コミュ障ぼっち、ガイアを行く 作:犬西向尾
という事で聖女ちゃんとしばらく組むことになった
事情はよく知らないが聖女ちゃんの固定PTが内部で揉めてるらしく
揉め事が終わるまでPTでの活動が休止状態らしい
その間俺とPTを組む、そういう話になった
人の諍いを喜ぶのは良い事ではないが渡りに船と言えばその通りだ
俺と聖女ちゃんPTの方針は積極的なレベル上げという事でマッカの方はとりあえず二の次で良いらしい
俺の都合にも良い話なのだが、
マッカは大事じゃないか? 俺に合わせてそう言わせてしまっているのかと思って聞くと
「【メシア教過激派】と本格的にドンパチする前にもっとレベル上げておきたいんだよね」
と言われて得心が行った
考えてみれば聖女ちゃんの得意とする属性は破魔属性の攻撃で
種族【天使】も種族【大天使】も【破魔無効】を持っているのが当たり前の存在だ
そういう連中とやり合うようになる前に可能な限りレベルを上げておきたいのだろう
敵が【天使】【大天使】だらけになってからではつらい事になる
俺のレベル上げなんかよりもよっぽど切実な理由かもしれない
何度か聖女ちゃんと異界探索して見たがすこぶる順調である
これには今まで何度か組んでお互いに勝手を知っている事や、
俺のPTの基本的な戦い方に単純にプラスした形で戦えるので大きな変更点がないから、というのがある
前衛に聖女ちゃんのシキガミが足され、聖女ちゃんと俺の護衛をする
聖女ちゃんと聖女ちゃんのアガシオン(呪殺特化)が、破魔や呪殺攻撃を放つ
俺は銃と弾丸を置いていき、その分【宝石メロン】等の霊薬をより多く持ち込むようになった
変更点はこれだけだ
そしてこれだけで今まで避けていたような異界でのレベル上げが出来るようになった
例えばこのレベル帯だと【ハマ】【ムド】系統の即死攻撃を使う敵が増える
範囲即死スキルや即死成功率が高い上位のスキルを持っていても不思議じゃない
俺はこういった敵が多い異界は避けていた
俺のPTは俺入れて五体
このうち装備や耐性、アイテム含めて破魔呪殺の即死に耐えられるのは<ライコー>と俺だけ
破魔では<シオン>が耐性を持つが、<ユキ>は破魔に弱点を持つ、<シロ>は効く
呪殺では<ユキ>が無効を持つが、<シオン><シロ>はどちらも効く
つまり【ハマ】持ちや【ムド】持ちとの戦闘は
いきなり二体死んでも全くおかしくない戦闘になるという事だ
俺は火力的に無能だから五体のうち火力を務めるのは四体、
その半分が突然消える可能性がある戦闘
そんなのやってられるか
もちろん即死は確実に成功するようなものではないし、【リカーム】があるから戦線復帰は容易い
ダメージソースとして最も優秀な<ライコー>が無事だから火力が純粋に半減というわけでもない
実際にやってみればそんな不幸な出来事はそうそうないかもしれない
しかしもし二体死んだ時に敵の数が多ければ、もし丁度いいタイミングで状態異常等を食らったら等、全滅するかもしれないリスクがある
このリスクを背負ってひたすら戦い続けることが出来るのか? と考えれば避けるべきだと判断した
レベル上げの為の戦闘は一回二回で終わるものではないからだ
そんな異界が聖女ちゃんが加われば普通に狩場の対象になる
まず聖女ちゃんとそのシキガミには俺と<ライコー>同様【ミガワリナス】を持たせた
聖女ちゃんのアガシオンは破魔耐性呪殺無効持ちらしい
これで【ハマ】【ムド】系統の敵と当たって、耐性持ち以外が即座に死んでも
火力を出せる七体のうち二体が沈むだけである、残るのは五体だ
これなら十分に【リカーム】で巻き返せる
手数の半分が死ぬのと1/3以下が死ぬのでは訳が違う
避けていた異界のいくつかが「許容範囲のリスクの異界」になった
そして【ハマ】【ムド】系統持ちは高い確率で使う属性とは逆の属性を弱点にする
つまり聖女ちゃん+聖女ちゃんのアガシオンのユニットが刺さるのだ
あんまりにも上手く回るんで「このまま聖女ちゃんのいたPT揉め続けてくれないかなぁ」
と思ってしまう、良くない事だ
それにしても自分が仲魔の命の危険を「蘇生できるから許容範囲のリスク」等考えるようになるとはな
あまりこういう方向で物事を考えたくないなぁ
明日はレベル上げは休みだから飲みに行こう、という事になって
