コミュ障ぼっち、ガイアを行く   作:犬西向尾

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閑話4話

【終末】が始まった、と思ったがすぐにはそうはならなかった

 マサチューセッツ州に召喚された【邪神・クトゥルー】は確かに終末的光景を生み出した

【邪神・クトゥルー】、女神転生においてはあまり出る事は多くない悪魔である

 作中でのレベルは60後半、もしくは70後半

 耐性は極めて優秀、魔法攻撃であれば万能以外は吸収か無効であり弱点はない

 イカのような姿をした強力な悪魔である

 その原典は20世紀に米国で創作された作品にある架空の神である

 が、この世界ではどうやら実在するようだ

 その作品は【宇宙的恐怖】という発想を表現した作品であり

 クトゥルーもその一翼を担い、人の力や価値観では抗えない広大で虚無的な恐怖の存在として

 思念のみで自らの見る夢を伝え人々の精神を崩壊させ発狂させる姿が描かれる

 そのクトゥルーの特徴は【邪神・クトゥルー】においても健在であったようだ

【邪神・クトゥルー】の権能、【狂気】と【浸食】

 この二つの権能によって米国と、米国の霊的国防を担っていた【メシア教】は

 建国以来最大のオカルト災害、そう評していいだろうそれに見舞われてしまった

 

【邪神・クトゥルー】は人々を【狂気】に陥らせる事で【メシア教】の力の源である【信仰】を穢し

 また【浸食】によって【信仰】や【狂気】を介して更なる【狂気】を疫病のごとく広める

【狂気】に陥った者の中の【才能】ある者は【ディープワン】や【グール】などの眷属に変貌する

 ただ狂気対策をすればいいという物ではない

 マサチューセッツ州の約700万の人間、召喚された州都ボストンだけでも70万近くの人間の中の

【才能】ある者が眷属となってしまったのだ

 マサチューセッツ州は【異界】と化した

 そして【邪神・クトゥルー】にとって都合が良い要素がいくつもあった

 一つ、マサチューセッツ州は米国の霊脈、その中心地であり

 その霊脈が【邪神・クトゥルー】の狂気に染まった結果

 霊脈を利用しての結界等による隔離が出来ない事

 二つ、米国の霊脈であるが故に

 そこは世界最強のオカルト組織にして米国の霊的国防を担う【メシア教】の活動の中心地であり

 多数の霊能者、多数の天使がそこにいた事だ

 

 秘密結社【ダゴン密教団】の行った【邪神・クトゥルー】の召喚はこの上ない奇襲効果を生み出した

 現地で有力な戦力を持つ【メシア教】に対応不可な衝撃を与え

 同時に彼らの戦力である霊能者、天使を【狂気】に陥らせ眷属化、

【邪神・クトゥルー】の為の戦力に変換

 そして【狂気】を広め数多くの人間をMAG供給源へと、あるいは更なる戦力へと化した

 

 この事態に【メシア教】は米国政府と協力し周辺住民の避難を開始

【邪神・クトゥルー】のMAG供給源を断つ事で事態の解決を図る事となる

 高レベルの悪魔である【邪神・クトゥルー】は消費するMAGも当然莫大である

 ならば兵糧攻めが有効である、人間をMAG供給源にする悪魔であれば人間を遠ざければいい

 後は自らの重みに耐えきれず自壊するであろう、そういう見込みであった

 しかし相手は【邪神・クトゥルー】である

【夢見るままに待ちいたり】のクトゥルーである

【邪神・クトゥルー】は【休眠】と【顕現】を繰り返す事でMAGの消費を節約

 更には霊脈を【狂気】に陥らせる事で支配、我が物とする

 これにより【メシア教】は打つ手を失った

 そして眷属である無数の【ディープワン】や【グール】によって現地の前線部隊は壊滅

 

 米国始まりの地プリマスを擁した、マサチューセッツ州

 メイフラワー号が上陸して以来、米国にとって歴史の中心であり続けたその地を失う事となる

 

 唯一と言って良い対抗策が失敗に終わった事で

 ここで【メシア教】内部の派閥争いが表面化する事となる

 ある一派は国民の浄化と保護をする事で【邪神・クトゥルー】の影響力を最小限にしようとした

 ある一派はこの事態を神の裁きと見なし、終末に向けての準備を始める

 そしてある一派は米国民の避難の為に日本へと接触を図った

 最後の派閥は自らをこのように称する【メシア教穏健派】と

 

 

 

