わせを想像すれば

 なんだが拗らせている自分の姿が見えてくる、これは良くない

 女神転生の世界で長生きする事が幸せに繋がるかどうかは分からないが

 不幸になる事を前提にするのも変な話だ

 <ライコー>と一緒に恐山に行った

 思っていた【恐山支部】のイメージと全く違う普通に整備されてる街並みに少しがっかりする

 何となく秘境なイメージが有った

【恐山の冷水】は「1杯飲めば10年、2杯飲めば20年、3杯飲めば死ぬまで若返る」と言われている

 3杯飲んだら赤ちゃんから更に若返って死ぬのかな? と思ったがどうもそういう訳じゃないらしい

 死ぬまで若返ったままという事らしい、【恐山支部】の人が良く聞かれる質問なんだそうだ

 若返りをもたらす術や物は色んな種類があるが

 どれもこれも個人差が大きい物と言われている

【恐山の冷水】もその例に漏れず「1杯飲めば10年~」も個人差があるらしい

 これ効果なくても「個人差です」で押し切ってそうだなと思った

 とりあえず3杯飲んでおこう、飲んでみる

 MAGを感じるが普通に冷えた水である、特別美味しいとかそういうのは感じない

「何か変わった?」

 身体を伸ばしたりなんだりしても特に違いが分からず

 <ライコー>に聞いてみる

「私と初めて会った時より若く見えますね」

 と答えられた

 まじか

 この時の為に買った手鏡で見る

 うーん言われてみれば確かに若返ったような気がする? 

 自分の顔なんてあんまり気にしたことなかったし

 もともと【覚醒者】は老いが表に出にくいんだよなぁ

 若くして覚醒したような人は特に

 まあいいや、とりあえず目的は達した

 その後、軽く【三途の川】や【太鼓橋】、【賽の河原】を観光

 帰った

 

 

 

 そして恐山から帰って数日後、掲示板からのとんでもないニュースに震える事となる

「【ダゴン密教団】、アメリカ合衆国マサチューセッツ州にて超巨大悪魔【邪神・クトゥルー】の召還に成功せり」

【終末】が始まった、そう思った

 

 

 

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