適当に飲みに行った、なんか聖女ちゃんといつも飲んでる気がする
そして適当にほどほどに飲み食いして話をしていたら、ふと聖女ちゃんが言ってきた
「そういや源氏くんさー、死んだ後の事ってどうなってんの?」
いきなりなんだろ
「どうなるんでしょうね、子供もいないし。それにマッカって相続税で持っていかれちゃうんですかね」
ゴールドとして換算されるとえらい額に査定されちゃう気がする
それに生きている間の脱税をつつかれて何も残らない気が
俺税金払った覚え全然ないんだよね、仕事してもマッカで貰ってるし
マッカなんて税務署も把握してないだろ
「いやそっちじゃなくて、死んだ後の魂? 霊魂? そっちの行方の話よー」
死後の世界の話ーっと珍しくお酒以外のドリンクを飲みながら言う聖女ちゃん
死んだ後?
「特に決めた覚えはないんですけど……」
「【クシナダヒメ】と【源頼光】の氏子なのに?」
だからじゃないか
「どっちの神様もあの世とか冥界とか司ってないんで、普通に日本的なあの世にいくのでは?」
俺、【恐山の冷水】たっぷり飲んだからいつ死ぬか知らんし
根の国なのか黄泉なのか幽世なのか地獄なのか輪廻転生なのかも知らんけどさ、日本の宗教観は結構緩い
「ちゃんと聞いておいた方が良いよー
「自分の氏子ならここ!」って決めてるかもしれないし
と言うか私はそういうのが怖くて【加護】貰ったり覚醒進めたり出来てないんだよね」
それもそうか
それに何かの拍子でぽろっと死ぬかもしれないしな、こんな生活してるし
と思って軽い気持ちで聞いてみたらやばかった
【源頼光】様曰く
「貴方が亡くなる時にはきっと子も沢山いて、郎党もそれに相応しい者たちがいるでしょう
ならば貴方は摂津源氏の流れを汲む甲斐源氏の家祖として尊崇され、
死後も篤く祀られているはずです
この母と、そして娘と共に氏神として末永く子孫たちを見守っていきましょう?」
俺、神様になって<ライコー>や【源頼光】様と一緒に子孫見守る予定らしい
【源頼光】様の中では
そして【クシナダヒメ】様曰く
「根之堅洲國でもお義母様の所でもナムジの所でもいいわよ? 私が連れて行ってあげる
どちらに行きたいかしら?」
死後の魂、【クシナダヒメ】様に連れられてどこかに行く予定らしい
【クシナダヒメ】様の中では
これ両立するかな? ちょっとわからない
とりあえずこの二柱に対し一言申せるくらい強い神様なはずの【スサノオ】様にお縋りする事にした
困った時の神頼み、これ常識
【クシナダヒメ】様の祠に合祠している【スサノオ】様に強くお願いをする
(丸く収めてください! とりあえずまだ死ぬ予定ないんで保留という事で!)
すぐに神託が下った
「よく話し合うべし」
役に立たねぇ……
氏神、氏子というが日本の世界観では
氏子はただ一柱の氏神の氏子ではない
俺にとって【源頼光】様は「俺が婿養子に入った先の祖先神」としての氏神であり
【クシナダヒメ】様は「俺が生まれ育った土地の産土神」としての氏神である
前者を血縁による氏神、後者を地縁による氏神と大雑把に解釈して良い
この二種類の氏神は両立する
例を言えば江戸幕府を開いた徳川家康の子孫たちは
徳川家康を祖先神として祀った一方、江戸城内にあった神社を産土神として祀った
この二つは俺の場合と同じく彼らにとっての氏神である
これに限らず「氏神」という言葉は複数の属性を持っており、その属性の違いによる差を無視して同じく氏神と呼ばれる
色々と雑なのだ、その分密着している存在だったとも言える
氏神ごとに力関係や上下関係があるんだかないんだかもわからない
であれば同じ氏神同士で意見の対立が起こった時どうなるのだろうか
俺としては俺の死後なんていう遠い先の事を争って
二柱の神が対立、勝敗を決し、負けた方が去って行って加護を失うというのが特に困る展開だ
戦力低下か収入源の喪失のどちらかが起こるという事になる
これは困る
どうせなら両方とも貰ったままでいたい
それに<ライコー>は力を貰った結果、今の<ライコー>になった
あの頃とはレベルが違うから恐らく加護抜きでも十分な人間味を備えると思うが
それでも何かあったら怖い
という事でどうだろう? 死後の事は死後に考えるという事にして
ここは一旦保留という事にしては?