「とは言ってもこれどうすんだ?」

【俺たち】の生放送と掲示板から伝わる情報を纏めるにもどうにも事態は複雑である

 マサチューセッツ州を襲った悲劇、は表社会にも裏社会にも深刻な影響を生み出す

 まず【メシア教】は米国の力、政治的立ち位置と自らのオカルト的戦力を背景に世界に覇を唱えた存在だ

 当然、米国の衰退は【メシア教】の今後に密接にかかわってくる

 マサチューセッツ州の州都ボストンから

 米国の経済の中心地であり人口800万を超える大都市ニューヨークまでの距離は凡そ370キロ程度

 これは日本で言うと電車で東京から名古屋に行く程度の距離である

 日本人的には「結構距離あるなー」と言う感覚になるが

 これくらいなら電車や車で半日程度の距離、という事になる

 つまり【狂気】を伝達させる人間が半日でマサチューセッツ州からニューヨークに入り込むのだ

 こうなってはもうニューヨークの陥落は目に見えている

 そうなれば米国は経済的にも政治的にもあらゆる意味で混乱を迎える

 そこで更なる事態の複雑化を招くのが日本に接触してきた【メシア教穏健派】である

 つまるところ彼らは「【邪神・クトゥルー】の解決が出来ず、米国が滅ぶ」と予想したから

 米国を脱出して、避難し、保護してもらう対象として日本を選んだ

 という事になる

 

 正直この時点で自分は【メシア教穏健派】に対してあまり良い印象を抱いていない

 日本、というがオカルト的戦力を考えると=で【ガイア連合】である

 そして彼らが日本=【ガイア連合】を頼みにした理由というのが

「米国及びメシア教と対立していない霊的に安全な国」という事で

 米国の同盟国日本に白羽の矢が立てられたという事だ

【ガイア連合】は長年【メシア教】を危険視してたんだけど? 

 何なら【メシア教】と対立して殺し合ってる組織たちに秘密裏に支援しているんだけど? 

 そして【メシア教】が封印した異教の神々(悪魔)を解放して戦力として数えてるんだけど? 

 それを全く知らなかった、【ガイア連合】が完璧に隠し通せていた、と解釈するには

【メシア教】が強敵過ぎる

 そして全てではないにせよ、ある程度知った上でこういう事をするのであれば

【ガイア連合】が舐められているという事である

 敵として意識していない、敵意を買っているつもりがない、そういう事だ

 これを舐められていると言わずしてなんと言う

 油断される事は都合が良い事である、だが面白くない

 

 まあ俺の気持ちは何にせよ、今「事態の複雑化を招く」と言ったのはそこの部分ではない

 なんとこの【メシア教穏健派】

 米国と【メシア教】が【邪神・クトゥルー】でえらい事になった状況を見て

 自分たちが【メシア教穏健派(主流)】であると名乗りを上げ

 それ以外の【メシア教】を【メシア教過激派】と呼称、【異端】認定する

 米国脱出までの間に【メシア教過激派】の拠点を襲撃する事で技術を物理的に奪い

【メシア教過激派】が確保し洗脳等を施していた異教の霊能者を救出

 米国政府並びに他の一神教と関わりがある国との交渉を済ませ

 米軍及び【メシア教穏健派】が聖戦、つまり【メシア教過激派】との戦いを始めると言ってきた

 

 穏健……? 

 

 そしてどうにも自称穏健派、クトゥルーが現れる前から過激派との暗闘と派閥抗争を繰り広げており

 その結果として上手い事状況を利用した某邪神と【ダゴン密教団】の常日頃からの弛まぬ努力が実を結び

 天晴れ【邪神・クトゥルー】現るという事態に繋がったらしい

 つまり元気よく身内争いしてたら愉悦勢してる奴や変な奴らに隙を突かれて大打撃を受けたから

「今がチャンス!」と派閥を纏めて米国等と交渉し、更にそれまでの身内を襲って手土産を確保

 表側の伝手を辿って日本(【ガイア連合】)に「これからよろしくね!」してきた? 