別に生きている間に考えなくても良いじゃないか
大変申し訳ないが今すぐ、どちらの神様に良い返事を出すというのは出来ない
俺にとって二柱はどちらも大事な(ご利益ある)神様だから失いたくない
というような事を誠心誠意、お二方に夢枕に立って貰った上でお話しした
ちなみに正座している
ほぼ駄々っ子みたいな主張だが根っこの部分がそういう主張だから
これはもう誤魔化してもしょうがない
そんな俺の言葉に
「あらあら、まあまあ」という反応が【源頼光】様
ちょっと考え込んでいるのが【クシナダヒメ】様
激怒という反応ではなかったのは幸いだが、これは逆に読めない……
そして【源頼光】様が
「我が子よ、これは母として貴方の事を思って言う事なのですが」
言われてちょっと姿勢を正す
「死後の扱いはきちんと決めておかねば苦しい事になりますよ」
苦しい事って?
「貴方はあの天使どもと戦う事も考えておられるでしょう?」
頷く、どう考えても【ガイア連合】と【メシア教過激派】は不倶戴天だ
絶滅戦争をする未来しか見えない
いや、俺の将来予想って結構外す事多いけどさ、これは外さないと思うんだ
と言うか未来どころか現在進行形でやってる認識だ
そしていざという時に絶対に安全な所にいるという保証などはない、戦う事を前提にして考えねば
「あの者たちは魂の取り扱いに慣れております
もしそのような者たちと戦い、武運拙く討ち死にする事があったら……」
ごくり、と唾を飲み込んでしまった
「【迷える子羊】として導かれてしまいますよ」
マジ? えっマジ? あいつら、自分が殺した相手の魂も持って行くの?
俺、【一神教】でも【メシア教】でもないんだけど?
これ下手したら【餃子】とか【マヨネーズ】案件じゃない?
あっそういやエジプト神話勢力が他所の霊能者の魂奪ったことあったな、あれと同じか
何かあった時に死体を利用されないよう、自害用のストーン持っているだけじゃダメだったか
「私としてはあいつらに取られるのだけは避けたいから魂だけでも確保したいの
可愛い氏子があいつらの玩具にされるのだけはいやっ!」
と、今まで何も言っていなかった【クシナダヒメ】様の強い言葉
「ですので、我が娘にはいざという時は貴方の魂をこの母の許へ連れて来るよう伝えるつもりでした」
まじか
「あの、【源頼光】様的には俺は子孫の氏神になるって……」
「理想を言えば、です。もちろんそうなって欲しいと心より願っておりますが
戦地へ赴くのであれば、もしもの時の事は考えておかねばなりません」
納得する
そして納得できないのが【クシナダヒメ】様だったようだ
「魂を連れて行く話、私聞いてないんですけど?」
「言う必要がございましたか?」
「!!」
言い争いを始めた二柱を眺めながら考える
どうすりゃいいのかねこれ
結局、その後宥めたり機嫌取ったりして何とか話が纏まった
1.俺の死後は死後に俺が決める、<ライコー>も一緒の所に行く
2.俺が死んだ時、蘇生や復活できないようなら俺の嫁でありシキガミである<ライコー>が
魂を確保しその縁で一先ず【源頼光】様の所へ保護の為に送る
3.この際、二柱とも相手を出し抜いて勝手に自分の物にはしない
4.そして上記の事を正式に【契約】とする為に俺が対価を払う
話の内容に<ライコー>に加護を授けて下さり、
しかも一応【クシナダヒメ】様の祠におられる【スサノオ】様が関わってこないんだが
良いんだろうか? と思って聞いてみたら
「私の氏子の事だから私に任せるって」と【クシナダヒメ】様がおっしゃった
そして行先がある程度決まっていて、なおかつ確保する存在がいるなら【迷える子羊】されたりは多分ないはず、
何かあっても取られる前に送っちゃえ、という事らしい
これはあくまで保留に近い、休戦協定みたいなもんだ
本当に死後の事を考えるなら冥府に関わる神に頼んだ方が良いらしい
まあそれは都合が良いあの世に行かせてくれる都合が良い神様を見つけてから考えよう
さて問題は対価の話だが……
まずは強く希望があるらしい【クシナダヒメ】様の方から
「ちょっとしたら【各代表会議】があるでしょう?
それが終わった後に地母神や女神たちで集まってお茶会をするの
それを手伝っていただけないかしら」
【各代表会議】、【ガイア連合】や【日本の神々】、【外様】
そして【メシア教穏健派】や【多神連合】の代表者たちが
この日本のとある人工島に集まり、色々語り合う会議だ
【ガイア連合】が彼らにする支援もその場である程度決まるらしい
らしいとか色々とか、曖昧な言葉が出るのは今回が初めてであり実際はどういう風に進むかわからないからだ
その一回目の会議が二週間後に開かれる
「お茶会ですか」
正直、拍子抜けした
何ともほのぼのとした話だ
【クシナダヒメ】様の言う所によると【各代表会議】に代表として日本に来る神の他に、その妻たちもやってくる
そしてそう言った神の妻たちも力ある地母神や女神であり
良い機会だから親睦を深めるためのお茶会を、という事になった
そのお茶会で侮られるのはとても許されない事らしい
「私は我が背の君の妻として! 日本の地母神の一柱として、
国津神の女神の代表として、負けるわけには行かないのよ!」
と【クシナダヒメ】様は燃えている
気合の入れ過ぎだと思うが……大体お茶会の勝った負けたってなんだよ
まあそういう事なら、と思った
そして【クシナダヒメ】様の求める手伝いというのが
その「お茶会」で出す水菓子として【宝石メロン】を出したい
明日、業者さん(星霊神社の修行僧)が来て工事して空間を広げ、畑を一反増やす予定だけど
その畑を今回は神々に農産物を捧げる為の【神饌畑】として扱って欲しい
【神饌畑】で育てた特別な【宝石メロン】で持て成し、ついでにお土産でも持たせて
【クシナダヒメ】ここにあり! と示すのだ! とおっしゃる
俺にはその【宝石メロン】の生産とお茶会で出す【宝石メロン】の切り分けをしてもらいたいのだそうだ
なんで俺が切るの? と思ったら
「そういう事を氏子がやる事で更に特別感が出るの」と言う
そんなもんなのか
そして【源頼光】様の方は
「我が子が心と魂の平安の為に望む事に、母が一体どのような対価を求めることが出来るでしょうか」と言い
ただ、と伏し目がちに続け
「数日に一度で良いのです、私の祠をあなたの手で掃き清め、その元気な様子を見せに来てはいただけますか?
もちろん無理にとは言いませんが……」
その程度の事なら容易い事、と返答をしようとした所で
「あー! ずるい! あざとい!」
本当に元男なの、あなた! と何故か【クシナダヒメ】様が責め立てる
えぇ、そんな風に言うような事じゃないと思うのだが
じとーっと【クシナダヒメ】様は【源頼光】様を見つめている、【源頼光】様は涼しい顔だ
「あの、【クシナダヒメ】様が望むならそちらも……」
どうせ掃除するなら二ヵ所やってもあんまり変わらないし、と思って言おうとした
【クシナダヒメ】様がパッと笑顔になる
それを【源頼光】様が
「【クシナダヒメ】様? 対価の二重取りは、品の良い行いとは言えないと思われますが?」と釘を刺す
むっ確かに【クシナダヒメ】様は既に別の対価があるのにそれ以上更に、というのは良くないか
うーむ
「じゃあ対価はこっちにするわ」
えっ、お茶会は良いの?