 やっぱやべぇ奴らでは? 判断が早い

 

 

 この【メシア教穏健派】の成立は【メシア教】の世界征服活動がある程度の成果を出した事から始まるらしい

 世界中を侵略し、霊地を奪い、無数の悪魔(神)討伐をしたにもかかわらず

 世界の霊地活性化は鎮静しなかった

 この事からこれ以上の霊地侵略を無意味と判断したのが【メシア教穏健派】

 方針を変えず、今もなおそれを続けているのが【メシア教過激派】

 そして彼らの決定的な断絶を生んだのが、

 米国の霊的国防を担うはずの【メシア教】でありながら

 米国民を弾圧、拷問し、時には一神教の者まで異端扱いするようになったから

 と、彼らは言う

【メシア教過激派】は同時に武闘派でもある

 積極的に悪魔狩りや異端狩りをする事で得たレベルと戦闘経験は【メシア教穏健派】の上を行き

 更に魔界より【過激派天使】が増援としてやってくる

 そして何より、サバトや背徳的と言って良い各種実験によって得た知見がある

 一方、【メシア教穏健派】はどうだろうか

 規模的には【メシア教過激派】の上を行くが、【メシア教過激派】ほど積極的に鍛えていない事

【穏健派天使】は積極的な手助けをしない事

 そしてサバトもそれら背徳的な実験もしていない

【組織力】に置いては負けるつもりはないが

 単純な個の力、技術、天使のバックアップでは差がついている

 そういう苦しい力関係らしい

 しかし大丈夫、我らの胸には愛が、心には神がおられる

 必ずや、より深き愛を持つ方が勝つ

 なおこれら全て【メシア教穏健派】の主張である

 

 そんな【メシア教穏健派】及び米国政府が我らが【ガイア連合】に望む事

 それは意外にも参戦要求でも、支援(という名の強請り)でもなく

 今まで通りの秩序の維持と、【メシア教穏健派】の避難民の受け入れだった

 

【ガイア連合】はこの提案の検討を始める

 その重大性故に

 ショタオジ、幹部、【ガイア連合】運営陣

 日本の神(悪魔)の頂点【アマテラス】

 ガイア連合と強い協力関係にある【ゴトウ】と錚々たるメンバーを招集

 そしてその会議の結果

【対価】と【責務】を契約書に明記させ、結ばせた上での受け入れを決めたのである

【メシア教】の半分と和平を結び、その【組織力】を当てにできるようになる

【メシア教穏健派】+米軍が対メシア戦線に加わる

 これら戦略的な妥当性の重み

 そしてなにより【メシア教穏健派】が持ち込んだ手土産が魅力的過ぎた

 

【アームターミナル】

【女神転生】を代表し、象徴ともいえるギミック

【悪魔召喚プログラム】を内蔵したコンピューター

 通称【COMP】を【ガイア連合】は手に入れた

 

 

 

 とは言え、【悪魔召喚プログラム】なんて怪しい品物をすぐ配るほど

【ガイア連合】は頭ヒーホーではなかった

【メシア教穏健派】の言っている通りの物なのか確認も兼ねて調査対象となった

 そしてこれが元は【天使召喚プログラム】である事や、その性能の詳しい所を知る事となる

 また【邪神・クトゥルー】召喚に利用されたことも占術等を駆使した調査で判明する事となった

【天使召喚プログラム】はその機能として、使用者のMAGを使用し

【聖書】や【聖歌】を機械的に高速詠唱する事によって【儀式】を行い

【奇跡】として天使の召喚を行うプログラムである

 これがレベル30越えの天使を召喚できた理由だった

 そして某邪神がそのプログラムの根幹を成す【聖書】や【聖歌】の単語の

【神】や【主】を【クトゥルー】に変える強制アップデートを行う事で

 邪神を称える【邪神召喚プログラム】に変容

 その結果起こったのが【邪神・クトゥルー】召喚だった

 召喚の儀式をしていた【ダゴン密教団】は哀れ召喚コストとして消費されたようである

「俺が悪魔召喚プログラムを使える日は遠そうだな」

 そう思った、どう見てもこれ危険物だし

 

 ちょっと憧れた【悪魔召喚プログラム】と【COMP】だが、手に取れる日は遠そうだ

 となると途端に興味が薄れる

 手に入りそうな日が来たらその時また気にすればいいや

 でも【メシア教】はこれを使ってるんだろうなぁ怖いわ

 

 