「その代わりお茶会の方は別にご褒美上げるから、やって」
ご褒美とな!
「【クシナダヒメ】様、これ以上の【加護】の譲渡は【ガイア連合】との約定に……」
【ガイア連合】との約定?
【クシナダヒメ】様が説明してくれた
神々(悪魔)から【加護】を受け取りすぎると
神々(悪魔)の【代理人】や依り代と言って良い存在になりかねないのだとか
普通ならそんな心配はあまりないのだが【俺たち】は霊的な才能に溢れているせいで
それが十分ありえるというのだ
そして【代理人】や依り代に【俺たち】がなったら
例えば神々(悪魔)が受けた呪いを【俺たち】に移したりすることが出来る
これは【ガイア連合】が【俺たち】を神々(悪魔)の人質にされかねない事を意味し
【ガイア連合】がきつく縛った行いらしい、もし破ったら違反行為として罰則が来るとか
だから【加護】をあまり強く与えることが出来ないと
じゃあご褒美と言っても加護系は無理って事か
まあ【クシナダヒメ】様の加護って他は【夫婦円満】とかそっち系だしなぁ
リア充祝ってやるくらいにしか使えない加護貰ってもなぁって気がするし別に惜しくない気がする
「でも大丈夫、私の加護じゃなければ大丈夫なのよ」
と【クシナダヒメ】様の言葉、何がどう大丈夫なんだろうか
その後、新しく出来た畑に色々やって【宝石メロン】をいつもより少量植えて
普段よりも気持ち多めにMAGを注ぎ、<ライコー>に【スサノオ】様の加護も使ってもらって出来を良くし、
気が向いた時に祠周辺を箒で掃除したり
<ライコー>の指導でメロンを切る練習をしたり、いつも通りのレベル上げをして過ごした
【各代表会議】当日である
【各代表会議】の内容が気になるが今日は神々(悪魔)相手の仕事がある
考え事をして気もそぞろにするのも良くない
【各代表会議】の内容は明日、掲示板で纏めて見る事にして仕事に集中する事にした
【各代表会議】は少し前、蘇生の仕事をした人工島で行うらしい
ここは今後は海外の諸勢力と接する新時代の出島になるのかもしれないな
その人工島に【俺たち】の手で【トラポート】してもらい到着
初めて来た時と比べて新しい建物がいくつも立っているそこに意味もなく感心しながら
指定されている建物に入りその中の控室に入り、用意した服に着替える
今日の為に新品の服等を揃え、しかも一度着用したら家に帰る前に全部捨てろ出来れば燃やせという指示を
【クシナダヒメ】様から受けている、呪詛対策らしい
更に顔を見られないように紙のお面をし、何を言われても【クシナダヒメ】様以外には返答をするなと言われた
このお面も燃やさないといけないらしい
「どんな危ないお茶会なんだよ」と思う、これは気が抜けない
どんな危ないお茶会なんだ、と思ったが全然危なくなかった
他の部屋で同じように行われている別の交流会からは怒号や罵声がしたが
この女神のお茶会ではそんな事がない、控室で待機しているが物凄く穏やかに見える
【クシナダヒメ】様の心配のしすぎ、気合の入れすぎだったのかな? と思う
でもまあそれもしょうがないか、違う神話勢力の地母神や女神招いてのお茶会だもんなぁ
ちょっと気合を入れすぎる位がちょうどいいのかもしれない
合図が来た、俺の仕事の時間だ
一礼してから部屋の中に入る
目を見張る、なるほど各神話の女神たちと言うのは本当らしい
広間に大きな円形のテーブルがあり、女神たちが席についている
席には既にいくつかの茶菓子やお茶があり、各々手に付けている
目を見張るというのはこの女神たちは【美し】さを漂わせすぎているのだ
考えてみれば当たり前だ、このような場に出るような女神に美しいという概念が纏わないはずがない
彼女たちは各神話勢力の代表そのものや、その配偶神、あるいはそれに見劣りしないと思われて来られた女神であるのだ
どこの誰とも知れぬ女神さま方だが皆和やかに談笑なさっている
平和で良い事だ
それになるべく視線を向けないように自分の仕事をこなす
決められた手順と切り口で決められた個数になるように何個も【宝石メロン】を切り分け、
切った【宝石メロン】に頭を下げ柏手を八回打つ
後の配膳等は他の人に任せて【クシナダヒメ】様の斜め後ろに控える
近寄ればますます女神たちは美しい、その女神たちを彩る宝石類や装飾品の派手な事!