【メシア教穏健派】なる勢力が盤上に上がった事で

 対メシア戦線は大きく変わる事となる

 それまでは控えめに見ても「撤退戦をしている状況」

 贔屓目無しで見ると「掃討戦を受けている状況」に近かったそれが

【メシア教穏健派】の戦力、

 そして何より【組織力】で【メシア教過激派】のこれ以上の躍進を食い止めた

 これには無論、【邪神・クトゥルー】によって【メシア教過激派】と彼らの中心地である米国が

 大損害という言葉では済まないほどの打撃を受けた事も無縁ではない

 その影響は表世界にも出てきて在日米軍の増強という形にも表れている

 彼らは実質【メシア教穏健派】側にある米国政府の戦力である

 それに伴い米国から【メシア教穏健派】や難民が次々と日本に押し寄せ

 出島や米軍基地、【メシア教日本支部】の教会周辺に移り棲んでいる

【メシア教日本支部】が彼らを纏め、監視し、相談に乗っている形だ

【メシア教日本支部】、最近は【日本メシア教】と呼ばれる事が増え【メシア教穏健派】とは

 微妙に区別される事が増えてきた

 なんだかんだで【ガイア連合】に有益で都合が良い行動を取り続け

 まだ裏切った事がない【日本メシア教】はそれなりに信用を稼いだのだろう

 海の物とも山の物とも知れぬ【メシア教穏健派】とは分けて考えたい、そう思った人が生まれた

【メシア教穏健派】があまり問題を起こさずに日本で生活できるのは

【日本メシア教】がこれまでに稼いだ信用と彼らが問題を起こさないように協力的姿勢を取った影響が大きい

 

 そんな遥か遠い地やあまり関わる事のない連中の出来事が俺に微妙に影響を与え

 多少の迷いを生ませる、その迷いとは

「どうするかなぁ、【バリアモロコシの苗】かなぁ」

 転作の迷いである

 

「支援向け低品質アイテム特需」

【終末】を迎えたら自動的に終了するだろうと思っていたこれが

【終末】を迎えなかった事で継続

 むしろ【メシア教穏健派】の組織力でもって、

 より広範囲へより深い所へと支援の手が届く事になり需要の掘り起こしが発生

【メシア教過激派】の勢いが落ちた事でそれまで耐え忍んでいた反メシア教勢力が息を吹き返し

 無茶な積極攻勢の話まで出てくる模様

 そして【メシア教穏健派】の伝手でこれまで以上に【一神教】のエクソシストも参戦する事となった

 これらの勢力の多くが【ガイア連合】からの更なる支援を求めている

【メシア教穏健派】から貰えよ! 特にエクソシスト! と思うのだが

【メシア教穏健派】を経路にして支援を受け取るのは良いが

【メシア教穏健派】が提供するアイテムなんぞ全く信用が出来ないという

 だって【メシア教】だし

 わかるわー

 

 もはや「特需」というより「バブル」に近い所まで来ているこの熱

 しかも今までは【ガイア連合】が財布となっていたが

 どうにも【メシア教穏健派】は顧客になりそうな話も出ている

 世界征服目前まで迫った【メシア教】の数的主流派であり

 その実行力であった【メシア教過激派】よりも【組織力】があると、本人たちが胸を張って言う存在である

 当然のように金持ちだ

 信者と書いて儲けるとはよく言ったもんよ

 坊主丸儲けだな、ありがたく顧客になってもらおう

 

 俺のメインの作物は【カエレルダイコン】と【ミガワリナス】である

 前にも言ったがこれらは【俺たち】にはそれほど大きな需要はない、と思う

 よりいいアイテムがあるからだ、しかし支援向きの作物であるから今まで作っていた

 だけど正直、海外のアイテムの需要は【終末】が来たらどうなるかわからない

 インフラがズタボロになれば海外にどこまで輸出出来るかわかったもんじゃないし

 そもそも輸出先が存在するの? 輸出する意味あるの? 

 生き残ってるの? お金払えるの? という所からだ

 これじゃ計算も期待も何もない

【ガイア連合】は【終末】でも生き残ると思うが海外の事なんてさっぱり分からない

 一寸先は闇状態である

 ならば【俺たち】にも十分売れる商品を作りたい

 そして工場班とか工房持ちじゃない俺が生産したアイテムを大量に買い取って貰える機会って

 こういう特需でもなきゃないんじゃないかなぁと思ってる

 納品実績や品質の信用を稼ぐのには今が絶好の機会と言える

【終末】後も畑作で収入を得たいのであれば

 今、この特需を利用して【俺たち】向けの商品を作るのが良い

 今なら何でも買い取って貰えるだろう

【俺たち】には売れないような商品認定されても支援向け物資になるだけだし

 

 そこで目を付けたのが【テトラコーン】【マカラコーン】【宝石メロン】である

【テトラコーン】【マカラコーン】は【バリアモロコシの苗】を育てれば得られるアイテムだ

【テトラコーン】は物理攻撃を一度だけ反射する魔法スキル【テトラカーン】の効果を

【マカラコーン】は魔法攻撃を一度だけ反射する魔法スキル【マカラカーン】の効果を発する

【宝石メロン】は俺が前に食べた通りである

 ゲームで言うHPとSPが全回復するかどうかは分からないが

 確かな回復効果がある

 どっちかが【俺たち】に売れるようだったら【終末】後のメイン作物にしたい

 俺の本命はコーンの方だ

【バリアモロコシの苗】を育てると八日間で育ち

 一度に一本ずつの【テトラコーン】【マカラコーン】が採れる

 一つの苗で一個しか採れない【宝石メロン】より量が採れる

 それに【宝石メロン】は育てるのに微妙にMAGが多く必要なので

 俺の負担的にコーン一押しである

 更に言うならばコーンは生でも冷凍すれば結構日持ちする

 これは良い

 