そして目に毒なのが女神の中にはその肌の露出度が大変高い方もおられるという事である
こりゃいかん
正直、【クシナダヒメ】様が今回のお茶会に向けて、
薄くであるが紅を刺したり化粧をして、いつもと違う服を用意したり気合が入った姿を見て
少々派手かと思ったが今にして見ると全然そんな事はなかった
これが文化の差なのだろうなぁ
俺としてはあんまり派手過ぎるのは落ち着かないのだが
配膳が行き渡る間に【クシナダヒメ】様が言葉を発する
「この者、私の氏子であります
この場にある水菓子を奉納した者にて~」
普段と違いどこか楚々とした【クシナダヒメ】様の声で自分の紹介を聞くが
なんかこうしてみると俺が熱心な氏子のように聞こえて変な気分になってくる
そして【宝石メロン】の紹介まで終えてから女神たちが【宝石メロン】を口に含む
食べ終えるまで誰も声を出さず黙々と食べる、女神というのは行儀が良いのだなとかぼんやり考えてた
俺の仕事はそろそろ終わるのでとっとと下がりたい
「我が氏子よ」
【クシナダヒメ】様の声に視線を向ける
「撤饌です、お上がりなさい」
一切れ乗っている【宝石メロン】のお皿を手で示される
まずは【クシナダヒメ】様の方に礼をし、場の女神たちに礼をし
最後に【宝石メロン】に礼をし頂く
【直会(なおらい)】という儀式がある
神饌として神に捧げた食べ物のお下がりをいただくことで
神との親密さを増し、加護や恩恵をいただく儀式の事だ
撤饌とは神饌を下げる事である
今回は意図的に残した【宝石メロン】をお下がりとしていただく形をとった
これが【クシナダヒメ】様の言うご褒美である
「自分がこれ以上加護上げれないなら、薄く不特定に地母神系の恩恵貰っちゃえばいいじゃない!」
という他人の褌で相撲を取る的なご褒美だ
俺が神饌として食べ物を捧げた神様は【クシナダヒメ】ではなく、この場にいる神様全員、という事になる
地母神、女神等の名前も知らぬし知らせぬ、それによって薄い繋がりだけにして
淡い「名も知らぬ地母神、女神との恩恵」だけを【直会】して勝手に得るという作戦らしい
これによって俺の霊基が地母神系の加護との相性が良くなり
その結果【クシナダヒメ】様の加護をよりMAG効率よく使えるようになるはずという理屈だ
俺を【クシナダヒメ】様の【代理人】にしないように配慮した上でのパワーアップ、らしい
【ガイア連合】との契約違反をしない為に神様も色々考えるのだなぁって思った
食べたが、いまいちこの儀式によるパワーアップを感じない
(後で確かめたが畑に使うMAGの効率が気持ち良くなったかも? 程度だった、まあいいや)
そして俺の役目が終わったので【クシナダヒメ】様が退室の許可を予定通り出してくださり
下がる
なんか疲れたな……
その日、家に帰ってしばらくしてから祠で
「結局、お茶会の勝ち負けって【クシナダヒメ】様的にどうだったんです?」と興味本位で聞いてみたら
「大勝利!」と言う声が返ってきた
【クシナダヒメ】様的にはちゃんと勝ち負けがあったらしい
「今後もお茶会のたびにあの【宝石メロン】を出すのはちょっと嫌ですよ」
畑を【神饌畑】として扱う為に祝詞を唱えたりなんだりするのは面倒なんだ
あの畑は普通に使いたい、普通の【宝石メロン】でも美味しいし売れるし
「あれは「最初の【各代表会議】」だから特別って事にするわ
そうした方が特別感出るし、出し続けると他の方たちも見栄を張らなきゃいけなくなるしね
それに次回は私が出るかわからないから」
はぁ
まあそうして俺にとって最初の【各代表会議】が終わった