 今、収入になっている【カエレルダイコン】と【ミガワリナス】は半反ずつの生産に切り替え

 残り一反をさて、【バリアモロコシ】(=コーン二種類)オンリーにするか、

【バリアモロコシ】と【宝石メロン】の二種類にするか迷っている

【宝石メロン】は甘味で、魔力回復できるアイテムだからある程度の需要は見込めるだろう

 が、【宝石メロン】半反分はMAG的にちょっときつい気がする……

 作れない訳じゃないんだけど、単純に疲れるんだよなぁ

 でもいつ【終末】が来るか分からない、今のうちに納品実績が欲しい気も

【邪神・クトゥルー】は【終末】を招きこそしなかったが

【終末】までの猶予を確かに吹き飛ばしたはずなのだ、時間がない

 

 迷ったがここは半反ずつ【バリアモロコシ】と【宝石メロン】を作付けする事にする

 

 

 それから続々と日本に避難する【メシア教穏健派】や一神教徒の数に肝を冷やしたり

 一向に討伐される気配がない【邪神・クトゥルー】に改めてやばさを感じたり

 技術部に「【宝石メロン】、未覚醒の家族に送りたいんだけど大丈夫?」とメロン付きで出してた調査依頼が

「MAGの含有量多すぎて無理、死ぬか覚醒するかのどっちか」

 という調査結果とそれよりも力の入った味の感想文が届いたりした

 

 そして【テトラコーン】【マカラコーン】【宝石メロン】は支援物資枠からは弾かれて、

【ガイア連合】内で流通する事が決まったと連絡を受ける

 更にいくらでも引き取って貰えることになった

 支援向けアイテムの頃と比べて単価がググっと上がって嬉しい

 これらは普通にそのままアイテムとして使ったり、他のアイテムの原料にされるらしい

 その後、ガチャの【H賞・消費アイテム及びジョークアイテム】枠に

【宝石メロン】やコーン類が入っているのを見かけた

【宝石メロン】にはP4Gファンを煽るような謳い文句までつけられていた

 

 

 その日、事務の人に呼び出され個室に案内され仕事の紹介を受けた

「守秘義務?」

 そんなものが付いた仕事を見るのは初めてじゃないか

「依頼は【ガイア連合】からです

 仕事内容の具体的な説明は請けてからとなります」

 物々しい

「判断材料とするように上から広告のようなものを渡されています」

 ようなものってなんだろ? 

 どれどれ、と思って見たら

「命の保証はありまーす!」「高額報酬を約束!」「得難い経験を、君は得る!」

「ようこそ、選ばれしものたちよ!」「危険だよ!」「今ならスキルカードも付いてくる!」

「モテまくり! ヤレまくり! かも!」

 そんな胡散臭い煽り文句と共に妙に笑顔が眩しい男が札束(円)と女を抱きしめてる画像の広告? が

 なにこれ

「わかります、他の方もそのような顔をしていました」

 事務の人が疲れた顔してる

「恐らく上にいるヒーホー族の誰かが作った物だと思われます」

 ヒーホー族、【俺たち】が逃れられない宿痾である

 ノリと勢いでついやっちゃうのだ

 下っ端の人間がヒーホーしてもそこそこの割合で止められるだろうし、そういう事なんだろうなぁ

 マッカ報酬は確かに良い、スキルカードはどれを貰うかは仕事の後でリストの中から選べるらしい

 ガチャの目玉になっていたようなのもある

 悩むが……

「受けます」

 まあ【ガイア連合】からの仕事だし、そうそう変な仕事ではないだろ

 シキガミ製契約書に判子を押した

 

 

「仕事内容は日本に向けて使用される【ICBM】を利用した【爆発式悪魔召喚機】

 それから召喚された悪魔と戦う神(悪魔)への【蘇生支援】です

 リカーム持ちの方々に声を掛けさせていただいています」

 そして一息入れて

「三日後の日本時間15:30分頃、【メシア教過激派】は日本に核攻撃、並びに

 それを利用した戦略的オカルト攻撃を実施する予定です」

 

 

 


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